守護者 (講談社文庫)(グレッグ・ルッカ/講談社文庫)<2>

守護者 (講談社文庫)
このシリーズ読みたいのにどこの本屋にも置いてないぞとひとりで騒いでたところ、いつも行く本屋にいつの間にかシリーズすべて入荷してあった。想いが通じたのかな。
ボディーガードを生業とするアティカスは、恋人のアリスンとともに産婦人科病院を訪れていたー堕胎の手術のために。彼女の手術が無事終了したのち、アティカスは予想外にもその病院の院長である女性医師・ロメロに仕事の依頼を受ける。ロメロは妊娠中絶反対派のグループから度を超した嫌がらせや脅迫を受けていたのだ。妊娠中絶の是非を話し合う大規模な会議が二週間後に迫っていたー
中絶反対派のグループ<声なき者の剣>がしょっぱなから何かときな臭い動きしてるおかげで、テンポが良くてぐいぐい読めちゃう。個性的な仲間や、女探偵・ブリジットなどキャラもいい。
ただ勢いがあるだけにちょっとラストが肩すかし感。犯人やその動機に意外性がなかったな。ま、こっちが勝手に期待してただけだけど。あと最初のあたりでいきなり主人公と恋人を別れさせるのは、もったいないかんじ。仕事(急進的な反対派から中絶肯定派の中心的な人物を守る)とプライベートの問題(中絶を選択したことによってすれ違う恋人たち)がリンクできるだけに、惜しいだろう。
ま、ぶつぶついいながらも、設定とか展開が上手いから読ませるし、キャラたってるし、集中して読めるので今後が楽しみな作家。とりあえずシリーズは全部読もうかなと思った。


ところで作品の出来には関係ないのだが、この中絶反対派の存在が個人的にはかなりインパクトあった。だって中絶手術をやってる(中絶手術だけやってるわけではない)病院の前に団体で張り込んで、入っていくカップル、そして出ていくカップルに「あなたは自分の子供を殺すのか!」とか「人殺し!」って詰め寄るんだよ? アタマおかしい人たちじゃん。どこの世界の女が喜んで中絶に向かうだろうか? 他人の都合はおかまいなし、勝手な正義を振り回す。アメリカではこれが現実なの?…と異常に腹が立ったのは、作品中の急進派のリーダーの演説を読んだせいだ。さんざんロメロを殺人者呼ばわりするあいまに「なるほど、母親たちに罪があるのは確かだ」って!!!! カモーン、男に罪はないのかい?…まぁ、作品中の悪役キャラに真剣に腹を立てても仕様がないわけなんだけれども。
わたし個人的にいえば、子供が欲しいと思ってるわけではないけれど、レイプでない限り中絶はしない。でもそれは胎児の人権がどうのこうのというわけではなくて、中絶したあとに自分が精神バランスを壊すのが怖いからだ。欲しくないと思ってても妊娠がわかった時点で気持ちが変わることもあるだろうし、年齢によって受け止め方も違うだろう。だから選択肢は絶対必要、そしてそのうえでは<反対派>も<肯定派>も必要ないはずだ。だってセックスと同じくらいパーソナルなことだからね。
…なんて全然関係ないことをアツク色々考えてしまった一作でした。

美女と野球 (河出文庫)(リリー・フランキー/河出文庫)<3>

美女と野球 (河出文庫)
『ボロボロになった人へ』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』という著者の小説は二冊すべて読んでるのに、本来コラムニストとして評価の高い彼のコラムはこれが読むの初めて。
…やっぱ評判には違わないですねぇ、どれも短いコラムなのだが笑えるやつが多い! 一番笑えた(3回読み返しても笑える)のは、「ボクが今、こうしている時……」だ。勝手にまたの名を「四番センター松井」。上等なコラムを要約できるほどの図々しさはないので中身はヒミツだが、かなり笑える。あと『東京タワー』にもつながるシーンを描いた「オカンがガンになった」二作も印象深い。
読みながら思ったが、この人ってヘンなことに引き寄せられる、もしくは自分から寄っていく、物書きとしては最高のタイプだなぁ。もしかすると芸人になっても成功したかも…!?

寿司問答 江戸前の真髄(嵐山光三郎/ちくま文庫)<4>

寿司問答 江戸前の真髄
寿司も好きだし、嵐山光三郎の文章も好き…で、買わずにはいられない一冊。
本書はのテーマは「江戸前寿司」。嵐山光三郎が友人・坂本重盛翁とともに、江戸前寿司の名店をめぐるレポートである。も〜おいしそうでたまらない!  "I love SUSHI!!!!!!" と何故か英語で連呼したい気分だ!
わたしの地元は日本海に臨んでいて、サカナはかなりおいしい。東京では寿司屋でしか味わえないような歯ごたえのある刺身が夕飯の食卓に無造作に出たりする。でも基本的に赤身は重宝されない。光り物と白身がハバをきかせてる地域なのだ。もちろんわたしも例にもれず光り物と白身が大好きで、東京に住んでなお、なぜみんなマグロマグロマグロとマグロを愛しているのかが疑問だ。ま、その脂身の強さが最近の食生活に合ってるんだろうとは思うけど。
そんなわたしも、最近まで東京では普段食べれないような新鮮なサカナを食べさせてくれる場所として寿司屋を位置づけていたけども。でも実はちょっと違うよね。たしかに築地あたりで食べればおいしいサカナには出会えるけど、ほんのときたま出会う「江戸前寿司」のほうがわたしを感動させる。こんな美味しいシメサバ食べたの初めてだ!とかタレつけて焼いたこのイカがめちゃめちゃいい!とか、ひと手間加えたもののうまさを知ってしまったんだよね。寿司屋は基本的にネタ勝負だろうと思ってたけど、まぁネタは大事だけど、素材を生かしながらひと手間加えてくれた味は一期一会だ。
このエッセイに出て来る寿司屋はわりと高級店だ。最低でひとり1万5千円くらいからだから(わたしは酒飲むし、いろいろツマミも頼んじゃうんでもっとかかる…)。ふらっと寄るような店ではないけど、でも一度は行ってみたいと思わせる店ばかり。行けないことはないけど、でもう〜ん、でもやっぱ35とか40過ぎてからくらいが落ち着けるのかもなぁ。金は払えても、自分が店に似合わなかったら嫌だしね。
は〜とりあえず寿司喰いたい!