妙な癖にどうやって気づくか?


 人は誰しも、ってのを持ってると思うんだ。すぐ舌打ちしちゃうとか、貧乏揺すりとかそういうののことだよ。もちろん、話しだすときは前後の文脈に関わらず必ず「逆に」って言うみたいな口癖とか、何かの説明をするときには必ず人差し指を顔の前に立てるみたいな仕草の癖とか、食事のときに食べる順番が決まってるとか、寝る前には必ず空を見上げるなど癖というより習性みたいなものも含めね。で、そういう癖ってのには、自覚があるもの自覚がないものがあると思うんだ。わかっちゃいるけどやめられないって癖と、そもそも俺そんなことやってるかな、って癖とね。



 でね、今日僕は、ある知り合いに、癖を指摘してやる場面があったんだよ。そいつは、喋るとき、語尾に「っつー」みたいな、なんかの音漏れみたいな妙な音を発するんだよね、出会ったときから。結構あからさまに言ってて、耳障りだから、それやめてくんないかな、って指摘してやったんだよ。僕がね。多分、僕が言わないと誰も言わないだろうなと思ったし、それは普通に聞いてて、笑っちゃうくらい特徴的だけど、毎日毎日やられるから、けっこう腹が立ってきてたってこともあるけどね。


 するとね、そいつは、「俺、そんなこと言ってますかね!?」と、いきなり卵でもぶつけられたような顔つきになって、かなり驚いてるようだったんだよね。なんだ、こいつは自覚がないのかよって、驚いたことにかけては、僕も負けてはいないくらいだったけどね。てか、どこにいても聞こえてるくらい口癖だから、今まで誰からも指摘されたことがないのが不思議でしょうがないんだけど、彼はそんなことははじめて言われとかで、その後もずっと、「俺、そんな気持ち悪いこと言ってんのかっつー」、みたいなことをぶつぶつ言いながらも、あしたのジョーの最後のシーンみたいにうなだれてたよ。


 でね、僕が思ったのはね、まあ「癖」っちゅーもんは、確かに本人が気づかないこともあるだろうけど、まわりの誰も指摘しないってのが一番醜いことなんだろうなってことだね。だからね、彼に対しても、変な癖を持ってることよりも、そんなあからさまでみっともない癖を指摘してくれる友達がこれまでいなかったことに同情しちまったね。つまりさ、悪ふざけで自分の物真似をされて、その癖や特徴を笑いのネタにされるってのも必要なことなんだってことだよ。そうやって、指摘してくれる仲間がいて、いざという場面というか、フォーマルな場所で笑い者にならないように自分を微調整することって、地味に大切なんだなって。


 だからさ、君も、親しい友人からおもしろおかしく自分の物真似とかされても、傷つくことはないんだよ。笑ってればいいんだよ、その場ではね。それを受け入れて、それ以外の場で笑られないことが重要なんだよね。