Macはまぶしかった

 スティーブ・ジョブス氏ついに宇宙へ旅立つ・・・
 地球という惑星の電脳社会には、二つの人種が住んでいる。「Winndowsの人々」と「Macの人々」だ。
 「Winndowsの人々」はスーツを着ていて、「Macの人々」はTシャツにジーパンをはいている。人口は圧倒的に「Winndowsの人々」が多い。

 もし、「Macの人々」が多い社会だったら、もっと平和で楽しい惑星になっていたかもしれない。しかし、もしかしたらこれからそうなるかもしれない。

 これはジョブス氏の新たな故郷となるアンドロメダにおける「地球評」である。

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 さて、ジョブスは私と2歳違いの同年代。同じ時代に生きて、同じような驚きを共有したはずです。

 そして私もパソコンへの驚きから今の仕事を始めた・・・。できあがりは大きく違いますが、何か親近感を感じます。特に彼がしごとを始めた頃の気概や状況に。

 昨日facebookで「スティーブ・ジョブス名言集」をシェアさせてもらい、それを見るにつけ、ますます親近感が生じてこのブログを書いています。

 彼の経営者としての業績とか製品の独創性とか、そんなことよりも彼の精神、それも晩年深さを増した「人間の生き方」について大いに共感するのです。特に「死すべき存在として今をどう生きるか」という観点に。

 思えば、私は灰色の服を着た「Winndowsの人々」でした。その人種でなければ生きていけなかった。つまり経済社会の中の部品として、効率を求めることこそ仕事と考え、独創の気持ちはあってもそれはおまけみたいなものになっていました。

 だから、心の中ではいつも「Mac」にあこがれ、まぶしい気持ちを抱いていました。そして、いつか自分が「Mac」を使うようになったら、たぶん生き方が変わるかもしれないな、と無意識に感じていました。

 こんなことを書くと、Macの人々からそんなに褒めないでよ。私たちは自営の貧乏デザイナー、自称アーティストばっかりなんだから。という言葉が聞こえてきそうですが。自営がほんとうは社会のあるべき姿と私は思っているんです。

 もっと褒めますよ。「Macは人が使う」「Windowsは人が使われる」それぞれ、そういう社会につながっていくんです。

 ジョブスがえらいな〜、よくやってくれたな〜と思うのは「アートとテクノロジーの融合」を具体化してくれたということです。

 本来、人間の道具であるものが、道具に使われてしまっている。これが現代社会です。それをあるべき姿に戻す力がアートです。

 それと、金銭的成功より独創の価値の方がずっと大切だよ、という価値観を大いにアピールしてくれたことです。独創を続けるために会社や金があるんだと言う考えです。だから時価総額うんぬんで彼の価値とかを考える人たちは的外れです。

 いってみれば、彼は偉大なシンガーといった方がピッタリする。彼自身もボブ・ディランの考え方、生き方を手本としていたようです。

One of my role models is Bob Dylan. As I grew up, I learned the lyrics
to all his songs and watched him never stand still. If you look at the
artists, if they get really good, it always occurs to them at some point
that they can do this one thing for the rest of their lives, and they
can be really successful to the outside world but not really be
successful to themselves. That’s the moment that an artist really
decides who he or she is. If they keep on risking failure, they’re
still artists. Dylan and Picasso were always risking failure.

ボブ・ディランはわたしの「お手本」のひとりで……(彼のような)本物のアーティストなら、人生のある時点で「このまま同じひとつのことを繰り返しつづけても、残りの人生をやりすごせる」と必ず気付くはずなんだ。

ただし、他人からはどれほど成功しているように見えても、同じことの繰り返しでは自分で「立派にやってる」とは思えない。アーティストの本当の価値が分かるのは、そういうことに気付いた時だ。

失敗をおそれずに新しいことに挑戦していくなら、本当のアーティストだといえる。ディランもピカソも(失敗のリスクをおそれず)新しいことに挑戦し続けていた。

 今からこそジョブスの生き方、考え方を私自身の人生に重ね合わせていけるかもしれない。いやそうしたいな。と考えた彼の命日でした。

参考
 ヒトの顔をした自動車