クドリャフカの順番―「十文字」事件(米澤穂信)★★★★★

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

出会えるのをずっと待ってた作品ではあるけど、いざ本屋で見つけると少し悲しくなった。これでこの人の作品の未読本はなくなるのか……。
古典部シリーズ最新作です。
ついに文化祭。ちょっと問題を抱えつつも文集を出すことが出来た古典部福部里志は存分に文化祭を堪能、伊原摩耶花は掛け持ちの漫研のほうで頭が痛く、千反田えるは慣れぬ営業活動で大わらわ、そして折木奉太郎は……店番。時を同じくして学園内で奇妙な連続盗難事件が起こっていた。わざわざ犯行声明を残すその事件に、やはり千反田があのひと言……。
うん、今回も良かったな。というか、巻を重ねていくごとにこの4人の親密度が高まっていくようで、それが楽しいのかも。ほのかに見え隠れする恋愛感情も気になるし。謎そのものに関しては第一作の『氷菓』がほろ苦くて一番好きなんだけど、わくわくするプロセスや鮮やかな幕引きなど、全体のバランスでは3作の中でこれが一番いい。あちらこちらにシーンは飛ぶのだけど、どれもきちんと伏線になってるし。それに4人はまったく違う意図でそれぞれ行動してるのに(奉太郎に至っては行動すらしてない)、事件に関する様々な情報を得て集まるあたり、まさに「チーム」ってかんじで読んでいて楽しかった。あと、小麦粉の件は良かった。ウッカリ惚れそうです。
というわけで次作もめちゃくちゃ楽しみです。

フランケンシュタインの方程式―梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇 (ハヤカワ文庫JA)(梶尾真治)★★★★

これで梶尾真治の短編傑作選三冊は制覇です。この人の短編は読みやすいから、息抜きに読むのにぴったりですね。


酸素の代わりに味噌を積んでしまったある宇宙貨物船の悲劇(喜劇?)「フランケンシュタインの方程式」…笑えるけど、怖いです。
古タイヤを捨てにいくトラック運転手が日本式ドラキュラに出会う「干し岩」…このラーメン屋だけはお断りだ。
宇宙船の修理のため立ち寄った見知らぬ星で、その星を牛耳る怪物と対決する「宇宙船<仰天>号の冒険」…小さなお世話はもちろん大きな迷惑です。
無謀な候補者・マーちゃんとその選挙戦を手伝うことになった主人公のひと夏「泣き婆伝説」…ひたすら楽しいドタバタな日々。
突然日本で爆発的に広まる<死の病原体>、それを中和するのはアルコールだけ?「ノストラダムス病原体」…わたしは生き残れると思います。
腕のいいコックたちが翻訳者になる宇宙人とのコンタクト「地球はプレイン・ヨーグルト」…ライトタッチだけどちょっと残酷な結末。


というわけで今回も楽しかい時間を過ごさせてもらいました。
でもやっぱ一番好きなのは<ノスタルジー篇>かな。読んだのはもう一年くらい前になる<ロマンティック編>もすごく良かったけど。この<ドタバタ編>は一番気楽に楽しめる作品だったかな。ま、この選集はとても良かったってことですね。他の作品もゆっくり制覇していきたい。