梶ピエールの備忘録。 RSSフィード

2017-01-01

[][]新刊のお知らせ

 このたび、ちくま新書より、『日本と中国経済―相互交流と衝突の100年』という本を出版することになりました。

 来週から書店に並ぶ予定です。表紙カバーのコピー、および目次は以下の通りです。

 日中関係に付きまとうもどかしさ。それは、「経済関係が良好でも、どこかで「政治」が邪魔をする」一方、「政治的な関係が悪化しても、「経済」のつながりはなくならない」ところにある。この構図は最近になってはじまったわけではなく、近代以降の両国の交渉において何度となく繰り返されてきたのである。日本(人)は中国(人)をどのように理解し、付き合ってきたのか。経済関係を軸に政治・社会状況の考察を織り交ぜながら、一筋縄ではいかない両国関係の本質を解き明かす。

第一章 戦前の労使対立とナショナリズム

1 中国の近代化とナショナリズム

2 近代中国経済が不安定な理由

3 在華紡のストライキの背景

4 在中日本人のなかの捻じれ

第二章 統一する中国を日本はどう理解したか

1 国民政府の成立と日本の焦り

2 満州事変以降の路線対立

3 経済成長する中国への態度

第三章  日中開戦と総力戦の果てに

1 日中戦争の開始と通貨戦争の敗北、

2 「総力戦」がもたらしたもの

3 日本の敗戦と国民政府の経済失政

第四章 毛沢東時代の揺れ動く日中関係

1 中華人民共和国の経済建設

2 「政経分離」と「政経不可分」との対立

3 文化大革命期の民間貿易

4 国交回復に向けて

第五章 日中蜜月の時代とその陰り

1 市場経済へと舵を切る中国

2 緊密になる日中経済と対中ODA

3 天安門事件による対中感情の動き

4 「日中蜜月の時代」の背景

第六章 中国経済の「不確実性」をめぐって

1 さらなる市場化へ

2 経済的相互依存関係の深まり

3 中国共産党と反日ナショナリズム

4 中国経済はリスクか、チャンスか?

終章 過去から何を学び、どう未来につなげるか

2016-12-04

[][]お仕事のお知らせ

 12月5日(月)発売の、『週刊東洋経済』12月10日号のコラム「中国動態」に、「『創客(メイカー)』は中国経済を変えられるか」という記事を寄稿しました。先日訪問した深圳市のメイカ―・フェアと中国におけるイノベーションの可能性について書いています。

2016-11-27

[][]いただきもの


タイム・スリップの断崖で

タイム・スリップの断崖で

 著者よりご恵投いただきました。

 私と著者であるスガ氏とのつながりを意外に感じる方もいらっしゃるかもしれません。昨年、スガ氏がtwitterで拙著『日本と中国、「脱近代」の誘惑 ――アジア的なものを再考する (homo viator)』に好意的に言及していただいていることを知り、昨年末に出た石井知章編『現代中国のリベラリズム思潮 〔1920年代から2015年まで〕』をお送りしたところ、丁寧なお礼の手紙をいただいた、というのがこれまでの経緯です。

 本書はスガ氏が10年ほど前から文芸誌に連載していた時評がベースになっているとのことですが、その中に中国の台頭に関してかなりの記述が割かれており、なるほど、と腑に落ちた次第です。

 本書の記述について、私は必ずしも全面的に賛同するわけではありません。それでも、以下のような記述は、著者の日本を取り巻く現状認識に関する直感的な鋭さを示すものだ、と思います。少なくともこの認識を出発点にしない限り何も始まらないだろう、とかねてより私も考えてきたからです。

 AIIBの設立は、アメリカのヘゲモニーを確実に侵食していくだろうが、それと並行して、ヨーロッパ的普遍主義に代わるパラダイムを「帝国」中国に見出そうとする知的傾向も加速するだろう。しかしそれが、かつて毛沢東主義に希望を見出したヨーロッパ知識人のオリエンタリズムや、戦前日本の「大アジア主義」のヴァリエーションでないという保証は、どこにもない。

(中略)ISが、とにもかくにも欧米の普遍主義によって抑え込まれるほかないのと違って、中国はグローバル資本主義を担うことで、「自由・平等・友愛」というパラダイムを侵食していくだろうからである。

問題を言い換えてみよう。なぜ、60年安保の時は、まだしも「反安保」を言いえたのに、現在は言いえないのか。

 簡単である。かつてはソ連や中国という「社会主義国家」が「平和勢力」として存在した。安保を破棄しても(いや、破棄すればなおさら)、平和は実現されることになる。1960年において、あるいは1968年においてさえ、ソ連や中国は「社会主義」あるいは「平和勢力」というファンタスムの参照先だと信じられていた。

 (中略)しかし、おおむね冷戦体制の崩壊と中国の資本主義化以降と言って良いだろうが、もはやファンタスムは不可能となった。『安倍を倒せ』、『民主主義を守れ』と言っても、それは日米同盟の枠内の出来事でしかありえないのであり、つまりは米国が「平和勢力」なのだ。

2016-11-16

[]いただきもの

 著者の遠藤さんよりご恵投いただきました。変動激しいEU情勢を理解するには最適の一冊かと思います。

2016-11-11

[][]交錯する「山寨のメッカ」と「メイカーの天国」

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 先月下旬(10月22日から25日にかけて)、僕は深圳で行われたメイカー・フェア、それに合わせて行われた著名なメイカー、およびIT企業やベンチャーキャピタルの関係者によるトークショー、HAXのオープンセミナー、および半日しか参加できなかったがニコ技観察会でのNROBOTおよびSeeedなどの企業訪問に参加してきた。詳細な観察記は他の参加者の方に任せるとして、ここでは深センの電子産業の一大集積地と、メイカーズのスタートアップを支援する街という二つの顔を持つ深セン華強北のユニークさについて、改めて考えてみたい。

 さて、このブログの読者であればご存知のように、僕は実際にモノづくりを行っているわけではなく、中国経済のどちらかというとマクロの財政や金融についてみてきた研究者だが、数年前から「山寨携帯」の生産のメッカとしての華強北には関心を持っていた。そこには「中国式イノベーション」の可能性を示すような動きがみられるように思えたからだ。

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