硫黄島からの手紙

 暇な正月にして映画の日である。映画を観ない手はない。混雑を予想したがそれ程でもない。
 アメリカ人であるクリント・イーストウッド監督が日本軍の戦争をどう描くか興味あった。貫かれている価値観は、国が掲げる正義というものは信用できない、疑え!自分の正義や友人や家族のために戦うことへの理解。という点である。国というものを過大評価せず、個人を信用するという実にアメリカ人らしい考え方なのであるが、意外としっくりくる。
日本人が戦争映画を撮る場合、どうしてもそのイデオロギー性の問題に直面する。過去の戦争ですべての戦闘行為を悪として描くような映画は非常に肩が凝る。さりとて、国家のために戦うことを美化する映画も気持ちが悪い。どこかで線引きが必要なのだ。クリント・イーストウッドは非常にアメリカ人的な線引きなのではあるが、その線が明確であるが上に見ていてすっきりするのであろう。どうも日本の戦争映画はそれがぼけてしまう。日本人が明確な線引きをした映画を撮れればそれが一番いいのであろうが、クリント・イーストウッドはそれができる人を見つけることができず、自らメガホンを取ったのであろうか。