人生を救え! (角川文庫)(町田康・いしいしんじ/角川文庫)★★★★

人生を救え! (角川文庫)
町田康による人生相談と、町田康いしいしんじとの対談が併録されてる、なんとも不思議な一冊。


町田康」と「人生相談」はあまりに相容れないような気がするが、読んでみると意外に真面目。いや、文章やノリは町田康テイストなのだが、人生相談における回答者というスタンスにおいてはかなり真っ当なのである。毎日新聞日曜版に掲載されているものらしいので、ふざけるわけにもいかんだろうが。
まずは相談者の立場に立って「あなたが困るのはもっともだ」と肯定してあげる。そこからはとんでもない対策案を提案したりして、ふざけてけむに巻いてるようにも見えるのだけど、実は問題を軽くみせようとしてのことだと思う。だいたいにおいて、「嫁から追い出された」とか「隣の人がうるさい」とかの相談をに対して真面目に(しかも紙面で)社会的な回答をされると、問題がより深刻になった気がしませんか。そういう意味において、町田康という回答者は相談者に対してとても真摯であると思う。
ま、それもこれもこの人のたぐいまれなる文筆家としてのテクニックがあってこそだけど。


後半は、ともに大阪出身の作家である、いしいしんじとのお散歩対談。浅草、丸の内、お台場をぶらぶらしながら。
<お台場>の「お」がムカつくけど、「お」にムカついてる時点で「お」の持つ何かに負けてる気がする、というあたりは笑っちゃいました。なんかそれわかるわ。

陽の子雨の子(豊島ミホ/講談社)★★★★☆

陽の子雨の子
豊島ミホの最新刊です。

私立の男子中学に通う夕陽、
二十四にしては幼く見える雪枝、
十五で雪枝に拾われて四年になる聡。
思いがけない夏が、いま始まる。
初めて夕陽が雪枝の家を訪ねる日、
押し入れの中には、後ろ手に縛られた聡がいた。
不安と希望の間で揺れる、青春の物語。


やっぱ豊島ミホはいい。と再認識できた作品だった。
夕陽のキャラはあり得ないとか、視点が変わる際に時間軸のぶれが気になるとか、荒削りな部分はいっぱいある。でもそんなことはいいのだ。
この作品で描かれるのは、青春期における自意識との闘いだ。闘いに疲れては逃げ出し、でもいつしかどうしようもなくまたあがき出す。家族にも友達にも絶対に知られたくない、自分の中でも最高に格好わるい部分。そこをここまでストレートにしかも豪速球で投げられちゃうと、読み手としてはぐぅの音も出ませんよ。


この人は本当に年齢とともに成長してる作家だと思う。それゆえに作品にもいい意味でライブ感があるんだよね。小器用さなんていらないから、これからもどんどんこんな作品を出してほしい。今後も期待大。