今月の角川文庫はYA祭り?ーアーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)(森絵都)/楽園のつくりかた (角川文庫)(笹生陽子)/夏のこどもたち (角川文庫)(川島誠)

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫) 楽園のつくりかた (角川文庫) 夏のこどもたち (角川文庫)
今月の新刊にこの三冊が入ってるのだ。同じく今月の新刊である乙一『GOTH』もまぁ無理矢理YAか…!? いや、違うか…。ま、どちらにせよ今月の角川文庫は好きな本(←「アジアンタムブルー」や「GOTH」)や、気になりつつ読めなかった作品(今日取り上げた作品)ばっかりで嬉しいっす。期せずしてYA文学を三冊連続で読むことに…。


まず森絵都アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)
従兄弟たちだけで過ごすひと夏の物語「子供は眠る」、不眠症の少年と虚言癖のある少女の出会いを描いた「彼女のアリア」、そして魔女のような絹子先生と不思議なフランス人のおじさんが迎え入れる楽しくも切ないピアノ教室を描いた表題作を含むこの短編集。楽曲をモチーフにしているということだけではなくて、日常から切り離されたこの短編集からはとても上質な感じを受ける。三作どれも好きなんだけど、「子供は眠る」のなかで今まで気付かなかったことを気付くことで大人になる、という展開はとても印象強かった。解説は角田光代


そして笹生陽子楽園のつくりかた (角川文庫)
東京に住むエリート中学生の優は、親の都合でとんでもない田舎に引っ越すことに。中学は村立、しかも分校ーたった3人のクラスメイトも問題児ばかりで。受験戦争を勝ち抜いてきた優にとっては何もかもが噛み合ない生活…唯一の救いは外国に単身赴任してる父親からのメールだけで…。
今まで読んだ笹生作品の中では一番好きかも。登場人物がみんないきいきしてるし、ラストもちょっとじんとくる。優とクラスメイトたちの今後が気になります。解説は北上次郎


最後に川島誠夏のこどもたち (角川文庫)
義眼を持つ優等生の朽木元の中学最後の切ない夏を描いた表題作、ほか二編をおさめた短編集。表題作はなかなか印象的なエピソードが多いが、もうちょっと主人公の変化を見せてほしかったなというかんじ。

脂肪と言う名の服を着て 完全版(安野モヨコ/祥伝社)

脂肪と言う名の服を着て 完全版
働きマン』以降、最近の作品はもちろん昔引っ越しのときに売っちゃった『ハッピーマニア』まで再び文庫版で買い求めるほどに個人的安野モヨコブーム。で、買っちゃったこの本。
ストレスからつい過食気味になって太っていくOL・ノコ。同僚で美人のマユミがノコの彼氏・斉藤と密会していることを知り…。

カワイイというだけで
キレイというだけで
やせているというだけで
マユミはすでに私よりも
上の人間なのだ

ハッピーマニア』とかののりで読んじゃうとぐぐっと暗くなっちゃう作品。いや、上手いんだけどね。読んでて痛いの。わかるだけに痛い。「美のヒエラルキー」は女なら誰でも知ってるはず。もっと痩せたい、もっときれいになりたい、そんな欲望から逃れたいけど、あきらめたくない。安野モヨコはそんな女心を赤裸々に描きつつ、「じゃぁ痩せたらきれいになったらあんたは幸せになれるの?」と問いかけてくる。でも「女は見た目より心」なんてきれいごとも言わない。やっぱきれいな女は得するし幸せかもしれない、でもあんたが不幸な理由はデブなだけじゃない。「もっともっとキレイになればもっともっと幸せになれる」…女の欲望をどこまでも正直に描いた名作かもしれない。