「おもしろい」のゲームデザイン
- 作者: Raph Koster,酒井皇治
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2005/12/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ちなみに英語版wikipediaのラフ・コスターのページにご尊顔がありますが、一見スパタ斎藤かとも。
本書は様々な内容を含んでいますので、きちんとした研究・紹介は専門の人に任せる(定義論とか、倫理とか、社会との関係とか)として個人的におもしろいと思った点をいくつか。
ゲームの面白さとは
ゲームから得られるおもしろさは、達成感から得られるものです。そしてそれは会得したという事実からもたらされます。それは、ゲームをおもしろくするパズルを解く行為そのものなのです。(p.44)
「おもしろさ(fun)」とは、課題を精神的に習得する行為を指します。(p.98)
おもしろさはフローではありません。数え切れないほどの活動の中にフローを見つけることができますが、必ずしもそれらのすべてがおもしろいわけではありません。フローを引き合いに出す典型的な例のほとんどが、習熟のための練習に関するものであって、学習に関連しているものではありません。(pp.106-107)
おもしろさとは、抑圧が存在しない状況下で学ぶことに関連していて、おもしろさこそ、ゲームが重要であるという理由になるのです。(p.107)
充分熟達している活動にのめり込み、その領域の中に入り込んで、フローを感じるようになることは、うきうきするような経験でもあります。そして誰も瞑想の肯定的な効果を否定できる人はいないでしょう。いうなれば、プレイヤーは自分が強いと感じたいだけの理由から、もう完全に熟達してしまったゲームばかりを繰り返し選んでは遊ぼうとするなら、それこそ、そのゲームが目的を欺いていることにほかなりません。(p.148)
コスター氏の理論は、「Fun = Learning」と言われることもあります。その部分こそがゲームのおもしろさだと言っています。興味深いのは、ゲームから得られる高揚感や満足感などには、「Fun = Learning」以外のものもあることも認めているところです。しかし、氏はそれはゲームにとって重要なもの「Fun」ではない、という考えをとっているようです。
どんなゲームを作るべきか
今日、もっとも普遍的に必要とされる技術が何なのか考えてみるのもいいでしょう。ゲームを、そういった技術を教える方向に進歩させるべきなのです。(p.72)
節約や資源管理や兵站や交渉といったゲームのあらゆる分野に存在しています。なんであるにしろ疑問なのは、最も人気のあるゲームが、今となっては廃れてしまった技術を教えるものであるのに対して、微妙な技術を伝える、ずっと洗練されたゲームがあまり流行らないのはなぜなのか、という点でしょう。(p.79)
プレイヤーに何も技術を求めないのは、ゲームを設計するに辺り、根源的な罪と見なされるべきです。それと同時に、ゲームを設計する者達は、そのゲームがあまりに多くの技術を要求しないように注意を払う必要があります。(p.136)
ゲームが異なれば、別種の性格に訴えかけるものなのですが、これは特定の問題が、ある決まった種類の脳に訴えかけるからだけではないのです。それは特定の解決策が、ある決まった種類の脳に訴えるからでもあり、それでうまくいったら、それを変えたがらないからでもあるわけです。これは、私たちの回りで絶えず変化し続ける世界において、長期間にわたり成功を収められる方法とは言えません。(p.146)
「Fun = Learning」という立場からは、当然何を「Learn」するべきかという問題が出てきます。それは現在、そして将来の人にとって重要な技術であるべきだというのが氏の立場です。
個人的にはこういう発想は、すぐに「シリアスゲーム、マンセー!」に繋がるので嫌いなのですが、題材やモデルや方法論を従来の枠組みよりも広く求めるべきだというところに異存はありません。
最後の引用部は、TRPGとかだとありがちなんですよね。ただ、「更なる高みを目指す」のと「怠惰な反復」との間は結構微妙だったりしますが。
ゲームと物語
ゲームはこういった種類の本質を見抜く理解力を磨く助けになります。ゲームがそこに含まれるパターンを教えるものである以上、プレイヤーが、そういったパターンを覆い隠している虚構の物語を無視するように訓練してくれるのです。(p.89)
物語を読むためにゲームをやっているわけではないのです。ゲームを包み込んだ物語は普通、脳に与える添え物でしかありません。(p.94)
ゲームが一般的に権力や支配と言った、その他多くの原始的な事柄に関連しているため、採用される物語も同じような傾向に陥りがちなのです。これはすなわち、そういった物語が、力への幻想(あるいは、武力のファンタジー)に他ならないことを意味しています。その手のものは、一般的にかなり幼稚な物語とみなされています。(p.94)
氏は作家としての訓練を受けているためか、ゲームで使われる物語の質の低さにはかなりご不満のようです。
ただ、私は、添え物だろうと、幼稚だろうと、Learningの対象となるならばFunであり、ゲームとして楽しむ価値が存在すると考えます。
TRPGで「物語性」を声高に主張する人の意見が聞いてみたい部分でもあります。
補足
本書の専用ページというのが http://www.theoryoffun.com/ にあります。原書(英語)の他、日中韓の3カ国語に訳されているらしいです。中国語版の装丁がゲームソフトのようだったり、韓国語版が一番技術書っぽかったりするのが面白い。
本書の翻訳の質はあまり高くないように感じました。何カ所か意味不明な文がありましたし、GTAの訳注が
「グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)」は神奈川県で有害図書(コンピュータゲーム)に指定されている自動車ゲームです(p.271)
となっているところからして、訳者はあまりゲームにも詳しくないのかもしれません。
ロール&ロール 55号
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2009/04/10
- メディア: 大型本
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「ドミニオン」のリプレイ記事が巻頭フルカラーで4ページ。結構注目されているのかな。他に、コズミック・エンカウンターとクトゥルフカードゲームの発売(今秋予定)告知が出ていた。
ドミニオン
[rakuten:amiami:10089256:detail]
ここの紹介が良く書けているので、http://b2fgames.com/article.php?story=Dominion 是非、全文を御覧下さい。
マジックが普及させた概念の中に、「ルールをカードに書くことで、基本ルールを少なくする」、「使用するカードを選択することで、自軍の潜在的能力・弱点を作り込む」というのがある。それが見事にドミニオンには結実している。
ドミニオンの基本ルールは極めてシンプルである。
- アクションフェイズ 手札の中からアクションカードを1枚選択し、実行してよい
- 購入フェイズ 資金の制限の許す範囲でカードを1枚購入して良い
- クリーンアップフェイズ 使用したカードと手札の残りを捨て札に置き、山札から5枚カードを引く
これだけ。
但し、アクションカードにはそれぞれ個別のルールが記述されており、アクションを追加したり、カードを引いたり、購入フェイズで利用できるコインを得たり、購入数を増やしたり、その他色々なことができるようになっている。
だから、どのようなカードをどのような順番で追加していくのかを考えながらカードを購入し、出来上がったデッキをプレイしながらデッキの更新を行うことになる。
そしてプレイのバリエーションは、このアクションカードの種類によって決まる。セットには25種類のカードが10枚ずつ入っている。この中から10種類を選ぶ。事実上組み合わせは無限というわけだ。
マジックと違って、ゲーム中、デッキ内容は常に変動し続ける。5回ほど軽くプレイしてみただけだが、カードの引きの問題もあり、うまくバランスを取るのはかなり難しい。しかも、実際には他のプレイヤーとの競争関係を見ながら微調整が必要になってくる。
ルールはすぐに憶えられる。最初は面白そうなコンボを目指してデッキを組み上げていけばよいだろう。それは上手くいったりいかなかったりするだろうが、どこかで勝利得点競争が始まりその後数ターンで収束する。
1ゲームは30分弱で終わるから、何度か繰り返せばよい。そこが多分楽しくなると思う。
方針を立てて、それが普通に運用できているときは、ものすごいスピードでプレイが進む。悩み出したときに、どの程度の長考を認めるかはプレイ前に話し合っておくのが良いかもしれない。
ロボットプレイ
今回は「最初のゲーム」セットで練習してみたのですが、練習用のロボットプレイヤールールをちょこっと考えてみた。
- アクションフェイズ 以下の優先度で、プレイを行う
- 鉱山
- 鍛冶屋
- 民兵
- 購入フェイズ 以下の優先度で購入を行う。(基本的に高い順)
- 属州
- 金貨
- 鉱山(但し、最大で2枚まで)
- 鍛冶屋(但し、最大で属州カードと同じ枚数まで)
- 民兵(但し、最大で2枚まで)
- 銀貨
- 銅貨
- 民兵カードで攻撃されたときの捨てる順番
- 屋敷、属州、重複しているアクションカード、民兵、鉱山、銅貨、銀貨、金貨、鍛冶屋
ほぼ自動的に金を貯め込んで、ある程度貯まると属州をどんどん買っていくという方法です。(ロール&ロール55号の、ぎぐる氏のプレイを読んでいて思いついた。) 練習用には悪くないかと。(というか、思いついたあとの最初のプレイでロボットに負けた情けない私)