ルート350(古川日出男)★★★★★
- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/04/18
- メディア: 単行本
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現実と幻想、真実と虚構、過去と現在と未来ーーーすべてを飲み込み構築され、疾走する新たな物語たち。日本文学の最先端にいるのは、やはりこの人かもしれない。
少女のあこがれと少年の幻想が交錯する東京ディズニーランド「カノン」、取り残された3人の少女とハムスターが小さな家の中で壮大な音楽を奏でる「お前のことは忘れていないよバッハ」、離婚したての男と死んだ振りをする少女の小さな旅「飲み物はいるかい」、入学早々に入院することになった男の子の友達探し「ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」…この4編はシンプルだけど切なくて、好みです。
あと、いくつかの物語で構成される「物語卵」のなかのバードマンの話も好きだし、『サウンドトラック』の疾走感を思い出す子供たちの闘いの物語「メロウ」もいい。
どれもこれも古川日出男ならではの味わい。面白かったです。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)(米澤穂信)★★★★★
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/02
- メディア: 単行本
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一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかにー。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。
他の作品もそうだけど、この人は物語のなかでミステリを小道具として使ってるんだよね。本格ミステリとしての一面がしっかりしてるから、ミステリのジャンルに入れられるのはわかるけど、同じくらいに青春小説としても成功してる。たんなる本格ミステリじゃない、たんなる青春小説じゃない、そういう部分が強みなんだろうなと思う。
で、この小説ですが。清涼感のある全体の雰囲気もいいのだが、なんといっても主人公で謎解き役の守屋のキャラクターがいいと思う。クールを装いつつ、意外に鈍感だったりバレッタ買ってあげたりさ、ほころび出る素の一面が好感度高い。そしてユーゴスラビアに行こうとする、若さ故のその甘ちゃんぶりが、とてもリアリティーある。
ラストも切なくて良かったです。
さて次は何を読もうかな。