『骨太の方針09』に関する新聞社説について

異彩を放つ読売の社説

 社会保障費抑制撤回を唯一評価したのが読売新聞であった。もっとも「大きな政府」的なスタンスをはっきりと表明しており。経済政策では読売新聞が最左派なのかも知れない。ただし、財源としての消費税アップの必用を声高に叫ぶだけで、社会保障費以外の歳出削減についいての言及はなし。読売新聞は政府同様、「財政赤字や必要な社会保障費の増加を考えると、とても税金の無駄遣いの削減では足りない」という主張を繰り返しており、消費税アップの先送りを担保させるような「税金の無駄遣いを止めろ」的な主張を封印しているのが特徴だ。

 朝日新聞は、自民党内での調整プロセスに対する批判に重点を置いており、ピントが定まっていない。歳出削減頼りで負担増を先送りしたツケだとして、やはり消費税アップを是としている点は読売と変わらない。むしろ社会保障抑制の問題点に言及していない部分では読売以下の社説だ。

 日経は歳出削減路線を棚上げした今回の自民党の方針に批判的。なお社会保障費の抑制は必要だとし、ジャネリック薬品の利用などで質を下げないで社会保障費を抑制する方法はあるという主張だが、その程度のことで社会保障費を削減になるのか疑問を感じた。経済記者ばかりで、医療、福祉分野の専門家の少ない日経の限界を感じた。

 日経同様。歳出削減至上主義の産経。
 「社会保障で削減できないのであれば、他分野の削減幅を拡大するなど工程表を改定して歳出全体を抑制するのが筋」という主張は理解できる。

東京新聞の社説は酷い

 「社会保障をアリの一穴にしてはならない。」という主張は論外。「公共事業や特殊法人などで厳しい削減を課すためには、社会保障分野も聖域にしないで一律にシーリングを掛けなければダメなのだ。」という小泉時代のロジックを追認している。確かに自民党や官僚の理論では「すべての予算を減らすか増やす」という二択しか選べないのは事実だが、そこを本来厳しく糾すべきだ。
 「増税の思惑が先行して、歳出削減の議論がなおざりになった。」という言及は唯一評価できる。財務省景気対策での大盤振る舞いにアグリーを出したのは、増税を担保する意味が強かった。

 小泉郵政選挙の時代は、今まで自民党に批判的だった左派紙が小泉路線に親和的になり迎合記事を書きまくっていたのだけれど、なんかその呪縛は未だ解けずと実感。読売新聞は霞ヶ関の理論に洗脳された増税至上主義だが、まだスジが通っていてわかりやすい。
 朝日新聞東京新聞の社説には失望を禁じえない。毎日新聞なんて今頃、「西川社長続投は納得いかない」とか言う社説を載せているので論外だ。

一番しっくりきた北海道新聞の社説

地方紙でも、今日の社説は「骨太の方針09」に関するものが多い。全部チェックできた訳ではないが、北海道新聞の社説がすっきりしたのでご紹介したい。

「予算編成で何より大事なのは事業ごとのバランスだ。 不要不急な支出を減らして、国民の健康や福祉にかかわる緊急かつ必要性の高い分野に重点配分する。」
 小泉時代の「聖域なき歳出削減」は強い意気込みに飲み込まれて拍手喝采していたけど、政策的にはクレバーではない。いつまで我慢すればいいのか期限が明記されていない痛みに耐えられる国民などいる訳がないので、破綻するのは目に見えていたはずだ。本来政治がクレバーであれば「必要性が薄くなった予算を削減して、その部分を必要性の高まった部分に付け替える」という作業が最も重要になるはず。必要性の薄くなった予算が既得権益化させている官僚と、そこに切り込めない自民党政治が限界が今の支持率に顕れているのではないか。そういった民意を一番読めている社説だと思う。