穂史賀雅也 『暗闇にヤギを探して2』 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して〈2〉 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して〈2〉 (MF文庫J)

特に印象に残ったのが表情の使い方かな."春先のリスみたいに朗らかな顔を""目だけは獲物を探している猛禽類みたい""月を見ている猫のような表情で""シマウマの群れを見る肉食動物のような目で" エトセトラエトセトラの比喩表現.それと,例えば p.102 や P.125 では,修羅場に関わらず表情に関する描写がまったく省かれていること.この比喩とバランス感覚はほかの作家ではなかなか見られないものだと思う.興味深い.このあたりが1巻同様の曰く言い難い不思議な雰囲気を出している一因かと.単なるドライとは違う情景描写は確実に上達しているのだけど,独特の雰囲気は損なわれていない.1巻を読んだとき「見極めたい」*1と書いたけどこれはどうやら本物かもしれないと思うに至った.
ということで面白かった.まあラスト前で「主人公氏ね」とは思ったけどさ.続きがどうなるのかいまいち見えないのだけど,そこも含めて作者の持ち味のような気がしてきた.継続して追いかけたい.