なぜ自殺が少ない地域があるのか?
その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――
- 作者: 森川すいめい
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2016/06/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (9件) を見る
- 作者: 岡檀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/07/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (15件) を見る
今おっしゃったような北の県は確かに自殺率が常に高くて、特に高齢者の自殺が多いことが特徴のひとつなんです。
『生き心地の良い町』はひとつのフィールドを深く調査したものですが、もうひとつわたしがやっているのは、ものすごくたくさんのデータで分析していくと、日本全国でこういう傾向が出ましたみたいな、そういう分析も一方でやっているんです。たくさんのデータを集めて、ぼんやりした感じではあるんですけど、今おっしゃった東北3県はデータとしては高い傾向が出ているんですね。
そこに共通するのが、お年寄りの方々がとにかく勤勉っていうか、働くということが人間の生きる姿だっていうふうに思ってらして、そうすると、年をとって体力が伴ってこなかったり、介護を受けなければならなくなったりすると、極端な言い方をすれば、生きている意味がない、価値がないと思い込まれてしまう傾向があって、そういうことが、特にこの地域には共通して強いというふうに考えられていますね。
遊んでていいんですね。
高い地域というのは、すごく険しい山間だったりするんですけど、地形や気候が直接自殺を生み出して行くというわけではなく、雪が積もるとか、険しい山間部で移動も大変だというような、非常に厳しい生活環境に何世代もさらされてきた人達に固着していく気質みたいなものですね。ものすごく我慢強いとか、簡単には人を頼ってはいけない、自分のことは自分で解決しなくちゃいけないんだとか、そういうことがどうやらそういう地域ではすごく強くて、なかなかちゃらんぽらんにはなれない。
きっちり生きていかなければならないという自然環境というものが、平成のこの世の中でも高齢者の世代ではやっぱり引き継がれていて、簡単にはSOSが出せないとか、こんなことで人に頼ったらつまらない人間だと思われるとか、そういう傾向がありますね。
もともと人間が進化してきた過程ではどうだったのだろうか?集団として「役に立たないメンバーを見捨てる」ほうが生存確率が高かったのか?それとも余裕がある限り支える包摂性のある集団の方がロバストネスが高いのか?例えば疾患に対する抵抗性というのは目に見える有用性とは異なる場合がある。鎌状赤血球貧血とか代表例だけどユダヤ人に多い膵のう胞性繊維症も結核に抵抗性があったのじゃないかという説もある。まじめな人が自殺しちゃう集団というのはみすみす貴重な遺伝子資源を捨ててしまっているのじゃないだろうか?