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たかひろ的研究館・はてなダイアリー別館

2018-02-17 「ゆるキャン△」のヒットで「あんハピ♪」再評価の流れが・・・?

kenkyukan2018-02-17

 このところ、一部のファンの間で、なぜか「あんハピ♪」のアニメがえらい盛り上がっていて、なんだか再評価の流れでもあるのかなと思いました。もともと非常にいいアニメだと思っていましたが、ここに来ての話題は、今放送中で大きな反響を集めている「ゆるキャン△」のヒットの影響もあるのかなと思っています。どうもこのふたつの作品、様々な点でちょっとした共通感があるようなのです。

 「あんハピ♪」は、きららフォワードで2013年より始まった連載で、約2年前の2016年の春にアニメ化されました。対して、「ゆるキャン△」もきららフォワード2015年より開始された連載で、まず掲載誌が同じと言うだけでも共通性があります。

 「あんハピ♪」のストーリーは、数々の不幸の業を背負ったとされる少女たちが、天之御船学園という学校の1クラスで、幸福になるためのカリキュラムを受けるというもの。こんな風に説明するとなんとも怪しいイメージも受けるかもしれませんが、実際には学校で行われる特別授業は、大抵はぶっとんだ内容で、ときにテーマパークのアトラクションを思わせるような面白さもあり、まず明るいギャグコメディとして存分に楽しめる内容になっています。これは、アニメ化に際して大幅に強化され、原作の持ち味を生かしつつもより大胆になった数々の仕掛けで大いに盛り上がりました。

 さらに、それに加えて、不幸や不運だとされるキャラクターたちが、明るく前向きに数々の難関カリキュラムに挑戦する姿から、幸福な生き方の指針を読者に提示するようなテーマもあります。特に、主人公だとされる生徒・はなこ(花小泉杏)は、日々不運の連続で、傍から見るとひどい目に遭っているように見えて、しかし彼女自身は決して不幸だとは思ってはいないようなのです。あくまで前向きにポジティブに捉え、「わたしは幸せだよ」と言い切る明るさを持っている。アニメで彼女の姿に感銘を受けた視聴者は、とても多かったと思います。

 そして、このような明るく幸せを追求するテーマが、今放送している「ゆるキャン△」と共通しているような気がします。こちらはアウトドアでのキャンプ活動を描いた作品で、「あんハピ♪」のような屈折した設定ではありませんが、ゆるく過ごすキャンプならではの楽しさをストレートに描いており、やはり屈託なく楽しさを追求するキャラクターの日々の姿が、幸福感に満ちています。とりわけ、主人公のひとりだと思われるなでしこ各務原なでしこ)は、普段の行動が「あんハピ♪」のはなこを彷彿とさせるところがあり、どちらも天使のような人の良さを見せています。

 また、このはなことなでしこ、どちらもキャラクターボイスを担当する声優花守ゆみりで、そこで共通感を覚えた人も多かったようです。「あんハピ♪」のはなこの声は、その良く通る澄んだ明るいかわいい声で、強烈な印象を残していたのですが、それが「ゆるキャン△」のなでしこでもまた再現されているかのようです。まさに天使の声!

 そんなわけで、今大きな話題となっている「ゆるキャン△」を観てはまってる方には、是非とも「あんハピ♪」も観てほしいとおすすめしておきます。なお、「あんハピ♪」と作風で共通感のあるのは「ゆるキャン△」ですが、制作スタッフ的には、どちらもSILVER LINK.でこちらも今放送中の「三ツ星カラーズ」とも共通していたりします。SILVER LINK.は、こうした日常系というかコメディの作り込みに強烈なこだわりを感じますね。

2018-02-13 自主制作アニメ「ケムリクサ」まさかのテレビアニメ化決定!

kenkyukan2018-02-13

 先日、「けものフレンズ」のたつき監督を中心とするアニメ制作サークル「irodori」が、かつて制作した自主制作アニメ「ケムリクサ」がテレビアニメ化されるという告知があり、これには本当に驚いてしまいました。けものフレンズで一気に知られることになったたつき監督ですが、かつて同人サークルで作ったアニメがテレビアニメ化されることになるとは思わなかった。「アニメアニメ化」というまさに謎の企画となってしまいました。

 折りしもたつき監督の久々のコミティア参加に合わせたかのような告知。あのけものフレンズに関わる大きな事件により、続編への参加は覚束なくなってしまいましたが、自分としては、これからもかつてのように自主制作アニメをマイペースで続けてくれればいいと思っていました。それが、テレビアニメと言う形で急にまた表舞台に出ることになって驚きです。

 「ケムリクサ」は、かつて2011年から2012年にかけて制作され、ニコニコ動画に投稿されていた自主制作アニメ。irodoriは2008年から投稿を始めていましたが、これは比較的後期の作品でかなり本格的なシリアス作品となっています。長い間一部の人にしか知られていませんでしたが、けものフレンズのヒットによりたつき監督の過去作にも注目が集まるようになり、改めて再評価される形となりました。

 肝心の内容ですが、これは特異な世界観が特徴のハードSFでしょうか。人間が完全に滅び危険な「虫」たちが跳梁跋扈する荒廃した世界で、「村」と呼ばれる壁に守られた本拠地で活動する七姉妹の物語です。そこにある日ひとりの人間の男が紛れ込むことで、壁の外の世界への探索の物語が幕を開けることになる。簡単にキャラクターが死んでいくハードでシビアな世界ではありますが、人間らしい温かみも感じられ、演出もスタイリッシュで極めてレベルの高い作品だと思いました。

 また、のちのけものフレンズに通じると思われる要素が散見されるのも注目すべきポイントで、ある意味ではその原点、プロトタイプとも言える作品となっています。主人公と言える人間の男は、あのかばんちゃんと立ち位置がよく似ていて、まったく同じセリフも出てきます。ここから何らかの発想を得たことは間違いないでしょう。

 投稿された作品は全部で28分程度の長さで、テレビアニメなら1話分、内容的にはプロローグでこれから旅が始まるというところで終わっています。これだけできれいにまとまった良作ですが、これがテレビアニメ化されて続きが観られるとなると一気に楽しみが広がります。外の世界は、あの弐瓶勉の世界観を彷彿とさせる廃墟が折り重なる世界で、最近では「少女終末旅行」と言えばいいでしょうか。そんな世界を旅する物語が見られるというだけでわくわくしますし、あるいは自主制作どまりだった作画のレベルが、今のテレビアニメクオリティで見られるとなると本当にすごいものになりそうです。

 個人的には、この作品にとどまらず、irodoriの他の自主制作作品も日の目を見てほしいと思います。最初の作品である「眼鏡」も、こちらはパロディ満載のギャグコメディですが本当に面白い。あるいは、たつき監督の最新作である「傾福さん」も、ゆったりした雰囲気と不思議な世界観で魅せられる作品。これらの作品を1クールのまとまったテレビアニメにするのは難しいかもしれませんが、短編シリーズのような形で構成するのはどうか。今回の「ケムリクサ」テレビアニメ化で、そんな夢も広がってしまいました。

2018-02-08 講談社シリウスから3冊同時に4コマ新刊発売!

kenkyukan2018-02-08

 先月末のコミックス新刊から「にちぶっ!」「水曜日の夜には吸血鬼とお店を」「漫画家ちゃんは眠れない」と3冊の4コママンガが同時に発売されました。一見して萌え4コマにも見える(というか萌え4コマそのものの)装丁で、きららかキューン連載のマンガかな?と思ってしまうのですが、これが実は3つとも講談社月刊少年シリウスの連載なのです。

 「にちぶっ!」(石川沙絵)はタイトルどおり高校で日本舞踊に取り組む部活(日部)の活動を描いた作品。部活説明会で演じられた日本舞踊部の「藤娘」の美しさに魅せられた新入生の少女が、部活に入って一から日舞に取り組んでいくというもの。部活はそれほど厳しいものではなく、主人公が入るまではまるで活動してなかった生徒もいるくらいでしたが、そこに主人公が入ることで少しずつ活動が始まっていく。日舞や着物、昔の日本の文化を解説していく話も要所でふんだんに盛り込まれ、これは勉強にもなって感心しました。

 一方で、ゆるやかな日常を描くエピソードも多く、実家がカフェをやっている女の子が持ってくるお菓子やお茶でのパーティー、メイド服の制服を着てのバイト、浴衣を着て出かけた夏祭りでの縁日など、楽しい話も多いです。厳しい活動はあまりないのんびりほのぼの部活動4コマという感じですね。

 「水曜日の夜には吸血鬼とお店を」(羽戸らみ)は、ゴスロリショップ(ゴシックロリータの衣装店)を運営する吸血鬼の女の子と、ひょんなきっかけで彼女の店の手伝いをすることになった人間の女の子の話。古風でちょっと世間知らずの吸血鬼に、現代的な人間の女の子たちが協力して店を盛り上げていく流れで、こちらもほのぼのしたワーキングコメディとも言える作品になっています。

 設定的に同じく吸血鬼と人間のコメディ「となりの吸血鬼さん」を思い出すところがありました。あるいは、このところ4コマや百合作品で吸血鬼と人間のコメディや恋愛ものがよく見られるので、今のひとつのトレンドかもしれない。ただ、この「水曜日の夜には〜」は、ゴスロリの衣装という大きなテーマがあり、ハロウィンクリスマスに合わせたコスチュームや、時には和服と合わせたコーデなども見られ、ファッションとしてかなり本格的でビジュアルも映える内容になっているのが大きな魅力だと思います。

 この2作品の作者、石川紗枝さんと羽戸らみさんは、かつて創作同人でその活動を知っていたのですが、これが商業初コミックスとなりました。石川さんの方は、おそらくこれが商業マンガ初連載だと思います。羽戸さんは、かつて「ガレッド・デ・ロワ」というフルカラーのウェブコミックを手掛けていたことがありましたが、残念ながらコミックスにはなりませんでした。ゆえに今回のコミックス発売はとてもうれしい。

 そしてもうひとつ、「漫画家ちゃんは眠れない」(ゆあみ)も同時に発売されています。こちらは女子高生のマンガ家の日々の活動を描くほのぼの4コマ。女子高生のマンガ家4コマと言えば、あの「こみっくがーるず」も思い出してしまいますが、こちらも負けず劣らず面白い4コマになっていると思います。作者のゆあみさんは、これまでは「むにゅう」名義で主に美少女ゲームの原画やライトノベルの挿絵の仕事を手掛けており、あるいはコミックアライブでもマンガ連載がありましたが、今回名前を変えての萌え4コマ連載はちょっと意外で驚きました。

 そして、こうした作品が、あの月刊少年シリウスで連載され、3冊同時にコミックスが発売されたというのが驚きです。シリウスは、かつて2005年に新創刊された雑誌で、当時創刊が相次いだ時代に創刊されたマンガ雑誌のひとつ。基本的には少年誌ながら、当初からファンタジー作品や小説原作の作品が多い傾向で、マガジン系列のほかの講談社の雑誌に比べるとややコア読者向けの印象があります。アニメ化もされた「夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット〜」や「将国のアルタイル」「妖怪アパートの幽雅な日常」、あの進撃の巨人の前日譚「進撃の巨人 Before the fall」などが今の代表作品でしょうか。

 こうした少年向け作品中心の雑誌で、まさに萌え4コマとしか言いようのない作品の連載が始まったこと自体がまず驚きでした。それも、たまたまひとつほど作品を載せてみたという感じではない。3つの作品がほぼ同時に始まり、コミックスも3作品同時発売となると、こうしたジャンルの作品を集めて連載させようという明確な意図が感じられます。まさに「シリウス萌え4コマ始めるってよ」「講談社萌え4コマ始めるってよ」とでも言うべき意外なニュースでした(笑)。

 現在、こうした4コマはやはり芳文社きらら系列の雑誌の勢いが圧倒的で、人気作品の多くがここから出ています。アニメ化作品も多いし有望な新規作品も数多い。そのきららをかろうじて一迅社ぱれっとやメディファクトリーのコミックキューンが追随している状況ですが、規模としてはまだまだというところです。そんな中で、講談社シリウスがこうした作品に手掛けるようになった期待感は大きい。この3作品を見る限り、きらら連載と比べてもまったく遜色ない出来だと思いました。今後の展開にも注目していきたいと思います。

2018-02-02 「三ツ星カラーズ」という電撃もうひとつの系譜。

kenkyukan2018-02-02

 今季のアニメで、いわゆる日常系(あるいはCGDCT=かわいい女の子がかわいいことをするアニメ)となると、安定のきらら系から「ゆるキャン△」と「スロウスタート」が好評放送中ですが、もうひとつ見逃せないものがあります。「三ツ星カラーズ」です。

 こちらの原作は電撃大王連載のカツヲさんの作品。カツヲさんは、もうひとつ電撃だいおうじの方でも「ひとりぼっちの○○生活」という連載を行っており、こちらも切れのあるコメディ4コマとなっています。また以前より同人の方でも創作作品をいくつか見てきて、こちらも面白いと思っていました。ゆえに、今回のアニメ化に期待するところも大きかったですが、これがここ最近良作を多数手掛けてきたSILVER LINK.による制作で、期待以上の出来だったのです。

 「三ツ星カラーズ」の舞台は現代の上野上野の公園に秘密基地を構え、日夜上野の平和を守る(?)3人の小学生の日々の活動を描いた日常コメディとなっています。3人の中では比較的真面目で気が弱く、周囲に振り回されがちなリーダー・結衣。明るく元気なお調子者で率先して騒動を巻き起こしがちなさっちゃん。一見しておとなしそうに見えてしょっちゅう物騒な発言を繰り返すゲーム好き少女・琴葉。それぞれ髪の色や服装が赤・黄・青でまとめられ、「カラーズ」と呼ばれるチームを組んで日々上野を駆け回って活動を行う。

 大抵は大人たちの迷惑も顧みない無頓着な行動で、いわゆる悪ガキそのものな活動ぶりですが、それが本当に面白い。周囲の大人たちがみな優しい目線で、彼女たちの活動を広い心で見守り時に手助けする優しい世界も魅力です。

 さらに、もうひとつの魅力として、緻密に描かれた上野の街の背景があります。原作の描き込みも相当なものがあったのですが、アニメではさらにパワーアップ。ごちゃごちゃした活気溢れるアメ横の商店街を始め、上野公園上野駅前の姿が、明るく爽やかなタッチで細やかに描かれている。最近では特定の舞台(いわゆる聖地)を設定するアニメが増えていますが、その中でもこのアニメの力の入れようはすごいと思いました。これはほんとに上野の街を歩いてみたくなりますね。

 もうひとつ、原作の「三ツ星カラーズ」は、電撃大王の連載の中でもひとつの系譜を辿る最新作ではないかと思うのです。電撃と言えば、「とある科学の禁書目録」や「超電磁砲」、最近では「SAO」や「魔法科高校」など、自社ライトノベルを原作としたSF・ファンタジーが大きな主流と言えますが、それとは別にもうひとつのラインがあると思うのです。

 それは、すなわち「よつばと!」や「苺ましまろ」から続くキッズコメディとも言える一連の作品です。かつての名作「あずまんが大王」も近いものがあるかもしれません。これらの作品は、その多くが子供たちが主役ということで、ある種児童向けの作品の雰囲気も備えており、特に「よつばと!」は、大人とは違う子供ならではの目線がよく描けているとして高く評価されています。つまり、普通のオタク向け作品とは少し違って、一般層の読者にもそうした点で評価され読まれるジャンルとなっているわけです。この「三ツ星カラーズ」もその系譜に連なる作品だと思えますし(特に設定が似た「苺ましまろ」とはよく比較されます)、それがここに来て良作のアニメとなったのは本当にめでたい。一度そうした観点からも見てほしいと思いますね。

2018-01-31 「籠の少女は恋をする」

kenkyukan2018-01-31

 1月の電撃コミックスの新刊から、「籠の少女は恋をする」(川浪いずみ)が先日発売されました。このところ、電撃大王では、「やがて君になる」や「新米姉妹のふたりごはん」、アンソロジー「エクレア」などで百合作品を強く推すようになっていますが、この「籠の少女は恋をする」もまた非常に印象的な作品となっています。雑誌で追いかけていた時から、その内容にえらく衝撃を受けていましたが、コミックスでまとめて読んで改めて大変な問題作だと思いました。

 コミックナタリーの記事では、「美しい少女ばかりが集められる全寮制の奇妙な学園が舞台」などと書かれていますが、その実ここは男に買われるための少女を育てるための学園であり、屈辱的なカリキュラムの数々と厳しい選抜制度からくる生徒間の軋轢、そして卒業後に待ち構える運命と、ひどく衝撃的な設定になっています。作者の対談でも「悪趣味なものを書きたかった」とありますが、それにしてもひとつひとつの設定がえぐるように執拗に描かれていて、いくらなんでも悪趣味がすぎると思いました(笑)。

 学園の制度だけではありません。主人公たちを初めとするこの学校の女生徒たちの多くは、過去に様々なひどい経験をしていて、行き場を失ってここへと来たものばかり。主人公の千鶴はかつて同居した親戚の男たちに性的行為を受けているようですし、主人公と親しくなる双子姉妹の冬子と美緒も家庭でひどい目にあっている。外ではひどい目に遭い学園の待遇もひどく卒業後の運命もひどい。まったく救いのない設定と言ってもいい。わたしは、こうした重い状況でのシリアスな関係を描く百合作品を、「しんどい百合」などと表現していますが、しかしこれほど読んでいてしんどい作品も中々ないと思いました。

 ただ、そんな中で僅かな救いとなっているのが、学園の生徒同士の繋がりであり、カリキュラムの一環で性的関係を持っていることもあって、卒業までのひと時の間極めて強い絆を持つことになる。作者の川浪さんは、「今だけの関係」と表現していますが、そんなわずかな短い時間しか構築されない、やがて別れが見えている状況での絆の強さを描くというコンセプトは、確かにとても魅力的に感じられました。

 そして、このようなシビアな百合作品が、電撃大王で連載されているというのも驚きです。百合姫なら他にも重い設定の作品は多いと思いますが、電撃でこれが掲載されるとは思わなかった。作者の川浪さんは、かつて同人では東方艦これで活動していて、やはり重い雰囲気の作品をよく手掛けていたのですが、しかしまさか初の商業連載でこんな作品を出してくるとは。百合に本格的に力を入れるようになった電撃大王ですが、これはまた楽しみな作品が出てきましたよ。

2018-01-25 鳴見なる先生の連載履歴を振り返る。

kenkyukan2018-01-25

 今季のアニメから「ラーメン大好き小泉さん」もかなりの評判になっていますが、原作者である鳴見なる先生について知っている人はそれほど多くないと思います。かつてはスクエニからデビューした連載作家で、最初の連載から気に入って注目していましたが、いつの間にか随分と活動も長くなっていました。今回の小泉さんアニメ化を契機に、これまでの連載を振り返ってみたいと思います。

 鳴見さんのデビューは、かつて休刊したスクエニガンガンWING。2005年に同誌のマンガ賞を受賞したことをきっかけに、翌2006年より最初の連載である「東京★イノセント」を開始します。東京へと嫁探しに出てきた白狐の少年・半蔵と、物の怪に取り憑かれる体質となってしまった女子高生・メイを中心としたラブコメ×妖怪ものといった感じの作品でした。妖怪ものながらかわいい雰囲気の明るいコメディで、とてもガンガンWINGらしい作品だったと思います。当時のWINGは、他にも何本も新連載を打ち出していましたが、成功したものは多くなく、その中でも数少ない有望な作品でした。

 しかし、WINGはその後さらに不振となり、2009年にはついに休刊。この「東京★イノセント」は、休刊後に当時創刊していたガンガンONLINEへと移籍する形となり、そちらでまもなく完結を迎えています。コミックスは全9巻。雑誌がもうちょっと奮っていればまた展開も変わっていたかもしれませんし、今でもちょっと惜しかったなと思っています。

 そして、同時期にそのWINGの休刊と入れ替わって創刊された後継雑誌・ガンガンJOKERで、新連載「絶対†女王政」を開始。共学となったばかりのお嬢様学校で「女王」として君臨する少女とその秘書官に任命された少年を中心にしたコメディでした。雰囲気や絵柄的には前作の「東京★イノセント」と近いものも感じましたが、こちらはいまひとつ成功できなかったのか、1年という短い連載期間で終了。コミックスも2巻で終わっています。

 その後の鳴見さんはスクエニを離れ、KADOKAWAヤングエース2011年より「JA 〜女子によるアグリカルチャー〜」の連載を開始。共同作者だった唐花見コウさんの出身地である長野県小川村を舞台にした農業マンガで、同村の風景をかなり忠実に再現し、農業関連の知識もふんだんに盛り込むなど本格的な内容。作品はこの村公認の扱いも受けています。農業関連の作品としては、あの荒川弘先生の「銀の匙」や「百姓貴族」、アニメ化もされたライトノベルのうりん」などよく知られた作品が他にもありますが、これも中々のものがあったと思います。2014年まで続く連載となり、コミックスは全8巻。

 さらに、このJA連載中の2013年より、竹書房まんがライフSTORIAにてあの「ラーメン大好き小泉さん」の連載を開始。内容についてはもはや説明の必要もなさそうですが、作者のラーメン愛に溢れたラーメン薀蓄と、ラーメン大好き女子高生小泉さんと周囲の友人たちのラーメンを通じた交流が楽しすぎるコメディとなっています。しかし、「東京★イノセント」から知っていた自分としては、鳴見さんがこういう作品でヒットするとは意外でもありました。

 また、この小泉さんとほぼ同時期に、2014年からヤングエースで「渡くんの××が崩壊寸前」の連載を開始。のちに2015年より講談社ヤングマガジンへと移籍されて現在も好評連載中となっています。ちょっとシリアスで重いところもある学園コメディで、こちらの方がかつての鳴見さんの作品に近いところはあるかもしれません。

 気が付けば2006年の初連載からはや12年。スクエニの新人作家としてデビューした頃から、今では多数の出版社に活躍の場を移し、いつの間にかベテランとも言える作家になっていました。これからの活躍にも期待したいと思いますね。

2018-01-23 終末旅行の終わり。

kenkyukan2018-01-23

 先日、秋よりテレビアニメも好評放送中だった「少女終末旅行」の原作が終了しました。数カ月前から展開が急激に佳境に差し掛かっていて、「もうじき最終回なのではないか」と読者の間ではもっぱらの噂でしたが、予想通りの終了。「終わるまでは終わらないよ」がキャッチフレーズだった本作にもいずれ終わりは来る。アニメが非常な好評だったこともあって、Twitterでの最終回告知には多数の反応が寄せられ、ウェブサイトくらげバンチ)の連載ページには多数のアクセスが殺到し、しばらく繋がりにくいという一幕もありました。

 終末旅行の最後。それはふたりが都市の最上層へと到達し、そこで目にした景色が最後の光景となる形で終わっています。その結末は、およそ自分が予想していたほぼその通りのものでした。

 「少女終末旅行」の舞台は、上下に幾重にも多層となった構造の巨大機械都市。ほとんどの生物が死に絶え廃墟となっていますが、しかし比較的新しい時期に作られた上層ならば、まだ都市が機能しているかもしれず、生き残っている人も大勢いるかもしれない。そんな一縷の望みにかけてひたすら最上層を目指していった彼女たちですが、どこまで登っても生きているものはほとんどおらず、ただ巨大な廃墟が続いているのみ。そんな状況で最上層まで行って一体そこに何があるというのか。それは誰もが予想できる結末ではなかったかと思います。

 むしろ、その最後の結末よりも、そこに至るここ数カ月の展開にも見るべきものがあったと思います。頼れる移動手段だったケッテンクラートがついに修復不能となり、バラバラに分解され使えるパーツのみを持っての過酷な徒歩移動。食糧も次第に少なくなりほとんどなくなり、気候も冬が来たのか一気に寒冷化し、疲労困憊するまで歩いて眠り寒さで目を覚ます日々。暖を取るためにあらゆるものを燃やし、ついにはチトが書いてきた日記まで燃やすシーンはことさら堪えました。

 すなわち、持てるあらゆるリソースをかなぐり捨てて、すべてを前へ進むエネルギーへと変えてかろうじて旅を続ける絶望的な日々。最終回のラストシーンを見て「これから先もまた旅を続けていくのではないか」という意見もありましたが、自分としてはこの最終回前の展開を見るに、もはや最上層に辿り着いた時点で体力も資産も何も残ってはおらず、もうここで眠りについて終了なのではないかと思わざるを得ませんでした。

 むしろ、わずかな希望を感じたのは、一足先に終了を迎えたアニメのエンディングだったかもしれません。アニメは原作の最後までは辿り着かず、中盤のエピソードで終了を迎えたのですが、その終わり方もまた最高でした。連載中盤のエピソード「月光」でのセリフに着想を得たと思われる「最後は月に行こう」と明るく話して終わるラストシーン。最上層には何もなかったけど、月まで昇って昇ってついに辿り着いたら今度こそ救いがあるかもしれない。アニメがそんな希望を抱かせる終わり方で本当に良かったと思うのです。

2018-01-17 ・競技ゲームにおけるデジタル環境の優位性について(2)。

kenkyukan2018-01-17

 前回はTCGにおけるデジタルゲームの優位性について書きました。しかし、それは何もこうしたカードゲームだけでなく、他の多くの競技ゲーム、それも従来ならアナログでプレイされていたゲームにまで共通しているのではないかと思うのです。今までは普通に人と対面してプレイしていたけど、いざオンラインで対戦してみると、こっちの方がずっと便利なのではないか? そんなゲームが多数あるのです。

 最も分かりやすいのがオンライン麻雀でしょうか。「天鳳」などのオンライン麻雀サービスが広まって久しいですが、いざ洗練されたオンラインのシステムでプレイしてみると、これがはるかに利点が大きかった。まず、オンラインならではの対戦相手に困らないという利点が、こうした人口の多いゲームですら、無視できないほど大きすぎました。本当にいつでもどこでも何時間でも対戦できる。最近になってオンラインで急速に実力を伸ばすプレイヤーが多数出てきたのは、こうした対戦環境の充実ぶりが大きいと思われます。ついでに言えば、他のプレイヤーの対戦を気軽に視聴できる利点も見逃せません。

 さらには、個々の麻雀のプレイにおいても、オンラインの方がはるかに分かりやすく快適でした。面倒な点数計算もすべてコンピュータがやってくれるし、面倒な洗牌や牌山を組む必要もない。いちいち山のどこから牌を取るのか考える必要すらない。いちいち点棒を使う面倒さもない。加えて積み込みのような原始的なイカサマもほとんどなくなります。

 あるいは、将棋のような、アナログでもプレイ環境がシンプルで、デジタルでの利点がそれほど多くないと思われるゲームでも、絶対に覆せないような大きな利点がひとつあります。それは「持ち時間の管理」です。多くの競技ゲームにおいて必要になる各プレイヤーごとの持ち時間の計測。これをコンピュータに管理を任せればはるかに容易に達成できるのです。いちいち時計を叩くような原始的な方法に頼る必要もなく、コンマ1秒の単位で厳密に正確に管理できる。これだけはアナログでは絶対にかなわない利点だと思います。

 もちろん、こうした数々の優位性を前にしてもなお、アナログならではのゲームの魅力というものはあります。実際の人間を前にしてのコミニュケーションの楽しさや、実物のカードや牌や駒を手にしてプレイする楽しさは、やはりアナログゲームならではのものでしょう。しかし、それ以上に競技ゲームにおけるデジタル環境の利便性はあまりに大きいところで、今後さらにこうしたタイプのゲームやサービスが普及するのではないかと思っています。

2018-01-16 ・競技ゲームにおけるデジタル環境の優位性について(1)。

kenkyukan2018-01-16

 先日、あのマジックザギャザリング(MTG)における禁止改定(禁止カードの制定・解除)の発表があり、思った以上に多数の重要なカードが禁止にされて、プレイヤーの間ではその話題でもちきりになりました。実は、このところ1年ほど前から、MTGはこのように禁止カードを頻繁に多数出すようになり、以前の安定した運営方針とは一線を画するようになっています。

 この方針の変更に対しては賛否様々な意見が出ていますが、その中にひとつ目を引くものがありました。それは、「MTGがここまで禁止カードを頻繁に多数出すようになったのは、ひとつにはデジタルTCGの影響を受けてるのではないか」という見方です。

 デジタルTCGとは、純粋にPCやスマートフォン上だけでプレイを行うTCG(トレーディングカードゲーム)のこと。MTG遊戯王など従来のカードゲームにもオンライン版はありますが、このデジタルTCGの場合、最初からオンラインのデータのみで「リアルの紙のカードが一切存在しない」ところで一線を画しています。2013年にリリースされた「ハースストーン」のヒットがそのきっかけで、日本では「シャドウバース」や「ドラクエライバルズ」などの後発の類似ゲームも非常な盛況を博しています。

 そして、こうしたデジタル環境のみのゲームの場合、アップデートによるルールの変更やバランスの調整がずっと容易です。禁止カードまで出さなくとも、一部のカードの強さ(パラメータ)を書き換えるだけでもバランス調整が出来る。こうしたデジタルでの利点から、従来のカードゲームに比べて細かい変更が頻繁にされるのが特徴で、それもまた大きな強みになっているようです。

 デジタルの利点はこれだけではありません。以前から他にも紙のカードよりも便利な点が多数あり、それがそのままデジタルTCGの圧倒的なヒットに繋がっているようなのです。

 まず、オンラインで対戦相手がいつでもどこでもいるところが大きすぎます。こうしたTCG(トレーディングカードゲーム)の場合、ある程度多数のプレイヤーがいて、様々なデッキと対戦できる環境がないと成立しません。いくらゲームシステムが素晴らしくても、肝心のプレイヤーがいなければ成立しない。特に人口の少ない地方ではこれは大問題ですが、オンラインでいつでも全国・全世界のプレイヤーと繋がっているなら問題ないわけです。

 さらには、肝心のゲームのプレイでも利点は大きい。今まで人間が手動でやっていた面倒なルールの処理をCPUに任せられる。例えば、MTGでは、熟練したプレイヤー同士の対戦でもライフの数え間違いをすることがよくありますが、コンピュータが数字を管理してくれるならそんな心配はまったくない。多数の細かいルールが折り重なる複雑な場面でも、コンピュータなら確実にひとつひとつ全部処理してくれます。むしろ、こうしたゲームはデジタル環境でやる方が妥当で、人間が全部手動で管理することに限界を感じることも多いくらいです。

 こうした様々な利点から、以前からデジタルでのTCGに有利な点が大きすぎるなとは感じていたのですが、今回の禁止改定の動きによって、さらにその見方を強めることになりました。そして、これはMTGのようなカードゲームだけでなく、およそ他の多くの競技ゲームにおいても言えているのではないかと思えるのです。

2018-01-12 ゆっくり始まるスロウスタート。

kenkyukan2018-01-12

 先週の日記では「ゆるキャン△」を取り上げたばかりですが、今季はもうひとつ重要なきららアニメがあります。「スロウスタート」です。こちらも連載開始当初から追いかけていて、アニメ化が決まった後もずっと放送を待ち侘びていました。個人的にもいろいろ思い入れが深い作品で、かつて既に何度か取り上げたことがあると思いますが、アニメ化に際してもう一度その魅力を語る必要があると思いました。

 「スロウスタート」は、2013年にまんがタイムきららで始まった4コマです。作者は篤見唯子。このところ、MAXやキャラットフォワードからいくつもアニメ化作品が出ていますが、まんがタイムきらら無印)からは、2016年の「三者三葉」以来やや久々のアニメ化となりました。ラインナップが他より少し薄いと言われることがあるきらら本誌からの作品という点でも、今回のアニメ化に期待するところは大きいです。

 その内容ですが、春から高校へと入学することになった新入生・花名(はな)ちゃんを主役に、彼女を中心とした楽しい学校生活を描くコメディでしょうか。高校では中学時代からの知り合いもおらず、不安に駆られていた花名ですが、幸いにも気のいい生徒に声をかけられて早速友達となり、楽しいスタートを切ることが出来ました。しかし、彼女には周囲に隠している少し深刻な秘密があったのです。

 それは、とある事情から昨年高校を受験することが出来ず、1年遅れての入学になってしまったこと。これを周囲に隠していることで、楽しい日常の中でも常にうしろめたさがつきまとう。そんな彼女の闇とも言える部分を描くことで、他の学園コメディとは少し違う切なさや寂しさも同時に描かれています。原作では、1話冒頭のかなり早い箇所でこの秘密が明かされましたが、アニメでは1話を通して楽しい日常を描き、最後にその秘密を打ち明けることで、視聴者に意外な余韻と今後への興味を抱かせる構成になっていて、これは優れたアレンジだと思いました。

 さらには、そんな彼女の秘密を、必ずしも暗いものとして描くばかりでなく、むしろそうした過去を肯定しているところが、非常に大きなテーマだと思っています。タイトルの「スロウスタート」のとおり、高校に1年遅れてもいいじゃないかという周囲からの優しい配慮。そんな優しい世界が、ひいてはそうしたゆっくりした生き方をも肯定している。そんな社会的とも言えるテーマをも内包する作品になっていると思っています。

 もうひとつ、作者である篤見唯子さんの、少し特徴的な経歴についても語っておきたいところです。篤見さんの商業誌デビューは古く、なんと「まんがタイムきらら」の2002年の創刊号(増刊時代の最初の号)に「H.P.ハッピープロジェクト」という読み切りを掲載したことがあります。さらに同年より、エンターブレインの雑誌「マジキュー」で「瓶詰妖精」という読者参加企画に携わり、そのキャラクターデザイン・コミック連載を始めました。2003年にはアニメ化もされており、今でもこのアニメで覚えている人は多いかもしれません。

 しかし、「瓶詰妖精」の企画は2005年に終了し、その後もマジキューでマンガ連載や読者参加企画に携わりましたが、掲載誌の休刊で2007年にはすべて終了。その後長い間商業誌での活動は途絶えることになります。ゆえに、長い時を経て2013年に始まった「スロウスタート」は、久々の商業誌復活となり、随分と驚きつつもうれしく思うことになったのです。

 さらには、この間の期間においては、むしろ同人活動において知られる存在になっていたことも特徴的でした。とりわけ「咲-Saki-」の同人誌の執筆を精力的に行い、いわゆる部キャプ(部長×キャプテン)のカップリングの第一人者ともなりました(笑)。こちらで知っている人も多いのではないかと思います。

 こうしたずっと以前の作品である「瓶詰妖精」や、あるいは同人誌で作者の篤見さんを知っている人にとっては、今回の「スロウスタート」のアニメ化はとても感慨深いものがあると思います。「瓶詰妖精」からは15年目にしてついに篤見さんの作品が再びのアニメ化。それゆえに特別な思いで期待してしまうのです。

2018-01-11 2018年にしてまさかの新刊「合本 異国迷路のクロワーゼ memoire」。

kenkyukan2018-01-11

 先日、あの「異国迷路のクロワーゼ」のコミックス新刊である「合本 異国迷路のクロワーゼ memoire」が発売されました。2巻が2009年に出てから8年以上。まさかここに来てあの「クロワーゼ」のコミックスが出てくるとは思いませんでした。かつて2巻まで出たコミックスの内容すべてに加えて、未収録のエピソードと追加ページを加えた完全版・愛蔵版とも言える貴重な一冊。作者の急逝という衝撃のニュースから1年。一周忌に合わせて出たこのコミックスは、かつての多くのファンにとって待ち望んだ一冊ではないかと思います。

 「異国迷路のクロワーゼ」は、2006年に「ドラゴンエイジPure」という当時富士見書房から出ていた季刊誌(のち隔月刊に移行)で始まった連載です。作者は武田日向。のちに同誌の休刊に伴って2009年より月刊ドラゴンエイジへと移籍されました。しかし、同年にコミックス2巻が出た後から休載が続くようになり、長い間まったく連載が中断した状態になっていました。作者の武田さんの体調不良が理由だったようですが、2017年になってその武田さんの急逝が告知され、これで完全に未完のままで連載が途絶える形となってしまいました。

 作者の武田さんにとっては「やえかのカルテ」に次ぐ2番目の連載で、連載当初から前作以上の非常な好評を得て、作者の代表作となりました。同じく武田さんの仕事としてこちらも大人気だったライトノベルGOSICK -ゴシック-」の挿絵イラストと合わせて、当時は熱心なファンはとても多かったと思います。彼女の繊細で美しいイラストに魅せられた人は数知れない。

 その「クロワーゼ」の内容ですが、19世紀フランス・パリを舞台に、日本から来た少女・湯音(ゆね)とフランスで看板店を営む青年・クロードを中心に異国での異文化交流の姿を描いた作品と言えるでしょうか。突然祖父によって日本から連れてこられた黒髪の少女の姿に驚き、異国人である彼女の習慣に戸惑い時に反発しつつも、少しずつ彼女と交流を重ねて心を通じ合っていく。その切なくも愛おしいストーリーには本気で泣かされました。

 加えて、とにかく武田さんの作画が素晴らしいの一言に尽きました。先に「GOSICK」の挿絵イラストで知られていた武田さんですが、マンガでもその美麗なイラストそのままの作画のようで驚きました。パリのアーケード街の街並みの描写や、室内の調度品に代表される細部の描き込みがあまりに素晴らしい。カラーイラストもまさに絶品で、今でもコミックスの表紙が思い出されます。

 もちろんキャラクターの描写も素晴らしくて、とりわけ黒髪和服少女・湯音のかわいさにはほんとに参りました(笑)。この武田さんの絵に影響を受けた人は本当に多いようで、とりわけ深く愛された作家だったと思います。

 当初の連載が季刊の雑誌だったこともあり、連載のペースはそれほど速くなかったのですが、それでも毎回の連載を楽しみに待っていた作品で、ようやくコミックスが出たときにはとてもうれしかったものです。しかしそれも2巻までの刊行で途絶えて連載は中断、ついに作者の逝去で未完の作品となりました。それゆえに今回の新刊は心の底からうれしい。しかも6月には武田さんの画集まで出るとのこと。2018年にしてこの展開は、やはり彼女が多くの人に愛されたひとつの証だと思います。

2018-01-04 「ゆるキャン△」ついにアニメスタート!

kenkyukan2018-01-04

 数カ月前にもおすすめの記事を書いた「ゆるキャン△」。いよいよそのアニメ放送がスタートします。アニメ化が告知されたのが昨年の2月で、それからずっと長く放送を待ちわびていました。直前になってこの冬アニメでも最大の本命として期待するようになったこの作品、何度でも念を押しておすすめしておきたいと思います。

 「ゆるキャン△」は、まんがタイムきららフォワードで2015年7月号から始まった連載で、タイトルからも連想されるとおり、ゆるやかに楽しむキャンプ活動の楽しさを描いた作品となっています。また、レジャーとしてのキャンプでは通例オフシーズンとなる冬季のキャンプを描いていることが特徴的で、今回のアニメが発表から随分と遅く1月からの開始となったのも、その冬場に合わせての放送なのかな?とも思っています。

 シーズンから外れてほとんど人のいない冬のキャンプ場。少しの規則を守って活動すればあとは自由。ここはと思う場所に自由にテントを建てて薪を集め、火をおこして持ってきた食材で料理を作り、おいしい食事をゆっくりと楽しむ。あたりには広々とした美しい自然の光景が広がり、澄み切った冬の空気の中、暖かい服装でゆったりと椅子に座ってそれを堪能する。そんな冬季ならではのキャンプの楽しさが存分に描かれているのです。

 あるいは、キャンプ地だけの楽しみではありません。キャンプ地へと向かう道中の楽しさまで存分に描かれています。バイクや車を思い思いに走らせ、途中で立ち寄る食堂やレストランでもおいしい食事を堪能、時には温泉にも入ってゆったりと時間を費やす。そんなキャンプも含めた小旅行の楽しさが、たっぷりと描かれた作品になっていると思います。

 そしてもうひとつ特徴的なのは、そんなキャンプへたった1人で赴く「ソロキャンプ」の楽しさが描かれていることです。登場キャラクターの1人のリン(志摩リン)は、普段から1人での行動を好み、ごく一部のエピソードを除いては、毎回ほぼ1人でキャンプ地に赴いて活動しています。ひとりでの遠征であるがゆえにすべての行動は自由。途中でどこに立ち寄ってもいいしどれだけ時間を使ってもいい(あまりゆっくりすると到着時間が遅れてピンチになったりしますが)。キャンプ地でものんびりと自分のペースで設営して何より食事もひとりで堪能できる。そんな「孤独のキャンプ」とも言うべき単独行での楽しさが存分に描かれているのです。

 さらには、単独行ではあってもまったく人とのつながりがないわけではない。仲間とはスマートフォンタブレットで見るSNSで繋がっていて、常時連絡を取り合ったり時には撮影した見事な景色をシェアして楽しむ。予定より到着が遅れてピンチに陥った時にも、仲間からの思わぬ情報で助けられるという一幕もありました。そんな離れていてもネットのSNSで繋がる、今の時代ならではの交流の楽しさもまたよく描かれています。

 こうした楽しさがアニメでも再現されることに期待したいところですが、アニメではもうひとつ、舞台探訪(聖地巡礼)が盛り上がりそうな作品という点でも期待しています。アウトドア活動を描いた作品で、しかも各地に実在するキャンプ地や観光地が頻繁に登場。作中でキャラクターが住んでいるのは山梨県静岡県の境あたりらしいですが(具体的には山梨県身延町とその周辺)、その山梨県静岡県、さらには長野県の実在の場所をいくつも訪れています。アニメを契機にこうした場所の探訪、あるいはキャンプ体験まで盛り上がりそうで、それもまた楽しみなところです。

2018-01-03 「熱帯魚は雪に焦がれる」

kenkyukan2018-01-03

 このところ電撃系からこれはという作品が多いのですが、今度は電撃マオウの連載から注目の新作をひとつ。昨年6月より始まった「熱帯魚は雪に焦がれる」(萩埜まこと)です。先日待望のコミックス1巻が発売されました。

 このところ、水族館が大人の娯楽スポットとして定着したからか、水族館もののマンガも増えているようですが、この作品もそのひとつでしょうか。しかし、水族館という施設を舞台にした作品ではなく、学校の部活である「水族館部」の活動を描くというコンセプトが、とても新鮮な一作になっています。

 水族館部とは何か? これは、愛媛県の高校(長浜高校)に実在する部活で、その名のとおり学校で水族館を運営しようという課外活動。その活動は思った以上に本格的で、校内の一角に多数の水槽を並べ、魚類など水中生物を150種2000匹以上を飼育、定期的に一般公開もしているそうです。このマンガも、実際に高校に取材を行ったうえで、かなり忠実に実際の「水族館部」の活動を描写しており、その活動ぶりがとても興味深い作品になっています。マンガでも愛媛県長浜がそのまま舞台となっていて、愛媛の方言が使われたり愛媛の実在の場所が登場するところも面白いですね。

 さらには、その水族館部で活動するふたりの少女の懸命な活動と交流の姿が描かれるストーリーもいい。これまでたったひとりで水族館部で活動してきた小雪と、彼女に興味を持って部活に入ることに決めた転校生・小夏。どちらも積極的な交流は苦手な不器用な性格で、孤独を抱えていたふたりがぎこちないながらも少しずつ距離を近づけていく。その姿がとても切なくもいとおしい。最初は水族館での活動に慣れなかった小夏が、小雪に教えてもらったり自分で勉強したことを思い出しながら少しずつ成長していく様子もいいですね。

 作者の萩埜まことさんは、以前は艦これを中心に同人でも活動していて、KADOKAWAアンソロジーで執筆していたこともあります。また、この連載の始まる約1年前に、「海洋部へようこそ!」という読み切り電撃マオウコミック新人賞を受賞していて、これが今回の連載の直接の原点にもなっているようです。その頃から柔らかい作画とストーリーが魅力的でしたが、初連載となるこの「熱帯魚は雪に焦がれる」も、その優しい作風がセンシティブな魅力に溢れた作品になっていると思いました。これはまた電撃から要注目の作品で、次に来るマンガではないかと期待しています。

2017-12-21 20年目のソウルハッカーズ。

kenkyukan2017-12-21

 今年で発売から20年を迎えたゲームとして、アトラスの「デビルサマナー ソウルハッカーズ」があります。1997年11月13日にセガサターンで発売されました。1995年に出た「真・女神転生デビルサマナー」の続編に当たるソフトですが、ゲーム的にまだこなれてなかった前作に比べて大幅に遊びやすくなり、また単体でもストーリーが楽しめるなど十分な面白さを持っていたこともあって、いまだに名作として知られたゲームとなっています。

 いわゆる「メガテン」シリーズの中でも難易度が低めでシステム的にも遊びやすいなど、初心者向けにも最適とよく評され、ゲーム的にも非常におすすめなゲームなのですが、同時に作中で描かれる世界観・設定が、今見ても非常に斬新で興味深いのも魅力で、20年経ってもその先進性に驚かされます。

 まず、発売当時に誰もが注目したのが、「パラダイムX」と呼ばれるいわゆる仮想空間都市でしょうか。ゲームの舞台となる地方自治体天海市が住民に対して無償配布したPCによるサービスという設定で、ネット上に作られた仮想都市で住人同士が交流出来るだけでなく、買い物や銀行、娯楽施設、そして各種行政サービスまで一手に受けられるという、当時としてはひどく斬新な設定でした。のちのネットゲーム、あるいはほんの一時期流行った「セカンドライフ」を彷彿とさせるサービスで、これが97年というインターネット黎明期だった時代に出たことは感心するばかりでした。

 ネットを通じたサービスだけでなく、リアル空間での都市の姿も、当時の現実のはるか先を行っていました。政府の「次期情報都市政策」において情報環境モデル都市に指定されたという設定で、近未来的なハイテク都市となっていて、先ほど述べた全市民へのPCの無償配布に加えて、市内各所に端末(ターミナル)の設置、高速ネットワーク回線の整備や電子マネーの導入まで行われています。これが、まだブロードバンドのかけらもない時代で、電子マネーもネット通販などごく一部でかろうじて使われ始めた頃のゲームというのが驚きです。

 そのサービスを含めて市民の生活を一手に管理するのがID(市民ID)という設定で、物語の途中で主人公たちのIDが敵の手で剥奪され、買い物も何も出来なくなって窮地に陥るシーンがあります。折りしも海外ではキャッシュレスの社会が本格的に到来し始め、スウェーデンではマイクロチップ認証による決済も始まっている昨今。ようやく現実がこのゲームに追いついてきたのかなとちょっとわくわくしてしまいました。

 キャッシュレスと同時にビットコインのような仮想通貨も本格的に流通を始めてますが、ソウルハッカーズにも作中で存在する架空物質・マグネタイト仮想通貨として運用しようとする怪しげな組織が登場します。物語中盤で相場が高騰するものの、終盤になって信用を失って暴落するあたりが、いかにもそれらしくて笑ってしまいました。

 こうした先進的なシステムやガジェットに加えて、ネットならではの人々の行動や交流の姿、そこから導き出される精神性もよく描かれていました。ネットでの会話を通じて悪魔をトレードするやり取りなどは、今のネットでの交流とまったく変わらない。いや、これこそが今でも心に響く最も大きな成果かもしれません。主人公たちの仇敵となるパラダイムXの開発者・門倉の最後の言葉は、20年前のセリフとは思えないくらいの現代性に満ちていると思いますし、最後にこれを置いて幕としたいと思います。

 「ネットは・・・人と人のコミュニケーションを拡充する、新しい意思伝達方法ともなりえた

 しかし、現実はどうだ・・・

 デジタルは人間性の粗悪な記号化を産み虚言と虚構のみが人々の心を満たし

 事実の存在意義すら否定する精神文化の衰退を引き起こした。」

2017-12-20 「怠惰への賛歌」─うまる・ガヴ・ゆるゆり・・・動画工房ドロップア

kenkyukan2017-12-20

 今季のアニメからはあのうまること「干物妹!うまるちゃん」の2期も面白すぎるんですが、最近ではこういうぐーたらライフを推奨する作品が、アニメでも増えているようでうれしい限りです。個人的には、このうまるを制作している動画工房の少し前の作品「ガヴリールドロップアウト」とも共通したものを感じます。

 うまるの主人公うまる(土間うまる)は、普段では品行方正成績優秀な生徒で通っているようですが、自分の家の部屋では毎日のように夜更かししてコーラポテチ食べて飲みまくりゲーム三昧の日々を送り、あるいは外でもゲームセンターにしょっちゅう通う凄腕のゲーマーともなっています。そして、そんなぐーたらな生活を、作中でほぼ全肯定しているところに惹かれました。

 これは、今年の初めにやはり動画工房の手でアニメ化された「ガヴリールドロップアウト」の主人公・ガヴリール(ガヴ)とも重なっているところがあり、彼女はかつて天界では非常に優秀な天使でしたが、地上に降りてからしばらくして触れたネットゲームに思い切りはまってしまい、部屋は乱れ一日中ネットゲームに興じ、性格まで堕落してしまうという設定になっています。そして、こちらでもその姿は必ずしも悪いものとしては描かれておらず、そんな「ドロップアウト」して生きる姿を楽しく描こうとするコンセプトが見て取れます。

 作品自体の方向性はかなり変わりますが、かつて動画工房によってアニメ化された「ゆるゆり」にも一部通じるところがあるかもしれません。中学生の主人公たちが茶道部の部室を勝手に占拠し、毎日放課後は思い切り遊んで過ごしているという設定で、厳しい部活に日々励む学園ものの作品とは正反対の姿がそこにありました。こうしたゆるい部活の姿を描く作品は、近年他にも多数目立つようになりましたが、ゆるゆりもその先駆けのひとつとなったような気がします。

 動画工房からは外れますが、今季のアニメからひとつ「ネト充のススメ」も取り上げておきたいと思います。30歳にして会社を辞めてニートになってネットゲームにはまる生活を始めた女性の話で、同じくネットゲームで知り合った男性と付き合う大人の恋愛ものとして大変面白かった。しかしこれ、どうも予定では最後はまた社会に戻る話だったらしいのです。しかし、脚本担当の一声で変更になったとのこと。「また社畜に戻るの??って。そんな偽善テーマは今時駄目。折角幸せになったんだから、そのまま幸せなままで居ろ。」と。

 これも「今時そんなテーマはダメ」っていうところが実に今時らしいと思いました。ようやく「働かないことが幸福である」ということが当たり前のこととして分かられてきたようで、それがアニメ作品でもこうして広く見られるようになったのは、大変良い傾向だと思っています。「幸福へと至る道は労働の組織的な縮小のうちにある」(バートランド・ラッセル「怠惰への賛歌」1932)

2017-12-15 「少女終末旅行」(2)

kenkyukan2017-12-15

 さらには、そんな短いエピソードひとつひとつに込められた物語も非常に深い。人間の文明が崩壊した世界で、かつて当たり前に存在した文化の豊穣さを逆説的に伝えるようなものも多く、今を生きるわたしたちの心にはひどく響くものがあります。その最たるものが、「住居」というタイトルで、何もない廃墟の部屋でかつて様々な豊かな生活用品が置かれていた光景をふたりが夢想するエピソードでしょうか。夢想から覚めて現実に帰ったときが本当に切ない。

 住があれば食の楽しみもある。やっと辿り着いた食料生産プラントで残っていた芋はたったのひとつ。しかし、芋の粉だけは数多く残っていたので、それに砂糖と塩と水を混ぜて焼いて作ったものを食べて、やっとひと時の幸せを得るエピソード「調理」。「甘いって幸せだよね」というユーリの一言が身に沁みる名エピソードとなっています。同じく、月夜の下で偶然見つけた酒(ビール)を飲んで踊り明かすエピソード「月光」も印象深いです。

 一部には宗教哲学領域に踏み込む話もあり、かつての宗教施設であろう巨大神殿に偶然立ち寄ったふたりが、あの世を再現したという光景を見て何かを思うエピソード「寺院」にはそれを強く感じました。この話には関連すると思われる話がのちにあり、そのエピソード「記憶」では、無数に墓と思われる施設が立ち並ぶ場所で、「もう誰も訪れないし覚えている人も誰もいないよ」というチトに対して、かたわらに立つ神の石像にユーリが触れ「そのためにこいつがいるじゃん」と返すセリフに感動してしまいました。ふたりは神の存在自体は何も信じてはいないようで、わたし自身もそれほど強く意識してはいませんが、しかし「そのために神がいる」というのは納得せずにはいられませんでした。

 かつての生産施設でたった1匹だけ生き残った魚を巡って、ふたりと自動機械(ロボット)が対話する「水槽」「生命」もあまりに深い。「かつては人も機械も魚も都市も生きていて循環していたんだ」「それもいつか終わりが来る」「生命って終わりがあるってことなんじゃないか」というチトの語りに、作者ならではの哲学を強く感じました。どうも原作者のつくみずさんは、「静かな終わり」というものに憧憬を描いているようで、「終わりが来ることはすべてにとって優しいことである」という思想にもひどく共感してしまいました。

2017-12-14 「少女終末旅行」(1)

kenkyukan2017-12-14

 今季のアニメは本当に好きなものが多くて、これまでも「このはな綺譚」や「魔法使いの嫁」を紹介してきましたが、最後にひとつ「少女終末旅行」は絶対に取り上げたいと思います。これもまた最初からひどく期待していましたが、気が付けば他をも超えてこれが一番の好きになっていました。

 「少女終末旅行」は、原作はコミック@バンチの運営するウェブサイトくらげバンチ」連載のマンガで、作者はつくみず。コミック@バンチからは、「BTOOOM!」や「GANGSTA.」「うどんの国の金色毛鞠」などのアニメ化作品が出ていますが、まさかこれがアニメ化されるとは思いませんでした。とりわけコア読者向けの人を選ぶ内容だと思っていたのですが、今はこういう作品も受け入れられる素地があるのかもしれません。

 内容は、いわゆる文明が崩壊した後の世界を旅するふたりの少女の道中を描くSF作品でしょうか。いわゆる「ポスト・アポカリプス」と呼ばれるジャンルのひとつだと思われますが、しかしこの作品の特徴的なのは、本来なら厳しく寂しい旅になるだろう終わった世界での旅が、ふたりの少女によるコメディによって毎回のようにコミカルに描かれること。基本真面目なチトと自由奔放な性格のユーリ、このふたりの掛け合いが面白く、笑ってしまうこともしばしば。崩壊後の世界でたったふたりしかいない孤独な旅なのに、ゆるいコメディとしても楽しめるその絶妙なバランス感覚が大きな魅力となっています。

 さらには、やはりそうした「終末世界」の細部を描くビジュアル、世界観の魅力が非常に大きいです。廃棄され壊れかけた巨大な鉄骨や鉄パイプが交錯し、あるいは廃墟となった巨大なビルや住居が整然と林立した光景。そんな都市が幾重にも上下に層をなしている。各層の基盤となる土台層(基盤殻層)の内部は、インフラを通し維持管理する巨大なシステムとなっていて、人間がいなくなった今でも自動機械によって維持されている(そのため建物は半壊した廃墟の街なのに水や電気は一部でいまだ稼動している)。作者のこうした世界のイメージは、あの弐瓶勉作品の影響を強く受けているようで、そうした作品が好きな人ならさらに惹かれるものがあると思います。

 また、原作の作画は比較的シンプルなものでしたが、アニメでは一気に細部まで徹底して描かれたビジュアルとなり、世界の魅力を一気に高めています。1話の最初のエピソードで、鉄骨と鉄パイプが林立する基盤層の暗闇を抜けたふたりが、ようやく外に出て思いもかけぬほど美しい星空を眺めるシーンは、冒頭からあまりに鮮烈な印象を残しました。原作は、比較的1話が短い構成となっていますが、アニメではそのシーンやセリフをひとつひとつ丹念に拾い上げ、さらにはその合間にさらに美しいシーンを入れて物語を補完するなど、さらに見応えのある作品になっていると思います。

2017-12-08 萌え絵はどこから来てどこへ行くのか(2)。

kenkyukan2017-12-08

 前回の日記で「少女マンガ」「少年マンガ」「ゲームやファンタジー」と、いわゆる「萌え絵」に影響を与えたり起源となったと思われるジャンルを3つ取り上げました。しかし、萌え絵ということになると、やはり最後に「ギャルゲーエロゲー美少女ゲーム)」を取り上げないわけにはいかないと思います。

 ただ、こうした美少女ゲームに関しては、他のジャンルよりも後発のジャンルで、最後にこうした萌え絵を確立する役割を果たしたと考えています。ギャルゲーエロゲーと呼ばれるゲーム自体は、おそらくはかなり前から(80年代から)存在していたと思いますが、一気に大きなブームとなるのはおよそ90年代後半から2000年代前半あたりで、このあたりでオタクジャンルに与えた影響が非常に大きい。

 具体的には、この当時特に人気だったタイトルで、主にPCで出た作品だけでも、「To Heart」が1997年、「Kanon」が1998年、「AIR」が2000年、「月姫」も2000年末、今に至るシリーズとなった「Fate」が2004年に出ています。実際にはこれ以外にも数多くの制作会社から有名タイトルが多数出ており、あるいはコンシューマの方でもギャルゲー呼ばれるジャンルでやはり相当な数が出ていて、今思えば非常な活況を呈していました。

 なぜこの時期に美少女ゲームがこれだけ盛り上がったのか(あるいはその後下火になったのか)、その理由は難しいところですが、しかしいずれにしてもこれらのタイトルの圧倒的な人気・知名度が、他のコンテンツ、引いては萌え絵にまで多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。とりわけ、初期に出た「To Heart」や「Kanon」の影響は、のちのこのジャンルを決定付けるものがあったと思いますし、ここでキャラクターを含めたビジュアルのイメージが確立、マンガやライトノベルなど他ジャンルまで影響を及ぼし、ここで現在に至る「萌え絵」のベースがおおむね完成したのではないかと思います。

 これは、こうしたゲームの表現形態、すなわち立ち絵とイベントスチル(1枚絵のイラスト)でキャラクターを見せるスタイルも大きく、これまでのゲームよりもはるかに大きくキャラクターの見た目の印象が伝わるようになりました。これによって、こうしたキャラクターのイラストが、より大きな形で見られる機会が劇的に増えた。さらにはこうしたビジュアルとウインドウに表示されたテキストで物語を見せる手法の効果も大きく、これも他のジャンル、とりわけライトノベルや、ひいてやマンガやアニメの見せ方にも大きな影響を及ぼしたことは間違いないと考えています。

 つまり、この時期までに少女マンガ少年マンガ・RPGファンタジーなど多方面を起源にして形となりつつあったオタク向け作品のビジュアル(萌え絵)が、最後にこの時期に美少女ゲームが登場したことで、完全にひとつの形として確立した。萌え絵の成立までにはそうした流れがあったのではないかと考えています。

2017-12-06 萌え絵はどこから来てどこへ行くのか(1)。

kenkyukan2017-12-06

 先日、「萌え絵の絵柄は基本的に少女漫画の影響を受けて発展してきた」というツイートを見かけて、それ以来あれこれ考えていました。この発言には賛同する意見が比較的多く見られ、わたし自身も一部では確かにこれに賛同できるものの、しかし必ずしも影響を受けたものはこれだけではないと思ってしまいました。むしろ、少女マンガ以外にも、こうした絵に影響を与えたジャンルやその起源となったジャンルは複数見られ、それらが時間が下るにつれて渾然一体となり、今の「萌え絵」と呼ばれるかわいい女の子の絵柄が確立したのではないかと思うのです。

 まず、確かに少女マンガからの影響は大いにありました。昔から少女マンガと言えば、男女の恋愛要素やかっこいい男性キャラクターが出る一方で、かわいい女の子の魅力で人気を得ることはとても多かったのです。特に、少女マンガでも女の子たちのコメディやギャグを中心にした作品、あるいは女の子の主人公たちがヒーロー(ヒロイン)的な活躍をする作品はは、のちの萌え系作品に直接つながるものがありますし、その上で絵柄的にも広く親しみやすいものとなると、男性を含めて幅広い人気を集めるものは数多くありました。

 加えて、こうした作品がアニメ化された時の影響は特に絶大で、90年代の大ヒット作であるセーラームーンやあるいは「カードキャプターさくら」に代表されるCLAMP作品は、のちの萌え系作品の先駆的な存在となったことは間違いないと思います。

 しかし、萌え絵の絵柄の発展が、こうした少女マンガからの影響が中心だったかというと、必ずしもそうとは言い切れないと思います。むしろ、少女マンガと同等かそれ以上に、少年マンガにものちの萌え作品につながる作品は多かったと思うのです。

 少年マンガと一口に言っても、その絵柄の方向性は千差万別ではあるのですが、しかしその中には比較的絵のくせが少なく、かわいいタイプの絵柄は確実に存在しています。特に、女の子のかわいさをひとつの売りとするラブコメ系の少年マンガ、あるいは学園ものや日常もののコメディなどは、そもそも少女マンガ以上にのちの萌え絵に近いものは多かったと思います。あるいは、少年マンガでは王道と言えるバトルやスポーツ系のマンガでも、かわいい女の子のキャラクターが人気を得ることは珍しくない。

 この傾向は、出版社や雑誌によってはさらに顕著になり、例えば昔から学園系コメディをひとつのメインジャンルとしていた少年サンデーやその系列雑誌には、そうしたマンガに近いものはより多かったと見ています。これらの少年系マンガを無視してのちの萌え作品を語ることは出来ないでしょう。

 そしてもうひとつ、萌え絵萌え作品に大きな影響を与えた作品ジャンルとして、ゲームやファンタジー作品からの影響も見逃せないものがあると思います。とりわけ、RPGシミュレーションRPG、特に一時期コンシューマで非常に高い人気を博した和製RPGJRPG)方面からの影響がとても大きい。

 そもそも、こうしたRPGやファンタジーは、その原点は海外から入ってきたゲームや小説だったのですが、その後日本で作られる国産のゲームや小説は、元の作品とは異なる独自の方向性へと進んだ感があります。ゲーム的にはストーリーと戦闘システム重視、そしてビジュアル的には親しみやすいキャラクターや世界観重視の方向性です。

 例えば、ゲームではドラゴンクエストあたりがそのきっかけになっていますが、もともとのファンタジーでは怖いイメージだったモンスターのスライムが、鳥山明デザインで独特のフォルムのかわいいモンスターへと大きくアレンジされたことがその象徴です。つまり、キャラクターだけでなく、世界全体のビジュアルにおいて、そうしたポップで明るくかわいいデザイン、それが国産のRPGやファンタジーでひとつの主流となり、それがのちのコアユーザー(オタク)向け作品、ひいては萌え系作品とそのビジュアル(萌え絵)にまでつながっていったのではないかと思うのです。

 これは、もとの海外のファンタジーでは中心であった、リアル志向の重厚なイメージのファンタジーとは一線を画するもので、これが今の日本独自のコンテンツ(オタク向け作品)へと分岐する大きなきっかけになったと推測しています。こうしたRPGやファンタジージャンルの作品を特に強く押し出した出版社が、ひとつはエニックススクエニ)でありひとつはKADOKAWAであり、これらの出版社が今のコアユーザー(オタク)向け作品で人気を博しているのも偶然ではないでしょう。

2017-11-29 「妹さえいればいい。」とボードゲーム、ゲームマーケットの話。

kenkyukan2017-11-29

 先日より放送中のライトノベル原作アニメ妹さえいればいい。」、ライトノベルの作家や編集者たちの日々の活動を描いた話で、実際に即した執筆活動の描写も興味深い一作になっていますが、同時に作中で主人公たちが一同に会して団欒する日常のシーンも盛んに描かれ、時折実在するボードゲームで遊ぶシーンも描かれるのが特徴的な一作となっています。こうしたアナログのボードゲーム、本場と言えるドイツではファミリーゲームとして広く文化として遊ばれていますが、最近は日本でもようやく浸透しつつあり、大人の娯楽として楽しむ人が増え、こうしてテレビアニメでも取り上げられるようになったのは1ゲームファンとしてうれしい限りです。

 さらには、アニメのスタッフが実際にオリジナルのボードゲームを作ろうという企画まであり、そのゲーム「ラノベ作家の人生」の制作の進捗を公式サイトで報告し、さらには今週末に開かれるゲームマーケット出展する予定となっています。ゲームマーケットは企業の出展も多いですが、テレビアニメの公式による出展はかなり珍しいと思いますし、実際にこのゲームをやってみたいと思いました。

 「ゲームマーケット」は、こうしたアナログのボードゲームやカードゲームの同人即売会のようなイベントで、実際に他の同人イベントとほとんどスタイルは同じようで、サークルごとにスペースが設けられ自作の(企業なら商業の)ゲームを頒布する形となっています。ただ、ひとつ特徴的なのは、すべてのサークルのスペースにゲームを遊ぶための試遊台(テーブル)が設けられ、他の参加者たちと実際にゲームで遊べるようになっていること。

 そして、そのゲームが遊べるというメリットのおかげで、このゲームマーケット、他のイベントと比べても圧倒的に楽しいです。個人的にはコミケコミティアすら超えるものがあると思っています。やはり、頒布物の売買のみならず、実際に試遊台でゲームが遊べるというのは、他にはない魅力です。

 普通の同人誌即売会なら、かろうじてサークル参加者と一言二言会話をする機会はあっても、見ず知らずの他の一般参加者と会話・交流する機会というのは、ほとんどないんじゃないかと思います。しかし、ゲームマーケットなら、ボードゲームを一緒に遊ぶというごく自然かつ敷居の低い形で、他の来場者と楽しく交流することが出来ます。これほど楽しいことは中々ない。

 来場する人たちの層が幅広く、若い人からおじさんおばさんまで老若男女幅広い来場者とゲームを楽しめるのも魅力です。自分の参加した経験だと、来場者の男女比がほぼ同じ、他の即売会では少ないことが多い中高齢のおじさんの姿まで目立つのが印象的でした。

 これは、イベントで扱うボードゲームが、気軽に遊べてとっつきやすいゲームや、純粋に知的要素を全面に押し出したゲーム、あるいは歴史や地理、政治や文化、科学などをモチーフにしたゲームが多いことも理由かと思います。オタク的な二次元キャラクター的なモチーフのゲームもありますが、それ以上にこうしたゲームの方がアナログゲームでは盛んで、これも幅広い層に親しまれる一因になっていると思いました。他の同人イベントにはあまり行かない方も、是非とも一度来場してみてはどうでしょうか!

2017-11-28 なぜ「がっこうぐらし!」なのか。

kenkyukan2017-11-28

 先日発売のきららフォワードで、しばらく休載が続いていた「がっこうぐらし!」の連載再開が告知されると共に、実写映画化の告知が行われました。少し前からフライングでこの情報が飛び交っていて、まさかとは思っていましたが、すぐに公式の告知がされてしまい、これには驚くしかありませんでした。

 マンガやアニメの実写化については、厳しい反応や評価が送られることが常となっていますが、わたしもこの作品だけは少々懐疑的で、すぐに実写化がダメとは思いませんが、しかし「どう制作しても原作マンガやアニメとは違うものになってしまうのでは」という懸念が出てしまいます。すなわち、実写になることで、ごくオーソドックスなホラー、ゾンビ映画になってしまうのではないかという不安です。

 「がっこうぐらし!」の連載が始まったのは2012年。のち2015年アニメ化され、きらら原作のアニメとしてはかなり珍しい内容で、大いに話題となったのはいまだ記憶に新しいところです。すなわちきらら系作品では定番の日常ものではなく、崩壊後の世界が舞台のいわゆるゾンビアポカリプスもののホラーだったことで、大いに物議を醸しました(笑)。

 しかし、そうしたタイプのホラー作品ではありますが、いわゆるサバイバルアクションの要素だけでなく、主人公が学校で日々を過ごす女の子たちという設定もあって、厳しい日々の中でも楽しさを求める日常の姿や、かつて過ごした平穏な日々の回想を懐かしむ、叙情的な側面も大きい作品だと思います。原作者の海法紀光さんも、「ゾンビ物の作品としてすぐ思いうかべるような、バトルアクションものとは異なる路線」「過ぎ去っていく日々を精一杯生きる登場人物たちの学校生活を描く」などの方針が意図されていると語っています。

 これは、ひとつにはマンガやアニメだからこそ出来たこともあると思いますし、これが仮に実写であったとすると、やはりどうしてもスタンダードなホラー、ゾンビ映画的な要素が全面出てしまうのではないかという不安がどうしても拭えない。もちろん、実写映画でもそうした側面を大切に維持する方針でやってほしいと思いますが、果たしてそれが実現されるかどうか。

 また、先に放送されたアニメの出来がよく、原作で描かれなかったシーンをよく補完する練られた構成になっていたことも、実写へのハードルを高くしています。加えて、これまでのマンガ実写化作品を見渡しても、漠然とした傾向ではありますが、「原作マンガ→実写化」よりも「原作マンガ→アニメ化→実写化」の方が、うまく行かなかったケースが多いように感じられるのです。

 これは、先にアニメ化されることで知名度が上がって熱心なファンが増えることで、実写化への目がさらに厳しくなることが理由だと思いますが、この「がっこうぐらし!」の場合、アニメの内容もよく練られてすでに評価されたことで、実写に求められるハードルはさらに高くなっています。アニメのラストが非常に続きが気になる終わり方になっていたことで、実写よりもまずは2期(続編)を求める声が大きいのも逆風でしょう。

 ただ、このようにいろいろと懐疑的な見方をどうしても書いてしまいますが、一方でどんな作品が出てくるのか、怖いもの見たさもあって楽しみにしているところも大いにあります(笑)。いずれにしても、これから先情報が出てくるたびに非常な話題となることは間違いない。公開までそれを見て一喜一憂することになりそうです。

2017-11-23 やはり中山幸さんは藤原ここあ先生直系の後継者である!

kenkyukan2017-11-23

 前回の日記に引き続いてもう一度「ブレンド・S」関連で、原作者の中山幸さんについて語ってみたいと思います。以前から言ってはいたのですが、彼女こそあの藤原ここあさんに最も近い直接の後継者ではないかと思うのです。

 「ブレンド・S」は、アニメ化で同じレストランを舞台にした作品「WORKING!!」を連想させるといった話もよく聞くのですが、実際の作風は、それ以上にさらに藤原ここあさんの作品、特に「妖狐×僕SS(いぬぼく)」あたりに近い方向性があるのではないかと思っています。絵柄やキャラクターの構成、関係性において共通したものを感じます。

 特に、きらら系雑誌連載の4コマとしては、最近では珍しく男性キャラクターが登場し、かつ男女ラブコメ的な要素がかなりのウエイトを占めているところが特徴的です。以前はきらら4コマでもこういう作品は珍しくなかったのですが、最近ではかなりの少数派になっていました。この「ブレンド・S」は、この中山幸さんの作風が強く出た例外的な作品になっているとも言えます。

 また、中山幸さんのもうひとつの作品で、こちらはコミックアライブの連載「くだみみの猫」は、さらに直接的に藤原ここあ先生に通じるものを感じます。主人公の女の子と彼女を守る式神の青年との関係は、いぬぼくの主人公たちの関係にひどく通じるものがあります。こちらの方がより少女マンガ的な作風でもあり、やはりここあ先生と共通した雰囲気が強い。

 ここまで作風が共通しているのは、やはり個人の好みや求める作品性に通じるものがあったのでしょうし、かつて藤原ここあ先生が最も強く体現していたガンガン的な作風、その想像力に共感したところも大きかったのではないかと見ています。

 藤原ここあ先生が逝去されて久しい今、その最大の後継者とも言える作者の作品が、こうしてアニメ化されて一気に知名度が上がり、大きな人気を博しているのはただただうれしい。たまたまですが、いぬぼくのテレビ再放送ともかぶったのも何かの幸運だったのかもしれない。出来れば、これを機会に「くだみみの猫」の方にもスポットが当たってくれるとさらにうれしいですね。

2017-11-22 今こそ「ハイパーレストラン」を語ろうか。

kenkyukan2017-11-22

 今季のアニメではきらら4コマから「ブレンド・S」も好調で、同じレストランやカフェを舞台したヒット作品「WORKING!!」を引き合いに出されることも多いみたいですが、ここはさらに昔のエニックスのマンガから、90年代の怪作にして名作「ハイパーレストラン」(霧香&聖娜)を紹介してみたいと思います。

 「ハイパーレストラン」は、97年にエニックスのギャグ王で開始された連載で、のちに同誌の休刊に伴って99年にガンガンWINGへと移籍され、そちらで完結を迎えています。コミックスは全6巻。作者は、当初は「霧香&聖娜」として実の姉妹によるコンビのマンガ家だったようですが、のちに聖娜さんの方は活動をやめられたようで、3巻以降は単独の活動で「たかなし霧香」となっています。同作者の連載として、同時期のガンガンで連載された「ワルサースルー」もあり、掲載誌の関係でこちらの方がよく知られているかもしれません。

 肝心の内容ですが、レストランが舞台のマンガとはいえ、残念ながら「WORKING!!」のようにお仕事をそのまま扱う普通のマンガではなく、シュール過激な変態ギャグとなっていました。自称・レストランを救うという勇者だと名乗る奇行男・林田ベランメルジェと、彼に連れ回されるかわいそうなウエイトレス・増井メルルーサが、愉快な仲間たちと共に「レストランを救う旅」に出るというストーリー。連載後半では旅をやめ、自ら究極のレストラン(これが「ハイパーレストラン」)を作って経営するという話にもなります。

 さらには「レストランキラーズ」というなぜかレストランを壊滅させようとする悪の組織と戦うという展開にもなり、「ブリード呉樹」なるゴキブリを操る変態男や、「ヤナモン★イレルディー」なる毒物混入が必殺技のやばすぎる敵が登場。主人公の林田自身もモモンガに変身して空を飛び、同じくゴキブリに変身して空を飛ぶブリード呉樹と空中で乱舞してバトルする展開など、まさにこのマンガを象徴する変態バトルを存分に見せてくれました。

 しかし、これだけのギャグ作品ながら、一方で意外にもレストランの仕事や経営のあり方をシリアスに見せるパートもあり、そこでは考えさせられることも多々ありました。今でもよく覚えているのは、林田が「ハイパーレストラン」を開店した直後に、汚いみすぼらしい客が最初の客として入ってくる話です。

 見るからにひどい姿の客を見て、店員たちはみな嫌がって追い返そうとしますが、林田だけは優しく手を差し伸べ、ひとりのお客様として変わらぬおもてなしを見せたのです。どんな客でも優しく座席に案内して注文を取る。その姿に感化された他の店員たちも、すぐに心を入れ替えて心からおもてなしをするようになる。これを受けた客の方も「こんなみすぼらしい自分にこれほど優しくしてくれるとは」と涙を流して喜ぶ。このシーンには本気で感動してしまいました。

 また、この「ハイパーレストラン」連載当時は、今ほどレストランの仕事を扱ったマンガは多くなく、比較的珍しい存在だったのも貴重でした。今でこそWORKING!!とかブレンド・Sとかごちうさとかレストランやカフェを舞台にした人気マンガは枚挙に暇がありませんが、当時はレストランの仕事や業務の方にスポットを当てたマンガはまだ少なかったのです。その点において、この「ハイパーレストラン」は、今のレストランマンガの先駆的存在でもあったと思います。一般向けのマンガ情報誌でも評価されるなど、コア読者向けのエニックスのマンガの中でも幅広い読者に楽しまれる作品でもありましたし、今改めて見直されてもいい作品だと思いました。

kaorintype2kaorintype2 2017/11/22 07:49 霧香&聖娜さんは4コマ漫画劇場や同人のころから好きだったので、ハイパーレストランも好きでした。
ところで、おそらくお二人は実の姉妹ではないと思います。
当時の同人誌の後付や通販連絡先やペーパーからの判断ですので、ソースを示すのは難しいのですが。

2017-11-16 なぜ「魔法陣グルグル」でフランス思想家の名前が使われているのか。

kenkyukan2017-11-16

 先日より再アニメ化で新シリーズのアニメが続いている魔法陣グルグル。旧作のアニメよりかなりのハイペースであるものの、原作の面白さはほとんど失われておらず、毎回面白くて心の底から笑って楽しんでいます。しかし、原作の中盤からそろそろ後半へと差し掛かってくるあたりで、ひとつ興味深いことに気付くことになりました。

 それは、このあたりで登場するキャラクターの一部に、現代フランス哲学者思想家の名前が使われていること。具体的には、ガタリデリダラカンバルトといった人々の名前で、僧侶や魔法使いのようないわゆる賢者的なキャラクターのネーミングに使われていることが多い。グルグルには、ダジャレや語呂合わせ、あるいは服飾や音楽関係からのネーミングも多く、むしろそちらが大半なのですが、その中にこうしたフランス現代思想の名前が混ざっているのは面白いと思いました。これは、以前自分が原作を追い掛けていた時は気付かなかったことで、今回の再アニメ化で初めて気付きました。以前気付かなかった理由は、自分のそうした分野への知識がまだ乏しかったことに加えて、グルグル自体がRPGパロディを基本にしたギャグ・ファンタジーマンガで、あまりそうしたイメージと結びつかなかったことが大きかったと思います。

 ガタリ(フェリックス・ガタリ)は、フランス哲学者精神科医。後述のラカンに学んだポスト構造主義の先駆者の1人で、「分子革命」などの自著に加えて、同じフランス哲学者ドゥルーズとの共著も多い。グルグルにはプラトー教という宗教が登場しますが、これはこのふたりの共著のひとつ「千のプラトー」から取られたものだと思われます。哲学関連で、古代ギリシャ哲学者プラトンが元ネタという説もありますが、ここまで現代フランス思想関連の名前が集中しているところを見ると、こちらが元ネタである可能性が高いと思います。

 デリダジャック・デリダ)は、この中でも特に有名な思想家かもしれません。ポスト構造主義の代表的な哲学者で、いわゆる「脱構築デコンストラクション)」の概念を提唱したことであまりに有名。グルグルでも、中盤のクライマックスのアラハビカ編において、勇者に啓示を与えて導くというとりわけ重要な役どころを担うキャラクターになっています。

 ラカンジャック・ラカン)も有名な人物フランスのいわゆる構造主義思想家で、パリ・フロイト派のリーダー。鏡像段階の仮説や現実界象徴界想像界という概念で知られる。グルグルではかつて冒険者だった老人として登場し、「ラカンの日記」というダンジョンの攻略日誌を残しているところが面白いです。自分は結局そのダンジョン(きりなしの塔)を攻略できなかったが、その日記のおかげで勇者たちがついに攻略に成功した。「若き日の私はついに彼らと一緒に攻略したのだ」という一文が泣ける屈指の名エピソードになっています。

 バルトロラン・バルト)も、フランス哲学者で批評家。「物語の構造分析」を手掛けた批評家として知られ、特に「作者の死」という、「物語において作者は神ではなく、作品を読み解くのは読者である」という概念を提唱したことで、現代のコンテンツを享受するわたしたちにとっても無視できない存在だったりします。

 こうしたフランス現代思想家の名前が、なぜ「魔法陣グルグル」で採用されているのか。きっかけとしては、作者の衛藤さんが、こうした分野への興味や知識を持っていたり、あるいは実際に大学などで学んだ経験があるのではといったことは容易に推測出来ます。しかし、それをあえてこのマンガ(RPG的な世界を舞台にしたギャグファンタジー)に取り入れた理由を考えると中々興味深いところです。

 個人的な推測としては、この「魔法陣グルグル」、RPGパロディにした尖ったギャグ要素が非常に強かった初期の頃から、連載中盤に差し掛かるとやや雰囲気が柔らかくなり、豊かな世界観をより強く押し出してファンタジー的な雰囲気が強くなってきたこともあるのかなと思ってます。とりわけ、アラハビカ編においては、ヒロインのククリの心の中を描く精神的なストーリーも全面に出てくるあたりで、そうした精神的な物語をも作中で描きたかった衛藤さんの思惑と、こうした分野への興味が一致したのかもしれない。グルグルの創作においてもしかしたらそうした発想が起こったのかなと、そんなことを考えると面白いと思いました。

2017-11-15 待望の水野英多最新作は「裏世界ピクニック」!

kenkyukan2017-11-15

 先日、あの「スパイラル」の水野英多さんのガンガンでの新作として、「裏世界ピクニック」(宮澤伊織)のコミカライズが告知され、これには大いに驚きつつも喜んでしまいました。水野さん自身の最近のツイートで「裏で何かしら活動している」と書かれていて期待していたのですが、まさかこれがその次回作だったとは。

 「裏世界ピクニック」は、ハヤカワ文庫JAから出ている宮澤伊織さんの小説。宮澤さんは、これまではMF文庫J一迅社文庫から小説を出していましたが、今回ハヤカワ文庫から出たこの作品が、発売まもなくしていきなり話題となり、一気に注目されました。原作の単行本はまだ2巻までしか出ていませんが、このタイミングでコミカライズが決まるのも納得です。

 肝心の内容ですが、現代日本を舞台に都市伝説を題材にした異世界探索もののSFホラーでしょうか。ハヤカワということでSF作品というジャンルではあると思いますが、同時にファンタジー色、ホラー色も強い作品です。「裏世界」というタイトルどおり、日常のすぐ裏側に怪異が潜む非日常があり、その非日常の怪異が表側の日常へと侵食してくる恐怖、それが実に巧みに描かれています。関連作品として、旧ソ連ストルガツキー兄弟の「ストーカー」の名前を出す動きも一部で見られ、そうした作品に興味のある人ならより楽しめると思います。

 また、この作品が注目を集めた大きな一因として、最近になって盛り上がりを見せている都市伝説の話、とりわけインターネットで広がる噂話「ネットロア」を取り上げていることが大きいです。1巻の範囲内でも「くねくね」「八尺様」「きさらぎ駅」など、今では広く知られるようになった有名な都市伝説が登場。こうした都市伝説が、ビジュアル要素の強いコミカライズでどんな風に再現されるか、そこにも注目が集まります。

 さらにもうひとつ、主人公が女子大生の女の子ふたりであり、このふたりの百合的な関係がクローズアップされたことも、人気を集めた大きな一因となりました。立場や目的の異なるふたりが共同して異世界探索に当たるその関係性の面白さが見られ、これはあの「秘封倶楽部」との共通性も指摘され、一部クラスタの間で異様に注目される形にもなっていました(笑)。実際に作者の意識にもこの作品があるようで、今回のコミカライズでさらにそうした方面での注目も集めそうです。

 水野さんと言えば、かつては城平京原作の「スパイラル〜推理の絆〜」の作画担当として大きな人気を集め、スピンオフの「スパイラル・アライヴ」やあるいは外伝小説の挿絵やそちらのコミカライズの仕事も一手に手掛けています。最近も同じ城平京さんと組んで「天賀井さんは案外ふつう」という新作連載の作画を担当していました。また、「うみねこのなく頃に」のEP(エピソード)7のコミカライズの仕事も担当したことがあります。今回のSFホラー小説のコミカライズも、こうした過去作品の経歴からの抜擢ではないかと思いますが、しかしまだ始まって間もないシリーズのコミカライズはやはり驚きです。いよいよ落ち込みの激しい最近のガンガンで、久々に大きな注目作が出てきた点でも期待したいと思います。

2017-11-08 ドレッドノット

kenkyukan2017-11-08

 講談社の「good!アフタヌーン」の連載「ドレッドノット」(緋鍵龍彦)を紹介したいと思います。ウェブで無料公開されていた1話を読んで一気に引き込まれたのですが、先日待っていたコミックス1巻がついに発売されました。

 物語の冒頭は、就職活動に励む女子大生が、ひとりの男に声をかけられるところから始まります。「いいバイトがある」と誘われてタクシーに乗せられたあと、眠ってしまった彼女が目を覚ましてみると、そこは無数の恐ろしい絵が飾られた異様な部屋。部屋から出ても暗い通路に出るばかりで、そこでは恐ろしい化け物や壁に押しつぶされた肉の塊などさらなる恐怖が待ち構えていました。

 このまま閉鎖空間を舞台にしたホラーかサバイバルものが始まるかと思いきや、ようやく辿り着いた扉を開けてみると、そこはただの事務室。中では数人の男女が話し込んでいるばかり。そう、あれはすべてただの仕掛けだったのです。

 そんな形で始まる本作は、実は”屋内型特殊遊興企画業” すなわち「お化け屋敷」の制作者たちの仕事を描く物語でした。企画を練りこむプランナーの若者を中心に、大道具を組み立てる空間設計の担当者、電機関係を取り仕切るエンジニア、そして屋敷を彩る恐怖のビジュアルを一手に手掛けるアートデザイナー。彼らが役割を分担してひとつのセットを完成させる楽しさがよく出ていて、近年のお化け屋敷の盛り上がりも手伝って非常に興味深いテーマになっていると思います。

 わたし自身も、かつて高校時代の文化祭で、妙に張り切ってかなり本格的なお化け屋敷の制作に取り組んだことがあり、この題材にはひどく親しみを持てました。そのクラスは、普段はいい加減でふざけたクラスでしたが(笑)、その時は夏休みの間から数人の生徒たちと毎日制作を進め、最後の追い込みではほぼ全員で一気に教室のセットを完成させるという張り切りようでした。このマンガでも、そうした学祭でのお化け屋敷の制作の楽しさが語られる一幕があり、自分も大いに昔を懐かしみつつ共感してしまいました。

 また、「お化け屋敷といっても出来る前はただの場所。しかし始まれば最高に非現実な異空間に早変わりする」というセリフにも大いに共感できました。わたしのクラスで作ったお化け屋敷も、実際に仕上がってみるとほんとにそんな感じで、仕切りで区切られて迷路となった教室の中で、「おいおいここほんとに教室かー?」と叫んだクラスメイトの言葉が今でも印象に残っています。

 あと作者の緋鍵龍彦さんは、かつてはメディアファクトリーでよく活動していて、コミックアライブの連載「断裁分離のクライムエッジ」は、大きな人気を得てアニメ化されました。その後、コミックキューンで「放課後の先生」という、高校生の女の子と彼女たちに勉強を教える大学生の交流を描く4コママンガの連載も行っていました。この連載、個人的にはかなり気に入っていたのですが、残念ながら比較的短い期間で終了してしまいました。この「ドレッドノット」は、その「放課後の先生」の終了後すぐに始まっていて、今度は講談社の方での活動ということで少し意外に感じましたが、しかし予想以上に面白かった。今までになかった現実的なお仕事ものとしても期待したいと思います。

2017-11-07 「浜松が聖地のアニメって多いんだよ〜!」(うまる)

kenkyukan2017-11-07

 先日、あの「干物妹!うまるちゃんR」のアニメ浜松が舞台となり、また浜松が聖地のアニメが増えてしまったのかと感慨を新たにしました。かつてはアニメが放送されない地域とされていた静岡県ですが、ここ最近はどういうわけかアニメの舞台になることが目立つようになっています。とりわけ、県東部では沼津であの「ラブライブ!サンシャイン!!」、伊東で「あまんちゅ!」など人気作品の舞台として注目される機会が増えていますが、逆に西部の浜松市が舞台の作品が増えているのも面白いところです。

 浜松が舞台の作品の原点としては、まず何と言っても「苺ましまろ」ははずせません。女の子たちのシュールな日常を描いた作品で、少しニュアンスは異なるものの、現在の日常ものの原点とも言える作品のひとつであり、あるいは原作の時点で浜松市が明確に舞台となっていたことで、聖地巡礼の動きが起こった最初期の作品のひとつでもあります。アニメが放送された2005年は、あの「らき☆すた」の2007年より早い。

 そして、その「苺ましまろ」と同じ電撃雑誌連載マンガの最新作で、浜松が舞台として話題となったのが「ガヴリールドロップアウト」。アニメのOPでいきなり浜名湖上空からの遠景が映ったことで、一気に話題となりました。作中に実在の舞台が登場するシーンはそれほど多くないですが、それでも浜松駅北口近辺や市立図書館、そして海の観光地である弁天島(作中では「舞天島」)の光景が描かれているのはポイントが高い。浜松市も作品の反響を受けて舞台地のマップ制作やポスターの掲出などを行っています。

 もうひとつ、2016年になってウェブ配信&劇場版という形でアニメが制作された「planetarian」も、浜松市が舞台としてひどく詳細に描かれています。2004年発売の原作ゲームの時点で浜松が舞台モデルでしたが、アニメではその描写がさらにスケールアップ。崩壊後の廃墟となった街という設定ですが、それでも市内の中心部の多くの箇所が極めて忠実に描かれ、中でもかつて浜松最大のデパートだった松菱百貨店(作中では「花菱」)のビルは、作中最大の舞台であるプラネタリウムのある場所として大きくクローズアップされました。舞台の登場頻度という点では、こちらの方がまさに浜松という街を実感できると思います。

 しかし、その松菱の建物は、かつて原作ゲームの発売の頃はまだ存在していましたが、経営破綻からの再開発計画も頓挫し、2015年には解体され、2016年アニメ配信された時にはすでになくなっていました。街は常に変化し、かつての聖地が消えてしまうことはよくありますが、その典型的な例となってしまったことは寂しい限りですね。

 これ以外の作品でも、NHKで放送された「クラシカロイド」でも舞台になっており、あるいは「咲-Saki-阿知賀編」でも東京への遠征中に立ち寄ったサービスエリアという形で登場したり、あるいは前述の「干物妹!うまるちゃんR」でも、お兄ちゃんの出張先にうまるもついてくるという形で、ちょっとした観光アニメのような話としてかなり大きい扱いの1話になっていました。意外なほど舞台に選ばれることの増えた浜松ですが、比較的人口の多い栄えた地方都市であり、あるいは東京圏名古屋圏関西圏とも距離的に近いというポイントも、選ばれるひとつの理由かもしれませんね。

2017-11-02 20年前の「浪漫倶楽部」でハロウィンイベントを描いた天野さんは神。

kenkyukan2017-11-02

 今年も先日のハロウィンの話題でひとしきり盛り上がったようです。しかし、6年前のアニメAチャンネル」で「なんか最近急に流行りだした気がする」というセリフがあるように、おそらくは日本ではここ7〜8年で急速に流行ってきた印象があり、とりわけ街で仮想が見られるほどに盛り上がってきたのは、ほんのここ3〜4年ほどではないかと思います。ハロウィンという行事自体は前から知っていた人は多かったと思いますが、ここまで急速に浸透したのは面白い現象で、自分としては楽しいイベントがひとつ増えて歓迎だと思ってます。

 しかし、このハロウィンに関連してひとつ思い出す昔のマンガがあります。「ARIA」天野こずえさんの連載デビュー作で、ガンガンで約20年前に連載された「浪漫倶楽部」です。

 「浪漫倶楽部」は、少年ガンガンで1995〜1997年に連載された天野さんの最初の連載。中学で「浪漫倶楽部」という不思議な現象を追い求める部活の活動を描く作品で、日常のささやかなファンタジー要素と切ないストーリーが魅力でした。しかし、それと同時に「終わらない放課後」というテーマで、学校の放課後の楽しい日常を描くというコンセプトもあり、そのためか文化祭のような学校の行事が積極的に描かれていたのも特徴でした。中には七夕祭りのような他の学園ものではあまり描かれないようなイベントもあり、その中のひとつにハロウィンまであったのです。

 当時はハロウィンでイベントが開かれることはあまりなく、まして学校行事で行うところはほとんどなかったと思います(今でも多くないでしょう)。七夕祭りも学校行事としては相当マイナーだと思いますが、まだ地域の行事と連動するような形で笹に短冊を飾るくらいのことをやっても不自然ではない。しかし、ハロウィンとなると当時はまだ海外のイベント。マンガの中ですらこうしたイベントが、まして学園もので描かれることは珍しいなと思っていました。

 しかし、あれから20年。いつの間にかハロウィンはここまで一般的に広まったイベントとなり、今このエピソードを見てももう違和感はなくなりました。ある意味今の流行を早々と先取りするような形となっていて、20年前の「浪漫倶楽部」でハロウィンを描いた天野さんは軽く神ではないかと思います(笑)。まさに早すぎる名作。今こそこういう視点からも見直しても面白いと思いました。

2017-11-01 「罪と快」(染谷ユウ)

kenkyukan2017-11-01

 ヤングガンガンの最近の新連載から「罪と快」(染谷ユウ)をおすすめしたいと思います。今年(2017年)の8号から始まった連載で、先日コミックス1巻が発売されました。

 内容ですが、厳しすぎる両親からのストレスに耐えかねて盗撮行為を重ねるようになった少年が、同じ高校の女子生徒に盗撮がバレて脅迫され、「緊縛師」である彼女の元で縛られるプレイを強要されるというもの。一言で言えば、男子高校生が女子高生に縛られる話です。

 はっきり言えば非常にマニアックな内容ではあるのですが、そのストーリーは確かに見せるものがありました。成績に対して厳しすぎる両親から自分を認められないつらさ、そこから盗撮という代償行為に逃げるという心理緊縛という異常な行為に対する恐怖、しかし次第にその快感にのめりこんでしまう抗えない性(さが)。そうしたことが迫力の筆致でよく描かれていると思います。

 とにかく絵がうまいのも魅力ですね。端的に女の子のかわいさもよく描けていると思うんですが、同時に迫力の筆致で随所で影が差すような暗い心情もよく描かれている。作者の染谷さんは、これまで名前を知らなかったので、ほんとにヤングガンガンからのデビュー連載なのかなと思いますが、最初からかなりレベルの高いビジュアルで完成されていると思いました。

 さらに、最新の展開では、ついに盗撮が両親にバレたことをきっかけに、両親に自分のつらい心情をぶちまけ、一転して譲歩した理解ある父親のもとで和解、ストレスから解放されて真っ当な高校生活に向かうかと思われました。しかし、あの責められる快感を忘れることが出来なかったのか、今度は女子高生から貞操帯を渡され、それを装着することでまともに自慰も出来ないという苦痛に責められ、ついには女生徒から射精管理をされるという斬新な展開に発展(笑)。

 ストレスによる逃避行動の結果ではなく、自分から快感を求めての行動へと発展してきて、これはいよいよ面白くなってきましたよ。今のところコミックス1巻の発行部数は少ないようで、あまり出回っていないのが残念なところですが、これは注目の新作として是非ともお勧めておきたいと思います。

2017-10-27 けものはいてものけものもいる!「のけもの少女同盟」!

kenkyukan2017-10-27

 今月のきららコミックス新刊では、現在絶賛アニメ放送中の「ブレンド・S」の4巻や、休刊したミラクで惜しくも完結巻となった「しましまライオン」2巻など注目の新刊がありますが、今回はきららMAX期待の新作「のけもの少女同盟」(榛名まお)をおすすめしたいと思います。

 「のけもの少女同盟」は、タイトルどおり(?)学校のクラスで友達が作れず孤独になってしまった女の子たちが、友達を作って社会復帰を目指すために同盟を組むというストーリー。ひょんな偶然から保健室で全員が顔を合わせることになった彼女たちは、それぞれのひと癖もふた癖もある妙な個性に戸惑いつつも、なんとか歩調を合わせて活動を開始することになります。

 一見して明るく協調的だけど極端に身体が弱く血を吐いたりすぐぶっ倒れてしまう霞、ハーフのオタク少女でテンパるとなぜかカタコトの外国語になってしまうニカ、一見して活動的に見えて人と会話しようとするとなぜかキレてしまう「ツンギレ」のすずめ、極端な人見知りで人前に出るとまともに喋れなくなる詠子と、それぞれぶっ飛びすぎた個性の持ち主。それぞれそんな生徒たちをまとめる養護教諭ももも、教諭なのに生徒の制服を着ていたりする。そんなキャラクターたちが集まって、変な性格の「のけもの」同士が楽しい活動のひと時を過ごす。そんなドタバタなコメディがまず何よりも楽しい作品となっています。

 そして、何よりもキャラクターの見た目もとてもかわいい。今のきららMAXの粒揃いの連載の中でも、キャラクターの魅力でも大いに期待できる作品ではないかと思います。コミックスの表紙を見てかわいいと思ったら手に取って絶対に間違いはない(笑)。

 作者の榛名まおさんは、古くは90年代から活動を始めていて、竹書房まんがくらぶで2001年より掲載された「ぱわまゆ」が4コマ誌での初連載となるようです。その後芳文社きららMAXに移り、こちらで「ぐーぱん!」「こずみっしょん!」といった連載を行っています。同時にホビージャパンのGAME JAPANでも一時期連載を持つなど、きららで現在連載中の作者の中でも、特に活動履歴の長い作家になると思います。しかし、これまでの連載は、いずれも比較的短期の連載に終わっていました。ゆえに、この「のけもの少女同盟」には、今度こそさらなるヒットを期待したい。

 思えば、女子高生になった動物たちの学校生活を描く「しましまライオン」のコミックスと同時に、この「のけもの少女同盟」のコミックスが発売されるのも、なにかの因果かもしれません。けものはいてものけものもいる! それがまんがタイムきらら