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たかひろ的研究館・はてなダイアリー別館

2018-09-19 「トリコロ」だけは外せなかった。

kenkyukan2018-09-19

 前回の日記で取り上げたきらら展の展示作品。創刊初期の作品から満遍なく取り上げていて非常に好感が持てるのですが、ただ唯一、これだけはさらに入れてほしかった作品があります。「トリコロ」(海藍)です。

 まんがタイムきらら創刊号(2002年5月発売)からの連載で、ほどなくして圧倒的な人気を得て、ほぼ毎号表紙と巻頭カラーを飾るようになります。まさに初期きららの看板作品にして雑誌のイメージそのもの。また、当時ようやくジャンルとして知られるようになった「萌え4コマ」を代表する作品ともなり、萌え4コマといえば「あずまんが大王かこれ(トリコロ)」が真っ先に名前が挙がるような作品だったのです。

 その内容は、女子高生(高校2年)の主人公・七瀬八重を中心に、その同居人やクラスメイトたちとの日々のにぎやかで楽しい生活を描く日常もので、のちに続く萌え日常系作品の要素をほぼすべて満たすような作品でした。すなわち、

•女の子とその同居人やクラスメイトたちが主役。

•主役が4人(3人・5人)の女の子というテンプレート

•普段の学校生活や家での日常が描かれる。

•激しいギャグよりもほのぼの和むようなエピソードが中心。

•男性キャラクターはあまり登場しない。

•いわゆる百合的なキャラクター、関係性の描写

など、のちの萌え4コマテンプレートと言える条件はほぼ満たしていました。「あずまんが大王」と並んで、このジャンルの定着に大きな役割を果たしたことは間違いない。とりわけ創刊間もないきららにおいて、その雑誌への貢献度は計り知れないものがありました。

 また、作者である「海藍」さんは、きらら創刊以前から芳文社の4コマ誌で活動しており、この「トリコロ」以外にも「ママはトラブル標準装備!」や「特ダネ3面キャプターズ」という連載を行っていて、一時は3作品同時連載のような状態でした。「トリコロ」自身も、一時期は「まんがタイムナチュラル」という姉妹誌で平行連載していました。

 しかし、こうした連載の最盛期でも「休載が多い」という不安定さを抱えていて、やがて「ママはトラブル標準装備!」は(おそらく)打ち切りでの終了、「特ダネ3面キャプターズ」は、ある月の休載を最後に掲載されなくなり、その後何度か散発的に掲載されるも、結局最後は二度と掲載されることはなくなってしまいました。

 「トリコロ」も、きらら2005年5月号を最後に掲載が途絶え、事実上の休載。しかし、その後しばらくして、作者のサイトで掲載誌変更を発表され、なんとメディアワークスの「電撃大王」に移籍することが発表されます。看板中の看板作品の他社移籍は、当時の読者を非常に驚かせる出来事となり、芳文社との間で何かあったのか様々な憶測が飛ぶ事態となりました。そして、電撃大王2006年6月号より連載再開。しかし、当初から休載が目立つなどやはり連載は不安定で、2009年7月号を最後に掲載は途絶え、以後今に至るまで掲載されていません。この時、作者のもうひとつの連載だった「特ダネ3面キャプターズ」が、代わりに連載再開されるという話になり、これも読者の間で物議を醸しましたが、こちらも約2年の連載期間で終了。これが作者の海藍さんの現時点最後の商業活動となっています。

 そして2018年。今回のきらら展への展示作品に「トリコロ」が入らなかったのも、こうした他社移籍などのかつての出来事が理由なのかなと推測はできます。しかし、きらら創刊初期の看板作品にして、かつての萌え4コマ象徴ですらあった「トリコロ」が、きららの歴史を辿る展示作品に入らないというのはありえない。これなしできららの歴史を語ることは出来ないと思いますし、なんとしてもラインナップの先頭に入れてほしかったと思っています。

2018-09-18 「まんがタイムきらら展」

kenkyukan2018-09-18

 先日より開催が告知されていた「まんがタイムきらら展」の公式サイトが公開され、開催概要が告知されました。思ったより大規模な展示となっているようですが、その中で特にこれはと思ったのが、15年のきららの歴史を振り返るコーナーの実物雑誌展示と、さらにこれまでの作品から80作品をピックアップした作品展示コーナーでしょうか。80作品の中にはアニメ化されていない作品も多数含まれ、さらには2000年代前半のきらら創刊初期の作品から、満遍なくピックアップされていることに思わず注目してしまいました。

 ここ最近の「きらら」系作品の人気は、やはり積極的に行われるようになったアニメ化の影響が大きく(特に2013年〜2014年ゆゆ式きんいろモザイクご注文はうさぎですか?のヒットが大きい)、これらアニメ作品をきっかけにきらら4コマに入った読者はかなり多いのではないかと思います。一方で、それ以前の昔の作品、特にアニメ化されていない作品が話題に上ることは、以前よりもさらに少なくなっているように思いました。そんな中で、こうして初期の頃からの作品が展示されるイベントというのは、非常に貴重な機会ではないかと思えるのです。

 まず、2002年のきらら創刊直後の最初期の連載。この当時の連載では、「三者三葉」(荒井チェリー)や「ひだまりスケッチ」(蒼樹うめ)は、いまだに連載が続く人気作品ですが、それ以外にも「ねこきっさ」(ととねみぎ)や「姉妹の方程式」(野々原ちき)、「かみさまのいうとおり!」(湖西晶)など、当時の代表作と言える作品は数多くありました。こうした作品が創刊初期まで遡ってピックアップされているのはうれしい。

 少し時代が下った2000年代後半でも、これはという作品は多い。この当時のヒット作となると、2007年になってアニメ化された前述の「ひだまりスケッチ」や、2009年のアニメ化で空前の話題となった「けいおん!」の存在が大きいですが、これ以外にアニメ化こそされなかったが当時の雑誌の代表作と言える作品は数多くありました。きららの「うぃずりず」(里好)や「ふおんコネクト!」(ざら)、姉妹誌のMAXでは「イチロー!」(未影)や「ひろなex.」(すか)、キャラットからは「ラジオでGO!」(なぐも)や「アットホーム・ロマンス」(風華チルヲ)あたりが挙げられるでしょうか。「うぃずりず」は、金髪少女異文化交流4コマの元祖的存在だと思ってますし、あるいは「イチロー!」は、当時何度もMAXの表紙になったことから、今でもあの頃のMAXのイメージという印象が強いです。現在の「きんいろモザイク」や「ごちうさ」などのヒット作が看板となった以前のMAXは、自分にとってはこういうイメージの雑誌でした。

 こうした作品が、最近のアニメ化を伴うヒット作品と並んで取り上げられる機会というのは、ほかのイベントでは中々ないと思いますし、雑誌の変遷とその歴史を辿るという点でも貴重な機会ではないかと思います。最近になってきらら4コマに入ってきたファンのみならず、昔から4コママンガを読んできた読者にも楽しめるイベントになるのではないかと期待しています。

2018-09-12 それでも華々つぼみ先生を応援していく(定期)。

kenkyukan2018-09-12

 先日、まんがタイムきらら2015年より連載されていた「きらきら★スタディー〜絶対合格宣言〜」のコミックス最終3巻が発売されました。受験勉強に取り組む部活という、きらら系の学園ものコメディでありそうで意外になかったコンセプトの作品で、本格的に勉強に取り組む活動ぶりと随所に見られる受験勉強の小ネタ、対照的に普段はお気楽で楽しいコメディと、個人的にはかなり面白い作品だったと思っています。華々さんならではの画力による作画も相当なもので、3巻で終わってしまったのが本当に残念でした。

 作者の華々さんは、同時期にコミックキューンでも「クロちゃん家の押入れが使えない理由」という連載を続けていましたが、こちらは2巻で終了。なぜか主人公の部屋の押入れが宇宙とつながってしまい、個性的な宇宙人たちが次々とやってくるという、こちらはぶっとんだ設定が全面に出た楽しいコメディでした。これもいい線行ってる作品だと思ったのですが、早い時期のおそらくは打ち切りでの終了でコミックス2巻で終わってしまいました。

 さらに遡ると、きららではひとつ前に2012年〜2015年に連載された「コドクの中のワタシ」という作品もありました。こちらは、人外たちが集められた学校のクラスに、ただ1人入れられた人間の女の子の苦労を描いた学園コメディで、クラスメイトに獣人や吸血鬼、天使、果ては触手全開の宇宙人まで登場するこれもなかなかに刺激的な設定だったと思います。設定的には「クロちゃんちの押入れが使えない理由」の原点と言えるかもしれません。こちらもかなりよかったと思うのですが、しかしやはり2巻で終了。

 さらに遡れば、こちらは角川のコンプティークで2010年より連載された「放課後アトリエといろ」こそが、華々 さんの商業初連載作品にして原点になると思います。もともとは当時開催されたコミックイラストコンテスト(マンガ部門)や漫画新人賞の受賞作で、個性的な部員たちによる美術部の活動を描くコメディでした。美術部や美術科を舞台にした4コマはいくつも見られますが、これは華々さんならではの目に映えるカラフルなイラストで、明るく楽しいイメージがよく出た作品だったと思います。当時の角川も一時期相当推していたようで、2011年よりコンプエースでも同時連載となり、書店向けの情報誌でも短編が掲載されるほどでした。

 しかし、どういうわけかコミックスの売り上げは伸び悩んだようで、これを理由に掲載は次第に縮小され、約3年後の2013年に打ち切りとして終了。この処遇に際して多少のごたごたもあったようで、連載最後のあたりの数回はコミックスにも収録されていません。個人的にもこれが終わるのは非常に残念で、各所で惜しむ声も多数聞かれ、再開を望む声ももちろんあったのですが、結局実現することはありませんでした。

 さらにさらに遡れば、わたしが華々さんを知ったのは、2009年に開催された「高校生コミックイラストコンテスト」や「スニーカーイラストコンテスト」に投稿されたイラストでした。前者ではグランプリを受賞、後者でも賞を受賞しています。翌年にも同じようなコンテストで最優秀賞や準グランプリを受賞しており、この当時からイラスト、とりわけカラーイラストの美しさと楽しさが全面に出た世界観が際立っていました。この当時からずっと応援し続けてはや9年。いまだにブレイクしきれないのがほんとに不思議ですが、こうして定期的に取り上げつつ応援し続けていきたいと思っています。

2018-09-11 それでも華々つぼみ先生を応援していく(定期)。

kenkyukan2018-09-11

 先日、まんがタイムきらら2015年より連載されていた「きらきら★スタディー〜絶対合格宣言〜」のコミックス最終3巻が発売されました。受験勉強に取り組む部活という、きらら系の学園ものコメディでありそうで意外になかったコンセプトの作品で、本格的に勉強に取り組む活動ぶりと随所に見られる受験勉強の小ネタ、対照的に普段はお気楽で楽しいコメディと、個人的にはかなり面白い作品だったと思っています。華々さんならではの画力による作画も相当なもので、3巻で終わってしまったのが本当に残念でした。

 作者の華々さんは、同時期にコミックキューンでも「クロちゃんちの押入れが使えない理由」という連載を続けていましたが、こちらは2巻で終了。なぜか主人公の部屋の押入れが宇宙とつながってしまい、個性的な宇宙人たちが次々とやってくるという、こちらはぶっとんだ設定が全面に出た楽しいコメディでした。これもいい線行ってる作品だと思ったのですが、早い時期のおそらくは打ち切りでの終了でコミックス2巻で終わってしまいました。

 さらに遡ると、きららではひとつ前に2012年〜2015年に連載された「コドクの中のワタシ」という作品もありました。こちらは、人外たちが集められた学校のクラスに、ただ1人入れられた人間の女の子の苦労を描いた学園コメディで、クラスメイトに獣人や吸血鬼、天使、果ては触手全開の宇宙人まで登場するこれもなかなかに刺激的な設定だったと思います。設定的には「クロちゃんちの押入れが使えない理由」の原点と言えるかもしれません。こちらもかなりよかったと思うのですが、しかしやはり2巻で終了。

 さらに遡れば、こちらは角川のコンプティークで2010年より連載された「放課後アトリエといろ」こそが、華々 さんの商業初連載作品にして原点になると思います。もともとは当時開催されたコミックイラストコンテスト(マンガ部門)や漫画新人賞の受賞作で、個性的な部員たちによる美術部の活動を描くコメディでした。美術部や美術科を舞台にした4コマはいくつも見られますが、これは華々さんならではの目に映えるカラフルなイラストで、明るく楽しいイメージがよく出た作品だったと思います。当時の角川も一時期相当推していたようで、2011年よりコンプエースでも同時連載となり、書店向けの情報誌でも短編が掲載されるほどでした。

 しかし、どういうわけかコミックスの売り上げは伸び悩んだようで、これを理由に掲載は次第に縮小され、約3年後の2013年に打ち切りとして終了。この処遇に際して多少のごたごたもあったようで、連載最後のあたりの数回はコミックスにも収録されていません。個人的にもこれが終わるのは非常に残念で、各所で惜しむ声も多数聞かれ、再開を望む声ももちろんあったのですが、結局実現することはありませんでした。

 さらにさらに遡れば、わたしが華々さんを知ったのは、2009年に開催された「高校生コミックイラストコンテスト」や「スニーカーイラストコンテスト」に投稿されたイラストでした。前者ではグランプリを受賞、後者でも賞を受賞しています。翌年にも同じようなコンテストで最優秀賞や準グランプリを受賞しており、この当時からイラスト、とりわけカラーイラストの美しさと楽しさが全面に出た世界観が際立っていました。この当時からずっと応援し続けてはや9年。いまだにブレイクしきれないのがほんとに不思議ですが、こうして定期的に取り上げつつ応援し続けていきたいと思っています。

2018-09-06 「のんのんびより ばけーしょん」観賞報告。

kenkyukan2018-09-06

 先日の公開前の記事とかぶってしまいますが、ようやく待望の「のんのんびより」の劇場版である「のんのんびより ばけーしょん」を観ることが出来たので、報告も兼ねてその楽しさを伝えたいと思います。前回のテレビアニメ(2期)からすでに3年。ようやくの新作は期待通り、いや期待以上の「のんのんびより」となっていました。

 今回の劇場版のストーリーは、原作コミックの沖縄旅行編(コミックス6巻〜7巻)。最初のアニメ1期が始まる2013年秋以前に描かれている話で、初期のエピソードが中心だった1期ではアニメ化されず、さらには2年後の2015年に放送された2期でもこのエピソードアニメ化されなかったため(原作コミックス限定版付属のOVAではアニメ化されてますが)、まさに待望のアニメ化でした。個人的にもこのエピソードだけはいつかアニメで見てみたいと思っていたのです。

 基本的なあらすじは原作とほぼ同じ、デパートの買い物でやってみた福引で兄ちゃんが引き当てた沖縄旅行を契機に、いつものメンバーが揃って沖縄へと3泊4日の旅行へと出かける話。ただ、原作に比べると、沖縄の美しい風景やそこでの楽しい活動を描く叙情的なコンセプトが強く出ていて、いつものコメディで笑えると同時に、随所でほっと感動する名エピソードになっていたと思います。

 もともと、アニメのんのんびよりは、原作ではあまり目立たないもうひとつのコンセプトが追加されていました。原作が爆笑できるギャグやコメディが中心の作品であるのに対して、アニメはそこに田舎の美しい背景描写やのんびりした間の演出を積極的に取り入れた、叙情的な光景を随所で見せるアニメになっていたのです。この劇場版は、その方向性をさらに発展進化させ、明るい沖縄の雰囲気とそこでの楽しいひと時を存分に味わうことの出来る名作になっていると思いました。

 加えて、劇場版ならではの要素として、オリジナルの新キャラクターとして現地で出会う女の子(新里あおい)が登場、彼女の絡むシーンがまた秀逸でした。同い年という設定の夏海(なっつん)とはとりわけ仲良くなり、短い滞在期間の間にふたりで作った楽しい思い出、これが物語の大きなキーポイントになっていました。原作やアニメ1期で見られたれんげとほのかの名エピソード同様、ごく短い期間での出会いと別れ、その輝く思い出がほろっとさせる一編でしたね。

 最後にもうひとつ、作中では具体的な地名はあまり出てきませんが、沖縄の中でも石垣島近くの離島竹富島を舞台設定にしているところも惹かれました。旅行でメインの舞台になっている宿屋の描写が秀逸で、光と影のコントラストが強く描かれた開放的な宿舎の背景に強く惹かれるものがあったのです。さらには本島である石垣島も含めてダイビングカヤック、島の名所の訪問を存分に楽しむ光景を見て、自分もいつか行きたいなとまで思ってしまったのです。

2018-08-31 「異世界Cマート繁盛記」

kenkyukan2018-08-31

 集英社ダッシュエックス文庫ライトノベル異世界Cマート繁盛記」のコミカライズ1巻が先日発売されました。あの「GJ部」の作者コンビである新木伸・あるやの最新作。「GJ部」でも新木さんが原作小説を執筆し、あるやさんがその挿絵を担当、のちに始まったコミカライズもあるやさんがそのまま担当ということで、原作とコミックでイメージの差が無いことが大きな魅力でした。かつてのコミカライズ4コママンガで、4コマとしての面白さにも見るべきものがありましたが、今回は通常のコマ割のマンガ。しかし、そのかわいい絵とほのぼのした内容は健在でした。

 「異世界Cマート繁盛記」は、タイトルからも推測されるとおり、異世界でCマートという名前のスーパーをやる話。実際に店を運営するのは、主人公とエルフの少女のふたりが中心で、スーパーよりはコンビニに近い雰囲気だなと思いました。個人的には、異世界でセ○コーマートをやる話だと思っています(笑)。

 異世界(あるいは異世界に繋がる場所)で何か店や商売をやる話は、他にもいろいろ見られますが、この作品の特徴としては、どこまでも緩やかな設定で、異世界ものでよく見られる障壁やストレスが非常に少ないことが挙げられます。主人公は、ごく簡単に道を歩いていくだけで元の現代世界と行き来することが可能で、現代の物資をいくらでも持ち込むことも出来ます。ゆえに、主人公が元の世界に戻れないという寂しさや、現代の便利な道具を使えないという不便さは一切ありません。数ある異世界ものの中でも、最もゆるいタイプの設定ではないかと思います。

 加えて、異世界側の住人たちもみんな優しい人たちで、その社会も穏やかなものであるようです。ゆえに、店をやるにあたって客との間に軋轢が起こることも少ない。数少ない暗めの要素としては、街に生きる孤児の存在があり、小さい子供のうちは各家庭で持ち回りで育てられる仕組みになっているようです。しかし、本来ファンタジーの世界で打ち捨てられることの多い孤児を、街で保護する慣習が確立しているだけでも優しい設定と言えます。

 Cマートにもエナという孤児の少女がひとりやってくることになりますが、主人公とエルフのふたりがやがて引き取って一緒に暮らすことになり、この家族のような優しい関係がひとつの大きな見所ともなっています。

 こうした穏やかで優しい設定となった理由としては、原作者の新木先生がかつて語っていた「コンビニ前でたむろしている若者たちを見て、誰もがほっと安らげるような作品を書きたかった」という話があると思います。GJ部がまさにそうして生まれた作品だったのですが、異世界ものである今回の「Cマート繁盛記」も、そのコンセプトはいまだ生きていて、異世界ものによく見られる難題や障壁のないストレスフリーな作品になっているのではないか。あるやさんのかわいい作画もそれをばっちり再現していますし、原作ともどもこの作品を応援していきたいと思っています。

2018-08-29 「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」

kenkyukan2018-08-29

 少年エース最新10月号において、伊瀬勝良・原作、横田卓馬・作画で「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」という読み切りが掲載されています。タイトルからピンと来る人もいるかもしれませんが、あのMTG(マジックザギャザリング)をテーマにした読み切りで、先月の告知の時からゲームプレイヤーの間で話題に登っていました。横田卓馬先生は、少し前まで少年ジャンプで「背すじをピン!と」を連載しており、そちらで知っている人も多いかと思いますが、その連載中にMTGのネタを入れたり思い入れに満ちたイラストを公開したこともありました。今回の読み切り執筆も納得といったところで、個人的にも大いに期待していたのです。

 そして、実際に読んでみると、これが期待以上に面白い! 90年代後半のMTGが最も人気のあった時代を舞台に、日々このゲームに熱中する中学生たちの姿を描いたまさに《青春グラフィティ》。90年代のゲームが題材ということで、偶然にも現在アニメ放送中の「ハイスコアガール」と重なる部分も感じられ、実際にかつてこの時代にゲームにはまっていた人なら、より楽しめる内容になっていると思います。

 なんといっても作中のゲームの描写が実に濃い。98年頃(具体的には98年5月)の「テンペスト」時代のMTGの環境をほぼ完璧に再現している。主人公の使うのが「黒」のビートダウンデッキ、対するヒロインが使うのが「白」のやはりビート系デッキですが、どちらも当時の環境では定番中の定番。使われているカードもまさにそれだと納得できるものばかり。そして特定の色に致命的な効果をもたらすかつての色対策カードの存在。MTGにおいて誰もがまず注目するのはやはり「色」の選択であり、自分の好きな色のカードやデッキを使うのは何よりの醍醐味。それをこうしたダイナミックな形で描いてくれたのは、やはり王道にして大正解だと思います。

 個人的にもこの当時はMTGに最初にはまっていた時期でもあり、自分の経験と照らし合わせても、このゲーム回りの描写はほぼ万全と言ってよい出来でした。主人公たちが赴く喫茶店で、大人たちが真剣にはまっている姿を描いてくれたのもうれしいですね。黎明期のあの頃から、子供から大人のユーザーまで幅広く惹きつける魅力がこのゲームにはありました。

 主人公やヒロインを中心とするキャラクターたちの魅力も十分で、このまま連載化しても面白いと思います。すでにかなりの反響もあるようで、これは90年代がMTGが最も流行っていた時代でいまだ当時のユーザーが多く、あるいは「ハイスコアガール」同様に、「あの頃に一番ゲームにはまっていたけど今はゲームから離れている」読者層で、こうした作品に惹きつけられる人は、想像以上に多いのかもしれません。こうしたコンセプトの作品が、今後のトレンドのひとつになるのかもしれませんね。

2018-08-23 「ふりだしにおちる!」

kenkyukan2018-08-23

 先月末にコミックス1巻が出た「ふりだしにおちる!」(むっしゅ)を紹介したいと思います。随分前から電撃大王で連載していたのですが、単行本の情報は長い間音沙汰無く、ようやく待望の発売となりました。作者のむっしゅさんは、きららキャラットももうひとつ連載を行っていますが(「先パイがお呼びです!」)、こちらの方が商業初コミックスとなったようです。

 肝心の内容ですが、「女子高生っぽくない女子高生・青井鳩16歳が、立派な女子高生になるべく大奮闘? 女子高生の「良さ」が詰まった、ふんわり日常コメディ☆」などと紹介されているとおり、女子高生たちのゆるやかな日常を描くまったり楽しいコメディとなっています。

 主人公の青井鳩(16)は、高校生活を日々エンジョイしていましたが、ある日妹から言われた「女子高生らしくない」という一言にショックを受け(?)、周囲の生徒たちを見習って女子高生らしくなろうと奮闘したりしなかったり。そんなちょっとずれた主人公の行動と、それを暖かく見守るクラスメイトたちとの楽しい日常を、ふんわりした絵柄で優しく描いています。

 鳩の親しい友人であるクラスメイトたちも、明るく元気いっぱいだけどちょっと勉強は苦手(?)な飯塚亮(りょーちゃん)、おっとりしたお姉さんタイプでいつも笑顔の唯川春子春ちゃん)、ちょっぴりクールでちっちゃいツインテール少女・萩原えみ(萩原さん)と、個性的で楽しいキャラクター揃い。見ているだけでほんわかした気持ちになれますね。

 それともうひとつ。この「ふりだしにおちる!」も、最近の電撃が力を入れている百合作品のひとつであるようです。恋愛的な要素は薄めだと思いますが、女の子が女の子たちとわちゃわちゃする楽しい日常が好きな人にはとてもおすすめ。「やがて君になる」に「新米姉妹のふたりごはん」、「熱帯魚は雪に焦がれる」と、電撃からはひときわ注目度の高い百合作品が幾つも出ていますが、それに連なる作品としてこれにも期待したいと思います。

2018-08-22 「のんのんびより」の魅力を今一度語る。

kenkyukan2018-08-22

 ようやく、待ちに待った「のんのんびより」の劇場版の上映が迫ってきました。アニメ2期が終了してかれこれ丸3年が経っています。出来ればそろそろ3期を期待したかったところですが、新作アニメの情報で出てきたのは劇場版。これはこれで朗報ですし、内容も1期2期でなぜかやらなかった沖縄旅行の話(原作6・7巻)ということで、やはり楽しみなところは変わりありません。原作はいまだマイペースで続いていますが、最後のアニメ放送からはかなり遠ざかっていますし、ここで今一度この「のんのんびより」の面白さを語ってみることにしました。

 わたしが最初に原作を目にしたのは、連載開始時の2009年にまで遡りますが、真っ先に目を引かれたのはまずその絵のうまさですね。原作者の「あっと」先生の作品は、この連載以前から注目して見ていましたが、とにかく背景含めて徹底的に描きこんだ独特の濃さがあり、キャラクターにも極めて強い存在感があります。「のんのんびより」ならではの個性的なキャラクターの魅力は、このしっかりと描かれた絵から来るところが大きい。田舎の風景を緻密に描く背景美術にも見るべきものがありました。

 アニメでは、このあっと先生ならではの絵の濃さはかなり薄味になり、比較的オーソドックスなカラーの作画になっていますが、これはこれでいい感じの絵になっていますね。大塚舞さんのキャラクターデザインも原作のイメージによくはまっています。

 さらに原作のもうひとつの注目点は、独特の感性から繰り出されるコメディ・ギャグの面白さでした。現実にある子供たちの日常の行動、その側面を巧みに切り取ったようなエピソードが多く、しかもそれを毎回爆笑できるギャグに仕立てている。比較的最近のエピソードで特に印象に残っているのは、 原作8巻冒頭(アニメ2期2話)で登場した定規落としのエピソードですね。現実でも見られる定規落としという学校の遊びを、オーバーすぎる演出と戦術解説でとことん笑えるエピソードに仕立てている。いかにものんのんらしい1話だったと今でも思っています。

 そしてもうひとつ。これは何よりも言っておきたいのですが、キャラクターの意外なほど現実的と思える行動があります。例えば絶賛人気キャラクターのれんちょん(宮内れんげ)。「独特のセンスから名言(迷言)を次々と繰り出す」極めて個性的で、ある種マンガ的なキャラクターでもあると思うのですが、同時に端々で「あれっ」と思うほど現実の子供を思わせるような行動が見られるのです。これはと思う例は、原作3巻収録の第19話(アニメ1期7話)で、れんちょんが家で待っていた夕ごはんのカレーに興奮し(笑)、家の奥に向かって「ウオー!」と叫んで走っていくシーンですね。これはアニメでは声が付いてかなり強調されていますが、いかにも突拍子もない行動を取る子供らしさが出ていて印象に残っています。

 ここで強調したいのは、この「のんのんびより」自体は、決して現実をリアルに描く志向の作品ではなく、あくまでマンガ(アニメ)的なキャラクターやコメディ中心の、いわゆる萌えマンガの文法に即した作品ではないかと言うこと。にもかかわらず、どういうわけかリアリティというか現実に通じるような描写が端々で見られる。これが非常に面白い。おそらくは、原作者のあっとさんの現実の経験が、作品作りに生かされているのではないかと推測していますが、それが「のんのんびより」ならではの独特の面白さを生んでいると思うのです。

 ようやく、待ちに待った「のんのんびより」の劇場版の上映が迫ってきました。アニメ2期が終了してかれこれ丸3年が経っています。出来ればそろそろ3期を期待したかったところですが、新作アニメの情報で出てきたのは劇場版。これはこれで朗報ですし、内容も1期2期でなぜかやらなかった沖縄旅行の話(原作6・7巻)ということで、やはり楽しみなところは変わりありません。原作はいまだマイペースで続いていますが、最後のアニメ放送からはかなり遠ざかっていますし、ここで今一度この「のんのんびより」の面白さを語ってみることにしました。

 わたしが最初に原作を目にしたのは、連載開始時の2009年にまで遡りますが、真っ先に目を引かれたのはまずその絵のうまさですね。原作者の「あっと」先生の作品は、この連載以前から注目して見ていましたが、とにかく背景含めて徹底的に描きこんだ独特の濃さがあり、キャラクターにも極めて強い存在感があります。「のんのんびより」ならではの個性的なキャラクターの魅力は、このしっかりと描かれた絵から来るところが大きい。田舎の風景を緻密に描く背景美術にも見るべきものがありました。

 アニメでは、このあっと先生ならではの絵の濃さはかなり薄味になり、比較的オーソドックスなカラーの作画になっていますが、これはこれでいい感じの絵になっていますね。大塚舞さんのキャラクターデザインも原作のイメージによくはまっています。

 さらに原作のもうひとつの注目点は、独特の感性から繰り出されるコメディ・ギャグの面白さでした。現実にある子供たちの日常の行動、その側面を巧みに切り取ったようなエピソードが多く、しかもそれを毎回爆笑できるギャグに仕立てている。比較的最近のエピソードで特に印象に残っているのは、 原作8巻冒頭(アニメ2期2話)で登場した定規落としのエピソードですね。現実でも見られる定規落としという学校の遊びを、オーバーすぎる演出と戦術解説でとことん笑えるエピソードに仕立てている。いかにものんのんらしい1話だったと今でも思っています。

 そしてもうひとつ。これは何よりも言っておきたいのですが、キャラクターの意外なほど現実的と思える行動があります。例えば絶賛人気キャラクターのれんちょん(宮内れんげ)。「独特のセンスから名言(迷言)を次々と繰り出す」極めて個性的で、ある種マンガ的なキャラクターでもあると思うのですが、同時に端々で「あれっ」と思うほど現実の子供を思わせるような行動が見られるのです。これはと思う例は、原作3巻収録の第19話(アニメ1期7話)で、れんちょんが家で待っていた夕ごはんのカレーに興奮し(笑)、家の奥に向かって「ウオー!」と叫んで走っていくシーンですね。これはアニメでは声が付いてかなり強調されていますが、いかにも突拍子もない行動を取る子供らしさが出ていて印象に残っています。

 ここで強調したいのは、この「のんのんびより」自体は、決して現実をリアルに描く志向の作品ではなく、あくまでマンガ(アニメ)的なキャラクターやコメディ中心の、いわゆる萌えマンガの文法に即した作品ではないかと言うこと。にもかかわらず、どういうわけかリアリティというか現実に通じるような描写が端々で見られる。これが非常に面白い。おそらくは、原作者のあっとさんの現実の経験が、作品作りに生かされているのではないかと推測していますが、それが「のんのんびより」ならではの独特の面白さを生んでいると思うのです。

2018-08-21 「のんのんびより」の魅力を今一度語る。

kenkyukan2018-08-21

 ようやく、待ちに待った「のんのんびより」の劇場版の上映が迫ってきました。アニメ2期が終了してからかれ丸3年が経っています。出来ればそろそろ3期を期待したかったところですが、新作アニメの情報で出てきたのは劇場版。これはこれで朗報ですし、内容も1期2期でなぜかやらなかった沖縄旅行の話(原作6・7巻)ということで、やはり楽しみなところは変わりありません。原作はいまだマイペースで続いていますが、最後のアニメ放送からはかなり遠ざかっていますし、ここで今一度この「のんのんびより」の面白さを語ってみることにしました。

 わたしが最初に原作を目にしたのは、連載開始時の2009年にまで遡りますが、真っ先に目を引かれたのはまずその絵のうまさですね。原作者の「あっと」先生の作品は、この連載以前から注目して見ていましたが、とにかく背景含めて徹底的に描きこんだ独特の濃さがあり、キャラクターにも極めて強い存在感があります。「のんのんびより」ならではの個性的なキャラクターの魅力は、このしっかりと描かれた絵から来るところが大きい。田舎の風景を緻密に描く背景美術にも見るべきものがありました。

 アニメでは、このあっと先生ならではの絵の濃さはかなり薄味になり、比較的オーソドックスなカラーの作画になっていますが、これはこれでいい感じの絵になっていますね。大塚舞さんのキャラクターデザインも原作のイメージによくはまっています。

 さらに原作のもうひとつの注目点は、独特の感性から繰り出されるコメディ・ギャグの面白さでした。現実にある子供たちの日常の行動、その側面を巧みに切り取ったようなエピソードが多く、しかもそれを毎回爆笑できるギャグに仕立てている。比較的最近のエピソードで特に印象に残っているのは、 原作8巻冒頭(アニメ2期2話)で登場した定規落としのエピソードですね。現実でも見られる定規落としという学校の遊びを、オーバーすぎる演出と戦術解説でとことん笑えるエピソードに仕立てている。いかにものんのんらしい1話だったと今でも思っています。

 そしてもうひとつ。これは何よりも言っておきたいのですが、キャラクターの意外なほど現実的と思える行動があります。例えば絶賛人気キャラクターのれんちょん(宮内れんげ)。「独特のセンスから名言(迷言)を次々と繰り出す」極めて個性的で、ある種マンガ的なキャラクターでもあると思うのですが、同時に端々で「あれっ」と思うほど現実の子供を思わせるような行動が見られるのです。これはと思う例は、原作3巻収録の第19話(アニメ1期7話)で、れんちょんが家で待っていた夕ごはんのカレーに興奮し(笑)、家の奥に向かって「ウオー!」と叫んで走っていくシーンですね。これはアニメでは声が付いてかなり強調されていますが、いかにも突拍子もない行動を取る子供らしさが出ていて印象に残っています。

 ここで強調したいのは、この「のんのんびより」自体は、決して現実をリアルに描く志向の作品ではなく、あくまでマンガ(アニメ)的なキャラクターやコメディ中心の、いわゆる萌えマンガの文法に即した作品ではないかと言うこと。にもかかわらず、どういうわけかリアリティというか現実に通じるような描写が端々で見られる。これが非常に面白い。おそらくは、原作者のあっとさんの現実の経験が、作品作りに生かされているのではないかと推測していますが、それが「のんのんびより」ならではの独特の面白さを生んでいると思うのです。

2018-08-15 「ひとりぼっちの○○生活」

kenkyukan2018-08-15

 「三ツ星カラーズ」の作者・カツヲさんのもうひとつの連載「ひとりぼっちの○○生活」を紹介してみたいと思います。先日、「三ツ星カラーズ」のアニメ最終回に際して、こちらのアニメ化も告知されています。連載開始時期はこちらの方が早く2013年から電撃だいおうじでスタート。4コママンガなのでコミックスの刊行ペースはゆるやかですが、現在4巻まで巻を重ねています。

 肝心の内容ですが、中学入学を契機に幼なじみの女の子と「中学でクラス全員と友達になる」ことを約束した女の子・一里ぼっち(ひとりぼっち)が、極度の人見知りで人と話すのが苦手なところをなんとか乗り越えて、クラスメイトとひとりひとり友達になるべく日々奮闘するというもの。主人公のぼっちは、極度の人見知りであがり症ネガティブ思考でありながら、なぜか変に行動力だけがあり、思い切った(時にとんでもない)アプローチによって次第に友達が増えていきます。事前に友達作りのための会話計画などを立てることも多く、それが妙にずれていて失敗の種になったりするのも面白いです。

 ぼっちの友達になっていくクラスメイトたちもひとりひとり個性的で面白い。一見して怖そうな外見に見えて実は素直で優しい性格の砂尾なこ、クラスの副委員長で、一見してしっかり者の優等生に見えてどこか間の抜けた残念な行動を取ってしまう本庄アル、海外からやってきた生徒で明るい性格でぼっちにひたすら懐くソトカ・ラキター、クラスの風紀委員でなぜか自分は友達を作らない主義宣言する(しかしツンデレ気味で結局ぼっちの友達になっていく)倉井佳子と、まさに極端な個性派揃いですね。

 面白いのは、キャラクターたちの名前が、そのまま性格や特徴を表す語呂合わせになっていること。一里ぼっち(ひとりぼっち)、砂尾なこ(すなおなこ)、本庄アル(ほんしょうある)、ソトカ・ラキター(そとからきたー)、倉井佳子(くらいかこ)と、みんな面白くて笑ってしまう。個人的には、ダメなところを指摘されるたびに飛び上がって頭突きをする(特に砂尾なこに対する突っ込みが激しい)本庄アルちゃんが面白くて好きですね。

 連載が進むたびに次第に周囲の友達が増えて、クラスメイトのつながりが広がっていくのも楽しいところ。4巻の時点ではぼっちの友達は6〜7人程度まで増えており、もはやぼっちとは言えないかもしれません(笑)。これから先さらに友達が増えて最後はどんな展開を迎えるのか、それも楽しみです。

2018-08-08 「えんどろ〜?」

kenkyukan2018-08-08

 先日、「えんどろ〜!」という新作オリジナルアニメが唐突に告知されました。いかにも日常系の雰囲気で、また(個人的に)うれしい新作が出てきたのかと思って思わず注目したのですが、これがスタッフ的にその筋の豪華クリエイター集結という感じで実に面白い。

 まず真っ先に目を引くのが、告知イラストを手掛けるなもりさんですね。言わずと知れた「ゆるゆり」の原作者。最近では、別の新作アニメでもキャラクター原案を担当しているようですが(「RELEASE THE SPYCE」)、日常系と言えそうなこの作品の方が、より雰囲気に合っているような気がします。

 さらに監督にはかおりさんの名前が挙がっています。言わずと知れたあの名作中の名作「ゆゆ式」の監督であり、その新作となれば一気に期待が高まることは間違いない。

 次いでシリーズ構成に名前が挙がっているのがあおしまたかしさんで、こちらはまず何よりも「ゆるゆり」1期・2期のシリーズ構成・脚本を担当したことで注目されます。他にも「干物妹!うまるちゃん」や「ガヴリールドロップアウト」など、動画工房による同系のアニメシリーズ構成・脚本を数多く手掛けており、今回のスタッフ起用にもまさに納得の感があります。

 キャラクターデザインに挙がっているのが飯塚晴子さん。「たまゆら」のキャラクターデザインが最も知られていると思いますが、他にも「がっこうぐらし!」や「田中くんはいつもけだるげ」などのキャラクターデザインも担当しており、今回の抜擢にもやはり納得。告知イラストも原案なもりさんのデザインの雰囲気をよく表現していて、これは大いに期待が高まります。

 最後に制作会社はStudio五組。なんと言っても「きんいろモザイク」の制作スタッフであり、あるいは「Aチャンネル」、最近では10月から放送予定の「となりの吸血鬼さん」の作品も担当しています。これもまた日常系アニメの本命制作チームのひとつですね。

 総じて、ここ最近の日常系などと呼ばれていたジャンルのアニメ、その制作スタッフを一同に集めたような企画で、まさに自分が見るためにあるようなアニメだと思いました(笑)。どういう経緯でこのスタッフがまとまったのか知りませんが、まるでそのジャンルのスタッフが酒の席で意気投合して立ち上げたような企画だとも思ってしまいました。

 告知では、「ありそでなかった日常系ファンタジー」とのコピーも打ち出されていて、確かにこの手の日常系ではファンタジーを舞台にした作品は、少々珍しいかもしれません。しかし、それに加えて、そもそも原作付きでないオリジナルのアニメで、こうしたジャンルの作品が企画されること自体が、中々に珍しいことではないでしょうか。ある意味では、ここ最近のきらら系を始めとした日常系アニメの安定した人気を受けて、ついにこうした企画が立ち上がるまでになったと感じました。その点でも非常に楽しみですね。

2018-08-02 「恋する小惑星」

kenkyukan2018-08-02

 少し前の話になりましたが、3月にコミックス1巻が発売された「恋する小惑星」(Quro)を取り上げてみたいと思います。きららキャラットの連載で、全編に渡って地学地球科学)を取り上げているところに注目していました。

 地学とはどんな学問か? これは、地質学や鉱物学、地球物理学など地球を扱う科学の総称であり、さらに大気圏の現象を扱う気象学、宇宙を扱う天文学まで包括的に含む概念でもあります。自分が高校で選択した地学も、前半は地球物理の勉強が中心でしたが、後半になると気象、そして最後は天文・宇宙へと範囲が広がっていきました。

 作品の舞台はとある高校の地学部。主人公のみら(木ノ幡みら)は、高校で天文部に入部しようとしましたが、しかし天文部はすでになく、地質研究会と合併して「地学部」になっていたと知り大ショック。やむを得ず地学部の見学へと向かってみたみらでしたが、そこで出会ったのは、かつて幼い頃に「ふたりで新しい小惑星を見つける」と約束をした幼なじみ・あお(真中あお)の姿。思わぬ再会に驚きながらも、かつての夢に向けての活動を再開すべく、地学部での活動をスタートすることになります。

 実際に始まった活動は、かつて所属していた部活ごとに「地質班」と「天文班」に分かれてのスタートになりましたが、今までほとんどかぶらなかった両者の活動が、ひとつの部活として合同で作業することでひとつとなり、互いに新たな経験・知見を得るという展開が、この作品ならではの魅力になっています。

 すなわち、ある日には河原で石を拾って地質学の研究に没頭し、またある日には夜に望遠鏡を持ち出して天体観測を始める。あるいは、すぐ星座を見つけられる天文班の生徒に対して、なぜ分かるのかと問うとそれは「慣れ」と答えるのに対して、すぐ石の種類が分かる地質班に対して、なぜ分かるのかと問うと、やはり慣れと答える(笑)。未経験者に対して自分の知っていることを教えるという展開を通じて、包括的な学問である地学の魅力を打ち出しているところが面白いですね。

 ひとつの現象に対して、天文学地質学観点から分かる範囲の解説をするというくだりも面白い。同じ月を見ても、地質学観点からは別の知見を得ることで役に立てる。ほんの小さなネタですが、地学という包括的な学問の一端をよく表していると思いました。

 「新しい小惑星を見つける」という遠大な目標に向けて、ひとつひとつ着実に前進していこうというストーリーにも惹かれます。1巻のクライマックスは、地学部の合宿で筑波の地質標本館・地図と測量の科学館・JAXA筑波宇宙センターを訪れるエピソードでしょうか。展示物に夢中になって楽しみつつも、自分の目標に向けて積極的にアプローチをかけていき、最後には思わぬ形で手かがりを掴む。最後にどういった形で夢に追いつくのか、今後の展開も楽しみです。

2018-08-01 「棺担ぎのクロ。」最終7巻発売。

kenkyukan2018-08-01

 先日、ついにあのきゆづきさとこさんの「棺担ぎのクロ。」の最終7巻が発売されました。6巻の時点で「次で完結」と告知されて、ああもう終わってしまうのかと思っていましたが、ついにその時が来てしまいました。少し前に、きゆづきさんのもうひとつの代表作「GA-芸術科アートデザインクラス-」も、一足先に終了を迎えていましたが、ついにこちらの連載も終了。ひとつの時代が終わった感もありました。

 「棺担ぎのクロ。」が始まったのは、まんがタイムきららの2005年1月号。創刊から数年が経っているとはいえまだきらら黎明期で、その当時の連載陣の中でもひときわ目立った存在でした。その特徴は、まず4コマながらストーリーの連続性を強く意識したストーリー4コマであったこと。通常の4コマでも次の4コマに話が続く作品は珍しくないですが、最初からそのつながりとストーリーを強く志向した作品は、黎明期からのきらら4コマのひとつの特徴であり、その中でもこの「クロ。」はその代表だったと思います。

 もうひとつの特徴は、とにかく美麗で緻密な作画に惹きこまれるビジュアル4コマであったこと。とりわけカラーページの美しさは必見で、寓話的なファンタジー世界の奥深さを緻密に描いたその作風には、毎回目を奪われるばかりでした。ダークファンタジーであることを意識してか、コマの周囲が黒く塗られているのも特徴で、明るくカラフルな世界観が特徴の「GA」とは対を成しているようでした。

 肝心の内容ですが、どこか童話的な雰囲気も感じられる異世界を舞台にしたファンタジー物語でしょうか。全身黒ずくめの服装でなぜか棺桶を背負って旅を続ける少女・クロと、彼女の相棒で蝙蝠の姿をした人間の青年・セン(センセイ)、そして道中立ち寄った家で邂逅した幼い双子「ニジュク」と「サンジュ」、彼女たちのある目的に向かった旅を描くロードファンタジーです。「ダークファンタジー」とも呼ばれるとおり、暗く陰鬱な雰囲気とエピソードが特徴的で、ある「呪い」を受けたクロの旅は、目的に近付くごとに暗く険しいものとなる。彼女の物語とは直接の関係の薄い道中のエピソードも多数ありますが、いずれも暗く悲しいものが多い。ただ、時には明るめのエピソードもあり、あるいは毎回の4コマでは気の効いたコメディでオチが付くことも多く、読んでいてそこは救われるところでした。

 ただ、連載が佳境に差し掛かった最後の数巻では、彼女を取り巻く物語はいよいよどす黒く陰惨なものとなり、道中で邂逅するエピソードもさらに暗いものとなりました。しかし、物語の真相が語られる最後の結末は、それまでの展開から予想されるいずれのものでもないエンディングとなっていて、一抹の寂しさの中にも明るさを感じる最後で、これには言葉もなく救われる思いでした。

 個人的には、終盤の6巻でクロが立ち寄った「霧の王国」の国王が、エピローグで再び登場したのが嬉しかったですね。その国は、とある理由からクロを苛む呪いからは隔絶された場所であり、そこに留まっていれば一時の安らぎを得ることが出来ました。しかし、クロはそこに長く滞在することなく再びつらい旅を続けることを決意する。「ここにいたら確実に”クロ”はこの世界からいなくなる」。それがその理由でした。そして、その国の王が最後に今一度登場してくれたことで、このエピソードにも心残りのない結末が付いたと思ったのです。

2018-07-26 「Roid-ロイド-」

kenkyukan2018-07-26

 先日、百合姫で半年ほど前から連載が始まっていた「Roid-ロイド-」のコミックス1巻が発売されました。百合姫の連載の中では珍しいアンドロイドもののSFとして、あるいは作者のしろし先生の活動を以前から知っていたことがあって、連載が始まった時から注目していましたがやはり期待通りの作品でした。

 アンドロイドが完全に一般化し、人とロボットが”共生”する世界。学校のロボ研で活動している双上唯は、後輩で天才AI開発者とされる一宮玲那と共にロボット制作に取り組む日々。しかし、唯が作ったロボットはあまりにも制御が複雑すぎてAIの製作が困難と突っぱねられます。とっておきの手段として、制作者である唯の意識をロボットに転送、もしくは意識を複製(コピー)しようと意気込みますが、それは危険で違法な行為だとやはり後輩からたしなめられます。

 しかし、不慮のトラブルでその玲那がさらわれ、玲那を助けるために違法だとされるコピーをいきなり実行。これで人間の唯とアンドロイドの唯、ふたりの唯が同時に存在することになりました。

 のちにアンドロイドは杏那と名づけられますが、人間だった頃のかつての記憶は不確かであり、自分が果たして唯なのかと考える。コピー元の唯の方も、自分よりも明らかに性能的に優れ自分に出来ない能力を持つ杏那を見て複雑な思いに捕らわれます。こうした人間とその複製であるロボットという複雑な関係、その葛藤がダイレクトに描かれていることにまず惹かれました。一方で、普段の日常は、もとはまったく同じとされる人格でありながら、意外なほど気兼ねない関係で共に暮らしている描写も面白いです。

 加えて、ロボットと人間の関係をさらに根源的に問うエピソードもあり、ロボットが人間に危害を加えられないようなセーフティがかけられている状態で、ゆえにロボットに八つ当たりをする人が絶えないという負の側面も描かれます。そんな中で何らかの理由でロボットが暴走して人を傷つける事件が発生。その状況で悪質な人間を自業自得として見殺しにしてもいいのか、それともやはり暴走するロボットを破壊するのが正しいのか、ひどく迷い逡巡するシーンも描かれていて、ここは非常に考えさせられました。

 こうしたロボットアイデンティティを巡るSF的なテーマは、過去の作品でも幾度となく見られたものかもしれませんが、完全に自分の複製が実現してしまったシチュエーションにおける人間関係をダイレクトに描く内容は、やはりひどく惹きつけられるものがありました。

 百合姫連載の百合作品として考えると、百合的な要素(恋愛的な百合要素)はさほど多くないような気もしますが(コミックスあとがきによると「恋愛ではないけど関係性的には百合」)、こういうのも十分ありではないかと思いました。新しいタイプの百合作品としても期待したいですね。

2018-07-25 「広島さん、友達になってください」

kenkyukan2018-07-25

 今回は、芳文社まんがホーム連載「広島さん、友達になってください」(こみちまい)を取り上げたいと思います。もともとはまんがタイムファミリーの連載でしたが、同誌の先日の休刊に伴い移籍した形となってます。いずれも、このサイトでは珍しくきらら系でない芳文社の4コマ雑誌です。きららより読者年齢は高く大人の読者が中心の、いわゆるファミリー4コマということになるでしょうか。

 「広島さん」のタイトルどおり、広島で暮らす女子高生とその友達、家族の日常を描くほのぼの日常系4コマです。主人公のキミは、自由父親に引っ張られる形で引っ越しを繰り返し、行く先々で友達が出来なかったこともあって思い切り人見知りな性格。しかし、ついにこの広島で長く定住することになり、今度こそこの土地に馴染んで友達を作っていこうと奮闘することになります。

 キミは、広島に受け入れられようと様々な知識を本で仕入れてきますが、やはりその性格が災いして中々溶け込むことが出来ない。しかし、そんな彼女の元に地元広島女子高生・紅と真理が話しかけてきて、明るい性格の彼女たちに半ば引っ張られる形で、少しずつこの広島生活に馴染んでいくことになります。

 事前に知識仕入れているとはいえ、やはり初めて直に接する広島の文化はひとつひとつ新鮮で驚きの日々。「ぶち」「じゃけえ」「たいぎい」など独特の言い回しに満ちた広島弁を皮切りに、お好み焼き牡蠣(カキ)、もみじまんじゅうに代表される地元グルメの数々、大鳥居や千条閣、水族館などの名所が満載の宮島、そしてなんといっても広島と言えば広島カープ! 時には真面目に平和公園の資料館(原爆資料館)や爆心地にも赴き、かつての歴史に向き合うエピソードも盛り込まれています。

 面白いのは、広島は初めてながら事前に知識仕入れてきたキミの方が、地元民である紅や真理よりも時に広島に詳しい様を見せること。考えてみると、広島の地元民がそう頻繁に宮島に観光に行くことはないですし、土産物であるもみじまんじゅうを食べることもあまりない(お好み焼きは食うけど)。細かい歴史に関してもキミの方が詳しかったり、「地元民だからといって必ずしも地元に詳しいわけではない」という、あるあるな感覚が随所で見られて面白いです。

 もうひとつ、タイトルの「広島さん」は、主人公のキミが初めて暮らす広島の地を敬愛を込めて呼んでいる呼び名で、誰か特定の人物を指しているわけではありません。そんな風に、他からの移住者ながらこの土地に敬意を払って馴染もうとするキミと、それをおおらかに受け入れる同級生広島の人々の温かな交流が随所に見られる、ハートフルなコメディになっていると思います。非きららの4コマということで、普段そちらを読んでいる人にはやや縁遠い作品になるかもしれませんが、興味を持たれたら是非一度読んでみてほしいと思いますね。

2018-07-19 ひなこのーと・スロウスタート・すのはら荘の管理人さん・・・繰り返

kenkyukan2018-07-19

 このところ、夏アニメの「すのはら荘の管理人さん」が、(一部で)えらく話題になっているようですが、個人的にはついに萌え4コマ発のエロアニメの本命が来たなという感じです。このところ、「ひなこのーと」「スロウスタート」そして「すのはら荘の管理人さん」と、なぜかこうしたアニメ化が続いているようで興味深い。

 そもそも、いわゆる萌え4コマ、日常4コマと呼ばれるジャンルにおいて、エロ要素を強く押し出した作品はそれほど多数派ではありません。かわいい絵柄やエピソードを中心にした作品が中心で、一方でエロいと思える作品もあるにはあるのですが、全体の中では少数派だと思います。

 しかし、そうした作品がアニメ化された場合、原作以上にエロ要素を強調したものになることが多く、やたら強い印象を残すことも多い。このところ、そうした作品が続いていることも興味深いです。

 まず、昨年春と少し前に放送された「ひなこのーと」。これは原作の絵と内容からしてすでにエロかったのですが、アニメ化に際してさらにその路線がヒートアップ。特に毎回最後に表示される次回予告(エンドカード)のイラストが、原作にもないようなエロというかフェチを押し出したものばかりで、これは大いに話題になりました。原作の掲載雑誌がコミックキューンで、きらら系ではないということで、その方向性の違いも話題になった記憶があります。

 次に、今年の冬に放送された「スロウスタート」。これは、原作はそこまでエロい作品でもなかったと思うのですが、しかしフェチズムを感じる描写は多々あり、それがアニメ化に際してやはり強調される形となりました。とりわけ、9話の放送はいわゆる水着回となっていたのですが、原作ではただ部屋で水着で過ごすだけのエピソードだったのが、アニメでは本当にプールで泳ぐ話になっていて一気にサービスシーンとも思えるシーンが倍増。「新鮮なライチ」というパワーワードまで飛び出してこれが大いに反響を招きました。

 そして、今回満を辞して(?)アニメ化された「すのはら荘の管理人さん」。これはもう原作が始まった時からしてとんでもない作品であり、すでにその時点で話題になっていました。まさかアニメ化されるとは思っていなかったのですが、これがしっかり30分枠でアニメ化され、しかものっけからエロシーンと意味深な発言を連発する原作に忠実な内容。さらに原作最初からその内容に反応していた伊東ライフ氏をエンドカードに起用するなど、あらゆる意味で注目を集める作品になっていました。ここに来てついにとんでもないアニメが出てしまったという感じです。

 ところで、この3作品には見た目で分かりやすい共通点があり、それはいずれの作品も「管理人(大家さん)がでかい」というものであります。何がでかいのかは見た目で明らかなのであえて言いませんが、こうしたマンガの作者(読者)が、アパートや寮の管理人のお姉さんにどんなイメージを求めているか、それが分かるようで面白いと思います。

2018-07-18 「ふたつ屋根の下」はいいぞ。

kenkyukan2018-07-18

 「やがて君になる」に「新米姉妹のふたりごはん」、最近では「熱帯魚は雪に焦がれる」と、電撃からの期待の百合作品が幾つも出ていますが、ここでもうひとつ百合(だと思われる)作品の新作を取り上げたいと思います。電撃だいおうじで連載中の4コマ「ふたつ屋根の下」(ほなみ彩)です。

 その内容は、タイトルからも類推されますが、高校生の双子姉妹・いちかとひとはとそのお隣さんのユイの日常の生活を描いた日常4コマです。双子の妹・ひとはは、のんびり屋で食べること・寝ることが大好きなぐーたらな性格(でも料理にはこだわりがあって得意)、対して姉のいちかは、オシャレ大好きな今ドキ女子ながらどこか抜けたところがあって、家の中ではやはりくだぐだした生活になっています。そんなふたりを何かにつけて面倒を見るのがお隣さんのユイで、寝坊するふたりをなんとか起こして遅刻しないように学校に連れて行くのが日常の光景。

 そんな和気あいあいとした3人の日常の関係性が、作品最大の魅力です。ひとはといちかは、その性格の微妙な違いから何かにつけて言い争いの喧嘩をしていますが、基本的にはとても仲は良い。そんなふたりの間に入ってお世話をするユイは、基本的には頼りになるものの、ふたりの思わぬわがままからいつも振り回されがちで、わたわたする姿がとてもかわいい。

 学校はもちろん家でのご近所付き合いも親密で、しょっちゅう互いの家にやってきてたまには一緒にお泊り会をやることも。ゴキブリが怖くて隣の家に逃げ込んだユイが、そのまま双子の部屋でお泊りすることになり、ユイを真ん中にして3人で並んで寝るエピソードなど、安心感もあいまってその幸福感半端ないです。「二人がお隣さんで本当によかったな」というユイの言葉が身に沁みました。

 2人の関係性を追求する百合作品もいいですが、こうしたわだかまりのない親密な仲の3人の関係性を描く作品というのも、幸福感ありすぎてとてもいいと思いました。かわいい絵のご近所日常交流コメディとして、電撃ながらきらら系にも通じる萌え4コマ作品の新作としても期待したいと思います。

2018-07-12 「次にくるマンガ大賞」私的受賞候補を考える。

kenkyukan2018-07-12

 毎年恒例となっている「次にくるマンガ大賞」、すでに投票期間が終わっていますが、8月に来る結果発表の前に、個人的に受賞してほしい期待作品をピックアップしてみたいと思います。毎年「これもうきてる(人気を得ている)だろ」という指摘が絶えない本作ではありますが(笑)、いまだコミックスの巻数が少なく(5巻以内)、アニメ化なども達成していない作品が大半ということで、知名度でいまだ浸透し切っていない期待作の存在を広めるという点で、一定の意義はあると思っています。

 さて、まず個人的に近年ずっとはまっているきらら系作品からは、「まちカドまぞく」「どうして私が美術科に!?」「なでしこドレミソラ」の3作品がノミネートされています。きららには、これからアニメ化まで期待される良作は数多くありますが、その中でとりわけ注目される作品となるとこのあたりになると思います。

 とりわけ、「まちカドまぞく」は、ここ数年で最も注目されている4コママンガでしょうか。魔族と魔法少女対立するはずのふたりがなぜか仲良くなって交流してしまう日常ファンタジーコメディですが、密度の濃いセリフ回しと背景作画、キャラクターの特異な関係性の変化を緻密に描く内容が秀逸で、4コマ読者の間では非常に高い評価を得て久しい。そろそろこのあたりで受賞を弾みにさらなる展開が望まれると思います。

 最近になってとみに良作が増えたなと感じている電撃系作品からは、電撃マオウ連載の「熱帯魚は雪に焦がれる」を真っ先に挙げたい。情感溢れるセンシティブな心情描写が特徴的な百合作品で、また「水族館部」という実在する個性的な部活をフィーチャーした点でも興味深い一作です。前回上位に受賞した「やがて君になる」「新米姉妹のふたりごはん」に続く電撃期待の百合作品ですね。また、同じ電撃マオウからは、軽快な探偵ギャグコメディ「まったく最近の探偵ときたら」もノミネートされており、こちらも非常に面白いです。

 また、今回は、これ以外のノミネート作品からも「吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん」「将来的に死んでくれ」「私の百合はお仕事です!」などの百合作品が上がっており、このジャンルの広がりを実感することが出来ます。

 KADOKAWAヤングエースから「であいもん」もそろそろブレイクしてほしい作品のひとつ。かつてはエニックスで活躍したあの浅野りんさんの最新作で、京都和菓子屋を舞台にした浅野さんらしいコミカル&ハートフルなストーリー。登場する色取り取りの和菓子にも目を奪われます。

 メジャーどころで週刊少年ジャンプからは、「Dr.STONE」も挙げておきたい。前回2位に受賞した「約束のネバーランド」と並んで、最近のジャンプの新作では最大のヒットだと思ってます。石化した世界から文明を復活させるというダイナミックな設定、青年誌で活躍していたBoichiによる迫力の作画で有無を言わせぬ面白さがあります。これは間違いなく既にきてるマンガですね。

 自分の扱ってきたスクエニからは、「ジャヒー様はくじけない!」も、すでにかなりのヒットを達成していると思われる人気作品。魔力を失って魔界から人間界へと飛ばされた悪魔ジャヒー様が、魔界復興させるために日々地道な努力に励むというもの。人間界で生き延びるために必死に庶民的な生活を繰り広げる、そのつつましやかな姿が本当に面白い爆笑ギャグになっています。80円アップした時給に心の底から喜ぶ姿が面白すぎる。スクエニも次に来る作品としてこれを相当推しているようで、今後の展開に注目されますね。

2018-07-05 コミックキューン4年間の変遷。

kenkyukan2018-07-05

前回、コミックアライブについて語ったので、今回はそのアライブの「雑誌内雑誌」として始まった4コマ誌・コミックキューンについても触れておきたいと思います。最初は、アライブの2014年10月号(8月発売号)において「100号記念」として始まった雑誌内企画で、雑誌の中ほどの1ページが別雑誌の「表紙」となっていて、その後の雑誌の一角が雑誌内雑誌という扱いになっていました。その頃は、「雑誌」といっても掲載本数は10作品程度の小規模なものでした。

 しかし、これが見事好評を博したのか、ほぼ1年後の2015年8月に独立創刊。アライブから分離して本当の意味での独立した雑誌となり、さらに連載本数とページ数は一気に倍増。独立創刊号では38本の掲載作品と400ページを超えるページとなり、普通の4コマ誌の2倍近い分量だったことが印象に残っています。

 雑誌の雰囲気は、まさに先行する萌え4コマ誌、とりわけ芳文社きらら系雑誌に近いものがあり、さらには当初から「かわいい」イメージの作品を強く推している方針を強く感じられました。「かわいい」というのは、そもそもこの手の4コマはかわいい女の子のキャラクターをメインにした作品ではありますが、その中でも特に絵柄的なかわいさやほのぼのした作風が前面に出た作品が多かったと思います。初期からの連載では、「となりの吸血鬼さん」や「にゃんこデイズ」、「ニョロ子の生放送!」「ルルメイト」「さくらマイマイ」あたりに、特にそれを強く感じました。

 しかし、独立創刊して1年が過ぎ2年近くが経ったあたりから、次第に誌面に変化が訪れ、こうした作品の多くが意外に早い終了を迎えることになります。他の雑誌以上に、コミックスの売り上げが連載の継続に直結するような方針が感じられ、「えっこの連載が?」と思うような作品が、おそらくは打ち切りでいくつも終了を迎えてしまいました。

 代わって最近になって始まった連載では、それまでより大人びた雰囲気の作品が多く見られるようになりました。「大人びた」とは絵柄的な印象でもありますし、あるいはキャラクターの年齢設定が高めのマンガや、端的にえろい内容のマンガ(笑)が増えたということでもあります。「かわいい」よりも「えろい」印象が強いマンガの方が、以前より多くなったと言えます。また、いわゆる百合ジャンルの作品が増えたのも近年の特徴で、ここから「明るい記憶喪失」や「キリング・ミー!」のような話題作も出てくるようになりました。

 つまり、「最初のうちは、きらら系の後追いのかわいい4コマ誌が出てきたなと思っていたら、いつの間にか半分はエロコメで半分は百合姫みたいな雑誌になっていた」というのが正直なところで、創刊数年のうちでこの変化はかなり大きなものがあると思います。個人的には、この変化には若干戸惑いを感じずにはいられないところですが、残る初期の頃からの作品からも「となりの吸血鬼さん」のようなアニメ化作品は出ていますし、いまだ先行する4コマ誌を追っていく存在としては貴重で、期待しつつ追っていきたいと思っています。

2018-07-04 コミックアライブももう12年。

kenkyukan2018-07-04

今月発売のコミックアライブの表紙に「創刊12周年」の文字が躍っていて、ああこの雑誌ももうこんなに経つのかと思ってしまいました。コミックアライブの創刊は2006年。MF文庫Jを始めとするライトノベルの出版で知られたメディアファクトリーが、マンガ雑誌にも進出という形での創刊でした。あの当時は、どういうわけかマンガ雑誌の創刊ラッシュで、他の出版社からもかなりの数の雑誌が創刊されたのですが、その多くは早期に休刊となってしまいました。あるいは結局ウェブに移行した雑誌も多い。そんな中で、ここまで10年以上紙雑誌として続き、ページ数も分厚いままで健在なところを見ると、このアライブは成功組と見て間違いないでしょう。

 ここまで安定して続いてきた大きな理由は、まず自社のMF文庫Jを中心とするライトノベルコミカライズ、あるいはゲームやアニメ作品のコミカライズで、手堅く人気を確保してきた方針がありそうです。創刊初期の連載ならば「ゼロの使い魔」や「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」、「緋弾のアリア」「僕は友達が少ない」、比較的最近の連載ならば「ノーゲーム・ノーライフ」「Re:ゼロから始まる異世界生活」や「ようこそ実力至上主義の教室へ」あたりがその代表でしょうか。こうした誰もが知る人気作品のコミック連載の存在は大きい。コミック化でさらにヒットした作品もあり、最近ならリゼロこと「Re:ゼロから始まる異世界生活」のコミカライズは、かなりの良作であると思っています。

 こうしたメディアミックスと同時に、オリジナルの連載も初期の頃からまとまった数を打ち出し、そちらで良作を出し続けてきた意義も大きい。最初期の連載では「まりあ†ほりっく」、数年後には「のんのんびより」や「ディーふらぐ!」の連載が始まり、いずれもアニメ化を達成しています。こうしたオリジナルの作品は、ライトノベルアニメコミカライズとは雰囲気の異なる作品も多く、意外に幅広い誌面の方針を感じることも出来ます。人気作品のコミカライズで手堅く人気を確保しつつ、オリジナルでは自由に幅広く様々な連載を打ち出していく。これも成功の大きな理由ではないでしょうか。

 もうひとつ、これは出版社のビジネスの話になってしまいますが、2013年にメディアファクトリーKADOKAWAによって吸収合併され、KADOKAWAグループの一員となったことも、この雑誌がここまで存続出来た理由として否定できません。次々と出版社を吸収合併する暗黒巨大企業・KADOKAWAの傘下となることで(笑)、運営に余裕が生まれて休刊の可能性は大きく遠のいたと思います。KADOKAWAグループの他出版社のコンテンツを容易にコミカライズできるようになったメリットも大きいですね。

 現在では、この雑誌も電子化を達成し、そのKADOKAWAの雑誌読み放題サービス(「マガジンウォーカー」)で読むことも出来るようになり、時代の移り変わりを感じます。紙の雑誌では相変わらず連載本数が多くてめちゃくちゃ分厚いですが(笑)、こうしたサービスを利用して読んでみるのもありだと思いますね。

2018-07-03 コミックアライブももう12年。

kenkyukan2018-07-03

今月発売のコミックアライブの表紙に「創刊12周年」の文字が躍っていて、ああこの雑誌ももうこんなに経つのかと思ってしまいました。コミックアライブの創刊は2006年。MF文庫Jを始めとするライトノベルの出版で知られたメディアファクトリーが、マンガ雑誌にも進出という形での創刊でした。あの当時は、どういうわけかマンガ雑誌の創刊ラッシュで、他の出版社からもかなりの数の雑誌が創刊されたのですが、その多くは早期に休刊となってしまいました。あるいは結局ウェブに移行した雑誌も多い。そんな中で、ここまで10年以上紙雑誌として続き、ページ数も分厚いままで健在なところを見ると、このアライブは成功組と見て間違いないでしょう。

 ここまで安定して続いてきた大きな理由は、まず自社のMF文庫Jを中心とするライトノベルコミカライズ、あるいはゲームやアニメ作品のコミカライズで、手堅く人気を確保してきた方針がありそうです。創刊初期の連載ならば「ゼロの使い魔」や「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」、「緋弾のアリア」「僕は友達が少ない」、比較的最近の連載ならば「ノーゲーム・ノーライフ」「Re:ゼロから始まる異世界生活」や「ようこそ実力至上主義の教室へ」あたりがその代表でしょうか。こうした誰もが知る人気作品のコミック連載の存在は大きい。コミック化でさらにヒットした作品もあり、最近ならリゼロこと「Re:ゼロから始まる異世界生活」のコミカライズは、かなりの良作であると思っています。

 こうしたメディアミックスと同時に、オリジナルの連載も初期の頃からまとまった数を打ち出し、そちらで良作を出し続けてきた意義も大きい。最初期の連載では「まりあ†ほりっく」、数年後には「のんのんびより」や「でぃーふらぐ!」の連載が始まり、いずれもアニメ化を達成しています。こうしたオリジナルの作品は、ライトノベルアニメコミカライズとは雰囲気の異なる作品も多く、意外に幅広い誌面の方針を感じることも出来ます。人気作品のコミカライズで手堅く人気を確保しつつ、オリジナルでは自由に幅広く様々な連載を打ち出していく。これも成功の大きな理由ではないでしょうか。

 もうひとつ、これは出版社のビジネスの話になってしまいますが、2013年にメディアファクトリーKADOKAWAによって吸収合併され、KADOKAWAグループの一員となったことも、この雑誌がここまで存続出来た理由として否定できません。次々と出版社を吸収合併する暗黒巨大企業・KADOKAWAの傘下となることで(笑)、運営に余裕が生まれて休刊の可能性は大きく遠のいたと思います。KADOKAWAグループの他出版社のコンテンツを容易にコミカライズできるようになったメリットも大きいですね。

 現在では、この雑誌も電子化を達成し、そのKADOKAWAの雑誌読み放題サービス(「マガジンウォーカー」)で読むことも出来るようになり、時代の移り変わりを感じます。紙の雑誌では相変わらず連載本数が多くてめちゃくちゃ分厚いですが(笑)、こうしたサービスを利用して読んでみるのもありだと思いますね。

2018-06-29 「オアシスロード」という古き良きゲーム。

kenkyukan2018-06-29

前回、20周年を迎えたというギルティギアを取り上げたので、今回は同じく20年前のゲーム「オアシスロード」を取り上げたみたいと思います。こちらは非常に知名度の低いゲームだと思われ、知っている人は多くないかもしれません。

 「オアシスロード」は、1998年にアイデアファクトリーから発売されたPSソフト。タイトルどおりどこか中央アジアを彷彿とさせる砂漠地方が舞台。ジャンルとしては世界を探索して地図を作っていくシミュレーションRPGといったところでしょうか。

 とにかく世界観と雰囲気は最高のゲームです。砂漠化が進み文明が後退してゆく世界。各地の交易が途絶え街が衰退し、人類が滅びに近付くこの世界で、キャラバンを組んで旅をして各地の交易を復活させるのがプレイヤーの目的です。ゲームの主な舞台となるマップ画面は、かつてアラブ圏で使われた円形の地図をモチーフにしていると思われ、タイトル画面でもその一端を見ることが出来ます。

 ゲーム自体は非常にシンプル。白地図と思われるマップ画面で好きな方向に移動すると、行った先にあったもの(街や遺跡)がそのまま地図に書き込まれる。そうして各地を探索して地図を完成させるのがひとつの目的です。さらに、行った先の町や村で、なんらかの生産物(特産品)があるなら、それを買い上げて他の場所に移して交易することが出来る。そうしていくつかの交易路を作っていくと、衰退して失われていた産業が復活する。例えば、染料の交易路と絹糸の交易路を復活させると、その合流点となる街で絹織物の産業が復活する。そんな感じのゲームだったと思います。

 加えて、各地の遺跡を探索し、失われた知識を復活させるという目的もあり、古い時代の情報を得るたびにストーリーが進む。そうして世界が衰退し滅亡へと向かう理由を突き止めるのも、プレイヤーのひとつの目的となっています。

 ただ、個々のシステムはあまりにシンプルすぎて、ほとんどが作業に終始し、ゲーム的な攻略性ややりこみ要素は決して高くありません。ゆえに、そうした点では物足りない点は否定できない。これは、後述するようにこのゲームが非常に小規模な開発体制で作られたことに起因しています。

 唯一、これはちょっと面白いなと感じたシステムがあり、それはアイテム回りのクリエーション要素です。プレイヤーがアイテムを加工して別のアイテムを作り出すシステムで、これだけなら他にも同様のゲームがあるのですが、このゲームの面白いのは、「プレイヤーが何もしなくても勝手にアイテムが変化することがある」ということ。

 具体的には、キャラバンの馬車でヤギを飼っておくと、しばらくすると勝手にミルクが生産されます。また、このヤギから毛を刈ることも出来るのですが、しばらくすると再び毛が生えてきてまた刈ることが出来ます。

 さらに「番犬」と「獣骨」を同時に持っておくと、いつのまにか獣骨がなくなり、代わりに小動物が馬車の中にいる(どうやら犬が狩ってきたらしい)。また、カイコの幼虫を持っておいた場合、しばらくするといつの間にかいなくなっています(成虫になって飛んで逃げた?)。

 極めつけは、にんじんを持っておくと、いつの間にかそのにんじんがなくなっていて、代わりに野生の馬が馬車に乱入している(笑)。これには思わず笑ってしまいました。

 すなわち、ゲーム中の時間の経過によって条件が満たされるという、のちのオンラインゲームでよく見られるシステムとも言えますが、これだけシンプルなゲームの中にそれを取り入れているのが面白いと思いました。「こちらが何もアクションを起こさないのに勝手に変わっていく」というところに、あの頃のゲームではあまり見られない面白さを感じたのです。

 そして、こうしたシンプルながらきらりと光るゲームを、わずか2人で作ったというその開発体制の特異さを挙げておきたい。音楽だけは外注で他に3人のコンポーザーが担当していますが、それ以外は本当にすべて2人で作っていたようです。当時のゲーム情報誌のインタビューにその詳細がありました。

 それによると、1人が企画・システム他プログラム以外のすべてを担当し、もうひとりがプログラムのすべてを担当。開発機材は中古のPC2台のみ。そこにソニーから提供されたPS用開発機材が刺さっているだけ。仕事場はそのパソコンが置かれたアパートの一室で家賃は18000円。ゲームの製作費用もひと月18000円。すなわちその家賃のみ。

 まさに「限界ゲーム制作」と言っていい状況で、これがPSの商業ゲームとして出たことがまず驚きです。今なら同人インディーズで出てもおかしくないですし、あるいは確実にネット経由のダウンロードで販売されているのではないか。これは、この90年代後半には、まだネットがほとんど普及していなかったという理由もありそうです。おそらくは、この頃が、こうした小規模な個人制作のゲームが、商業でパッケージ販売される最後の時代だったのではないか。そんな古き良きゲームの時代を思い出してしまいました。

2018-06-26 ギルティギアも20周年とか。

kenkyukan2018-06-26

 先日、「GUILTY GEAR」シリーズの生誕20周年を記念イベントが開かれたという話を聞きました。「○○が何周年」という話はこのところよく聞くような気がするのですが、このギルティギアまでもう20年が経つのかと思わず感慨にふけってしまいました。自分もこのシリーズには、とりわけ98年に出たシリーズ最初のゲームは非常に思い入れが深いです。

 ギルティギアの第1作、ファンの間では「初代」と呼ばれているようですが、これが発売されたのが1998年5月。家庭用のプレイステーションで出たソフトでした。アーケードゲームセンター)のゲームではないということで、ゲーマーの間での知名度は当初それほど高くありませんでした。しかし「PSで面白い格闘ゲームがある」という話は少しずつ広まっていて、プレイした人の評判はみな一様に高かったことを思い出します。

 格闘ゲームとしては、これ以前に出たゲームのシステムを多数取り入れたもので、個々のオリジナリティはそれほど高くはなかったかもしれません。しかし、それらすべてをうまくまとめ上げ、自由度の高いゲームに仕上がっていたことも間違いなく、とにかく遊び込めるゲームでした。対戦ツールとしてはシステムやバランスが荒削りすぎて、ゲームセンターで遊ぶ対戦バランスを求めるには厳しかったかもしれません。しかし、家庭で仲間と盛り上がって楽しむには十分で、アーケードのプレイヤーの間の評価も文句ないものでした。

 人気の理由は、キャラクターや世界観、ストーリーの作り込みも大きいです。今に至るシリーズの人気キャラクターの基礎はほぼここで出揃っていました。「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」の影響を受けたと言う近未来的な世界観と、格闘ゲームながらストーリーがよく出来ていたのもポイントで、CPU戦で全キャラクターのストーリーを追うだけでも楽しかったです。

 もうひとつ、BGMの出来があまりに素晴らしかったのも大きい。ハードロック風の疾走感溢れるサウンドは1作目から健在で、というか1作目こそ最高だという声が今でも根強いです。PSソフトとは思えないほど音質もよく、のちのアーケードのシリーズよりもいいくらいでした。

 あともうひとつだけ、特筆すべき点として、制作スタッフがわずか4人と非常に少人数で作られたことを挙げておきたい。実質的に常駐していたのは2人だけとも聞きますし、中でも制作の中心を担った石渡太輔氏は、企画・システムからシナリオ・キャラクターデザイン・BGMまでほとんどの制作に関わっており、のちのアーケードのシリーズを通じて一気に有名になりました。予算の都合で声優が雇えなくなり、キャラクターボイスの一部まで自分たちで当てているというのもすごい話で、本当に極限での少人数制作だったことが窺えます。これが、のちにアーケードへと進出して、そちらでも不動の人気格闘ゲームとなり、今に至るまで20年続くシリーズになったと考えると、あまりに感慨深いものがあります。

 ここ最近は、2014年に出たシリーズ最新作「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」とその最新アップデート「REV 2」を最後に、やや新作から遠ざかっている印象ですが、前述のイベントで「終わらせないためにも尽力する」「これからも作り続けていく」と力強いスタッフの発言が聞かれたので、これからもまだまだ安心して追い続けていけそうです。

2018-06-22 「しろいろとくろいろ」が商業コミックス化。

kenkyukan2018-06-22

 先日、6月のコミックス発売一覧で、「ハッピーシュガーライフ」の8巻と同時に「しろしろとくろいろ」のタイトルまで見つけて、非常に驚いてしまいました。かつて「ハッピーシュガーライフ」の作者・鍵空とみやきさんが同人で出していた作品ですが、まさかこれが今になって商業コミックスに収録されるとは思いませんでした。鍵空さんの同人作品は他にも多数ありますが、その中でもこれはとりわけ難解な内容で、商業で出すのは難しいと思える作品だと思います。

 「しろしろとくろいろ」は、かつて同人誌で4冊ほど出ていたシリーズ作品。今になって改めて後付けを調べてみると、最初の1冊が2008年8月。2冊目が2008年9月。そして3冊目が2009年2月。4冊目(これのみタイトルが「くろいろとしろいろ」)が2009年10月となっていました。のちにこの4冊をまとめた総集編が同年12月に出ています。あまりに昔すぎてもう覚えていませんでしたが、まさか10年近く前になるとは。

 その内容ですが、どこともつかない真っ白な世界で、どこまでも追いかけっこをする「白い子」と「黒い子」の姿を描いたファンタジー物語でしょうか。「白い子」の方は小さな子供に見えますし、「黒い子」の方は大人びた少年か青年くらいの年齢に見えますが、その本当の正体は見た目からは分からない。真っ白い空虚な世界で白い子は黒い子を追いかけます。小さく幼い白い子から逃げるのは黒い子にとって簡単なことのはずですが、なぜかその姿を放っておくことが出来ない。しかし、もし白い子に追いつかれて触れられるとその子は死んでしまうことを知っている。ゆえにいつまでも付かず離れず追いかけっこを続ける・・・といったストーリーになっています。

 ファンタジーといってもゲーム的な異世界ファンタジーではなく、童話的、あるいは寓話的なファンタジーと言える内容でしょうか。白い子と黒い子の正体は最後まで明確には語られず、本当に見た目どおりの存在なのかもしれないし、あるいは人の姿を取っている何かなのかもしれない。あるいは具体的な存在ですらなく、人間の内面か何かを描いた象徴である可能性もある。そんな読者の想像に多くを委ねるかのような内容で、初めて読んだ時には非常に戸惑いました。

 最近でこそ「ハッピーシュガーライフ」のヒットで知られている鍵空さんですが、同人誌での作品は、いわゆる創作同人的なもので、商業作品とはかなり雰囲気や方向性の異なるものが多く、これはその中でも決定的なものだと思います。ある程度以上の分かりやすい娯楽要素が求められる商業作品では、まず受けることは難しいと思っていました。

 実は、ずっと以前にも鍵空さんの同人的な作品が商業で掲載されたことがあります。「ゆめのみち」と「ユウグレ」という読み切りで、いずれも芳文社きららフォワードで掲載されました。掲載時期は2009年とこの「しろいろとくろいろ」の執筆時期とほど近く、この作品ほど難解ではないものの、やはり創作同人的な 要素が極めて強いものでした。そして、どうも読者の反応は芳しくなかったようで、2回の読み切りだけでその後の掲載はありませんでした。

 その後、しばらくしてスクエニJOKERの方で読み切り掲載から初連載を獲得した鍵空さんですが、以後の作品は多かれ少なかれ商業に寄った内容になっていたと思います。ゆえに、同人作品の中でもとりわけ創作的とも言える「しろいろとくろいろ」がここで商業コミックス化されることは本当に驚き。「ハッピーシュガーライフ」のアニメ化がそのきっかけだと思いますが、この機会にその独特の世界が多くの人の目に触れてほしいと思います。

2018-06-21 自分がここ最近の電撃を推している理由。

kenkyukan2018-06-21

 ここ最近、気が付けば電撃系作品を紹介する記事を数多く書いていました。実際、今の電撃のコミックは、これはという面白い作品が増えているような気がします。中心雑誌である電撃大王だけでなく、姉妹誌の電撃マオウ・電撃だいおうじ・電撃G'sコミックでもこれはという作品が多い。それも、特定のジャンルの作品だけでなく、様々なジャンルの作品で良作が出ているようで面白いです。

 まず、これまでの電撃の中心ジャンルと言えるバトル・ファンタジー・SF系の作品。「とある魔術の禁書目録」「とある科学の超電磁砲」のシリーズがその代表と言えますが、このジャンルもいまだ健在。その「禁書目録」のアニメ待望の3期が10月から放送ということで、また盛り上がりそうです。

 最近の作品だと「ソードアートオンライン」「魔法科高校の劣等生」が最大のヒット作で、スピンオフコミックも数多く連載されています。アニメも「ソードアートオンライン」のスピンオフ作品である「ガンゲイルオンライン」が好評放送中。元々はいずれもオンラインの投稿小説ですが、こうした作品が電撃で商業化されたのも、ジャンル的に納得の行くところでしょう。

 こうした以前からのメインジャンルに加えて、最近電撃大王を中心に増えてきたのが百合系と言える作品。「やがて君になる」「新米姉妹のふたりごはん」「籠の少女は恋をする」などの連載で、「やがて君になる」は10月からのアニメ化も控え、雑誌の看板と言えるほどの存在となっています。また、連載だけでなく、百合作品を集めたアンソロジーまで積極的に刊行するなど、このジャンルへの本格的な取り組みが窺えます。電撃マオウでも「熱帯魚は雪に焦がれる」という新作が好評を博しており、このジャンルの人気はさらに続きそうです。

 これまでの電撃で隠れたメインジャンルと言えるキッズ系のコメディでも良作が多い。いまだ大王で連載が続く「よつばと!」「苺ましまろ」がその代表ですが、最近でもアニメ化を達成した「三ツ星カラーズ」も良作のひとつでしょう。最近始まった新作でも、だいおうじの方で「あなたを大人にする○(まる)つのこと」という切れのいい面白さを見せています。

 より広くコメディ作品全体で見ても、いずれもアニメ化を果たした「ガヴリールドロップアウト」「この美術部には問題がある!」が、それぞれだいおうじ・マオウで好評連載中。とりわけ4コマ・ショートコミック誌であるだいおうじには期待できる作品が多いですね。「三ツ星カラーズ」の作者のもうひとつの連載で、アニメ化を控える「ひとりぼっちの○○生活」もそのひとつ。

 それ以外の最近の新作でも、ホラー+マンガ家マンガの異色の取り合わせ「稲川さんの恋と怪談」、異世界同人イベントを開催するまさに異世界コミケ魔法使いの印刷所」など、これはという作品は多い。出版社全体で良作が生まれる機運というか勢いのようなものを感じますね。

2018-06-16 NEOGEOを語るなら今しかない。

kenkyukan2018-06-16

 先日、かつてのNEOGEOネオジオ)のゲームを多数収録した新しいゲーム機NEOGEO mini」の発売が告知され、かつてのファンを中心にひとしきり盛り上がる一幕がありました。わたしも、90年代に格闘ゲームを中心に数多くのゲームにはまった記憶があり、これには思わず膝を乗り出すことになりました。今でもあの当時の人気ゲームの存在感は健在で、今でも遊びたいという熱心なファンは多いと思います。

 「NEOGEOネオジオ)」は、SNKから発売された家庭用および業務用ゲーム機アーケードゲームゲームセンターの設置筐体)で、双方でまったく同じソフトと仕様を実現しており、ゲームセンターのゲームがほぼそのままの形で家庭で遊べるという、当時としては画期的なシステムを採用していました。 その代わり、ソフトの価格は1本3万円以上(!)と極めて高額で、購入にはかなりの勇気のいる代物でした。のちにソフトの価格が安いCD版ハード「NEOGEO CD」も発売されたものの、こちらはその読み込みの時間が非常に長く、ひどくプレイに苦労させられるものとなっていました。ひとつのゲーム機としては、そうした多大な難点を抱えるものであったため、あまり多くは普及しませんでしたが、しかしそれでもこれを購入して熱心にプレイするプレイヤーは多かった。それだけ当時のNEOGEOアーケードゲームが魅力的だったということでしょう。

 NEOGEOを発売したSNKは、90年代において様々な名作ゲームを出してきましたが、やはり一番の中心は格闘ゲームでしょう。主に2D格闘ゲームにおいて、先行する先駆者であるカプコンのゲームと並んで、あるいは当時はカプコン以上の人気だったかもしれません。数ある人気シリーズで90年代のゲームセンターを席巻していました。

 迫力の演出とダイナミックなシステムで注目を集めた「龍虎の拳」、スタンダードなシステムでとりわけ対戦で盛り上がった「餓狼伝説」、武器で斬る斬新なシステムと和風の世界観・演出でプレイヤーを驚かせた「サムライスピリッツ」。これらすべてが人気シリーズとなり新作を重ねることになりました。

 そして、SNK格闘の人気を決定付けた「KOF」こと「ザ・キング・オブ・ファイターズ」シリーズ。94年に1作目が登場して以降、1年に1作のペースで新作が出るのが恒例となり、毎年これを心待ちにして待つのがゲーセン風物詩となりました。

 SNK格闘ゲームの特長は、過去のゲームをより進化発展させたダイナミックなシステムとキャラクターでしょうか。「画面のズームイン・ズームアウト」「超必殺技」「チーム制・チームエディット」などはその最たるもので、のちのゲームに引き継がれたシステムは数多い。そして何と言っても印象的なキャラクターの数々。ケレン味溢れる設定のキャラクターで見せる手法は、やはり先行するカプコンのゲームが起源だと思いますが、SNKはそれをさらに深化発展させた無数のキャラクターを次々と打ち出し、毎回のように多くのプレイヤーの目を引くことになりました。ひょっとすると、今に至るキャラクターで人気を得るゲーム、そのひとつの起源をアーケード方面から打ち出したと言えるのかもしれません。

 格闘ゲーム以外でもこれはという名作は数多い。2Dドットアクションの名作中の名作「メタルスラッグ」。「ラストリゾート」や「ティンクルスタースプライツ」 のような良作シューティングゲームエアホッケーをモチーフにした対戦スポーツゲーム「フライングパワーディスク」。格闘ゲーム全盛の時代において、他ジャンルでもこつこつと良作を発売し続けた功績は大きいと思います。

 筐体の設置が容易なシステムで、ゲームセンター以外でも筐体が置かれる環境を作ったのも多大な功績のひとつ。ゲームの入れ替えやメンテナンスまですべてスタッフ側が受け持ち、店舗側はただ置くだけでいいという容易さで、ゲーセン以外にスーパーや駄菓子屋のような場所の店頭でもNEOGEOのゲームをプレイすることが出来て、これは子供たちにとっても貴重な遊び場となりました。ビデオゲームにとって本当にいい時代だったと思います。

2018-06-13 あの「けいおん!」がまさかの新作始動!

kenkyukan2018-06-13

 先日、あの「けいおん!」の新作となる「shuffle」の連載開始が告知され、しかも来月発売のきららから連載とのことで、そのいきなりの話に驚いてしまいました。そもそもけいおん!」の原作の連載が最後に終了したのが2012年。その後6年の間まったく情報らしい情報はなく、原作者のかきふらい先生の消息もほとんど止まったままで、それが今になって新作告知とは驚いた人も多かったのではないでしょうか。

 かつての「けいおん!」については、あまりにも有名な大ヒット作品なので、もはや詳しい説明も不要かと思いますが、あえて概略だけ。原作は2007年にまんがタイムきららで始まった4コママンガで、人気を受けてのちに姉妹誌のキャラットでも長らく平行連載されました。内容は、タイトルどおり高校での軽音楽部の活動を描いたガールズバンド4コマ。時にかなり本格的に音楽へ取り組む描写も描かれる一方で、「放課後ティータイム」というバンド名が象徴するようなゆるい日常描写も魅力で、このあたりはいかにもきらら4コマらしい作風だったと思います。

 また、2009年から放送されたアニメの影響が非常に大きく、以前よりクオリティに定評のあった京都アニメーションによるアニメ化には大きな注目が集まり、実際に非常に優れた作品となっていたこともあって一気に人気は上昇。以後ブームと言えるほどの大人気となり、原作コミックスが爆発的に売れ、アニメも2期と劇場版まで制作される大盛況となりました。いまだにきらら4コマの中でも人気・知名度は抜き出たものがあるようで、他の作品以上に特別な思いを抱いている人は多いと思います。

 また、単なる人気の違いだけでなく、最近のきらら系作品と比較しても、その作風というか方向性に少し違いがあるような気もしています。今のきらら系作品の人気は、およそ2013年以降にアニメ化された作品、「ゆゆ式」「きんいろモザイク」「ご注文はうさぎですか?」などに拠るところが大きく、それ以前に作品とは少し違った雰囲気があるのではないかと。具体的には、最近のヒット作は、より日常コメディの要素が濃くなっているようで、それが大きな特徴であり魅力になっています。一方で「けいおん!」や「ひだまりスケッチ」「GA」など、一昔前の連載は、やや特定のテーマや活動(「けいおん!」ならば音楽活動)を描いたところが多かったのではないかと。そうした点で、昨今のきらら系作品とは少しだけ異なる印象を持っています。

 それゆえに、今の時代になって「けいおん!」がきららで新作というのは、非常に興味深いのではないかと思います。一昔前の大ヒット作品が今の誌面で復帰することで、面白い効果を生むのではないかと。加えて、原作者のかきふらい先生にとっても、まさかまさかのきらら復帰となる新作。これは今から早速来月の連載開始が楽しみになってきましたよ。

2018-06-08 これが異世界コミケ! 「魔法使いの印刷所」

kenkyukan2018-06-08

 夏コミの当落発表を間近に控えた昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか。ここでひとつ、そのコミケをテーマにした新作をひとつ紹介したいと思います。電撃G'sコミックで連載中の「魔法使いの印刷所」です。

 そもそも以前から、作中にコミケが登場するマンガやアニメは枚挙に暇がありません。同人やイベントそのものをテーマにした作品もありますが、そうでなくともマンガやアニメを扱う作品で、それと関連が深いイベントである同人イベント、その代表であるコミケが出てくる作品は数多い。最近ではかなり詳しくリアルにコミケを描く作品も当たり前になりました。そんな時代において、異世界転生ものと組み合わせた「異世界コミケ」ものが出てくるのは、もはや必然とも言えるでしょう。

 作品の舞台は、まさにスタンダードな剣と魔法のファンタジー世界。そんな世界にコミケ帰りに飛ばされた少女が、異世界から帰る魔法の手がかりを求めて、そんな魔道書が集まるイベント「マジックマーケット」を開催する主催として奮闘するというストーリーです。

 作中で登場するイベントこそコミケならぬ「マジケ」ですが、やっていることはコミケそのもの。徹夜組の防止や開催後の列の整理、事前のカタログの製作などの作業に全力を尽くし、自身も精一杯楽しむ。そんなわたしたちがよく見るコミケの光景が、ファンタジーの世界でそのまま繰り広げられているところが非常に面白い。最初の開催を無事終了させた主人公は、さらに魔道書を求めて印刷所まで運営することになります。そんな印刷所の仕事ぶりも、何度もサークル参加している人たちにとってはよく知られた光景でしょう。

 1巻の範囲で気に入ったエピソードは、平和な世界に物足りなさを感じていた屈強の騎士が、イベントの列整理の仕事に駆り出され、そこで溢れる参加者たちを必死に導く作業を通じて充実感を覚えるというもの。身動きが取れないほどの会場内での大変な作業、しかしその最中に胸に満ち溢れる高揚感! 「わたしは・・・楽しんでいたのか?」と後になって振り返る彼は、今までにない充実感に満ちていたのです。

 元々はウェブ掲載のマンガだったようですが、商業化に当たって新たに作画担当が抜擢され、徹底的に描きこまれた濃い作画が味わえるのも魅力です。重厚な異世界ファンタジーの絵柄でやっていることはコミケというそのギャップも面白い。コミケを描くマンガにまたひとつ良作が加わった気がします。

2018-05-25 20年目の「終わらない放課後」

kenkyukan2018-05-25

 現在アニメ2期放送中の「あまんちゅ!」の最新エピソードで、文化祭前夜の話が出てきていつも以上に注目して観てしまいました。文化祭夜の学校にたくさんの生徒たちが残って、普段は見られない明るい校舎でみんなが活動するという活気と楽しさに溢れるシーン。これは、原作者の天野さんの以前の作品でも見られたコンセプトで、とりわけ最初の連載である「浪漫倶楽部」から一貫して提示してきたテーマでもあります。

 その「浪漫倶楽部」には、作者がコミックスのあとがきなどで明言しているテーマとして「終わらない放課後」というものがありました。学校の授業が終わった後の放課後。その自由で解放的な時間に生徒ひとりひとりが思い思いに活動する。その楽しさが存分に描かれているのです。

 とりわけ象徴的だったのが、主人公たち「浪漫倶楽部」のメンバーが、部室に集まってお菓子を食べながらのんびりゲームを楽しんでいるシーンです。真面目に(?)浪漫倶楽部としての活動を行うシーンもありますが、普段はそんな風にのんびり楽しく過ごしている様子も感じられ、これは本当に自分も過ごしてみたい魅力的な時間、活動だなと思ってしまいました。

 こうした日常的な放課後の活動に加えて、季節ごとの学校行事、イベントが積極的に描かれるのも「浪漫倶楽部」の特徴で、体育祭や文化祭はもちろん、時には七夕祭りやハロウィンなど、現実の学校ではあまり見られないだろう行事まで登場したのが印象的でした。そして、そんなイベントの中でも、とりわけ「終わらない放課後」の楽しさを描いているのが、この文化祭の前夜だと思うのです。

 そしてこの天野さんの最新作である「あまんちゅ!」でも、かつての「浪漫倶楽部」を彷彿とさせるイベントが次々と登場。ひとつ前の話で描かれたハロウィンに続いて、この文化祭の前夜祭を描くエピソードは、かつての「浪漫倶楽部」のコンセプトをそのまま受け継いでいるのではないかと思われるのです。

 もともと、天野さんは、自分の作品から取った要素を後発の作品に取り入れることはよくありました。あの「ARIA」でも、「浪漫倶楽部」の部長の子孫?と思われるキャラクターが登場したり、あるいは主人公とヒロインだった火鳥くんと月夜ちゃんもゲスト出演しています。しかし、この「あまんちゅ!」のそれは、単に以前から引き継いだキャラクターを登場させるだけでなく、かつてのエピソードそのものを引き継いでリメイクしたと思われるのです。

 文化祭の前夜。それは、普段誰もいない夜の学校に明かりがついて、当たり前のように生徒がいてみなが準備に勤しんでいる光景です。学校という日常の空間ながらそこに非日常の光景が広がっている。日常の中の非日常。それを象徴するのがまさに文化祭前夜だと思うのです。

 文化祭本番も楽しいですが、それを控える前夜のわくわく感、高揚感にはえも言われぬものがあり、ひょっとするとこちらの方が楽しいかもしれない。むしろこの瞬間がずっと終わらなければいい。「文化祭なんて始まらなければいいのに。このまま楽しい時間が終わらなければいいのに」というセリフが、まさにそれを象徴する名エピソードとなっていたと思います。

 「浪漫倶楽部」で主人公の姉だった火鳥くんの姉(真斗)が先生として登場したり、舞台となる学校が夢ヶ丘高校だったり(「浪漫倶楽部」の舞台は夢ヶ丘中学校)、夢のような不思議なファンタジー要素が織り込まれたりと、直接的に「浪漫倶楽部」から受け継いだ要素も多く、かつての連載のその後を描いたアフターストーリーとすら思われるこのエピソード。まさにかつての連載から約20年後に再現された「終わらない放課後」を象徴するエピソード。昔からの読者としては思わず感涙してしまいました。