猫を償うに猫をもってせよ

2016-06-30 このエントリーを含むブックマーク

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1262079657

 太宰治の「緒方氏を殺した者」の「緒方氏」が誰だか分からなくて訊いたら答えるほうも分からなかったという「知恵遅れ」の本領発揮である。

 「僕は、はじめ尾形亀之助を考えました。しかし、そうなると、太宰の『もの思う葦』とは時間差が出てきます。」の『もの思う葦』との時間差って何のことだ。『もの思う葦』などという単行本は太宰の生前には出ていない。もしかして1935年に『日本浪曼派』に連載された時のことを言っているのか?

 この文章は、1938年8月『日本浪曼派』に載った緒方隆士の追悼文の一つである。

https://kotobank.jp/word/%E7%B7%92%E6%96%B9+%E9%9A%86%E5%A3%AB-1641058

 全集を見れば書いてあることだが、「学者に聞いても首を傾げるかもしれません」って怖いね。

2016-06-23 このエントリーを含むブックマーク

 栗原康の伊藤野枝の本が売れているらしい。私は伊藤野枝が好きなので、野枝の伝記が広く読まれるのは歓迎である。まあ破天荒な文章だが、著者は経済的基盤はよくなさそうなので売れてよいことだ。しかし岩波でよく「白痴」を認めたものだ。シナはダメだが白痴はいいのか。

 だが木村荘太については言っておきたい。栗原は、木村が友人らと、あの女を落とせるか賭けをしたなどと書いているが、それはありえんだろう。だって友人らと話したなら、野枝に辻潤がいることくらい分かってしまう。『魔の宴』を読んだって「牽引」を読んだって、荘太は野枝の文章を読んで感激して会いに行ったらけっこう美人だったので本気で惚れたのである。どこから出た話か知らないが、ちゃんと『魔の宴』と「牽引」(http://homepage2.nifty.com/akoyano/documents/kenin.pdf これは私のウェブサイトにある)を読んだのか。

2016-06-22 このエントリーを含むブックマーク

斎藤美奈子は『趣味は読書』(2003)で、普段から本を読んでいる人などというのは、国民のごく少数派なのだと書いていて、私は目ウロコで、それ以来、百万部売れても日本人全体の一パーセントだと言い続けている。

 ところがその斎藤が『週刊朝日』で柄谷の『憲法の無意識』を評して、憲法関連の本が売れているがこれも国民の無意識かなどと書いている。樋口と小林節の本が六万部とかあったが、そりゃ国民の0.06パーセントでしかないのである。『カエルの楽園』は二十万部超えている。

 駿馬も老いては駑馬に劣るか。

2016-06-18 このエントリーを含むブックマーク

 一か月ほど前に届いたシンポジウム記録『ポストモダンを超えて』のあとがきで、編者の三浦雅士は、チョムスキーについて、ヒト誕生から十万年で言語の獲得などという進化論的突然変異が起こるのはおかしいと書いていて、むしろマイケル・トマセロらの仮説のほうが説得的だと書いていたのだが、先日の「毎日新聞」の、チョムスキーへのインタビューの書評では、ほぼチョムスキーに軍配をあげた形で、六万年前の突然変異を紹介している。

 しかし突然変異は、集団に起こるものではなく個体に起こるものだから、チョムスキーは同書で、その個体の子孫が言語を獲得し、出アフリカを起こしたのだと言う。すると、突然変異を起こさなかったほかの人類は、要するに滅びてしまった、ということでいいのだろうか。

2016-06-17 このエントリーを含むブックマーク

ツイッターでどこかの学者らしい人が書いていた、子供向け伝記なのに野口英世の濫費を描いたものというのは、福和すみえ『この人を見よ!歴史をつくった人びと伝 野口英世』(ポプラ社、2009)であろう。なお表紙の著者は「プロジェクト新・偉人伝」で、福和の名は奥付に小さく出ているだけである。

 「花の東京へ! めくるめく青春の日々」の章で、

 しかし、このあたりから清作の生活に変化が出てくるのです。

 始まりは、試験が終わってホッとし、ついネオンに目が行ったことでした。吸いこまれるように入った店では、夢のようなひとときが待っていました。初めて会う清作にやさしくしてくれるお姉さん。グラスに入ったお酒。(略)それからのことは…・・・、あまり覚えていません。気づけば下宿に転がっていました。ガンガンする頭で財布をのぞくと、なんとカラっぽ。

 というあたりだろう。