DAW/DTM環境をWin7からWindows10に移行した話


2015年7月末、Windows最後のバージョンと言われているWindows10にアップデートしました。今まで使っていたWindows7環境をそっくりそのまま移行できるのがベストではあるのですが、アップデートする際に周辺機(特に音楽関連)の対応非対応で問題があったので、記録として残しておこうと思います。まぁ、アップデート予定があるならさっさとアップデートして落ち着いてしまおう、ということでアップデートを敢行したわけですね(決して新しいモノに自作の血が騒いだわけではな)。
後述しますが、他の端末(サーバ機、Windowsタブレット、2011年モノのVAIO typeZ)は難なくアップデートできたこともあり、ソフトウェア面での心配はほぼありませんでした。


■ハード環境と対応状況
僕のメイン環境における音楽系ハードの接続は以下のようになっています。


バイスと配線図

そして、各メーカーのWindows10対応状況と、事前にVM環境にインストールしたWindows10で実際に各機種の接続確認をした結果、以下のような感じになりました。



○Audio IF系
FA-101 ・・・ 動作しない。公式にも対応しないと情報有り。
SonicCell ・・・ 動作しない。公式情報はまだなし。←対応して欲しい


Windows7時にできたVISTAドライバを当てる、と言うような方法ではインストールできない。

○Module系
SC-8850 ・・・ 動作する。ドライバが自動でインストールされる。
MU500 ・・・ 動作する。ドライバが自動インストールされる。
SD-80 ・・・ 動作しない。公式にも対応しないと情報有り。
SC-D70 ・・・ 動作しない。


公式にはVISTAまでの対応であるSC8850のドライバがあることに驚き。この調子でSD-80も対応して欲しかった。8820は無さそうだった。

○その他
microKEY ・・・ 動作する。ドライバが自動インストールされる。
eLicenser ・・・ 動作する。(公式の最新ドライバが必要)
iLok ・・・ 動作する(公式の最新ドライバが必要)



○エディターソフト
SD-80エディタ ・・・ 動作する。
SonicCellエディタ ・・・ 動作する。


特に全ての音を集約していたFA-101が動かないのはかなり致命的で、AUDIOの経路が全て使えなくなってしまいました。気に入っている機材なだけに、確認しながら唖然としてしまいました。

※なお、非公式ながらWindows8.1/8のドライバで無理矢理認識させると言う方法もあり、情報も結構出ています。しかしながら、今後Windows10の肉付け式アップデートという形態を考えると今後も安定的に使えるかはわかりません。正式対応のモノを使った方が無難かと思います。僕はドライバまわりの改造でBSODループに陥った苦い経験があるので、試したくはあるものの、様子見することにしました。


■Audio IF(FA-101)、SonicCellの代替案
ということでどうしようかと考えました。
FA-101の代替案は、同等機種(OCTA CAPTURE)に交換と言うのが最初によぎった案ですが、如何せん差し替えるにしても6万円弱もする高価な物ゆえ、配線経路の組み直しや、バランスの調整の再検討をする必要がある事を考えると、「OSアップデートするから」という理由はすこし弱い感じです。つまり将来的にそうするかもしれない案で、プランBとしました。
FA-101はPCと繋がなくても、単体でも使用することができるので、既に配線的に音が集約されているFA-101のAudio OUTを新たなAudio I/FのINに入力すれば解決するよね、と言うのがプランA。つまり買い足した器機にFA-101の音を突っ込むというもの。値段的、環境的にも一番現実的そうです。よって以下の物を買い足しました。お値段約2万円後半。


UA-55
・・・ USB接続のAudioIFでWindows10正式対応。FA-101とはSRT標準接続。
http://www.roland.co.jp/products/quad-capture/


一つ器機をシリアルに接続することによって、歪みとかお作法的なところは気になりますが、SRTプラグなのでノイズにはそこそこ強いと思います。


FA-101のOUTをUA-55のINに入力することで対応


もう一つ、SonicCellの代替案ですが、これはマザーボード上にあるサウンドバイスオプティカルデジタル出力をFA-101のデジタルINに入力してマージする、と言う方法で解決することにします。デジタル入出力になるので、標準フォンプラグたるSonicCellよりはS/N比の面でも有利、と思います。また、SD-80のコアキシャルデジタル出力をUA-55の入力に入れる、と言う配線に変更しました。まだまだSD-80には働いていただきます。


右にあるオレンジのCOAXIAL端子を活用し、マザーボードのCOAXIAL OUT出力、またはSD-80の出力を入力する、という運用に変更した。


ところで、何故FA-101とSonicCell、二つもIFが必要か、ですが、これは
SonicCell ・・・ PCのAudio(システム音、他のデバイス指定をするソフトの音)
FA-101 ・・・ DAW(編集ソフト等)のAudio
というように役割分担させ、分離したいためにこうしています。DAWと一緒にMelodyneや動画編集ソフトを起動すると、Audio出力が足りなくて「なんとかしろ!」と騒ぐソフトがいたりするためです。また、録音中などに不要な音が入らないように、SonicCell側を絞ったり切断するだけでOKという手軽さも担っています。



■Module系(SD-80SonicCell)の代替案
これらは単純に、今までUSB接続だったものを「MIDI I/F」経由でMIDI接続する、ということで解決しました。ここで新たに買い足したのが以下のMIDI IFです。


○UM-ONE mk2
http://www.roland.co.jp/products/um-one_mk2/


以下のように接続すれば、それぞれMIDI制御できるようになります。なお、エディタで同期せず鳴らすだけであれば、IFのOUT端子と、モジュール側のIN端子のみ接続すればOK。
UA-55 のMIDI IN/OUT <====> SonicCellMIDI IN/OUT
UM-ONE mk2 <====> SD-80MIDI IN/OUT1 
SD-80は一つのIN/OUTでPortA 16チャネルまで対応していますので、32チャネル同時使用するためにはもう2本MIDIケーブルを接続する必要がありますが、最近は1台完結で作ることがほぼ無いため、PortAのみの接続で事足りるだろう、ということでフル装備にはしていません。


左側にあるMIDI端子のINとOUTを使用する。


最終的に以下のような接続に落ち着きました。


なんか余計ややこしくなった気がするけど気にしない。


■ソフトの対応状況
eLicenserは初回起動時のみ、Soft-eLicenserの修復を求められます。修復後は特に問題なく、紐付けされているソフトも問題なく動きます。


StylusRMXは再アクティベーションが必要になりました。おそらくOmnisphere、Trilianも同系統なので再アクティベーションが必要になると思います。AtomosとTrilogyはアクティベーション不要でした。


それ以外のソフト(FL Studio等)はそのまま問題なく使用することができます。
なお、SonicCellエディタ、SD-80エディタはWindows10でも動作するため、該当モジュールが接続されているMIDI I/Fをエディタから指定してやることで、問題なく使用することができます。


メーカー非公式ではあるけど、Windows10環境でもエディタは動く。器機との同期も問題なし。

■さいごに
というわけで、自分の環境のみ見るに、ハードの問題さえクリアしてしまえば割とスンナリアップデートはできるのかな、と言う印象を受けました(カネはかけましたけどね)。
WindowsというOSの上で音楽を作っている者の宿命ではありますが、結局器機メーカーやOSの手腕一つで音楽の編集ができなくなる、というところは、少しむなしさを感じてしまいますね。今後はもう少し汎用的な環境を目指していくべきなのかな、と感じました。たとえば「MIDI IFのみ交換すればOK」というような手間のかからない構成を作る。はたまた、VMwareなどで構築したVM環境にDAW専用の環境を作り上げてしまう、というのも手かもしれません。そうすればVMware Playerの動作する環境であればどこでも同じDAW環境を動かすことができますし。
DAW一辺倒ならまだしも、特に古いOSやソフトはサポートされなくなっていくので、その環境で様々な事をする人が現状維持を貫くというのも、なかなか難しいところがあります。


開発リソースの問題で工数が割けないとか、そもそも10年前の機材で開発者が退職している、といった問題もあるかもしれず、なかなか対応しづらいというのはよくわかります(僕も一応エンジニアを名乗っているので痛感します)。ただ、懐古的ではありますがTB-303が現代でも愛されているように、サポート打ち切りを残念がる人がいるのであれば、前向きに対応を検討して頂きたいなあ、というのはわがままですかねー。