阿部昭「全国数百万の学童が数種の『課題図書』に砂糖にたかるアリのごとくむらがっている図を想いうかべて、少々ユーウツになるのである」


未成年・桃 阿部昭短篇選 (講談社文芸文庫)


引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/book/1344276318

10 :吾輩は名無しである:2012/08/07(火) 20:09:30.15

http://www.j-sla.or.jp/kikanshi/

この機関紙の2005年度の6月号「読書感想文 指導上の諸問題」に問題点は出尽くしてる

しかし阿部昭のこの文書は初めて読んだが面白いな。だれか内向の世代スレ立てて。

〈夏休みで毎日子どもが家でゴロゴロしている。テレビにばかりかじりつくので、たまにはタメになる本でも与えようかと、
殊勝なことを思いついた愚妻が本を買ってくる。それを見た私が、「何だそれは?」ときくと、「今年の課題図書よ」と
こともなげな返事である。私、にわかに不愉快になり、敵しがたい思いでだまりこむ。ブルータスよ、おまえもか…。/
私はその本年度全国なんとか課題図書なる児童書の中身を慎重に検討してみたわけではない。いわんやそれらが
どうやって選ばれる仕組かも全然知らない。うすうすしっているのは、毎年夏休みになると課題図書に指定された
数種の本が書店の店頭に山積みされて、とぶように売れてゆくらしいということだけだ。なんのことはない、同じ物書き
の一人として私はその売れ行きをヤッカンでいるだけのことらしい。小説稼業のほうでも、特定の人気作家のものやは
なはなしく賞を取った作品が圧倒的に売れるのは当然の話で、べストセラーにならないのはそういう物を書かない作者
の自業自得というべきである。課題図書にしてもしかりで、あまたの類書の中から選び抜かれたものであるからには、
さぞや優れた内容のものに相違あるまい。/にもか かわらず、私はなんだか面白くない。全国数百万の学童が数種の
「課題図書」に砂糖にたかるアリのごとくむらがっている図を想いうかべて、少々ユーウツになるのである。それらの表紙
にれいれいしく飾られた「今年度」だの「選定」だの「必読」だのという金文字ラべルにつられて、愚妻のような無教養、
不勉強の母親どもが得意になって買って帰り、「タメになるから」というので子どもたちの口に無理やり押しこむ。
その暴力的なしかけがやりきれぬ。/一書を「指定」したり「必読」させたりするのは文化へのブジョクである。〉







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