ルート350(古川日出男)★★★★★

ルート350

ルート350

最新短編集です。
現実と幻想、真実と虚構、過去と現在と未来ーーーすべてを飲み込み構築され、疾走する新たな物語たち。日本文学の最先端にいるのは、やはりこの人かもしれない。

少女のあこがれと少年の幻想が交錯する東京ディズニーランド「カノン」、取り残された3人の少女とハムスターが小さな家の中で壮大な音楽を奏でる「お前のことは忘れていないよバッハ」、離婚したての男と死んだ振りをする少女の小さな旅「飲み物はいるかい」、入学早々に入院することになった男の子の友達探し「ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」…この4編はシンプルだけど切なくて、好みです。
あと、いくつかの物語で構成される「物語卵」のなかのバードマンの話も好きだし、『サウンドトラック』の疾走感を思い出す子供たちの闘いの物語「メロウ」もいい。

どれもこれも古川日出男ならではの味わい。面白かったです。

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)(米澤穂信)★★★★★

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

最近ハマってる米澤穂信。今日ブックオフでこの本を発見したのでラッキーとばかりに買って帰ったら、家の本棚にはすでにこの本が…!! きっと発売時に面白そうだと思って買ってきてそのまま読むのを忘れてたんだね。ふーん。

一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかにー。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。

他の作品もそうだけど、この人は物語のなかでミステリを小道具として使ってるんだよね。本格ミステリとしての一面がしっかりしてるから、ミステリのジャンルに入れられるのはわかるけど、同じくらいに青春小説としても成功してる。たんなる本格ミステリじゃない、たんなる青春小説じゃない、そういう部分が強みなんだろうなと思う。

で、この小説ですが。清涼感のある全体の雰囲気もいいのだが、なんといっても主人公で謎解き役の守屋のキャラクターがいいと思う。クールを装いつつ、意外に鈍感だったりバレッタ買ってあげたりさ、ほころび出る素の一面が好感度高い。そしてユーゴスラビアに行こうとする、若さ故のその甘ちゃんぶりが、とてもリアリティーある。
ラストも切なくて良かったです。

さて次は何を読もうかな。