秋の四重奏 (lettres)(バーバラ・ピム)★★★★☆

秋の四重奏 (lettres)

秋の四重奏 (lettres)

訳者あとがきより…

バーバラ・ピムの名は、わが国ではほとんど知られていないと思うが、イギリスでは、十九世紀のオースティンに似て、温厚な表現に辛辣冷徹な人生批評をこめた味わい深い小説を書く作家として、文藝通のあいだでは知られている。

らしい。もちろんわたしは初めてだ。

舞台はロンドン、なんだかやたらヒマそうな部署で4人の定年間際の男女が働いている。その4人ーレティ、マーシャ、ノーマン、エドウィンはみな一人暮らしで家族もロンドンにはいない孤独な生活を送っているが、友達というわけではない。先に定年となったレティはみるみる老い、マーシャはなんとか新たな人生に馴染もうとしていた。お互い気にはなっているのだが、なかなか接触しない4人……。
とくに何が起こるわけでもない。4人4様の「老い」と「孤独」がありのままに描かれる。でも読んでいて辛くなるとか年をとるのが怖くなるとか、そういうことは一切ない。なんでだろうな。不思議だけど自然に受け止められる。おせっかいな他人にイライラしたり、友人を妬んだり、遠慮したり、逆にかまいたくなったり、小さな恋心が芽生えたりして、飽きもせず繰り返しやってくる感情の揺れは人生が続く限りずっと。年をとれば人間丸くなるなんてこともなく、逆に意固地になったりして。
この作品で描かれる、未婚もしくは死別によって家族のいない老人たちの生活というのは、その人間関係においてとても現代的なリアリティーがある。長年ともに働いてきた同僚でも、退職すれば会うこともなくなり、お互いの境遇は知っているからこそ気にはなるが、ちょっとした親切心が相手の迷惑となることも考慮したりして。老人扱いされれば腹を立て、やたら訪れてくるソーシャルワーカーの存在がうとましい。でも自分が同じ立場に立てばたぶん似たようなことを思うだろうと、共感してしまう。
物語に刻まれる静かな時の流れは、ときにユーモラスで、ときに残酷なほどにストレート。でも心地いい、不思議な読後感だった。

のだめカンタービレがドラマ化正式発表!


ちょっと前にTBSでドラマ化の話が出たのですが、ネットの噂ではどうやらジャニさんと放送局(もしくは原作者側)とのあいだで主題歌をめぐって折り合いがつかなかったらしくポシャってしまったと。そこをフジがさらっていったようですね。
のだめ役は変わらず上野樹里、千秋役はTBSのときは岡田准一だったのが玉木宏に。玉木宏は三枚目のイメージが強いけど、クールな天才肌の千秋をどう演じるかはちょっと興味ある。髪は黒にはしてくれないのかなぁ。のだめは……わかんないけどたぶん上野樹里で正解なんだろうな。他にあの年代でこの微妙なキャラにハマりそうな女優さん思いつかないもの。しかし瑛太が峰か……。瑛太ってコミカルな役を見たことがないからわからないけど、はっちゃけてくれたらいいなぁ。一方で深く納得できたのがシュトレーゼマン=竹中直人でしょう。キャラの濃さが原作を凌駕してる気がしなくもないけど、ちょっと未知数な若手役者だらけのコメディドラマにおいては重鎮になるのではないかと。ホントそういう意味では脇にコメディもこなせる大人の役者さんたちが揃ってくれればいいなと思う。
原作大ファンだけど、このドラマ化はちょっと楽しみ。できたら思いっきりコメディに徹してくれたらいいと思う。