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2018-10-18 「となりの吸血鬼さん」という百合覇権(?)アニメ。

kenkyukan2018-10-18

 ちょっと前にもこの日記で取り上げた「となりの吸血鬼さん」。コミックキューンの本命として、「ひなこのーと」に続いてアニメ化に大いに期待をかけていた のですが、そのアニメの出来が最高に素晴らしいものがあったので報告いたします。いわゆる日常ものとして、4コママンガ原作として、本家であるきらら以上のものがあるかもしれない。

 この「となりの吸血鬼さん」、原作からして過去の作品から影響を受けているところが強く見られ、まあ一言で言えばきんいろモザイクだったり東方東方project)だったり果てはジョジョだったりするわけですが、アニメでもそれがはっきりと表れていながら、決してそれが抵抗感にはならず、むしろ原点を知りながらも楽しんでしまえる懐の広さを持っていると思うのです。むしろ、こうした日常系・きらら系と呼ばれるジャンルのファンにとっては、待望の作品となっているようです。

 加えて、アニメはとにかくギャグ、コメディの見せ方が良い。「となりの吸血鬼さん」の面白さとして、本来なら非現実のファンタジーやホラーな存在である吸血鬼が、現代の文化に完全に溶け込んで庶民的な生活を満喫している、そのギャップのおかしさがあります。日々深夜アニメを楽しみ、時には作者のサイン会にも赴き、吸血鬼として必要な血液もネット通販で確保、季節によって温めたりアイスにしたりして楽しんでいる。逆に、人間であるはずの灯(あかり)の方が、どこかずれた行動を取る変な女の子として描かれている。このギャップからくるおかしさが、アニメでも1シーンごとに丁寧に描かれ、アニメならではの演出と声でさらにパワーアップしていると思いました。

 それともうひとつ、原作よりも百合要素がかなり強く描かれているのも特徴的ですね。原作ではそれほど強くその印象はなかったのですが、アニメではオープニングからしていきなり百合的なシーンがふんだんに配置されていて、これはちょっと驚きました。本編でも、1話からしてそうしたシーンがかなり大きく描かれている。きらら4コマ的なほのぼのコメディ百合として、その究極にある形だと思いました(笑)。

 同じ百合と呼ばれる作品でも、シリアスなストーリーの要素が強い「やがて君になる」とは対極的なほのぼの日常コメディ。今季は他にも百合と呼ばれるアニメが多く、このジャンルの広がりを感じられる時期になっていると思います。個人的にはどこまでも和んで何度でも楽しめるこの作品はかなりおすすめ。「ひなこのーと」に続いてコミックキューンを盛り上げる大きなきっかけにもなってほしいと思います。

2018-10-11 「ゴブリンスレイヤー!」

kenkyukan2018-10-11

 この秋からのアニメ、これはという原作からのアニメ化が多すぎてうれしい悲鳴を上げているところですが、その中でもこれはと思うものを今ひとつ挙げるとすれば、「ゴブリンスレイヤー(GOBLIN SYAER!)」でしょうか。原作はGA文庫の小説で、先日よりスクエニの雑誌で本編+外伝の合計3作と大々的にコミカライズされていて、以前から非常に推されている作品となっていました。今季数ある原作アニメの中でも、すでにかなり話題となっていたこの作品、アニメの出来も期待通りとなっていました。

 その内容は、ファンタジー世界でゴブリン退治をひたすら積み重ねる冒険者の活動を描いたシリアスでハードなファンタジー。他の冒険者たちが、他のもっと強いモンスター、もっと高難易度とされるクエストへとやがて進んでいくのに対して、この男は最も低級とも言えるゴブリンを殺す稼業を延々と続ける。その執拗なまでの徹底した仕事ぶり、生き様に強烈に惹かれる物語となっています。

 ゴブリンといえども群れを成して狡猾な戦術で立ち向かってくる彼らは脅威であり、その退治に際して必要な準備を周到に行い、的確な戦術と戦闘能力で確実に全滅させていく。同じゴブリン退治を繰り返す話として、少し前にアニメ化した「灰と幻想のグリムガル」がありますが、あちらが初心者の冒険者がやむをえずゴブリンを倒すクエストを行っているのに対して、こちらはもうすでにかなりのベテラン熟練者の域に達していながら、ある理由のためにひたすらゴブリン殺しを行う。残虐な描写も頻繁に見られる、よりシビアでハードな世界観となっていて、こうした作風には好みが割れるかもしれませんが、ひとつの本格ファンタジーとして説得力と魅力のある設定だと思っています。

 もうひとつ、この作品で特筆すべきことは、もとは「ウェブ上でAAアスキーアート)と組み合せて公開されていた作品」であること。それがのちに小説として書き直しされたものが、GA文庫の編集者によって拾われて商業化されたという特殊な出自を持っています。

 さらには、いわゆるTRPGテーブルトークRPG)のセッション、そのゲーム的な要素を元にしているのも特徴で、いかにクエストを確実に達成するかという着眼点で描かれているのも魅力です。主人公のゴブリンスレイヤーや周囲を取り巻く人々がすべて肩書きとしての職業名で呼ばれたり、あるいは「He does not let anyone roll the dice.」という作品のサブタイトルにもそれが表れています。アニメでも1話最後でダイスを振る効果音がこっそりと差し込まれたり、こうした設定を知っている人ならおっと思うような要素が織り込まれています。

 また、TRPGのみならず、例えばウィザードリィ世界樹の迷宮のような厳しいバランスで知られるダンジョンRPG、同じく高難易度で知られるダークソウルのような3Dアクションが好きな人にとっても、いろいろと思うところがあるかもしれません。アニメで興味が出てきたなら、こちらも完成度の高いスクエニのコミック版にも目を向けてほしいですね。

2018-10-02 やがてアニメになる(なった)。

kenkyukan2018-10-02

 いよいよ迫ってきた秋クールのアニメ放送ですが、今回はいつにも増して原作付きアニメで楽しみなものが多く、今から放送を待ち望んでいるところです。その中でも個人的に本命は、なんといっても「やがて君になる」でしょうか。電撃大王で連載が始まったのはもう3年以上前ですが、「もう3年経ったのか」と思ってしまうほど、今でも新鮮さに満ちた作品として追い掛け続けています。最近の電撃系雑誌は、急速に百合系作品に力を入れるようになり、「新米姉妹のふたりごはん」や「熱帯魚は雪に焦がれる」などの期待作が何本も連載され、「エクレア」という百合アンソロジーまで定期的に刊行するようになりましたが、それはこの「やがて君になる」の成功が最大の理由のひとつであることは間違いないと思います。

 本作の最大の魅力は、やはり百合的な(女の子同士の)ひとつの恋愛の姿を真正面から描いていることでしょう。「誰かを特別に思う気持ちが理解できない」という悩みを抱える少女・小糸侑と、そんな彼女を見て「ならば素の自分を見てくれる」という希望を抱いて接しようとする生徒会長・七海燈子。そのふたりの自らの悩みに対する葛藤と、それを理解した上で徐々に近付いていくふたりの関係性。それがひとつひとつのエピソードを通じて丹念に描かれています。

 さらに、このふたりの関係性のみならず、周囲のキャラクターの間でも様々な形での恋愛、愛情、交流の形が見られるのも見所です。主人公の侑の抱く「誰かを特別に思う気持ちが理解できない」という感覚も、やや特殊な心理とも言えますが、他にも、例えば自分自身は恋愛をする欲求のない、いわゆる「無性愛」とも取れる男子生徒(槙聖司)や、小説を通じて作者に特別な感情を抱く女子生徒(叶こよみ)など、様々な感情を見せるキャラクターが登場。こうした現代的とも言える恋愛の多様性描写も、大きな魅力ではないかと思います。

 さらにもうひとつ、タイトルの「やがて君になる」に直接結びつく、もうひとつの大きなテーマを描いているところも魅力ではないかと思います。燈子が、かつて死んだ姉の影から逃れられず、その代わりになるべく努力してきた結果抱いた、素の自分を好きになれずにいるという大きな悩み。それが解消される大きな契機となる生徒会による文化祭劇。原作ではひとつのクライマックスとして先日通り過ぎたばかりですが、これがアニメでどう描かれるのかも注目したいと思います。

 こうしたシリアスな作品ではありますが、作中の雰囲気は必ずしも暗いところばかりではなく、原作の仲谷さんの中性的な絵柄も手伝って、さらっとした明るい雰囲気が全面に感じられるのも魅力でしょうか。これは、掲載誌が電撃大王であることも関係しているかもしれませんが、少女マンガ的な雰囲気・絵柄の多い百合姫の作品と比べても、少年誌寄りのバランスの取れたかわいさが同時に感じられるのです。個人的には、こうしたビジュアル的な要素も、人気の大きな理由になっているのではないかと思っていますし、それがアニメでどう再現されるかにも期待したいですね。

2018-09-28 「ハイスコアガール」ついに最終回。

kenkyukan2018-09-28

 7月よりアニメも好評放送中の「ハイスコアガール」。しかし、原作の方は先日最終回が告知され、大いに衝撃が走ったのですが、ついにこのビッグガンガン9月発売号において終了を迎えることになりました。最終回は、もはや多くを語ることもない万感の内容で、これまで登場したゲームキャラクターたちが揃ってハルオの後押しをする展開は、これまでの集大成のようで思わず泣けてしまいました。

 「ハイスコアガール」が始まったのは、まだビッグガンガンヤングガンガンの増刊だった2011年。気が付けば約8年もの長い連載になっていました。しかし、連載途中で巻き起こった著作権問題により不慮の中断となり、2014年から2016年にかけて2年もの間連載を休止していたことは、大いに心に留めておく必要があるでしょう。これによって連載の勢いは一時大きく削がれ、再開後も著作権に関わる場所(主にSNKのゲームに関する描写)は多くが差し替えとなり、当初望んだ形での内容にならなかったのは、あまりにも残念なところでした。さらにテレビアニメに関しては、2013年に企画が始まり、2014年には放送される予定だったはずが、この騒動で完全に未定となり、実際に放送されるまでに4年を要することになってしまいました。

 作品の内容も、そうした連載の経緯に合わせるかのように激動と言えるものでした。90年代のゲームセンターを舞台に、日々進化するゲームを追いかけるかのように、主人公のハルオ(矢口春雄)は、小学生から中学生、そして高校生へと成長し、その間に大野晶や日高小春らヒロインたちとの恋愛物語を展開していく。「90年代アーケードラブコメディー」というコピーになっていますが、実際にはひどく重い展開が多数訪れ、それに必死で立ち向かっていくハルオの成長物語になっていたと思うのです。このマンガの読者には、かつての90年代のゲームの描写に興味を持って読み始めた人と、こうしたラブコメや恋愛・成長物語に惹かれて読んだ人がいると思いますが、その双方を満足させるに十分な内容だったと思います。

 もうひとつ、このマンガならではの要素として、この双方を絡めた「90年代ならではの時代性」を挙げたいと思います。作品の舞台である90年代は、時事や世相的に見ても激動の時代とも言え、例えば95年には阪神大震災オウム真理教事件で大いに揺れました。しかし、このマンガの作中では、そうした出来事はあまり描かれず、むしろハルオが日々取り組むゲームの流れが詳細に描かれる。95年と言えば、いまだアーケードは盛り上がりを持続していて、新興の3D格闘を中心にいまだ話題作が次々と出ていた時代。さらには家庭用ゲームでも、当時発売直後だった次世代ゲーム機の話題で持ち切りでした。そんな時代に、ハルオは日々新しいゲームの情報を敏感に追い掛け、真剣にゲームに取り組んで腕を磨いていく。そんなあの時代ならではの努力がダイレクトに描かれているのです。

 これが、もし普通の物語だったら、震災オウムのような当時の時事的な話題が、物語の背景として描かれるのだと思います。しかし、当時のゲーマーにとっては、日々登場するゲームを追い掛けることがすべてだった。わたし自身も、当時は新作の情報には常に眼を光らせていましたし、どこのゲームセンターに何が入荷したかすべて覚えていましたし、日々自分のキャラクターをどう強くするかとかステージの攻略法とかそんなことばかりを考えていた。そしてこの「ハイスコアガール」は、そんな当時の時代性のもうひとつの一面を、間違いなく捉えた名作だったと思うのです。

2018-09-24 今こそ「ゴッホちゃん」を語る絶好の機会かもしれない。

kenkyukan2018-09-24

 夏アニメもそろそろ終わりですが、その中でもひときわ怪作として注目を集めたギャグ作品「あそびあそばせ」。その原作者である涼川りんさんが、かつてスクエニヤングガンガンで、まったくの別名義で連載していた作品があるのです。かつて連載中に大いに評価して取り上げたことがあるのですが、今こそそれを再度取り上げるべき時かもしれない。

 そのマンガとは、「ゴッホちゃん」(マブレックス)。この当時から独特の濃い絵柄と壊れ系のギャグは健在で、そこは「あそびあそばせ」とも非常な共通感があります。しかし扱うテーマやコンセプトが大きく異なるため、今見るとやはり相当意外にも感じます。

 「ゴッホちゃん」は、タイトルどおり19世紀フランスの画家・ゴッホを主人公にした4コママンガ。しかし、ゴッホがやたら頭身の低いデフォルメキャラでしかも社会不適合な変人として描かれ、さらには彼と一時期同居していたゴーギャンはなぜか獣人の姿で登場し、ゴッホの奇矯ぶりに困らされる苦労人として描かれ、さらには時折2人の下に顔を出すロートレックの変態ぶりがまたやばい。マニアックすぎる性癖の春画を所持していたり、自分が脱糞する姿をわざわざ絵に残したり、人気歌手のイヴェット・ギルベールを異様にひんまがった顔で描いたり(すべて史実)、もう最高に笑えます。

 ゴッホの弟のテオが、お人よしで兄の無茶ぶりを必死に叶えようとするかわいそうなキャラクターになっていたり、逆に妹の方は辛辣な性格で描かれていたり、実在の人物がひとりひとり最高に面白く描かれていて、思わず笑ってしまうこと必至。

 そして、これだけのぶっ飛んだ解釈に飛んだ壊れキャラクターによるギャグ4コマでありながら、意外なほど実際の史実に沿った形で描かれているのが、非常に興味深いところです。確かに誇張してギャグ化されてはいるものの、それらはすべて芸術家たちの実際の姿に根拠がある。かつて懸命に生きた芸術家たちに対する作者の愛と思い入れに満ちた作品になっているのです。

 さらには、この作者の絵がまたうまい。普段はデフォルメ調で描かれながら、コマによって突然写実的なリアルな姿で描かれ、その描き込まれた濃いタッチには思わず眼を引かれるところがあります。とりわけ面白いのは、作者自身が実際の名画を模写してマンガに登場させているところで、各回の最後はその名画の大写しで締めるちょっといい話になっています。また、この絵の中に画家たちがそっと描かれているのも楽しい遊び心に満ちています。

 また、この作品と同系のコンセプトの作品として、この前作でフェルメールを面白おかしく描いた「ウルトラマリン・ブルーマン」(「ゴッホちゃん」コミックスに同時収録)、電撃のウェブサイトで連載されている「お気楽シェイクスピアの二日酔い劇場」があります。まったく同じ面白さを楽しめるので、興味が出てきたらこちらも合わせて読むことをおすすめしたいですね。

2018-09-19 「トリコロ」だけは外せなかった。

kenkyukan2018-09-19

 前回の日記で取り上げたきらら展の展示作品。創刊初期の作品から満遍なく取り上げていて非常に好感が持てるのですが、ただ唯一、これだけはさらに入れてほしかった作品があります。「トリコロ」(海藍)です。

 まんがタイムきらら創刊号(2002年5月発売)からの連載で、ほどなくして圧倒的な人気を得て、ほぼ毎号表紙と巻頭カラーを飾るようになります。まさに初期きららの看板作品にして雑誌のイメージそのもの。また、当時ようやくジャンルとして知られるようになった「萌え4コマ」を代表する作品ともなり、萌え4コマといえば「あずまんが大王かこれ(トリコロ)」が真っ先に名前が挙がるような作品だったのです。

 その内容は、女子高生(高校2年)の主人公・七瀬八重を中心に、その同居人やクラスメイトたちとの日々のにぎやかで楽しい生活を描く日常もので、のちに続く萌え日常系作品の要素をほぼすべて満たすような作品でした。すなわち、

•女の子とその同居人やクラスメイトたちが主役。

•主役が4人(3人・5人)の女の子というテンプレート

•普段の学校生活や家での日常が描かれる。

•激しいギャグよりもほのぼの和むようなエピソードが中心。

•男性キャラクターはあまり登場しない。

•いわゆる百合的なキャラクター、関係性の描写

など、のちの萌え4コマテンプレートと言える条件はほぼ満たしていました。「あずまんが大王」と並んで、このジャンルの定着に大きな役割を果たしたことは間違いない。とりわけ創刊間もないきららにおいて、その雑誌への貢献度は計り知れないものがありました。

 また、作者である「海藍」さんは、きらら創刊以前から芳文社の4コマ誌で活動しており、この「トリコロ」以外にも「ママはトラブル標準装備!」や「特ダネ3面キャプターズ」という連載を行っていて、一時は3作品同時連載のような状態でした。「トリコロ」自身も、一時期は「まんがタイムナチュラル」という姉妹誌で平行連載していました。

 しかし、こうした連載の最盛期でも「休載が多い」という不安定さを抱えていて、やがて「ママはトラブル標準装備!」は(おそらく)打ち切りでの終了、「特ダネ3面キャプターズ」は、ある月の休載を最後に掲載されなくなり、その後何度か散発的に掲載されるも、結局最後は二度と掲載されることはなくなってしまいました。

 「トリコロ」も、きらら2005年5月号を最後に掲載が途絶え、事実上の休載。しかし、その後しばらくして、作者のサイトで掲載誌変更を発表され、なんとメディアワークスの「電撃大王」に移籍することが発表されます。看板中の看板作品の他社移籍は、当時の読者を非常に驚かせる出来事となり、芳文社との間で何かあったのか様々な憶測が飛ぶ事態となりました。そして、電撃大王2006年6月号より連載再開。しかし、当初から休載が目立つなどやはり連載は不安定で、2009年7月号を最後に掲載は途絶え、以後今に至るまで掲載されていません。この時、作者のもうひとつの連載だった「特ダネ3面キャプターズ」が、代わりに連載再開されるという話になり、これも読者の間で物議を醸しましたが、こちらも約2年の連載期間で終了。これが作者の海藍さんの現時点最後の商業活動となっています。

 そして2018年。今回のきらら展への展示作品に「トリコロ」が入らなかったのも、こうした他社移籍などのかつての出来事が理由なのかなと推測はできます。しかし、きらら創刊初期の看板作品にして、かつての萌え4コマ象徴ですらあった「トリコロ」が、きららの歴史を辿る展示作品に入らないというのはありえない。これなしできららの歴史を語ることは出来ないと思いますし、なんとしてもラインナップの先頭に入れてほしかったと思っています。

2018-09-18 「まんがタイムきらら展」

kenkyukan2018-09-18

 先日より開催が告知されていた「まんがタイムきらら展」の公式サイトが公開され、開催概要が告知されました。思ったより大規模な展示となっているようですが、その中で特にこれはと思ったのが、15年のきららの歴史を振り返るコーナーの実物雑誌展示と、さらにこれまでの作品から80作品をピックアップした作品展示コーナーでしょうか。80作品の中にはアニメ化されていない作品も多数含まれ、さらには2000年代前半のきらら創刊初期の作品から、満遍なくピックアップされていることに思わず注目してしまいました。

 ここ最近の「きらら」系作品の人気は、やはり積極的に行われるようになったアニメ化の影響が大きく(特に2013年〜2014年ゆゆ式きんいろモザイクご注文はうさぎですか?のヒットが大きい)、これらアニメ作品をきっかけにきらら4コマに入った読者はかなり多いのではないかと思います。一方で、それ以前の昔の作品、特にアニメ化されていない作品が話題に上ることは、以前よりもさらに少なくなっているように思いました。そんな中で、こうして初期の頃からの作品が展示されるイベントというのは、非常に貴重な機会ではないかと思えるのです。

 まず、2002年のきらら創刊直後の最初期の連載。この当時の連載では、「三者三葉」(荒井チェリー)や「ひだまりスケッチ」(蒼樹うめ)は、いまだに連載が続く人気作品ですが、それ以外にも「ねこきっさ」(ととねみぎ)や「姉妹の方程式」(野々原ちき)、「かみさまのいうとおり!」(湖西晶)など、当時の代表作と言える作品は数多くありました。こうした作品が創刊初期まで遡ってピックアップされているのはうれしい。

 少し時代が下った2000年代後半でも、これはという作品は多い。この当時のヒット作となると、2007年になってアニメ化された前述の「ひだまりスケッチ」や、2009年のアニメ化で空前の話題となった「けいおん!」の存在が大きいですが、これ以外にアニメ化こそされなかったが当時の雑誌の代表作と言える作品は数多くありました。きららの「うぃずりず」(里好)や「ふおんコネクト!」(ざら)、姉妹誌のMAXでは「イチロー!」(未影)や「ひろなex.」(すか)、キャラットからは「ラジオでGO!」(なぐも)や「アットホーム・ロマンス」(風華チルヲ)あたりが挙げられるでしょうか。「うぃずりず」は、金髪少女異文化交流4コマの元祖的存在だと思ってますし、あるいは「イチロー!」は、当時何度もMAXの表紙になったことから、今でもあの頃のMAXのイメージという印象が強いです。現在の「きんいろモザイク」や「ごちうさ」などのヒット作が看板となった以前のMAXは、自分にとってはこういうイメージの雑誌でした。

 こうした作品が、最近のアニメ化を伴うヒット作品と並んで取り上げられる機会というのは、ほかのイベントでは中々ないと思いますし、雑誌の変遷とその歴史を辿るという点でも貴重な機会ではないかと思います。最近になってきらら4コマに入ってきたファンのみならず、昔から4コママンガを読んできた読者にも楽しめるイベントになるのではないかと期待しています。

2018-09-12 それでも華々つぼみ先生を応援していく(定期)。

kenkyukan2018-09-12

 先日、まんがタイムきらら2015年より連載されていた「きらきら★スタディー〜絶対合格宣言〜」のコミックス最終3巻が発売されました。受験勉強に取り組む部活という、きらら系の学園ものコメディでありそうで意外になかったコンセプトの作品で、本格的に勉強に取り組む活動ぶりと随所に見られる受験勉強の小ネタ、対照的に普段はお気楽で楽しいコメディと、個人的にはかなり面白い作品だったと思っています。華々さんならではの画力による作画も相当なもので、3巻で終わってしまったのが本当に残念でした。

 作者の華々さんは、同時期にコミックキューンでも「クロちゃん家の押入れが使えない理由」という連載を続けていましたが、こちらは2巻で終了。なぜか主人公の部屋の押入れが宇宙とつながってしまい、個性的な宇宙人たちが次々とやってくるという、こちらはぶっとんだ設定が全面に出た楽しいコメディでした。これもいい線行ってる作品だと思ったのですが、早い時期のおそらくは打ち切りでの終了でコミックス2巻で終わってしまいました。

 さらに遡ると、きららではひとつ前に2012年〜2015年に連載された「コドクの中のワタシ」という作品もありました。こちらは、人外たちが集められた学校のクラスに、ただ1人入れられた人間の女の子の苦労を描いた学園コメディで、クラスメイトに獣人や吸血鬼、天使、果ては触手全開の宇宙人まで登場するこれもなかなかに刺激的な設定だったと思います。設定的には「クロちゃんちの押入れが使えない理由」の原点と言えるかもしれません。こちらもかなりよかったと思うのですが、しかしやはり2巻で終了。

 さらに遡れば、こちらは角川のコンプティークで2010年より連載された「放課後アトリエといろ」こそが、華々 さんの商業初連載作品にして原点になると思います。もともとは当時開催されたコミックイラストコンテスト(マンガ部門)や漫画新人賞の受賞作で、個性的な部員たちによる美術部の活動を描くコメディでした。美術部や美術科を舞台にした4コマはいくつも見られますが、これは華々さんならではの目に映えるカラフルなイラストで、明るく楽しいイメージがよく出た作品だったと思います。当時の角川も一時期相当推していたようで、2011年よりコンプエースでも同時連載となり、書店向けの情報誌でも短編が掲載されるほどでした。

 しかし、どういうわけかコミックスの売り上げは伸び悩んだようで、これを理由に掲載は次第に縮小され、約3年後の2013年に打ち切りとして終了。この処遇に際して多少のごたごたもあったようで、連載最後のあたりの数回はコミックスにも収録されていません。個人的にもこれが終わるのは非常に残念で、各所で惜しむ声も多数聞かれ、再開を望む声ももちろんあったのですが、結局実現することはありませんでした。

 さらにさらに遡れば、わたしが華々さんを知ったのは、2009年に開催された「高校生コミックイラストコンテスト」や「スニーカーイラストコンテスト」に投稿されたイラストでした。前者ではグランプリを受賞、後者でも賞を受賞しています。翌年にも同じようなコンテストで最優秀賞や準グランプリを受賞しており、この当時からイラスト、とりわけカラーイラストの美しさと楽しさが全面に出た世界観が際立っていました。この当時からずっと応援し続けてはや9年。いまだにブレイクしきれないのがほんとに不思議ですが、こうして定期的に取り上げつつ応援し続けていきたいと思っています。

2018-09-11 それでも華々つぼみ先生を応援していく(定期)。

kenkyukan2018-09-11

 先日、まんがタイムきらら2015年より連載されていた「きらきら★スタディー〜絶対合格宣言〜」のコミックス最終3巻が発売されました。受験勉強に取り組む部活という、きらら系の学園ものコメディでありそうで意外になかったコンセプトの作品で、本格的に勉強に取り組む活動ぶりと随所に見られる受験勉強の小ネタ、対照的に普段はお気楽で楽しいコメディと、個人的にはかなり面白い作品だったと思っています。華々さんならではの画力による作画も相当なもので、3巻で終わってしまったのが本当に残念でした。

 作者の華々さんは、同時期にコミックキューンでも「クロちゃんちの押入れが使えない理由」という連載を続けていましたが、こちらは2巻で終了。なぜか主人公の部屋の押入れが宇宙とつながってしまい、個性的な宇宙人たちが次々とやってくるという、こちらはぶっとんだ設定が全面に出た楽しいコメディでした。これもいい線行ってる作品だと思ったのですが、早い時期のおそらくは打ち切りでの終了でコミックス2巻で終わってしまいました。

 さらに遡ると、きららではひとつ前に2012年〜2015年に連載された「コドクの中のワタシ」という作品もありました。こちらは、人外たちが集められた学校のクラスに、ただ1人入れられた人間の女の子の苦労を描いた学園コメディで、クラスメイトに獣人や吸血鬼、天使、果ては触手全開の宇宙人まで登場するこれもなかなかに刺激的な設定だったと思います。設定的には「クロちゃんちの押入れが使えない理由」の原点と言えるかもしれません。こちらもかなりよかったと思うのですが、しかしやはり2巻で終了。

 さらに遡れば、こちらは角川のコンプティークで2010年より連載された「放課後アトリエといろ」こそが、華々 さんの商業初連載作品にして原点になると思います。もともとは当時開催されたコミックイラストコンテスト(マンガ部門)や漫画新人賞の受賞作で、個性的な部員たちによる美術部の活動を描くコメディでした。美術部や美術科を舞台にした4コマはいくつも見られますが、これは華々さんならではの目に映えるカラフルなイラストで、明るく楽しいイメージがよく出た作品だったと思います。当時の角川も一時期相当推していたようで、2011年よりコンプエースでも同時連載となり、書店向けの情報誌でも短編が掲載されるほどでした。

 しかし、どういうわけかコミックスの売り上げは伸び悩んだようで、これを理由に掲載は次第に縮小され、約3年後の2013年に打ち切りとして終了。この処遇に際して多少のごたごたもあったようで、連載最後のあたりの数回はコミックスにも収録されていません。個人的にもこれが終わるのは非常に残念で、各所で惜しむ声も多数聞かれ、再開を望む声ももちろんあったのですが、結局実現することはありませんでした。

 さらにさらに遡れば、わたしが華々さんを知ったのは、2009年に開催された「高校生コミックイラストコンテスト」や「スニーカーイラストコンテスト」に投稿されたイラストでした。前者ではグランプリを受賞、後者でも賞を受賞しています。翌年にも同じようなコンテストで最優秀賞や準グランプリを受賞しており、この当時からイラスト、とりわけカラーイラストの美しさと楽しさが全面に出た世界観が際立っていました。この当時からずっと応援し続けてはや9年。いまだにブレイクしきれないのがほんとに不思議ですが、こうして定期的に取り上げつつ応援し続けていきたいと思っています。

2018-09-06 「のんのんびより ばけーしょん」観賞報告。

kenkyukan2018-09-06

 先日の公開前の記事とかぶってしまいますが、ようやく待望の「のんのんびより」の劇場版である「のんのんびより ばけーしょん」を観ることが出来たので、報告も兼ねてその楽しさを伝えたいと思います。前回のテレビアニメ(2期)からすでに3年。ようやくの新作は期待通り、いや期待以上の「のんのんびより」となっていました。

 今回の劇場版のストーリーは、原作コミックの沖縄旅行編(コミックス6巻〜7巻)。最初のアニメ1期が始まる2013年秋以前に描かれている話で、初期のエピソードが中心だった1期ではアニメ化されず、さらには2年後の2015年に放送された2期でもこのエピソードアニメ化されなかったため(原作コミックス限定版付属のOVAではアニメ化されてますが)、まさに待望のアニメ化でした。個人的にもこのエピソードだけはいつかアニメで見てみたいと思っていたのです。

 基本的なあらすじは原作とほぼ同じ、デパートの買い物でやってみた福引で兄ちゃんが引き当てた沖縄旅行を契機に、いつものメンバーが揃って沖縄へと3泊4日の旅行へと出かける話。ただ、原作に比べると、沖縄の美しい風景やそこでの楽しい活動を描く叙情的なコンセプトが強く出ていて、いつものコメディで笑えると同時に、随所でほっと感動する名エピソードになっていたと思います。

 もともと、アニメのんのんびよりは、原作ではあまり目立たないもうひとつのコンセプトが追加されていました。原作が爆笑できるギャグやコメディが中心の作品であるのに対して、アニメはそこに田舎の美しい背景描写やのんびりした間の演出を積極的に取り入れた、叙情的な光景を随所で見せるアニメになっていたのです。この劇場版は、その方向性をさらに発展進化させ、明るい沖縄の雰囲気とそこでの楽しいひと時を存分に味わうことの出来る名作になっていると思いました。

 加えて、劇場版ならではの要素として、オリジナルの新キャラクターとして現地で出会う女の子(新里あおい)が登場、彼女の絡むシーンがまた秀逸でした。同い年という設定の夏海(なっつん)とはとりわけ仲良くなり、短い滞在期間の間にふたりで作った楽しい思い出、これが物語の大きなキーポイントになっていました。原作やアニメ1期で見られたれんげとほのかの名エピソード同様、ごく短い期間での出会いと別れ、その輝く思い出がほろっとさせる一編でしたね。

 最後にもうひとつ、作中では具体的な地名はあまり出てきませんが、沖縄の中でも石垣島近くの離島竹富島を舞台設定にしているところも惹かれました。旅行でメインの舞台になっている宿屋の描写が秀逸で、光と影のコントラストが強く描かれた開放的な宿舎の背景に強く惹かれるものがあったのです。さらには本島である石垣島も含めてダイビングカヤック、島の名所の訪問を存分に楽しむ光景を見て、自分もいつか行きたいなとまで思ってしまったのです。

2018-08-31 「異世界Cマート繁盛記」

kenkyukan2018-08-31

 集英社ダッシュエックス文庫ライトノベル異世界Cマート繁盛記」のコミカライズ1巻が先日発売されました。あの「GJ部」の作者コンビである新木伸・あるやの最新作。「GJ部」でも新木さんが原作小説を執筆し、あるやさんがその挿絵を担当、のちに始まったコミカライズもあるやさんがそのまま担当ということで、原作とコミックでイメージの差が無いことが大きな魅力でした。かつてのコミカライズ4コママンガで、4コマとしての面白さにも見るべきものがありましたが、今回は通常のコマ割のマンガ。しかし、そのかわいい絵とほのぼのした内容は健在でした。

 「異世界Cマート繁盛記」は、タイトルからも推測されるとおり、異世界でCマートという名前のスーパーをやる話。実際に店を運営するのは、主人公とエルフの少女のふたりが中心で、スーパーよりはコンビニに近い雰囲気だなと思いました。個人的には、異世界でセ○コーマートをやる話だと思っています(笑)。

 異世界(あるいは異世界に繋がる場所)で何か店や商売をやる話は、他にもいろいろ見られますが、この作品の特徴としては、どこまでも緩やかな設定で、異世界ものでよく見られる障壁やストレスが非常に少ないことが挙げられます。主人公は、ごく簡単に道を歩いていくだけで元の現代世界と行き来することが可能で、現代の物資をいくらでも持ち込むことも出来ます。ゆえに、主人公が元の世界に戻れないという寂しさや、現代の便利な道具を使えないという不便さは一切ありません。数ある異世界ものの中でも、最もゆるいタイプの設定ではないかと思います。

 加えて、異世界側の住人たちもみんな優しい人たちで、その社会も穏やかなものであるようです。ゆえに、店をやるにあたって客との間に軋轢が起こることも少ない。数少ない暗めの要素としては、街に生きる孤児の存在があり、小さい子供のうちは各家庭で持ち回りで育てられる仕組みになっているようです。しかし、本来ファンタジーの世界で打ち捨てられることの多い孤児を、街で保護する慣習が確立しているだけでも優しい設定と言えます。

 Cマートにもエナという孤児の少女がひとりやってくることになりますが、主人公とエルフのふたりがやがて引き取って一緒に暮らすことになり、この家族のような優しい関係がひとつの大きな見所ともなっています。

 こうした穏やかで優しい設定となった理由としては、原作者の新木先生がかつて語っていた「コンビニ前でたむろしている若者たちを見て、誰もがほっと安らげるような作品を書きたかった」という話があると思います。GJ部がまさにそうして生まれた作品だったのですが、異世界ものである今回の「Cマート繁盛記」も、そのコンセプトはいまだ生きていて、異世界ものによく見られる難題や障壁のないストレスフリーな作品になっているのではないか。あるやさんのかわいい作画もそれをばっちり再現していますし、原作ともどもこの作品を応援していきたいと思っています。

2018-08-29 「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」

kenkyukan2018-08-29

 少年エース最新10月号において、伊瀬勝良・原作、横田卓馬・作画で「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」という読み切りが掲載されています。タイトルからピンと来る人もいるかもしれませんが、あのMTG(マジックザギャザリング)をテーマにした読み切りで、先月の告知の時からゲームプレイヤーの間で話題に登っていました。横田卓馬先生は、少し前まで少年ジャンプで「背すじをピン!と」を連載しており、そちらで知っている人も多いかと思いますが、その連載中にMTGのネタを入れたり思い入れに満ちたイラストを公開したこともありました。今回の読み切り執筆も納得といったところで、個人的にも大いに期待していたのです。

 そして、実際に読んでみると、これが期待以上に面白い! 90年代後半のMTGが最も人気のあった時代を舞台に、日々このゲームに熱中する中学生たちの姿を描いたまさに《青春グラフィティ》。90年代のゲームが題材ということで、偶然にも現在アニメ放送中の「ハイスコアガール」と重なる部分も感じられ、実際にかつてこの時代にゲームにはまっていた人なら、より楽しめる内容になっていると思います。

 なんといっても作中のゲームの描写が実に濃い。98年頃(具体的には98年5月)の「テンペスト」時代のMTGの環境をほぼ完璧に再現している。主人公の使うのが「黒」のビートダウンデッキ、対するヒロインが使うのが「白」のやはりビート系デッキですが、どちらも当時の環境では定番中の定番。使われているカードもまさにそれだと納得できるものばかり。そして特定の色に致命的な効果をもたらすかつての色対策カードの存在。MTGにおいて誰もがまず注目するのはやはり「色」の選択であり、自分の好きな色のカードやデッキを使うのは何よりの醍醐味。それをこうしたダイナミックな形で描いてくれたのは、やはり王道にして大正解だと思います。

 個人的にもこの当時はMTGに最初にはまっていた時期でもあり、自分の経験と照らし合わせても、このゲーム回りの描写はほぼ万全と言ってよい出来でした。主人公たちが赴く喫茶店で、大人たちが真剣にはまっている姿を描いてくれたのもうれしいですね。黎明期のあの頃から、子供から大人のユーザーまで幅広く惹きつける魅力がこのゲームにはありました。

 主人公やヒロインを中心とするキャラクターたちの魅力も十分で、このまま連載化しても面白いと思います。すでにかなりの反響もあるようで、これは90年代がMTGが最も流行っていた時代でいまだ当時のユーザーが多く、あるいは「ハイスコアガール」同様に、「あの頃に一番ゲームにはまっていたけど今はゲームから離れている」読者層で、こうした作品に惹きつけられる人は、想像以上に多いのかもしれません。こうしたコンセプトの作品が、今後のトレンドのひとつになるのかもしれませんね。

2018-08-23 「ふりだしにおちる!」

kenkyukan2018-08-23

 先月末にコミックス1巻が出た「ふりだしにおちる!」(むっしゅ)を紹介したいと思います。随分前から電撃大王で連載していたのですが、単行本の情報は長い間音沙汰無く、ようやく待望の発売となりました。作者のむっしゅさんは、きららキャラットももうひとつ連載を行っていますが(「先パイがお呼びです!」)、こちらの方が商業初コミックスとなったようです。

 肝心の内容ですが、「女子高生っぽくない女子高生・青井鳩16歳が、立派な女子高生になるべく大奮闘? 女子高生の「良さ」が詰まった、ふんわり日常コメディ☆」などと紹介されているとおり、女子高生たちのゆるやかな日常を描くまったり楽しいコメディとなっています。

 主人公の青井鳩(16)は、高校生活を日々エンジョイしていましたが、ある日妹から言われた「女子高生らしくない」という一言にショックを受け(?)、周囲の生徒たちを見習って女子高生らしくなろうと奮闘したりしなかったり。そんなちょっとずれた主人公の行動と、それを暖かく見守るクラスメイトたちとの楽しい日常を、ふんわりした絵柄で優しく描いています。

 鳩の親しい友人であるクラスメイトたちも、明るく元気いっぱいだけどちょっと勉強は苦手(?)な飯塚亮(りょーちゃん)、おっとりしたお姉さんタイプでいつも笑顔の唯川春子春ちゃん)、ちょっぴりクールでちっちゃいツインテール少女・萩原えみ(萩原さん)と、個性的で楽しいキャラクター揃い。見ているだけでほんわかした気持ちになれますね。

 それともうひとつ。この「ふりだしにおちる!」も、最近の電撃が力を入れている百合作品のひとつであるようです。恋愛的な要素は薄めだと思いますが、女の子が女の子たちとわちゃわちゃする楽しい日常が好きな人にはとてもおすすめ。「やがて君になる」に「新米姉妹のふたりごはん」、「熱帯魚は雪に焦がれる」と、電撃からはひときわ注目度の高い百合作品が幾つも出ていますが、それに連なる作品としてこれにも期待したいと思います。

2018-08-22 「のんのんびより」の魅力を今一度語る。

kenkyukan2018-08-22

 ようやく、待ちに待った「のんのんびより」の劇場版の上映が迫ってきました。アニメ2期が終了してかれこれ丸3年が経っています。出来ればそろそろ3期を期待したかったところですが、新作アニメの情報で出てきたのは劇場版。これはこれで朗報ですし、内容も1期2期でなぜかやらなかった沖縄旅行の話(原作6・7巻)ということで、やはり楽しみなところは変わりありません。原作はいまだマイペースで続いていますが、最後のアニメ放送からはかなり遠ざかっていますし、ここで今一度この「のんのんびより」の面白さを語ってみることにしました。

 わたしが最初に原作を目にしたのは、連載開始時の2009年にまで遡りますが、真っ先に目を引かれたのはまずその絵のうまさですね。原作者の「あっと」先生の作品は、この連載以前から注目して見ていましたが、とにかく背景含めて徹底的に描きこんだ独特の濃さがあり、キャラクターにも極めて強い存在感があります。「のんのんびより」ならではの個性的なキャラクターの魅力は、このしっかりと描かれた絵から来るところが大きい。田舎の風景を緻密に描く背景美術にも見るべきものがありました。

 アニメでは、このあっと先生ならではの絵の濃さはかなり薄味になり、比較的オーソドックスなカラーの作画になっていますが、これはこれでいい感じの絵になっていますね。大塚舞さんのキャラクターデザインも原作のイメージによくはまっています。

 さらに原作のもうひとつの注目点は、独特の感性から繰り出されるコメディ・ギャグの面白さでした。現実にある子供たちの日常の行動、その側面を巧みに切り取ったようなエピソードが多く、しかもそれを毎回爆笑できるギャグに仕立てている。比較的最近のエピソードで特に印象に残っているのは、 原作8巻冒頭(アニメ2期2話)で登場した定規落としのエピソードですね。現実でも見られる定規落としという学校の遊びを、オーバーすぎる演出と戦術解説でとことん笑えるエピソードに仕立てている。いかにものんのんらしい1話だったと今でも思っています。

 そしてもうひとつ。これは何よりも言っておきたいのですが、キャラクターの意外なほど現実的と思える行動があります。例えば絶賛人気キャラクターのれんちょん(宮内れんげ)。「独特のセンスから名言(迷言)を次々と繰り出す」極めて個性的で、ある種マンガ的なキャラクターでもあると思うのですが、同時に端々で「あれっ」と思うほど現実の子供を思わせるような行動が見られるのです。これはと思う例は、原作3巻収録の第19話(アニメ1期7話)で、れんちょんが家で待っていた夕ごはんのカレーに興奮し(笑)、家の奥に向かって「ウオー!」と叫んで走っていくシーンですね。これはアニメでは声が付いてかなり強調されていますが、いかにも突拍子もない行動を取る子供らしさが出ていて印象に残っています。

 ここで強調したいのは、この「のんのんびより」自体は、決して現実をリアルに描く志向の作品ではなく、あくまでマンガ(アニメ)的なキャラクターやコメディ中心の、いわゆる萌えマンガの文法に即した作品ではないかと言うこと。にもかかわらず、どういうわけかリアリティというか現実に通じるような描写が端々で見られる。これが非常に面白い。おそらくは、原作者のあっとさんの現実の経験が、作品作りに生かされているのではないかと推測していますが、それが「のんのんびより」ならではの独特の面白さを生んでいると思うのです。

 ようやく、待ちに待った「のんのんびより」の劇場版の上映が迫ってきました。アニメ2期が終了してかれこれ丸3年が経っています。出来ればそろそろ3期を期待したかったところですが、新作アニメの情報で出てきたのは劇場版。これはこれで朗報ですし、内容も1期2期でなぜかやらなかった沖縄旅行の話(原作6・7巻)ということで、やはり楽しみなところは変わりありません。原作はいまだマイペースで続いていますが、最後のアニメ放送からはかなり遠ざかっていますし、ここで今一度この「のんのんびより」の面白さを語ってみることにしました。

 わたしが最初に原作を目にしたのは、連載開始時の2009年にまで遡りますが、真っ先に目を引かれたのはまずその絵のうまさですね。原作者の「あっと」先生の作品は、この連載以前から注目して見ていましたが、とにかく背景含めて徹底的に描きこんだ独特の濃さがあり、キャラクターにも極めて強い存在感があります。「のんのんびより」ならではの個性的なキャラクターの魅力は、このしっかりと描かれた絵から来るところが大きい。田舎の風景を緻密に描く背景美術にも見るべきものがありました。

 アニメでは、このあっと先生ならではの絵の濃さはかなり薄味になり、比較的オーソドックスなカラーの作画になっていますが、これはこれでいい感じの絵になっていますね。大塚舞さんのキャラクターデザインも原作のイメージによくはまっています。

 さらに原作のもうひとつの注目点は、独特の感性から繰り出されるコメディ・ギャグの面白さでした。現実にある子供たちの日常の行動、その側面を巧みに切り取ったようなエピソードが多く、しかもそれを毎回爆笑できるギャグに仕立てている。比較的最近のエピソードで特に印象に残っているのは、 原作8巻冒頭(アニメ2期2話)で登場した定規落としのエピソードですね。現実でも見られる定規落としという学校の遊びを、オーバーすぎる演出と戦術解説でとことん笑えるエピソードに仕立てている。いかにものんのんらしい1話だったと今でも思っています。

 そしてもうひとつ。これは何よりも言っておきたいのですが、キャラクターの意外なほど現実的と思える行動があります。例えば絶賛人気キャラクターのれんちょん(宮内れんげ)。「独特のセンスから名言(迷言)を次々と繰り出す」極めて個性的で、ある種マンガ的なキャラクターでもあると思うのですが、同時に端々で「あれっ」と思うほど現実の子供を思わせるような行動が見られるのです。これはと思う例は、原作3巻収録の第19話(アニメ1期7話)で、れんちょんが家で待っていた夕ごはんのカレーに興奮し(笑)、家の奥に向かって「ウオー!」と叫んで走っていくシーンですね。これはアニメでは声が付いてかなり強調されていますが、いかにも突拍子もない行動を取る子供らしさが出ていて印象に残っています。

 ここで強調したいのは、この「のんのんびより」自体は、決して現実をリアルに描く志向の作品ではなく、あくまでマンガ(アニメ)的なキャラクターやコメディ中心の、いわゆる萌えマンガの文法に即した作品ではないかと言うこと。にもかかわらず、どういうわけかリアリティというか現実に通じるような描写が端々で見られる。これが非常に面白い。おそらくは、原作者のあっとさんの現実の経験が、作品作りに生かされているのではないかと推測していますが、それが「のんのんびより」ならではの独特の面白さを生んでいると思うのです。

2018-08-21 「のんのんびより」の魅力を今一度語る。

kenkyukan2018-08-21

 ようやく、待ちに待った「のんのんびより」の劇場版の上映が迫ってきました。アニメ2期が終了してからかれ丸3年が経っています。出来ればそろそろ3期を期待したかったところですが、新作アニメの情報で出てきたのは劇場版。これはこれで朗報ですし、内容も1期2期でなぜかやらなかった沖縄旅行の話(原作6・7巻)ということで、やはり楽しみなところは変わりありません。原作はいまだマイペースで続いていますが、最後のアニメ放送からはかなり遠ざかっていますし、ここで今一度この「のんのんびより」の面白さを語ってみることにしました。

 わたしが最初に原作を目にしたのは、連載開始時の2009年にまで遡りますが、真っ先に目を引かれたのはまずその絵のうまさですね。原作者の「あっと」先生の作品は、この連載以前から注目して見ていましたが、とにかく背景含めて徹底的に描きこんだ独特の濃さがあり、キャラクターにも極めて強い存在感があります。「のんのんびより」ならではの個性的なキャラクターの魅力は、このしっかりと描かれた絵から来るところが大きい。田舎の風景を緻密に描く背景美術にも見るべきものがありました。

 アニメでは、このあっと先生ならではの絵の濃さはかなり薄味になり、比較的オーソドックスなカラーの作画になっていますが、これはこれでいい感じの絵になっていますね。大塚舞さんのキャラクターデザインも原作のイメージによくはまっています。

 さらに原作のもうひとつの注目点は、独特の感性から繰り出されるコメディ・ギャグの面白さでした。現実にある子供たちの日常の行動、その側面を巧みに切り取ったようなエピソードが多く、しかもそれを毎回爆笑できるギャグに仕立てている。比較的最近のエピソードで特に印象に残っているのは、 原作8巻冒頭(アニメ2期2話)で登場した定規落としのエピソードですね。現実でも見られる定規落としという学校の遊びを、オーバーすぎる演出と戦術解説でとことん笑えるエピソードに仕立てている。いかにものんのんらしい1話だったと今でも思っています。

 そしてもうひとつ。これは何よりも言っておきたいのですが、キャラクターの意外なほど現実的と思える行動があります。例えば絶賛人気キャラクターのれんちょん(宮内れんげ)。「独特のセンスから名言(迷言)を次々と繰り出す」極めて個性的で、ある種マンガ的なキャラクターでもあると思うのですが、同時に端々で「あれっ」と思うほど現実の子供を思わせるような行動が見られるのです。これはと思う例は、原作3巻収録の第19話(アニメ1期7話)で、れんちょんが家で待っていた夕ごはんのカレーに興奮し(笑)、家の奥に向かって「ウオー!」と叫んで走っていくシーンですね。これはアニメでは声が付いてかなり強調されていますが、いかにも突拍子もない行動を取る子供らしさが出ていて印象に残っています。

 ここで強調したいのは、この「のんのんびより」自体は、決して現実をリアルに描く志向の作品ではなく、あくまでマンガ(アニメ)的なキャラクターやコメディ中心の、いわゆる萌えマンガの文法に即した作品ではないかと言うこと。にもかかわらず、どういうわけかリアリティというか現実に通じるような描写が端々で見られる。これが非常に面白い。おそらくは、原作者のあっとさんの現実の経験が、作品作りに生かされているのではないかと推測していますが、それが「のんのんびより」ならではの独特の面白さを生んでいると思うのです。

2018-08-15 「ひとりぼっちの○○生活」

kenkyukan2018-08-15

 「三ツ星カラーズ」の作者・カツヲさんのもうひとつの連載「ひとりぼっちの○○生活」を紹介してみたいと思います。先日、「三ツ星カラーズ」のアニメ最終回に際して、こちらのアニメ化も告知されています。連載開始時期はこちらの方が早く2013年から電撃だいおうじでスタート。4コママンガなのでコミックスの刊行ペースはゆるやかですが、現在4巻まで巻を重ねています。

 肝心の内容ですが、中学入学を契機に幼なじみの女の子と「中学でクラス全員と友達になる」ことを約束した女の子・一里ぼっち(ひとりぼっち)が、極度の人見知りで人と話すのが苦手なところをなんとか乗り越えて、クラスメイトとひとりひとり友達になるべく日々奮闘するというもの。主人公のぼっちは、極度の人見知りであがり症ネガティブ思考でありながら、なぜか変に行動力だけがあり、思い切った(時にとんでもない)アプローチによって次第に友達が増えていきます。事前に友達作りのための会話計画などを立てることも多く、それが妙にずれていて失敗の種になったりするのも面白いです。

 ぼっちの友達になっていくクラスメイトたちもひとりひとり個性的で面白い。一見して怖そうな外見に見えて実は素直で優しい性格の砂尾なこ、クラスの副委員長で、一見してしっかり者の優等生に見えてどこか間の抜けた残念な行動を取ってしまう本庄アル、海外からやってきた生徒で明るい性格でぼっちにひたすら懐くソトカ・ラキター、クラスの風紀委員でなぜか自分は友達を作らない主義宣言する(しかしツンデレ気味で結局ぼっちの友達になっていく)倉井佳子と、まさに極端な個性派揃いですね。

 面白いのは、キャラクターたちの名前が、そのまま性格や特徴を表す語呂合わせになっていること。一里ぼっち(ひとりぼっち)、砂尾なこ(すなおなこ)、本庄アル(ほんしょうある)、ソトカ・ラキター(そとからきたー)、倉井佳子(くらいかこ)と、みんな面白くて笑ってしまう。個人的には、ダメなところを指摘されるたびに飛び上がって頭突きをする(特に砂尾なこに対する突っ込みが激しい)本庄アルちゃんが面白くて好きですね。

 連載が進むたびに次第に周囲の友達が増えて、クラスメイトのつながりが広がっていくのも楽しいところ。4巻の時点ではぼっちの友達は6〜7人程度まで増えており、もはやぼっちとは言えないかもしれません(笑)。これから先さらに友達が増えて最後はどんな展開を迎えるのか、それも楽しみです。

2018-08-08 「えんどろ〜?」

kenkyukan2018-08-08

 先日、「えんどろ〜!」という新作オリジナルアニメが唐突に告知されました。いかにも日常系の雰囲気で、また(個人的に)うれしい新作が出てきたのかと思って思わず注目したのですが、これがスタッフ的にその筋の豪華クリエイター集結という感じで実に面白い。

 まず真っ先に目を引くのが、告知イラストを手掛けるなもりさんですね。言わずと知れた「ゆるゆり」の原作者。最近では、別の新作アニメでもキャラクター原案を担当しているようですが(「RELEASE THE SPYCE」)、日常系と言えそうなこの作品の方が、より雰囲気に合っているような気がします。

 さらに監督にはかおりさんの名前が挙がっています。言わずと知れたあの名作中の名作「ゆゆ式」の監督であり、その新作となれば一気に期待が高まることは間違いない。

 次いでシリーズ構成に名前が挙がっているのがあおしまたかしさんで、こちらはまず何よりも「ゆるゆり」1期・2期のシリーズ構成・脚本を担当したことで注目されます。他にも「干物妹!うまるちゃん」や「ガヴリールドロップアウト」など、動画工房による同系のアニメシリーズ構成・脚本を数多く手掛けており、今回のスタッフ起用にもまさに納得の感があります。

 キャラクターデザインに挙がっているのが飯塚晴子さん。「たまゆら」のキャラクターデザインが最も知られていると思いますが、他にも「がっこうぐらし!」や「田中くんはいつもけだるげ」などのキャラクターデザインも担当しており、今回の抜擢にもやはり納得。告知イラストも原案なもりさんのデザインの雰囲気をよく表現していて、これは大いに期待が高まります。

 最後に制作会社はStudio五組。なんと言っても「きんいろモザイク」の制作スタッフであり、あるいは「Aチャンネル」、最近では10月から放送予定の「となりの吸血鬼さん」の作品も担当しています。これもまた日常系アニメの本命制作チームのひとつですね。

 総じて、ここ最近の日常系などと呼ばれていたジャンルのアニメ、その制作スタッフを一同に集めたような企画で、まさに自分が見るためにあるようなアニメだと思いました(笑)。どういう経緯でこのスタッフがまとまったのか知りませんが、まるでそのジャンルのスタッフが酒の席で意気投合して立ち上げたような企画だとも思ってしまいました。

 告知では、「ありそでなかった日常系ファンタジー」とのコピーも打ち出されていて、確かにこの手の日常系ではファンタジーを舞台にした作品は、少々珍しいかもしれません。しかし、それに加えて、そもそも原作付きでないオリジナルのアニメで、こうしたジャンルの作品が企画されること自体が、中々に珍しいことではないでしょうか。ある意味では、ここ最近のきらら系を始めとした日常系アニメの安定した人気を受けて、ついにこうした企画が立ち上がるまでになったと感じました。その点でも非常に楽しみですね。

2018-08-02 「恋する小惑星」

kenkyukan2018-08-02

 少し前の話になりましたが、3月にコミックス1巻が発売された「恋する小惑星」(Quro)を取り上げてみたいと思います。きららキャラットの連載で、全編に渡って地学地球科学)を取り上げているところに注目していました。

 地学とはどんな学問か? これは、地質学や鉱物学、地球物理学など地球を扱う科学の総称であり、さらに大気圏の現象を扱う気象学、宇宙を扱う天文学まで包括的に含む概念でもあります。自分が高校で選択した地学も、前半は地球物理の勉強が中心でしたが、後半になると気象、そして最後は天文・宇宙へと範囲が広がっていきました。

 作品の舞台はとある高校の地学部。主人公のみら(木ノ幡みら)は、高校で天文部に入部しようとしましたが、しかし天文部はすでになく、地質研究会と合併して「地学部」になっていたと知り大ショック。やむを得ず地学部の見学へと向かってみたみらでしたが、そこで出会ったのは、かつて幼い頃に「ふたりで新しい小惑星を見つける」と約束をした幼なじみ・あお(真中あお)の姿。思わぬ再会に驚きながらも、かつての夢に向けての活動を再開すべく、地学部での活動をスタートすることになります。

 実際に始まった活動は、かつて所属していた部活ごとに「地質班」と「天文班」に分かれてのスタートになりましたが、今までほとんどかぶらなかった両者の活動が、ひとつの部活として合同で作業することでひとつとなり、互いに新たな経験・知見を得るという展開が、この作品ならではの魅力になっています。

 すなわち、ある日には河原で石を拾って地質学の研究に没頭し、またある日には夜に望遠鏡を持ち出して天体観測を始める。あるいは、すぐ星座を見つけられる天文班の生徒に対して、なぜ分かるのかと問うとそれは「慣れ」と答えるのに対して、すぐ石の種類が分かる地質班に対して、なぜ分かるのかと問うと、やはり慣れと答える(笑)。未経験者に対して自分の知っていることを教えるという展開を通じて、包括的な学問である地学の魅力を打ち出しているところが面白いですね。

 ひとつの現象に対して、天文学地質学観点から分かる範囲の解説をするというくだりも面白い。同じ月を見ても、地質学観点からは別の知見を得ることで役に立てる。ほんの小さなネタですが、地学という包括的な学問の一端をよく表していると思いました。

 「新しい小惑星を見つける」という遠大な目標に向けて、ひとつひとつ着実に前進していこうというストーリーにも惹かれます。1巻のクライマックスは、地学部の合宿で筑波の地質標本館・地図と測量の科学館・JAXA筑波宇宙センターを訪れるエピソードでしょうか。展示物に夢中になって楽しみつつも、自分の目標に向けて積極的にアプローチをかけていき、最後には思わぬ形で手かがりを掴む。最後にどういった形で夢に追いつくのか、今後の展開も楽しみです。

2018-08-01 「棺担ぎのクロ。」最終7巻発売。

kenkyukan2018-08-01

 先日、ついにあのきゆづきさとこさんの「棺担ぎのクロ。」の最終7巻が発売されました。6巻の時点で「次で完結」と告知されて、ああもう終わってしまうのかと思っていましたが、ついにその時が来てしまいました。少し前に、きゆづきさんのもうひとつの代表作「GA-芸術科アートデザインクラス-」も、一足先に終了を迎えていましたが、ついにこちらの連載も終了。ひとつの時代が終わった感もありました。

 「棺担ぎのクロ。」が始まったのは、まんがタイムきららの2005年1月号。創刊から数年が経っているとはいえまだきらら黎明期で、その当時の連載陣の中でもひときわ目立った存在でした。その特徴は、まず4コマながらストーリーの連続性を強く意識したストーリー4コマであったこと。通常の4コマでも次の4コマに話が続く作品は珍しくないですが、最初からそのつながりとストーリーを強く志向した作品は、黎明期からのきらら4コマのひとつの特徴であり、その中でもこの「クロ。」はその代表だったと思います。

 もうひとつの特徴は、とにかく美麗で緻密な作画に惹きこまれるビジュアル4コマであったこと。とりわけカラーページの美しさは必見で、寓話的なファンタジー世界の奥深さを緻密に描いたその作風には、毎回目を奪われるばかりでした。ダークファンタジーであることを意識してか、コマの周囲が黒く塗られているのも特徴で、明るくカラフルな世界観が特徴の「GA」とは対を成しているようでした。

 肝心の内容ですが、どこか童話的な雰囲気も感じられる異世界を舞台にしたファンタジー物語でしょうか。全身黒ずくめの服装でなぜか棺桶を背負って旅を続ける少女・クロと、彼女の相棒で蝙蝠の姿をした人間の青年・セン(センセイ)、そして道中立ち寄った家で邂逅した幼い双子「ニジュク」と「サンジュ」、彼女たちのある目的に向かった旅を描くロードファンタジーです。「ダークファンタジー」とも呼ばれるとおり、暗く陰鬱な雰囲気とエピソードが特徴的で、ある「呪い」を受けたクロの旅は、目的に近付くごとに暗く険しいものとなる。彼女の物語とは直接の関係の薄い道中のエピソードも多数ありますが、いずれも暗く悲しいものが多い。ただ、時には明るめのエピソードもあり、あるいは毎回の4コマでは気の効いたコメディでオチが付くことも多く、読んでいてそこは救われるところでした。

 ただ、連載が佳境に差し掛かった最後の数巻では、彼女を取り巻く物語はいよいよどす黒く陰惨なものとなり、道中で邂逅するエピソードもさらに暗いものとなりました。しかし、物語の真相が語られる最後の結末は、それまでの展開から予想されるいずれのものでもないエンディングとなっていて、一抹の寂しさの中にも明るさを感じる最後で、これには言葉もなく救われる思いでした。

 個人的には、終盤の6巻でクロが立ち寄った「霧の王国」の国王が、エピローグで再び登場したのが嬉しかったですね。その国は、とある理由からクロを苛む呪いからは隔絶された場所であり、そこに留まっていれば一時の安らぎを得ることが出来ました。しかし、クロはそこに長く滞在することなく再びつらい旅を続けることを決意する。「ここにいたら確実に”クロ”はこの世界からいなくなる」。それがその理由でした。そして、その国の王が最後に今一度登場してくれたことで、このエピソードにも心残りのない結末が付いたと思ったのです。

2018-07-26 「Roid-ロイド-」

kenkyukan2018-07-26

 先日、百合姫で半年ほど前から連載が始まっていた「Roid-ロイド-」のコミックス1巻が発売されました。百合姫の連載の中では珍しいアンドロイドもののSFとして、あるいは作者のしろし先生の活動を以前から知っていたことがあって、連載が始まった時から注目していましたがやはり期待通りの作品でした。

 アンドロイドが完全に一般化し、人とロボットが”共生”する世界。学校のロボ研で活動している双上唯は、後輩で天才AI開発者とされる一宮玲那と共にロボット制作に取り組む日々。しかし、唯が作ったロボットはあまりにも制御が複雑すぎてAIの製作が困難と突っぱねられます。とっておきの手段として、制作者である唯の意識をロボットに転送、もしくは意識を複製(コピー)しようと意気込みますが、それは危険で違法な行為だとやはり後輩からたしなめられます。

 しかし、不慮のトラブルでその玲那がさらわれ、玲那を助けるために違法だとされるコピーをいきなり実行。これで人間の唯とアンドロイドの唯、ふたりの唯が同時に存在することになりました。

 のちにアンドロイドは杏那と名づけられますが、人間だった頃のかつての記憶は不確かであり、自分が果たして唯なのかと考える。コピー元の唯の方も、自分よりも明らかに性能的に優れ自分に出来ない能力を持つ杏那を見て複雑な思いに捕らわれます。こうした人間とその複製であるロボットという複雑な関係、その葛藤がダイレクトに描かれていることにまず惹かれました。一方で、普段の日常は、もとはまったく同じとされる人格でありながら、意外なほど気兼ねない関係で共に暮らしている描写も面白いです。

 加えて、ロボットと人間の関係をさらに根源的に問うエピソードもあり、ロボットが人間に危害を加えられないようなセーフティがかけられている状態で、ゆえにロボットに八つ当たりをする人が絶えないという負の側面も描かれます。そんな中で何らかの理由でロボットが暴走して人を傷つける事件が発生。その状況で悪質な人間を自業自得として見殺しにしてもいいのか、それともやはり暴走するロボットを破壊するのが正しいのか、ひどく迷い逡巡するシーンも描かれていて、ここは非常に考えさせられました。

 こうしたロボットアイデンティティを巡るSF的なテーマは、過去の作品でも幾度となく見られたものかもしれませんが、完全に自分の複製が実現してしまったシチュエーションにおける人間関係をダイレクトに描く内容は、やはりひどく惹きつけられるものがありました。

 百合姫連載の百合作品として考えると、百合的な要素(恋愛的な百合要素)はさほど多くないような気もしますが(コミックスあとがきによると「恋愛ではないけど関係性的には百合」)、こういうのも十分ありではないかと思いました。新しいタイプの百合作品としても期待したいですね。

2018-07-25 「広島さん、友達になってください」

kenkyukan2018-07-25

 今回は、芳文社まんがホーム連載「広島さん、友達になってください」(こみちまい)を取り上げたいと思います。もともとはまんがタイムファミリーの連載でしたが、同誌の先日の休刊に伴い移籍した形となってます。いずれも、このサイトでは珍しくきらら系でない芳文社の4コマ雑誌です。きららより読者年齢は高く大人の読者が中心の、いわゆるファミリー4コマということになるでしょうか。

 「広島さん」のタイトルどおり、広島で暮らす女子高生とその友達、家族の日常を描くほのぼの日常系4コマです。主人公のキミは、自由父親に引っ張られる形で引っ越しを繰り返し、行く先々で友達が出来なかったこともあって思い切り人見知りな性格。しかし、ついにこの広島で長く定住することになり、今度こそこの土地に馴染んで友達を作っていこうと奮闘することになります。

 キミは、広島に受け入れられようと様々な知識を本で仕入れてきますが、やはりその性格が災いして中々溶け込むことが出来ない。しかし、そんな彼女の元に地元広島女子高生・紅と真理が話しかけてきて、明るい性格の彼女たちに半ば引っ張られる形で、少しずつこの広島生活に馴染んでいくことになります。

 事前に知識仕入れているとはいえ、やはり初めて直に接する広島の文化はひとつひとつ新鮮で驚きの日々。「ぶち」「じゃけえ」「たいぎい」など独特の言い回しに満ちた広島弁を皮切りに、お好み焼き牡蠣(カキ)、もみじまんじゅうに代表される地元グルメの数々、大鳥居や千条閣、水族館などの名所が満載の宮島、そしてなんといっても広島と言えば広島カープ! 時には真面目に平和公園の資料館(原爆資料館)や爆心地にも赴き、かつての歴史に向き合うエピソードも盛り込まれています。

 面白いのは、広島は初めてながら事前に知識仕入れてきたキミの方が、地元民である紅や真理よりも時に広島に詳しい様を見せること。考えてみると、広島の地元民がそう頻繁に宮島に観光に行くことはないですし、土産物であるもみじまんじゅうを食べることもあまりない(お好み焼きは食うけど)。細かい歴史に関してもキミの方が詳しかったり、「地元民だからといって必ずしも地元に詳しいわけではない」という、あるあるな感覚が随所で見られて面白いです。

 もうひとつ、タイトルの「広島さん」は、主人公のキミが初めて暮らす広島の地を敬愛を込めて呼んでいる呼び名で、誰か特定の人物を指しているわけではありません。そんな風に、他からの移住者ながらこの土地に敬意を払って馴染もうとするキミと、それをおおらかに受け入れる同級生広島の人々の温かな交流が随所に見られる、ハートフルなコメディになっていると思います。非きららの4コマということで、普段そちらを読んでいる人にはやや縁遠い作品になるかもしれませんが、興味を持たれたら是非一度読んでみてほしいと思いますね。

2018-07-19 ひなこのーと・スロウスタート・すのはら荘の管理人さん・・・繰り返

kenkyukan2018-07-19

 このところ、夏アニメの「すのはら荘の管理人さん」が、(一部で)えらく話題になっているようですが、個人的にはついに萌え4コマ発のエロアニメの本命が来たなという感じです。このところ、「ひなこのーと」「スロウスタート」そして「すのはら荘の管理人さん」と、なぜかこうしたアニメ化が続いているようで興味深い。

 そもそも、いわゆる萌え4コマ、日常4コマと呼ばれるジャンルにおいて、エロ要素を強く押し出した作品はそれほど多数派ではありません。かわいい絵柄やエピソードを中心にした作品が中心で、一方でエロいと思える作品もあるにはあるのですが、全体の中では少数派だと思います。

 しかし、そうした作品がアニメ化された場合、原作以上にエロ要素を強調したものになることが多く、やたら強い印象を残すことも多い。このところ、そうした作品が続いていることも興味深いです。

 まず、昨年春と少し前に放送された「ひなこのーと」。これは原作の絵と内容からしてすでにエロかったのですが、アニメ化に際してさらにその路線がヒートアップ。特に毎回最後に表示される次回予告(エンドカード)のイラストが、原作にもないようなエロというかフェチを押し出したものばかりで、これは大いに話題になりました。原作の掲載雑誌がコミックキューンで、きらら系ではないということで、その方向性の違いも話題になった記憶があります。

 次に、今年の冬に放送された「スロウスタート」。これは、原作はそこまでエロい作品でもなかったと思うのですが、しかしフェチズムを感じる描写は多々あり、それがアニメ化に際してやはり強調される形となりました。とりわけ、9話の放送はいわゆる水着回となっていたのですが、原作ではただ部屋で水着で過ごすだけのエピソードだったのが、アニメでは本当にプールで泳ぐ話になっていて一気にサービスシーンとも思えるシーンが倍増。「新鮮なライチ」というパワーワードまで飛び出してこれが大いに反響を招きました。

 そして、今回満を辞して(?)アニメ化された「すのはら荘の管理人さん」。これはもう原作が始まった時からしてとんでもない作品であり、すでにその時点で話題になっていました。まさかアニメ化されるとは思っていなかったのですが、これがしっかり30分枠でアニメ化され、しかものっけからエロシーンと意味深な発言を連発する原作に忠実な内容。さらに原作最初からその内容に反応していた伊東ライフ氏をエンドカードに起用するなど、あらゆる意味で注目を集める作品になっていました。ここに来てついにとんでもないアニメが出てしまったという感じです。

 ところで、この3作品には見た目で分かりやすい共通点があり、それはいずれの作品も「管理人(大家さん)がでかい」というものであります。何がでかいのかは見た目で明らかなのであえて言いませんが、こうしたマンガの作者(読者)が、アパートや寮の管理人のお姉さんにどんなイメージを求めているか、それが分かるようで面白いと思います。

2018-07-18 「ふたつ屋根の下」はいいぞ。

kenkyukan2018-07-18

 「やがて君になる」に「新米姉妹のふたりごはん」、最近では「熱帯魚は雪に焦がれる」と、電撃からの期待の百合作品が幾つも出ていますが、ここでもうひとつ百合(だと思われる)作品の新作を取り上げたいと思います。電撃だいおうじで連載中の4コマ「ふたつ屋根の下」(ほなみ彩)です。

 その内容は、タイトルからも類推されますが、高校生の双子姉妹・いちかとひとはとそのお隣さんのユイの日常の生活を描いた日常4コマです。双子の妹・ひとはは、のんびり屋で食べること・寝ることが大好きなぐーたらな性格(でも料理にはこだわりがあって得意)、対して姉のいちかは、オシャレ大好きな今ドキ女子ながらどこか抜けたところがあって、家の中ではやはりくだぐだした生活になっています。そんなふたりを何かにつけて面倒を見るのがお隣さんのユイで、寝坊するふたりをなんとか起こして遅刻しないように学校に連れて行くのが日常の光景。

 そんな和気あいあいとした3人の日常の関係性が、作品最大の魅力です。ひとはといちかは、その性格の微妙な違いから何かにつけて言い争いの喧嘩をしていますが、基本的にはとても仲は良い。そんなふたりの間に入ってお世話をするユイは、基本的には頼りになるものの、ふたりの思わぬわがままからいつも振り回されがちで、わたわたする姿がとてもかわいい。

 学校はもちろん家でのご近所付き合いも親密で、しょっちゅう互いの家にやってきてたまには一緒にお泊り会をやることも。ゴキブリが怖くて隣の家に逃げ込んだユイが、そのまま双子の部屋でお泊りすることになり、ユイを真ん中にして3人で並んで寝るエピソードなど、安心感もあいまってその幸福感半端ないです。「二人がお隣さんで本当によかったな」というユイの言葉が身に沁みました。

 2人の関係性を追求する百合作品もいいですが、こうしたわだかまりのない親密な仲の3人の関係性を描く作品というのも、幸福感ありすぎてとてもいいと思いました。かわいい絵のご近所日常交流コメディとして、電撃ながらきらら系にも通じる萌え4コマ作品の新作としても期待したいと思います。

2018-07-12 「次にくるマンガ大賞」私的受賞候補を考える。

kenkyukan2018-07-12

 毎年恒例となっている「次にくるマンガ大賞」、すでに投票期間が終わっていますが、8月に来る結果発表の前に、個人的に受賞してほしい期待作品をピックアップしてみたいと思います。毎年「これもうきてる(人気を得ている)だろ」という指摘が絶えない本作ではありますが(笑)、いまだコミックスの巻数が少なく(5巻以内)、アニメ化なども達成していない作品が大半ということで、知名度でいまだ浸透し切っていない期待作の存在を広めるという点で、一定の意義はあると思っています。

 さて、まず個人的に近年ずっとはまっているきらら系作品からは、「まちカドまぞく」「どうして私が美術科に!?」「なでしこドレミソラ」の3作品がノミネートされています。きららには、これからアニメ化まで期待される良作は数多くありますが、その中でとりわけ注目される作品となるとこのあたりになると思います。

 とりわけ、「まちカドまぞく」は、ここ数年で最も注目されている4コママンガでしょうか。魔族と魔法少女対立するはずのふたりがなぜか仲良くなって交流してしまう日常ファンタジーコメディですが、密度の濃いセリフ回しと背景作画、キャラクターの特異な関係性の変化を緻密に描く内容が秀逸で、4コマ読者の間では非常に高い評価を得て久しい。そろそろこのあたりで受賞を弾みにさらなる展開が望まれると思います。

 最近になってとみに良作が増えたなと感じている電撃系作品からは、電撃マオウ連載の「熱帯魚は雪に焦がれる」を真っ先に挙げたい。情感溢れるセンシティブな心情描写が特徴的な百合作品で、また「水族館部」という実在する個性的な部活をフィーチャーした点でも興味深い一作です。前回上位に受賞した「やがて君になる」「新米姉妹のふたりごはん」に続く電撃期待の百合作品ですね。また、同じ電撃マオウからは、軽快な探偵ギャグコメディ「まったく最近の探偵ときたら」もノミネートされており、こちらも非常に面白いです。

 また、今回は、これ以外のノミネート作品からも「吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん」「将来的に死んでくれ」「私の百合はお仕事です!」などの百合作品が上がっており、このジャンルの広がりを実感することが出来ます。

 KADOKAWAヤングエースから「であいもん」もそろそろブレイクしてほしい作品のひとつ。かつてはエニックスで活躍したあの浅野りんさんの最新作で、京都和菓子屋を舞台にした浅野さんらしいコミカル&ハートフルなストーリー。登場する色取り取りの和菓子にも目を奪われます。

 メジャーどころで週刊少年ジャンプからは、「Dr.STONE」も挙げておきたい。前回2位に受賞した「約束のネバーランド」と並んで、最近のジャンプの新作では最大のヒットだと思ってます。石化した世界から文明を復活させるというダイナミックな設定、青年誌で活躍していたBoichiによる迫力の作画で有無を言わせぬ面白さがあります。これは間違いなく既にきてるマンガですね。

 自分の扱ってきたスクエニからは、「ジャヒー様はくじけない!」も、すでにかなりのヒットを達成していると思われる人気作品。魔力を失って魔界から人間界へと飛ばされた悪魔ジャヒー様が、魔界復興させるために日々地道な努力に励むというもの。人間界で生き延びるために必死に庶民的な生活を繰り広げる、そのつつましやかな姿が本当に面白い爆笑ギャグになっています。80円アップした時給に心の底から喜ぶ姿が面白すぎる。スクエニも次に来る作品としてこれを相当推しているようで、今後の展開に注目されますね。

2018-07-05 コミックキューン4年間の変遷。

kenkyukan2018-07-05

前回、コミックアライブについて語ったので、今回はそのアライブの「雑誌内雑誌」として始まった4コマ誌・コミックキューンについても触れておきたいと思います。最初は、アライブの2014年10月号(8月発売号)において「100号記念」として始まった雑誌内企画で、雑誌の中ほどの1ページが別雑誌の「表紙」となっていて、その後の雑誌の一角が雑誌内雑誌という扱いになっていました。その頃は、「雑誌」といっても掲載本数は10作品程度の小規模なものでした。

 しかし、これが見事好評を博したのか、ほぼ1年後の2015年8月に独立創刊。アライブから分離して本当の意味での独立した雑誌となり、さらに連載本数とページ数は一気に倍増。独立創刊号では38本の掲載作品と400ページを超えるページとなり、普通の4コマ誌の2倍近い分量だったことが印象に残っています。

 雑誌の雰囲気は、まさに先行する萌え4コマ誌、とりわけ芳文社きらら系雑誌に近いものがあり、さらには当初から「かわいい」イメージの作品を強く推している方針を強く感じられました。「かわいい」というのは、そもそもこの手の4コマはかわいい女の子のキャラクターをメインにした作品ではありますが、その中でも特に絵柄的なかわいさやほのぼのした作風が前面に出た作品が多かったと思います。初期からの連載では、「となりの吸血鬼さん」や「にゃんこデイズ」、「ニョロ子の生放送!」「ルルメイト」「さくらマイマイ」あたりに、特にそれを強く感じました。

 しかし、独立創刊して1年が過ぎ2年近くが経ったあたりから、次第に誌面に変化が訪れ、こうした作品の多くが意外に早い終了を迎えることになります。他の雑誌以上に、コミックスの売り上げが連載の継続に直結するような方針が感じられ、「えっこの連載が?」と思うような作品が、おそらくは打ち切りでいくつも終了を迎えてしまいました。

 代わって最近になって始まった連載では、それまでより大人びた雰囲気の作品が多く見られるようになりました。「大人びた」とは絵柄的な印象でもありますし、あるいはキャラクターの年齢設定が高めのマンガや、端的にえろい内容のマンガ(笑)が増えたということでもあります。「かわいい」よりも「えろい」印象が強いマンガの方が、以前より多くなったと言えます。また、いわゆる百合ジャンルの作品が増えたのも近年の特徴で、ここから「明るい記憶喪失」や「キリング・ミー!」のような話題作も出てくるようになりました。

 つまり、「最初のうちは、きらら系の後追いのかわいい4コマ誌が出てきたなと思っていたら、いつの間にか半分はエロコメで半分は百合姫みたいな雑誌になっていた」というのが正直なところで、創刊数年のうちでこの変化はかなり大きなものがあると思います。個人的には、この変化には若干戸惑いを感じずにはいられないところですが、残る初期の頃からの作品からも「となりの吸血鬼さん」のようなアニメ化作品は出ていますし、いまだ先行する4コマ誌を追っていく存在としては貴重で、期待しつつ追っていきたいと思っています。

2018-07-04 コミックアライブももう12年。

kenkyukan2018-07-04

今月発売のコミックアライブの表紙に「創刊12周年」の文字が躍っていて、ああこの雑誌ももうこんなに経つのかと思ってしまいました。コミックアライブの創刊は2006年。MF文庫Jを始めとするライトノベルの出版で知られたメディアファクトリーが、マンガ雑誌にも進出という形での創刊でした。あの当時は、どういうわけかマンガ雑誌の創刊ラッシュで、他の出版社からもかなりの数の雑誌が創刊されたのですが、その多くは早期に休刊となってしまいました。あるいは結局ウェブに移行した雑誌も多い。そんな中で、ここまで10年以上紙雑誌として続き、ページ数も分厚いままで健在なところを見ると、このアライブは成功組と見て間違いないでしょう。

 ここまで安定して続いてきた大きな理由は、まず自社のMF文庫Jを中心とするライトノベルコミカライズ、あるいはゲームやアニメ作品のコミカライズで、手堅く人気を確保してきた方針がありそうです。創刊初期の連載ならば「ゼロの使い魔」や「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」、「緋弾のアリア」「僕は友達が少ない」、比較的最近の連載ならば「ノーゲーム・ノーライフ」「Re:ゼロから始まる異世界生活」や「ようこそ実力至上主義の教室へ」あたりがその代表でしょうか。こうした誰もが知る人気作品のコミック連載の存在は大きい。コミック化でさらにヒットした作品もあり、最近ならリゼロこと「Re:ゼロから始まる異世界生活」のコミカライズは、かなりの良作であると思っています。

 こうしたメディアミックスと同時に、オリジナルの連載も初期の頃からまとまった数を打ち出し、そちらで良作を出し続けてきた意義も大きい。最初期の連載では「まりあ†ほりっく」、数年後には「のんのんびより」や「ディーふらぐ!」の連載が始まり、いずれもアニメ化を達成しています。こうしたオリジナルの作品は、ライトノベルアニメコミカライズとは雰囲気の異なる作品も多く、意外に幅広い誌面の方針を感じることも出来ます。人気作品のコミカライズで手堅く人気を確保しつつ、オリジナルでは自由に幅広く様々な連載を打ち出していく。これも成功の大きな理由ではないでしょうか。

 もうひとつ、これは出版社のビジネスの話になってしまいますが、2013年にメディアファクトリーKADOKAWAによって吸収合併され、KADOKAWAグループの一員となったことも、この雑誌がここまで存続出来た理由として否定できません。次々と出版社を吸収合併する暗黒巨大企業・KADOKAWAの傘下となることで(笑)、運営に余裕が生まれて休刊の可能性は大きく遠のいたと思います。KADOKAWAグループの他出版社のコンテンツを容易にコミカライズできるようになったメリットも大きいですね。

 現在では、この雑誌も電子化を達成し、そのKADOKAWAの雑誌読み放題サービス(「マガジンウォーカー」)で読むことも出来るようになり、時代の移り変わりを感じます。紙の雑誌では相変わらず連載本数が多くてめちゃくちゃ分厚いですが(笑)、こうしたサービスを利用して読んでみるのもありだと思いますね。

2018-07-03 コミックアライブももう12年。

kenkyukan2018-07-03

今月発売のコミックアライブの表紙に「創刊12周年」の文字が躍っていて、ああこの雑誌ももうこんなに経つのかと思ってしまいました。コミックアライブの創刊は2006年。MF文庫Jを始めとするライトノベルの出版で知られたメディアファクトリーが、マンガ雑誌にも進出という形での創刊でした。あの当時は、どういうわけかマンガ雑誌の創刊ラッシュで、他の出版社からもかなりの数の雑誌が創刊されたのですが、その多くは早期に休刊となってしまいました。あるいは結局ウェブに移行した雑誌も多い。そんな中で、ここまで10年以上紙雑誌として続き、ページ数も分厚いままで健在なところを見ると、このアライブは成功組と見て間違いないでしょう。

 ここまで安定して続いてきた大きな理由は、まず自社のMF文庫Jを中心とするライトノベルコミカライズ、あるいはゲームやアニメ作品のコミカライズで、手堅く人気を確保してきた方針がありそうです。創刊初期の連載ならば「ゼロの使い魔」や「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」、「緋弾のアリア」「僕は友達が少ない」、比較的最近の連載ならば「ノーゲーム・ノーライフ」「Re:ゼロから始まる異世界生活」や「ようこそ実力至上主義の教室へ」あたりがその代表でしょうか。こうした誰もが知る人気作品のコミック連載の存在は大きい。コミック化でさらにヒットした作品もあり、最近ならリゼロこと「Re:ゼロから始まる異世界生活」のコミカライズは、かなりの良作であると思っています。

 こうしたメディアミックスと同時に、オリジナルの連載も初期の頃からまとまった数を打ち出し、そちらで良作を出し続けてきた意義も大きい。最初期の連載では「まりあ†ほりっく」、数年後には「のんのんびより」や「でぃーふらぐ!」の連載が始まり、いずれもアニメ化を達成しています。こうしたオリジナルの作品は、ライトノベルアニメコミカライズとは雰囲気の異なる作品も多く、意外に幅広い誌面の方針を感じることも出来ます。人気作品のコミカライズで手堅く人気を確保しつつ、オリジナルでは自由に幅広く様々な連載を打ち出していく。これも成功の大きな理由ではないでしょうか。

 もうひとつ、これは出版社のビジネスの話になってしまいますが、2013年にメディアファクトリーKADOKAWAによって吸収合併され、KADOKAWAグループの一員となったことも、この雑誌がここまで存続出来た理由として否定できません。次々と出版社を吸収合併する暗黒巨大企業・KADOKAWAの傘下となることで(笑)、運営に余裕が生まれて休刊の可能性は大きく遠のいたと思います。KADOKAWAグループの他出版社のコンテンツを容易にコミカライズできるようになったメリットも大きいですね。

 現在では、この雑誌も電子化を達成し、そのKADOKAWAの雑誌読み放題サービス(「マガジンウォーカー」)で読むことも出来るようになり、時代の移り変わりを感じます。紙の雑誌では相変わらず連載本数が多くてめちゃくちゃ分厚いですが(笑)、こうしたサービスを利用して読んでみるのもありだと思いますね。

2018-06-29 「オアシスロード」という古き良きゲーム。

kenkyukan2018-06-29

前回、20周年を迎えたというギルティギアを取り上げたので、今回は同じく20年前のゲーム「オアシスロード」を取り上げたみたいと思います。こちらは非常に知名度の低いゲームだと思われ、知っている人は多くないかもしれません。

 「オアシスロード」は、1998年にアイデアファクトリーから発売されたPSソフト。タイトルどおりどこか中央アジアを彷彿とさせる砂漠地方が舞台。ジャンルとしては世界を探索して地図を作っていくシミュレーションRPGといったところでしょうか。

 とにかく世界観と雰囲気は最高のゲームです。砂漠化が進み文明が後退してゆく世界。各地の交易が途絶え街が衰退し、人類が滅びに近付くこの世界で、キャラバンを組んで旅をして各地の交易を復活させるのがプレイヤーの目的です。ゲームの主な舞台となるマップ画面は、かつてアラブ圏で使われた円形の地図をモチーフにしていると思われ、タイトル画面でもその一端を見ることが出来ます。

 ゲーム自体は非常にシンプル。白地図と思われるマップ画面で好きな方向に移動すると、行った先にあったもの(街や遺跡)がそのまま地図に書き込まれる。そうして各地を探索して地図を完成させるのがひとつの目的です。さらに、行った先の町や村で、なんらかの生産物(特産品)があるなら、それを買い上げて他の場所に移して交易することが出来る。そうしていくつかの交易路を作っていくと、衰退して失われていた産業が復活する。例えば、染料の交易路と絹糸の交易路を復活させると、その合流点となる街で絹織物の産業が復活する。そんな感じのゲームだったと思います。

 加えて、各地の遺跡を探索し、失われた知識を復活させるという目的もあり、古い時代の情報を得るたびにストーリーが進む。そうして世界が衰退し滅亡へと向かう理由を突き止めるのも、プレイヤーのひとつの目的となっています。

 ただ、個々のシステムはあまりにシンプルすぎて、ほとんどが作業に終始し、ゲーム的な攻略性ややりこみ要素は決して高くありません。ゆえに、そうした点では物足りない点は否定できない。これは、後述するようにこのゲームが非常に小規模な開発体制で作られたことに起因しています。

 唯一、これはちょっと面白いなと感じたシステムがあり、それはアイテム回りのクリエーション要素です。プレイヤーがアイテムを加工して別のアイテムを作り出すシステムで、これだけなら他にも同様のゲームがあるのですが、このゲームの面白いのは、「プレイヤーが何もしなくても勝手にアイテムが変化することがある」ということ。

 具体的には、キャラバンの馬車でヤギを飼っておくと、しばらくすると勝手にミルクが生産されます。また、このヤギから毛を刈ることも出来るのですが、しばらくすると再び毛が生えてきてまた刈ることが出来ます。

 さらに「番犬」と「獣骨」を同時に持っておくと、いつのまにか獣骨がなくなり、代わりに小動物が馬車の中にいる(どうやら犬が狩ってきたらしい)。また、カイコの幼虫を持っておいた場合、しばらくするといつの間にかいなくなっています(成虫になって飛んで逃げた?)。

 極めつけは、にんじんを持っておくと、いつの間にかそのにんじんがなくなっていて、代わりに野生の馬が馬車に乱入している(笑)。これには思わず笑ってしまいました。

 すなわち、ゲーム中の時間の経過によって条件が満たされるという、のちのオンラインゲームでよく見られるシステムとも言えますが、これだけシンプルなゲームの中にそれを取り入れているのが面白いと思いました。「こちらが何もアクションを起こさないのに勝手に変わっていく」というところに、あの頃のゲームではあまり見られない面白さを感じたのです。

 そして、こうしたシンプルながらきらりと光るゲームを、わずか2人で作ったというその開発体制の特異さを挙げておきたい。音楽だけは外注で他に3人のコンポーザーが担当していますが、それ以外は本当にすべて2人で作っていたようです。当時のゲーム情報誌のインタビューにその詳細がありました。

 それによると、1人が企画・システム他プログラム以外のすべてを担当し、もうひとりがプログラムのすべてを担当。開発機材は中古のPC2台のみ。そこにソニーから提供されたPS用開発機材が刺さっているだけ。仕事場はそのパソコンが置かれたアパートの一室で家賃は18000円。ゲームの製作費用もひと月18000円。すなわちその家賃のみ。

 まさに「限界ゲーム制作」と言っていい状況で、これがPSの商業ゲームとして出たことがまず驚きです。今なら同人インディーズで出てもおかしくないですし、あるいは確実にネット経由のダウンロードで販売されているのではないか。これは、この90年代後半には、まだネットがほとんど普及していなかったという理由もありそうです。おそらくは、この頃が、こうした小規模な個人制作のゲームが、商業でパッケージ販売される最後の時代だったのではないか。そんな古き良きゲームの時代を思い出してしまいました。

2018-06-26 ギルティギアも20周年とか。

kenkyukan2018-06-26

 先日、「GUILTY GEAR」シリーズの生誕20周年を記念イベントが開かれたという話を聞きました。「○○が何周年」という話はこのところよく聞くような気がするのですが、このギルティギアまでもう20年が経つのかと思わず感慨にふけってしまいました。自分もこのシリーズには、とりわけ98年に出たシリーズ最初のゲームは非常に思い入れが深いです。

 ギルティギアの第1作、ファンの間では「初代」と呼ばれているようですが、これが発売されたのが1998年5月。家庭用のプレイステーションで出たソフトでした。アーケードゲームセンター)のゲームではないということで、ゲーマーの間での知名度は当初それほど高くありませんでした。しかし「PSで面白い格闘ゲームがある」という話は少しずつ広まっていて、プレイした人の評判はみな一様に高かったことを思い出します。

 格闘ゲームとしては、これ以前に出たゲームのシステムを多数取り入れたもので、個々のオリジナリティはそれほど高くはなかったかもしれません。しかし、それらすべてをうまくまとめ上げ、自由度の高いゲームに仕上がっていたことも間違いなく、とにかく遊び込めるゲームでした。対戦ツールとしてはシステムやバランスが荒削りすぎて、ゲームセンターで遊ぶ対戦バランスを求めるには厳しかったかもしれません。しかし、家庭で仲間と盛り上がって楽しむには十分で、アーケードのプレイヤーの間の評価も文句ないものでした。

 人気の理由は、キャラクターや世界観、ストーリーの作り込みも大きいです。今に至るシリーズの人気キャラクターの基礎はほぼここで出揃っていました。「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」の影響を受けたと言う近未来的な世界観と、格闘ゲームながらストーリーがよく出来ていたのもポイントで、CPU戦で全キャラクターのストーリーを追うだけでも楽しかったです。

 もうひとつ、BGMの出来があまりに素晴らしかったのも大きい。ハードロック風の疾走感溢れるサウンドは1作目から健在で、というか1作目こそ最高だという声が今でも根強いです。PSソフトとは思えないほど音質もよく、のちのアーケードのシリーズよりもいいくらいでした。

 あともうひとつだけ、特筆すべき点として、制作スタッフがわずか4人と非常に少人数で作られたことを挙げておきたい。実質的に常駐していたのは2人だけとも聞きますし、中でも制作の中心を担った石渡太輔氏は、企画・システムからシナリオ・キャラクターデザイン・BGMまでほとんどの制作に関わっており、のちのアーケードのシリーズを通じて一気に有名になりました。予算の都合で声優が雇えなくなり、キャラクターボイスの一部まで自分たちで当てているというのもすごい話で、本当に極限での少人数制作だったことが窺えます。これが、のちにアーケードへと進出して、そちらでも不動の人気格闘ゲームとなり、今に至るまで20年続くシリーズになったと考えると、あまりに感慨深いものがあります。

 ここ最近は、2014年に出たシリーズ最新作「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」とその最新アップデート「REV 2」を最後に、やや新作から遠ざかっている印象ですが、前述のイベントで「終わらせないためにも尽力する」「これからも作り続けていく」と力強いスタッフの発言が聞かれたので、これからもまだまだ安心して追い続けていけそうです。

2018-06-22 「しろいろとくろいろ」が商業コミックス化。

kenkyukan2018-06-22

 先日、6月のコミックス発売一覧で、「ハッピーシュガーライフ」の8巻と同時に「しろしろとくろいろ」のタイトルまで見つけて、非常に驚いてしまいました。かつて「ハッピーシュガーライフ」の作者・鍵空とみやきさんが同人で出していた作品ですが、まさかこれが今になって商業コミックスに収録されるとは思いませんでした。鍵空さんの同人作品は他にも多数ありますが、その中でもこれはとりわけ難解な内容で、商業で出すのは難しいと思える作品だと思います。

 「しろしろとくろいろ」は、かつて同人誌で4冊ほど出ていたシリーズ作品。今になって改めて後付けを調べてみると、最初の1冊が2008年8月。2冊目が2008年9月。そして3冊目が2009年2月。4冊目(これのみタイトルが「くろいろとしろいろ」)が2009年10月となっていました。のちにこの4冊をまとめた総集編が同年12月に出ています。あまりに昔すぎてもう覚えていませんでしたが、まさか10年近く前になるとは。

 その内容ですが、どこともつかない真っ白な世界で、どこまでも追いかけっこをする「白い子」と「黒い子」の姿を描いたファンタジー物語でしょうか。「白い子」の方は小さな子供に見えますし、「黒い子」の方は大人びた少年か青年くらいの年齢に見えますが、その本当の正体は見た目からは分からない。真っ白い空虚な世界で白い子は黒い子を追いかけます。小さく幼い白い子から逃げるのは黒い子にとって簡単なことのはずですが、なぜかその姿を放っておくことが出来ない。しかし、もし白い子に追いつかれて触れられるとその子は死んでしまうことを知っている。ゆえにいつまでも付かず離れず追いかけっこを続ける・・・といったストーリーになっています。

 ファンタジーといってもゲーム的な異世界ファンタジーではなく、童話的、あるいは寓話的なファンタジーと言える内容でしょうか。白い子と黒い子の正体は最後まで明確には語られず、本当に見た目どおりの存在なのかもしれないし、あるいは人の姿を取っている何かなのかもしれない。あるいは具体的な存在ですらなく、人間の内面か何かを描いた象徴である可能性もある。そんな読者の想像に多くを委ねるかのような内容で、初めて読んだ時には非常に戸惑いました。

 最近でこそ「ハッピーシュガーライフ」のヒットで知られている鍵空さんですが、同人誌での作品は、いわゆる創作同人的なもので、商業作品とはかなり雰囲気や方向性の異なるものが多く、これはその中でも決定的なものだと思います。ある程度以上の分かりやすい娯楽要素が求められる商業作品では、まず受けることは難しいと思っていました。

 実は、ずっと以前にも鍵空さんの同人的な作品が商業で掲載されたことがあります。「ゆめのみち」と「ユウグレ」という読み切りで、いずれも芳文社きららフォワードで掲載されました。掲載時期は2009年とこの「しろいろとくろいろ」の執筆時期とほど近く、この作品ほど難解ではないものの、やはり創作同人的な 要素が極めて強いものでした。そして、どうも読者の反応は芳しくなかったようで、2回の読み切りだけでその後の掲載はありませんでした。

 その後、しばらくしてスクエニJOKERの方で読み切り掲載から初連載を獲得した鍵空さんですが、以後の作品は多かれ少なかれ商業に寄った内容になっていたと思います。ゆえに、同人作品の中でもとりわけ創作的とも言える「しろいろとくろいろ」がここで商業コミックス化されることは本当に驚き。「ハッピーシュガーライフ」のアニメ化がそのきっかけだと思いますが、この機会にその独特の世界が多くの人の目に触れてほしいと思います。