安倍内閣の総括

…そろそろ始めてもいいかもしれませんね。
さて、先頃流れていた「従軍慰安婦問題に反対する広告が、決議案の後押しをした」という説について、それが正しかったかどうかを検証しているサイトがあったので記録。
米下院に提出された非難決議案共同提案者の増加努力(13日の水曜日)
いつ頃何があって、どう共同提案者が増えていったのか。1/31には6名しかいなかった共同提案者が最終的に151名にまでふくれあがったのはなぜなのか、を丁寧に検証しています。今、日本の誰が世界からどのように見られているか(ことにアメリカからどのようにみられているか)がよく分かるサイト。それにしても、当該の新聞広告でRAAの件に触れていたとは知らなかったのでたまげた。


確かに、私は3月の日記でこんなこと書きましたが

とりあえずアメリカの議会で「オタクの国の兵士の為にも占領下で日本は『広義の強制』でこういうことしましたし、オタクの国の兵士も大変利用されたようですが」とやってみるとどういう問題になるのか、興味深い。(http://d.hatena.ne.jp/jo_30/20070328/1175085642

えーとね。
前後を読めば分かるけどこれあくまでブラックジョークなわけで、まさか本当にやる阿呆がいるとは思わなかったです。ハイ。オマケにこれを占領軍の命令だと主張してるとは!……ああ……もう、頭がクラクラ……。


磯田光一「戦後史の空間」より引用

八月十五日の「終戦詔勅」から三日後の八月十八日に、内務省警保局長は秘密の無電で、占領軍向けの売春施設を設営するように全国の警察署に命令を発した。『内務省史』にも記載されていないこの電文は、神崎清氏の『戦後日本の売春問題』(昭29・社会書房刊)、『夜の基地』(昭28・河出書房刊)の二著に記録されている。

警察署長は、左の営業については、積極的に指導をおこない、施設の急速充実をはかるものとす。
性的慰安施設・飲食施設・娯楽場
営業に必要なる婦女子は、芸妓・公私娼妓・女給・酌婦・常習密売淫犯等を優先的に之を充足するものとす。

こうしてRAA(特殊慰安施設教会)が八月二十六日に発足し、業者代表が皇居前で「天皇陛下万歳」を叫んだという実話を、読者はどう受けとるであろうか。*1

八月十八日!早いよ!まだ占領軍もマッカーサーも到着してません(>_<)。どう見ても日本政府の主導ですね。
で、なぜ日本政府がこんなに早く対応したかについて、ある人はこう語る。

被爆地長崎からの報告(6)では、長崎、佐世保の「両市民中には進駐軍上陸の際に於ける乱暴行為等を危惧し陸続として近郊を始め市外各地に避難為に長崎駅発列車は超満員にて混雑を呈し警察官を派遣之が整理鎮静に務むるの状況」、「長崎市内銀行郵便局等に預金引出者相当詰め掛けたるを以て之が整理並びに調査の為警察官を派遣せるが引出の原因は進駐軍上陸近日中なりと狼狽避難の為」と米軍進駐を前に県民の混乱ぶりが報告されていた。初期の進駐予定地ではいずれも類似した現象があったと見て間違いないだろう。


 しかし、「一部の有識者殊に支那に駐屯せる経験ある者は当時を偲び今般連合軍各地に駐屯し傍若無人の行動をなすは見るに忍びずと嘆ずる者多し」とあるように、この種の「敗戦恐怖譚」は自らの侵略の過去からの類推であり「己を以て他を測る」ことに外ならなかった。実際、進駐軍による犯罪・暴行は記録に残るものだけでも相当の件数となるであろう。しかし、日本人が予測した事態とはかつて自らが中国大陸や東南アジアの占領地で行って来た数々の略奪行為であった。こうした官民の対応に、高見順は次のような批判と嘆きを投げかけている。「かかることが絶対有りうると考える日本人の考えを、恥しいと思う。自らの恥しい心を暴露しているのだ。有りえないと考えて万一あった場合は非はすべて向うにある。向うが恥しいのである。」。「被占領心理 肉体の戦士R.A.Aと官僚的「合理性」(川島高峰)」より

…というわけです。以前の日記で私が

こういう施設を作った日本は「慰安婦」問題について激しく「自白」しているよなあ

と書いたのは、そういうことです。まあ「かかることがあり得ると考える日本人が恥ずかしい」と書いた高見順も、日本人が60年後「かかることをアメリカがやれと言った」などともっと恥ずかしいことを主張するようになろうとは夢にも思っていなかったでしょう。
ジユウでミンシュシュギ的な党に所属し、今般の広告に名前を連ねたみなさん、みなさんの名前は今後とも末永く語り継がれることに決定しました。本当におめでとうございます。


(追記)
安倍内閣の総括…と書いたら、その日の夕方にはまた閣僚が辞任する騒ぎ。総括する暇もありませんね。
失言、失言、不祥事、問題露見、問題隠し露見、自殺、失言、辞任………
そして国会を開けば強行採決強行採決、強行……
こんな内閣、こんな政権運営ってあるのでしょうか。安倍内閣に期待してた人、一体何が良かったのかあらためて説明してください。小学校の児童会だってもう少しマシな運営がされると思いますが、この内閣には一体何が欠けているのか、そしてなぜ与党の皆さんはこの内閣を放置しておくのか。それとも、こんな恥ずかしい内閣に手出しができないほど国会は弱体化しているのか。

*1:ちなみに、このとき政府側にあって総計一億円(政府側予算5千万円)ともいわれる予算の確保のために奔走したのが、大蔵省官僚だった池田勇人(のち首相)で、彼はこのとき「一億円で純潔が守れるなら安いものだ」と言ったとか。