『ZOO』


 乙一原作の『ZOO』から5篇を映像化している。なんとなく安っぽくなってそうで敬遠していたんだけど、観たらよかった。表題作「ZOO」以外はどれも原作の雰囲気そのまんま。原作読んでたから感心しまくり。「ZOO」も原作の方が良かった。なんでスタイリッシュっぽくしちゃうかなあ。やっぱムラジュンだからかなあとか思い、同時に「乙一は長編より短編の人だなあ」と改めて思う。オチを見せる作家だからそこまでの道はストレートであってほしい。長編になると乙一はまどろっこしい感じがするのだ。
 『カザリとヨーコ』はほんと原作読んで思い描いてた通り。カザリとヨーコの逆転劇にもう少し欲しかった。惜しい。昨日のアメトーク笑い飯哲夫の柴田恭平のモノマネくらい惜しい。確かに手はパーだ。関係なくない。
 『SEVEN ROOMS』が一番原作で好きだったので、あの感覚をどう映像化するのかと思ったけど、良かった。怖い。子供はブリーフ一丁がよく似合う。大人になったらブリーフ一丁なんてそうそうなれないから子供は今のうちにどんどんブリーフでいけばいいと思う。
 『SO-far そ・ふぁー』はなんと言っても神木隆之介くんだ。またか。また神木くんで感動するか。などと思いつつ、ほんと揺れる少年心とか切ない。そんでちょっと狂気とかある。もう子役は全部神木くんがやればいいんじゃないか。ブリーフ一丁以外は。なんか神木くんがブリーフ一丁とかは気恥ずかしいし、すでにちょっとしたエロスだ。あと鈴木杏樹は以外といいお母さんぽかった。海苔は食べてなかったけど。
 『陽だまりの詩』は唯一のアニメ作品。ロボットだもの。首もげかけるもの。実写だったら面白いけど。何気に感動。大事だね、感動。
 『ZOO』は原作の方がよかった。
 以上。

ZOO [DVD]

ZOO [DVD]

『カザリとヨーコ』
 ■監督:金田龍 ■出演:小林涼子/松田美由紀/吉行和子
『SEVEN ROOMS』
 ■監督:安達正軌 ■出演:市川由衣/須賀健太/佐藤仁美/高橋真唯
『SO-far そ・ふぁー』
 ■監督:山田耕大 ■出演:神木隆之介/鈴木杏樹/杉本哲太/志賀廣太郎
『陽だまりの詩』 
 ■監督:水崎淳平 ■脚本:古屋兎丸 ■声:鈴木かすみ/龍坐
『ZOO』
 ■監督:安藤尋 ■出演:村上淳/浜崎茜

村上春樹『東京奇譚集』

 映画でも本でも「お金出してまで観たく(読みたく)はないけど、けっこう観たい(読みたい)」ものって多い。でもそういうのってビデオになったりブックオフに並んだりする頃にはなんとなく観なくてもよくなってたりする。やはり旬な時に楽しむべきなのである。だから映画だとタダ券もらったりすれば観るし、本だったら貰ったりすると嬉しい。はい、これ頂きました。ありがとう。現在は僕の読みたいけどお金出したくない度トップは歌野晶午の『女王様と私』です。もし僕にあげたいとか思った人は是非。
 さて『海辺のカフカ』でようやくハマりかけた村上春樹ワールド。『東京奇譚集』はちょっと変わった不思議な話が五篇収められている短編集。『偶然の旅人』『ハナレイ・ベイ』『どこであれそれが見つかりそうな場所で』『日々移動する腎臓のかたちをした石』『品川猿』の五篇はどれも人から「実はこんな話聞いたんだけど」って聞くような、ありそうでなさそうな、でもやっぱりありそうな話。どことなくライトな都市伝説のような話で、登場人物は羊男でもジョーニーウォーカーでもなく、普通の人々。喋る猿は出て来るけど。
 前に『どこであれそれが見つかりそうな場所で』は新潮に掲載されている時に読んだ。舞城の『ディスコ探偵水曜日』の後ろに掲載されていて、「なんかぬるいなあ、村上よぉ」とか思ったけど、こうしてこの短編集に入ってると素敵だったりする。『日々移動する腎臓のかたちをした石』もなんか素敵な感じで、人生でめぐり合うべき3人の女性って…などと考えさせられる。
 なんというかどれも素敵な話で村上春樹って素敵なこと書くなあと。
 とても落ち着いた気持ちになれる本で、ベタな言い方をすれば「秋の夜長を共に過ごすのに最適な一冊」的な本である。
 

東京奇譚集

東京奇譚集