会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」
- 作者: 冨山和彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/07/13
- メディア: 単行本
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あなたの会社のよりよい未来のために
「再生の修羅場からの提言」
本書自体はかなり平易に書かれているが、最低限の知識は前提になっていると思う。より正確には知識の有無ではなく、経営やリーダーシップについて考えたことがあるかどうかという点で、やはりある程度困ったり、学んだりしたことがないと話の中身がピンと来ないだろう。そういう意味で、一冊目に読む本ではないかもしれないが、でも、読んで損は無いと思う。
一人の人間も、組織もインセンティブと性格に支配されているという現実を理解し、それをうまく整えるのが経営者(リーダー)の仕事だ、と書くと簡単に見えるが、これがシビアな現場から得たエッセンスを交えて説明されると強力な説得力を持ってくる。本書が説く内容は決して複雑なものではなく、極論すれば、上述の一文に尽きる。経営者は整えるための最終責任を負うものであり、インセンティブ設定を誤った組織はおかしなことになるものであり、PDCAの実施が難しいのもまたインセンティブ設定の問題であり、組織の強みが衰退を招くのもインセンティブが狂うからであり、変革を妨げるのもまた同じである。
以下は、個人的に興味深かった部分の拾い出し。
- 最近心配しているのは、景気の回復と共に、またぞろ旧来のシステムの復活議論が出始めていることだ。(p.70)
- ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの組み合わせは、まさに日本独自のものであった。しかし、それが変革を妨げてしまった。
- 会社はそもそも人間様がより幸せになるための単なる手段にすぎない。法人の仕組みというのは、人類がこれまで編み出してきた、人間が幸せになるための方法の一つにすぎないのである。いちばん都合のいいような会社にすればいいだけのことなのだ。ところが、みんなが会社という道具の奴隷になってしまった。(p.77)
- ガバナンス機構の究極的な役割は、経営者が適性かどうかの判断のみ(p.146) 経営というのは、基本的に自由裁量行為である。(p.147)
- 高学歴者に雇用保障などいらない
読み終わってふと思いついたのが、梅田望夫の論説。あれを本書に当てはめると、「自分をライフハックして、自分の性格にあったインセンティブと目標に自分で書き換えてしまえ。そのための道具も、そのあとやっていくための材料も、いまならウェブで手に入るのだから」ということにでもなるだろうか。インセンティブを書き換えるのは確かに楽な話ではないが、一方で、対象が自分一人ということであればリーダーや経営者に求められる難易度よりはかなり低くできそうだ。
二人が直接話したらどうなるのかな、などと想像してみた。梅田さんは年上の人には会わないという主義だけど、本書の冨山さんとどっちが上だろうかと思ったらお二人とも1960年生まれ。ついでに言うと、「転落の歴史に何を見るか」の斎藤健氏が59年生まれ。これは、多分偶然ではないのだろうな。