キンケドゥブックス探索記

少年は旅人と出会った。
旅人は父よりも年嵩で祖父よりは若い様だった。そして、そのどちらにもよく似ていた。
引き結ばれた口元や、顔に刻まれた皺や、立ち振る舞いに、教師にも似た厳しさがあった。だが瞳には、少年に対する深い親愛が見て取れた。


旅人は、一冊の本を差し出した。
「この本は君の物だ」
少年は、思わずその本を受け取ってしまっていた。
立派な装丁の本。奇妙なことに、少年にはその本が、幾世もの年月を経た様にも、たった今創られたインクの匂いもしそうな新品にも思えた。
本には奇妙な異国の言葉が綴られていた。
「読めないよ?」
少年は旅人を見上げて言った。
「今はね」
旅人はそう答えた。


「他に質問はあるかい?」
今度は、旅人が少年に話しかけた。
少年は、しばし考えた後、普段から疑問に思っていた事柄を次々に口にした。
それらは、周囲の大人達を辟易させ、遂には怒らせてしまった事もある小さな質問の数々であった。
しかし旅人は、他の大人たちの様に怒り出したりはせず、一つ一つを丁寧に聞いてくれた。
それどころか、その全ての質問に、簡単だが明快に、そして分かり易く答えてくれたのだ。
少年は目を丸くした。
「すごいねぇ。きっと、分からない事はなんにも無いんだね」
「いや、そんな事は無い。わからない事だらけだよ」
少年は、この旅人にも
分からない事があると聞いて、もっと目を丸くした。

命 巡る

宇宙の生命が、死んでそして再び産まれるまで、ひととき安らぐ領域。命の泉。
神々の盟約により、如何なる者も触れる事を許されぬその場所。しかし、そこに禁を侵し足を踏み入れた奴が居る。
アシャーダロン。最も古く、最も力強き、赤い竜。

己が命をつなぎ、永遠を生きるため、未だ生まれる事なき魂を啜る邪悪な竜。
星霜に近い年月を超え、神をも凌ぐ力を持ちながら、死を退けるは適わぬ事を知った哀れな存在。
禁忌領域の中心、命の泉のある彷徨える魂の砦の最深部で、ただただ命を存える事のみを願いとし、赤子の様に蹲る。
赤竜の王よ、貴様を滅する為に我等は来た。

探索

魂の砦を探索。
どうやら砦には八つの部屋があり、すべてを廻らなければ中心には進めぬらしい。
くそぉ、コーデルめ*1、露骨なw



▼非実体な命の精霊、四体。本来のこの場所の守護者らしい。
 ウォール・オブ・フォースで分断、その上で各個撃破。接触攻撃でCONに2d8吸収とか付き合ってられません(笑)


パラディンの亡骸、志半ばで倒れたのだろう。しばし祈りを捧げ、彼の意思を引き継ぐことを、心の中で誓う。
 で、其れは其れとして、彼の装備はいただいていく。いそいそと死体を剥く冒険者


▼命の精霊の大型種、二体。前述のものより強力だが、個体数が少ないならば、恐れることはなく。


▼バロールが二体、一方は強大化済。
 バロールは死ぬと爆発するのが厄介。爆発に対して待機行動をとり、ウォール・オブ・フォースで壁を創る事でコレを回避。
 アイボリーGJ


▼他にもなんか居た様な気がするけど忘れた。


全ての部屋を抜けると、突如として姿を現す中心部、命の泉。そこで、その場所で、大きく咆哮を上げる超巨大*2な存在に我等は気が付いた。

*1:「死ねコーデルは、僕とキミとの合言葉w

*2:具体的に言うと、6×6マス

アシャーダロン

かのドラゴンは後ろ足で立つと、咆哮し、宙を爪で掻き毟った
そして火を吐き出しつつ、ディッドに躍りかかる
しかし、かのドルイドはアシャーダロンの心臓に斬りかかった
彼女のシミターは心臓を切り裂き、竜の生き血はあふれ出してゆく
ディッドが殺された後、彼女の心臓はドラゴンの貪欲な顎によって胸から抉り出され、
飲み下され、食べられた。
アシャーダロンの衰え行く生命を、ひと時の間、つなぎとめるために。
                                             ――ディッドの歌


我等は遂に伝説を目前にした。

ちなみに伝説は、大体ガンダムと同じくらい身長がある。
あまりの光景に、思わず撮影会を始めてしまう冒険者の中の人達!
一生に一度のことかも知れないからな。その一度の為に、伝説を購入したDMに最敬礼を。
今では品切れで、ほしくても購入は無理となっているからな。



話を元に戻す。



英雄ディッドの末裔、ヴァサル・オブ・バハムートのアストニス(NPC)が口上を述べる。
ディッドの負わせた傷は魂に刻まれていた。恐怖に慄くアシャーダロン。
イニシアチブ進行、アシャーダロンの出目は「1」*1。戦闘開始であった。


其れは一瞬の出来事であった。
怯んだ巨竜の胸元に、大気を踏みしめて*2駆け上がる影一つ。
棘鎖使いのオカルトスレイヤー、ドワーフのネビルである。
支援魔法をうけて、雄叫び上げて突き込む、叙事詩的獅子の突撃*3
渾身込めた棘鎖の連撃、その一撃一撃は、100ダメージに迫る。大規模ダメージによる即死判定、目標値は15。
もちろん、伝説の赤竜が即死する可能性は出目「1」のみ、すなわち5%しかない。一撃につき5%だ。
だが一撃でなければどうだ?連打であればどうだ?
1ラウンド6回攻撃、その全てが大規模ダメージだったらどうだ?
そう。
そして我々は目撃した!


戦闘開始3秒!!


アシャーダロンは即死した!

*1:特殊能力の結果ではない、ただの偶然。

*2:エア・ウォーク

*3:エピック・ライオンズチャージ

デーモン・オブ・デーモン

だが我等は、死した赤竜を油断なく観察していた。


アシャーダロンはかつての戦いで心臓を失った。
しかしその空隙を、力あるデーモンを捕らえ、胸に納めることで、自身の心臓の代わりとしたと言う*1


そしてまさに我等の目の前で、デーモン・オブ・デーモンと呼ばれ、奈落のプリンス達もその力を欲した、強大なるバロールが姿を現したのだ。
その名をアメット。
そして、復活したアメットに傅く様に姿を現した影が一つ。
我等とは因縁浅からぬマリリス、カテザールであった。


アシャーダロンという名の牢獄から開放されたデーモン。
アメットは二千年ぶりの自由に歓喜した。
そして冒険者は、更なる激闘の為に身構えた。

*1:通称、アシャーダロンの中の人w

さらばの命

再度のイニシアチブ、先手をとったのはアメット。最悪の展開。

ここでJ・B・キンケドゥの割り込み行動。セレリティをキャスト、スタンダードアクションをゲイン。
再びスペルキャスト、時間管理局ヴァルカスの名において時間介入を執行する。「タイムストップ!」


手にした時間は3ラウンド。
神聖呪文修正:高速化、および即時呪文高速化を使って6っつの呪文の投射に挑戦する。
敵に手番を渡したくはない。行動選択は攻撃的に、あくまで攻撃的に。
戦闘補助呪文を中心に、その上で出来るだけのダメージ呪文を投射。
最後に、目標の移動阻害を試みる。十分な検討の上キャストしたのは、ウィッシュからエミュレイトしたソリッドフォッグ。
これで打ち止め。この後、実質2ラウンド丸々幻惑状態。わっはっは、殺すんならコロセ。


アメットの狙いは、擬似呪文能力のブラスフェミィの発動だった。
術者Lvは31。投射されれば、我等は抗する事も出来ず全滅していた事だろう。
だが移動を封じられたアメットは、ネビルの間合いから抜けることが出来なくなっていた。
かのオカルトスレイヤーの間合いでは、防御的詠唱は不可能なのだ。強引に術を放とうとするデーモン。もちろんネビルの棘鎖がコレを機械攻撃に捉える。
与えられたダメージによる精神集中の目標値は、80を超えていた。いかなデーモン・オブ・デーモンと言えども、この判定を成功させることはできず、ブラスフェミィはフェイルする。
続いて、冒険者一行の持つ、全火力がアメットに降り注ぐ。
第2ラウンド、危険きわまるバロールに、手番は廻って来る事は無かった。


J・B・キンケドゥは、仲間の火力の降り注ぐ中でバロールが滅んでいく様を、幻惑状態のまま満足げに見守っていた。
そして滅びの絶叫。
続く瞬間の、断末魔の爆発。
半径100フィートに100ダメージ。
周囲を爆光が塗り潰して行く。J・Bは静かに目を閉じ、微笑んだ。
J・Bの振った大規模ダメージからくる、即死判定のダイスは、出目「1」であった。
キンケドゥ死亡。



カテザールは激怒し、狂乱し、不埒な冒険者に死を迫るべく、アストニスを猛撃した。
全力強打6回。しかし、全員の中で最高のACを誇る*1ヴァサル・オブ・バハムートには、全弾失中となる。
ここで、アストニスを倒していれば、キンケドゥが力尽きていたがため、後の展開は予断を許さぬ物になっていたかもしれない。
だが彼女は怒りで我を失ったのだ。
残ったリソース全てを注ぎ込んだ反撃が、カテザールの身体に全て叩き込まれた。
かくて恐るべきマリリスは滅びの絶叫を上げ、断末魔の爆発と共に消えたのだった。


…え?断末魔の爆発?!
はんけい ひゃく ふぃーと に 220 の だめーじ ?! wwwwww
え?……えへ?!(笑)


諦めた様に、自分のキャラの生死を確認する、冒険者の中の人達(笑)
幸運にも、三人の英雄が生き残ることに成功した。全員戦士だけど。
ちなみにJ・Bは、大規模ダメージでバラバラ死体でしたが。その上の220ダメージによって、肉片及び装備共々、きれいさっぱり蒸発しましたとさ。
戦士だけで、どうやってこの次元領域から帰還するんだろう、とか、ぼうっと考えてたり。

*1:今まで、幾度と無く死亡したアストニスのACには、冒険者一行、心を砕いていたのであったw

探索の終

とりあえずトゥルー・リザレクションが三発とんだ。死んだ冒険者は、全員生き返った。



宇宙の生命の具現が意思を持ったもの、というか、そんな感じの概念的な方々がやってきて、丁寧に謝礼を。
んで、礼を言うには先ず生きていてもらわんと、と言わんばかりに生き返る。
ポジティブエナジーがあふれんばかりに満ち足りた場所なんだよな、改めて考えてみれば。
この領域で一番難しいのは、死ぬことかむしれんね(笑)


お土産に命を貰ったりしながら、主物質界に帰還しました。
うむ、冒険の終焉だな。
各人、それから如何するのか、話し合ったり。
新たな冒険に出るもの。ここで休息とするもの。様々です。
ジョナサン・ブッカーズは此処で冒険を降りることとしました。
もとより、故郷オークハーストの危機に立ち上がった彼です。平和が訪れれば、オークハーストの神殿で、故郷の為に働くのが通りでしょう。


故に、キンケドゥブックス探索記、ここでひとまずの終幕となります。
皆さんお疲れさんでした〜。


ジョナサンは少年と出会った。
少年はジョナサンの記憶にある通りの姿で、故郷の町にたたずんでいた。
喩え様も無い懐かしさが胸にこみ上げるのが自分でもよくわかった。



ジョナサンは、一冊の本を差し出した。
「この本は君の物だ」
少年は、本を受け取った。
そして魅入られたかのように、その本を繁々と眺めていた。
少年は本を開いて、中を見てから言った。
「読めないよ?」
ジョナサンは答えた。
「今はね」
少年は不思議そうな顔をしたが、少年の瞳の中に、きらめく好奇心の光が踊ったのを、ジョナサンは見逃さなかった。


「他に質問はあるかい?」
今度は、ジョナサンが少年に話しかけた。
少年は、しばし考えた後、次から次へと疑問を口にした。
その一つ一つに懐かしい思いを抱きながら、わかる範囲で、そして出来るだけ簡素に、少年の問いに答えて言った。
少年の質問は、世界に対する新鮮な驚きに満ちていた。
ジョナサンは少年の瑞々しい感性に驚嘆した。


少年は目を丸くしていった。
「すごいねぇ。きっと、分からない事はなんにも無いんだね」
「いや、そんな事は無い。わからない事だらけだよ」
ジョナサンは心の底からそう思った。
なんと世界の驚きに満ちたことか! 世界には不思議でない物など、ないのだろう。



ジョナサンは、懐から金鎖の時計を取り出し時間を確認した。
「時間だ。いかなくてはならない」
「どこに行くの?」
少年は問うた。
ジョナサンは笑った。幼き日の、なんと問いの尽きぬことか。
「答えを探すんだ」
「僕も行ける?」
少年は、本を抱えながらジョナサンを見上げていた。
「いつかは。その時は、私があげたその本を忘れないように」
ジョナサンは時間転移の準備に入った。淡い燐光がジョナサンの身体を包む。
少年が慌てて叫ぶ。
「タイトル!この本のタイトルは?!」
時間管理者への祈念を行いながら、ジョナサンは少年に最後の言葉を送った。
「タイトルは自分でつけるんだ」
次の瞬間、ジョナサンは超時間移動に入った。
自分は、あの本のタイトルを知っている。
かつて、命の産まれる、禁じられた次元領域で失ってしまった本のタイトル。
ジョナサンは幼い日の自分が、旅人から貰った本に「キンケドゥブックス探索記」とつけることを知っている。
我ながら稚拙なセンスに、ジョナサンは少し笑った。