アドリブの利かない男です

旬公の入院中、仕事場の本の整理をやっている。今回の目的は年末の「ウィークエンドワセダ」に出す本を選ぶことと、来るべき「けもみち」部屋の改装に向けて、本を移動しやすくしておくこと。けっこう大掛かりになりそうなので、不忍ブックストリート青秋部のイシイくんをアルバイトに雇うことにした。例によって読みが甘く、一日でやってしまうつもりが、イシイくんに頼む仕事が用意できず、3日に分けて来てもらうことに。で、昨日はその2回目を夕方までやっていた。


イシイくんが帰り、〈ときわ食堂〉で晩飯食って家に帰って、ハッと気づく。ベランダの倉庫の戸を閉めた記憶がないぞ。あそこには、本を入れたプラスティックのケースを積み上げてあり、さらに、「ウィーワセ」用の本を段ボール箱に入れてイシイくんに運んでもらっていた。まあ、あんな重いもの、泥棒が持っていくわけないし、大丈夫だろうと思っていたら、夜半に雨が降り出す。心配するが、大降りになりそうな気配がないので、そのまま寝てしまった。そして、今朝早めに起きて、西日暮里に行くと、やっぱり開いていた。幸い、雨は吹き込んでなかった。


留守電をチェックだけして、仕事場を出る。〈千駄木倶楽部〉で、コーヒーとハムサンド。千駄木のウチに帰り、部屋の掃除や洗濯。明後日あたり、旬公が帰ってくるのだが、仕事場の本が片付いてないので、数日、千駄木ですごしてもらう必要がある。そのために、ココのホコリを極力取り除いておかないと、家庭の不和を招くのだ。《噂の東京マガジン》を見ながら、トマトソースのパスタをつくって食べる。


3時前にジャケットを引っ張り出して着替える。今日は牛イチロー先生とナベちゃんの結婚パーティーがあるのだ。丸の内線の新宿御苑で降りて、少し歩く。会場は天井の高い、シャレた感じのレストラン。つまり、もっとも苦手なロケーションだ。まあ、今日は出席者に「わめぞ」連をはじめ、知り合いが多かったし、パーティーも大げさなところがなく、本当に親しい連中ばかりが集まった会だったので、よかった。しかし、終わりのほうに、くじ引きで当たったヒトにスピーチをという時間があり、香港映画に出てくる小ボスのようなスーツ姿の瀬戸さんに「セトさん、最初に当たるんじゃない?」などと云っていたら、ぼくが最初に呼ばれてしまった。すっかりうろたえて、壇上にあがったが、しどろもどろの挨拶に。牛センセイにはいろいろ世話になり、感謝しているのだが、シャレた挨拶のひとつもできずにスマンかった。


お開きになり、二次会には出ずに、タクシーを拾って、厚生年金病院へ。旬公はドレーンが抜けて、自由に歩けるようになっていた。さっそく今日、脱走して〈ムギマル2〉に行ったのだとか。病院を出ると、なんだか疲れてしまって、またタクシーに乗って千駄木に帰る。やっぱりパーティーは、普段使わない神経を使うから、苦手だ。ともあれ、お二人に幸あれ。そして、いまや〈立石書店〉の常設棚となりつつある「古本けものみち」をよろしくお願いします。