真実真正日記(町田康)★★★★★

真実真正日記

真実真正日記

町田康の新刊ですよ。当然ですが、仕事とかゴミ出しとかほかの何より、優先して読むのです。

 僕は作家だ。
 自分や世界の秘密を種に文章を書くのが稼業だ。
 世間の人は本当の事を知りたがり、世の中には本当風のことが溢れている。でもそれらは全部嘘、単純なストーリーだ。人々は本当に本当のことは知りたがらない。なぜなら本当のことは疲れるし、本当の本当のことは誰にも分からないから。
 でも僕はそれがただのストーリーだと知りながら、「これは本当のことです」と小首を傾げ、無垢な子犬のような瞳で言うのを潔しとしなかった。だから、「これは嘘ですよ」と看板を掲げて一生懸命書いた。
 書いたら、「あいつは嘘つきだ」と罵倒された。
 別に罵倒されてもかまわない。なぜなら僕は作家だから。ただ少し疲れた。我と我が嘘に疲れ果てた。たまには本当のことを書きたいと思った。
 でもそれは無理だ。本当のことなんて僕には分からないし、だからといっていまさら、「これは本当のことです。みなさん信じてください」と嘘を言うことはできない。
 だから日記を書こうと思った。
 本当のことではないかも知れないが、その日あったこと、その日会った人、自分が見たり聞いたりしたことをただ書いてみたくなったのだ。フィクションに疲れたマイナー作家のささやかな休暇として。


これは今ひとつ売れてない作家の日記である。執筆中の小説は収拾がつかないほどにえらいことになり、お遊びで始めたバンドがボーカルの魅力によってのみうあたら注目されバンド内は不協和音、作家仲間と共同で出店したバーにまともな人は寄り付かず、アパートの隣の部屋の奥さんとのありもしない関係がご近所のウワサとなり……。


う〜ん。もう下手なことは言わない方がいいだろう。町田康が好きならさっさと読んどけ。自信持って言えるが、後悔はさせません。町田康は天性の小説家。かつ職人芸あり。そう確信させられる一作であります。本作においては「芸」を鑑賞させていただいたようなかんじです。一生ついていきたいのです。

のだめカンタービレ Lesson4〜キス成るか!? 感動の定期演奏会バトル!!〜

回が進むにつれ、玉木宏の千秋がけっこういいなと思うようになってきました。オレ様のくせに振り回されやすい、そんなキャラを見事に演じてる気がします。
今回は「コタツ」と「Sオケ初舞台」ですね。「コタツ」のエピソードはカットされるものだとばかり思ってましたが、ここへ来て上手く絡めてきました。本当にこのドラマは、原作に忠実に、しかもドラマ用に上手く再構築されてる。
そして清良役の水川あさみが格好いい! 「指揮者が辛いときに支えてあげる、それもコンマスの仕事だと思う」みたいなことを峰にアドバイスしてあげるシーンとか、すごく良かった。原作とはポジションが違うので、清良の出演シーンはほぼドラマオリジナルなのだけど好感度高いよ。設定が違うので比べると悪いけど、峰との恋は原作ではやや唐突に感じたけど、このドラマの運びかたではとてもスムーズな感じになりそう。というわけで清良&峰に今後も注目です。
そして感動したのは「プリごろ太」のアニメ!……まさかあんなに真剣につくってあるとは……。また今回はのだめのピアノシーンもあって満足。千秋にSオケは「のだめ」だと気付かせるシーンですね。できたら「雷に打たれたのはオレだった」という心の声も入れてほしかったですが。


そして今回、最大の見せ場は定期演奏会。
これは本当に良かった。今後演奏会のシーンは多いと思うんで、この最初の演奏会はキモだと思ってたんですよ。演奏会シーンの出来いかんによってドラマ全体の評価も変わるだろうと。そんなキモとなるシーンが素晴らしかった! 嬉しさをかみ殺したような表情で指揮する千秋。そしてオケメンバーたちのあのパフォーマンス。原作ではヴァイオリンだけでしたが、ドラマ版では管弦全員参加でしたね。トランペット隊のあのパフォーマンスはちょっと「スウィングガールズ」を思い出しました。でもさすがにコントラバスのアレは難しそうだけど……。でも本当に良くて、客席ののだめちゃんのようにちょっとウルっとしながら見入ってしまいました。

ちなみにわたし、SオケTシャツ持ってます……。


次回は文化祭ですね。「ラプソディー・イン・ブルー」&「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第二番」&マングースというわけで、またしても盛り上がりそうです。