梶ピエールの備忘録。 RSSフィード

2016-06-19

[]出張中に読んだ本(下)+いただきもの

ふしぎな部落問題 (ちくま新書)

ふしぎな部落問題 (ちくま新書)

 

 この本の編集を担当されたちくま新書の橋本さんからお贈りいただきました。実は、この本は中国出張前に買って読んで感銘を受け、感想を書こうと思っているうちにもう一冊送ってもらったという次第です。書くのが遅くなってすみません・・

さて、本書表紙には以下のような本文の一説が引用されています。「差別をなくす過程で、部落をなくすのか、それとも残すのかという課題を、私たちは整理できていないのである。現在起きている様々な問題は、この部落解放運動が抱える根本的矛盾から発生している、と私は考える」ここに、この本のエッセンスともいうべき、根本的なメッセージが込められているように思います。わたしは、このような問題意識をもって被差別部落問題(以下「部落問題」)をわかりやすく、明快な言葉で論じた本が出版されたことは、非常に画期的だと思っています。

 なぜ、上記のような問題意識が画期的なのか。以下、少々まだるっこしいかもしれませんが、自分なりの言葉で言い換えてみたいと思います。

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[][]いただきもの

 慶應義塾大学東アジア研究所からご恵投いただきました。ありがとうございます。

2016-06-15

[][]お仕事のお知らせ

  外務省が出している外交専門誌『外交』のVol.37に、加々美光行著『未完の中国』のブックレヴューを寄稿しています。1.資本主義経済がもたらす物質的繁栄への批判、2.「弱者」による「強者」への抵抗への肩入れ、3.社会変革に働きかける主体的な知識人への志向、という姿勢から一貫して現代中国の諸問題を論じてきた加々美氏。書評では「加々美現代中国論」の意義と問題点をあらためて考えてみました。

未完の中国――課題としての民主化

未完の中国――課題としての民主化

2016-06-14

[]いただきもの

 太田出版の赤井茂樹さん担当のシリーズhomo viatorの新刊です。あれ?今回はあの小さな版型じゃないんですね。

この本の旧版『心脳問題』を昔(赤井さんにお世話になるずっと前です)非常に面白く読んだことがあるので、近年の脳科学の発展を視野に入れた今回の改定版も読むのが楽しみです。


 訳者の安田峰俊さんからご恵投いただきました。ありがとうございます。

2016-06-13

[][]出張中に読んだ本(上)

 

 現代中国について書かれた時論的な性格を持つ書物というのは、私の書いた本も含めてたいてい10年もたてば全く読む価値のない、ごみ箱行きの運命を免れないものがほとんどでしょう。まあ、それでも需要があるから出版されるわけですが。

 しかし、この城山さんの本は間違いなく20年後、30年後にもその価値を失わないで残っていくでしょう。それなりの値段はしますが、中国の民主化や人権問題に関心のある人なら、絶対に買って資料として手元に置いておいたほうがいいと思います。この本が特筆すべきなのは、著者は取材者としていわば黒子に徹していて、あくまでも取材対象となる人権弁護士や社会運動家といった人物、ならびに事実をして自ずから語らしめる、という姿勢が貫かれている点です。これは言うほど簡単なことではありません。たいていの時論的な書物は、自ずから語らしめるほど人物や事実に肉薄することができず、その隙間を自らの薄っぺらい思想や俗論へのおもねりで埋めてしまいがちなものだからです。それに対して本書では一見淡々とした禁欲的な語り口の裏に「何とかしてこの人々の声を日本の読者に届けたい」という著者の取材対象に対する情熱的な思い入れが感じられ、読者はその情熱を媒介にして取材対象となった人々の肉声がよりストレートに感じ取れるようになっています。この本の長きにわたって失われないであろう輝きとは、何よりもそれらの肉声の輝きにほかなりません。

 本書のより具体的な内容については、日経新聞6月12日付の加茂具樹さんによる書評をお読みください(リンクは有料記事ですが)。

2016-06-12

[]深センでのカンファレンス


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 先週の木曜日から久しぶりに深センを訪れ、この土日には以下のカンファレンスに参加してきました。上の写真は会場となった深センにある北京大学(ややこしいですが)のビジネススクールの建物です。全館ガラス張りで、いかにも金がかかっていそうですが、それもそのはずでHSBCがスポンサーになっており、ビジネススクールにもHSBCの名前がついています。

The 2016 China Conference of the Chinese Economists Society

 このChinese Economists Societyは中国経済研究では世界で最も影響力が大きい学会だといっていいと思いますが、その年次大会はいわば「世界中に散らばっているアングロ・チャイニーズ(=英語を自由に操る華人)の経済学者が一堂に会する場」のようになっています。参加したのは今年が初めてですが、会場のどこに行ってもほとんど中国人しかいないのに、ほとんど中国語が聞こえてこず、みんな英語でしゃべり続けている光景はなかなか感慨深いものがありました。日本でも経済学の業界では英語がスタンダードになっているとはいえ、ここまでアングロサクソン流が血肉化している人達(アングロ・ジャパニーズ?)はそうそういないんじゃないかと思います。いや、それが悪いとは全く思いませんが。

 少し前に出た以下の本でも指摘されていましたが、こうしたグローバルに影響力を発揮するアングロ・チャイニーズの存在をどうとらえるのかが、今後の東アジアの動向を考えるうえでも一つのカギになりそうな気がします。その意味では、参加費を払えば誰でも参加できるオープンな学会ですし、もう少し日本からの参加者が増えてもいいように思いました。