刃鳴散らす

刃鳴散らす

刃鳴散らす

なんで今更という感じを受ける方もいるでしょうが、GW中にクリアしたので、感想など書こうかと思います。
この作品は、主人公である武田赤音とその宿命の相手である伊鳥義阿が決闘にいたるまでの数日を描いた物語です。現在とは違う歴史を歩んだ日本において、クーデタにより政権を奪取した軍人である石馬戒厳の政策により、東京では帯刀が日常化していたのであった。などと設定はありますが、はっきり言って重要性は低いですね。純粋な決闘ものだと考えてもらえば十分でしょう。
これは徹底した主観の物語です。主観に生き、主観に死んでいく、そんな物語を表現する方法として、主人公を赤音のような自己が滅したキャラクターとして描いているのには感心しました。理論的な帰結ではありますが、なかなか貫徹できるものではない。テキストの上に全てが存在しているのであり、その行動こそが全てを示していく。作中の言葉を借りるなら、知行同一した作品とでも言うべきなのでしょうか。
ギリギリまで切り詰められた物語は痛快な剣客ものでは到底ありえませんが、神経の行き届いたストイックなストーリーだと捉えることも出来ます。欠けている要素は多数存在するかもしれませんが、絶対に必要な要素は全て押さえられている。全ては一つの結末のためにあり、そのためだけに全てが存在している。引かれ合う二本の刀の運命に刮目せよ。というシンプルさ嫌いではないです。
一点だけ難があるとするなら、クリア後に追加される選択肢「とめる」だと思うんですよね。だって、この時点で悩んでるような人間は絶対に勝てるわけがない。こんな選択肢はナンセンスなんだと冗談に包ませても、存在するものは存在するわけで、この選択肢は全く知行同一してないと個人的には感じました。*1
あと加えるなら、この物語は『鬼哭街』という同じニトロプラスの出している作品をかなり意識しています。その辺りは私自身はちょっとピンと来なかったですね。*2
総括すると、個人として感じるところはあるのですが、あまりにエロゲとしては足りないものに満ちている。一つの完成した作品ではあるので文句はありませんが、お勧めはしません。

*1:雪緒EDはアレはアレでいいんじゃないですかね。笑えるし。

*2:私が邪悪ヒロイン好きだから、問題意識がずれているだけの気もしますけど。