予想方式の重勝式

前回のエントリでランダム方式の重勝式について述べたが、今度は予想した目を指定できる方式について考える。現在アナウンスされているのは、単勝を複数レースにわたって当てる方式で、立川で3重勝と5重勝の2方式、平塚で7重勝である。立川5重勝と平塚7重勝はキャリーオーバーがある。

期待される回収率

キャリーオーバーがvc票分あって売上がv票で、ある目fの投票数がv[f]であるとき、目fの配当倍率は、(vc+0.75*v)/v[f]となる。仮りに目fが出現する確率がp[f]であるとすると、目fの投票券の期待される回収率Eは、E=p[f] * (vc+0.75*v)/v[f]となる。当然ながら確率p[f]の値は正確に分からないが、p[f]=v[f]/vとして考える。近似的に成り立つことは明らかだろう。そうすると、期待回収率は、E=v[f]/v*(vc+0.75*v)/v[f]から、

E = 0.75 + vc / v

となる。追記(2008-04-17): この式は間違っており、もっと低い回収率になります。後日訂正のエントリを書きます。追記(2008-04-20): 訂正のエントリを書きました。http://d.hatena.ne.jp/k-zakko/20080420/p1

vc=0、すなわちキャリーオーバーが無ければ、E=0.75で、これは控除率が25%であることを端的に表している。キャリーオーバーがあれば項vc/vが付加され、実質的に控除率を引き下げていることになる。vc/vがどれくらいの値になるかは実際の発売を待って確認する必要があるが、期待回収率において従来の賭け式と比べて有利である。

的中率の予測

3重勝はともかく、5,7重勝となると当てるのが非常にむずかしいと思えるが、それがどの位の確率なのか概算で見積もってみよう。

あるレースにおいてある選手が1着になる目安として、単勝の人気を見るのが妥当だが、競輪では現在単勝は売られてない。そこで、2車単のオッズから1着で売れている票の割合を算出してその占有率で順位付けしてみる。2007年のデータを手元で集計すると*1、2車単の1着で売れる占有率第n位が1着になる確率は、

表1
占有率順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位
勝率(%) 37.435 21.519 14.202 9.730 6.969 4.696 2.795 1.814 0.840

となった。大雑把に全レースが上表の確率に従うとする。n重勝において全てのレースで占有率1位の目の的中率は、(37.435%)^nとなる。計算すると、

3重勝 5重勝 7重勝
的中率(%) 5.2461 0.7352 0.1030

電子競輪新聞平成18年 1月〜12月 全レースの配当分析によれば、2車単、3連単の1番人気の的中率はそれぞれ、16.484%、6.808%である。3重勝3連単と同じ位で、5重勝、特に7重勝3連単と比べてかなり低い。1番人気が1000回に1回ぐらいしか来ない。

予測的中率の累積和

単勝のn重勝の目は9^n通りあり、それぞれの目について表1に従って的中率を計算し高い順に並べる。これの累積和を上位1000位までプロットすると下図になる。

グラフは順位1位からn位までの目を買ったときの的中率を表している。当たりやすい順に100点1枚づつ買うと5重勝なら約17%、7重勝なら約3%当たると推定できる。7重勝はやはり当たりにくくて、10%の的中率を得るには上位760点を買わないといけない。

コメント

キャリーオーバーがあるときは実質的に控除率が低くなるので、期待回収率において従来の賭け式より有利である。また、「予想能力のある者にとって、選択できる目が多い程有利になる」*2との説があり、この点からも重勝式は有望だ。しかし、的中率が非常に低いことと実施数が少ないことから、リスク(期待されるリターンの分散)が大きくそれを制御するのは非常に難しいだろう。

*1:全レースの約92%のレースを調べたもの

*2:この理論は別エントリで取り上げる予定