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たかひろ的研究館・はてなダイアリー別館

2017-12-15 「少女終末旅行」(2)

kenkyukan2017-12-15

 さらには、そんな短いエピソードひとつひとつに込められた物語も非常に深い。人間の文明が崩壊した世界で、かつて当たり前に存在した文化の豊穣さを逆説的に伝えるようなものも多く、今を生きるわたしたちの心にはひどく響くものがあります。その最たるものが、「住居」というタイトルで、何もない廃墟の部屋でかつて様々な豊かな生活用品が置かれていた光景をふたりが夢想するエピソードでしょうか。夢想から覚めて現実に帰ったときが本当に切ない。

 住があれば食の楽しみもある。やっと辿り着いた食料生産プラントで残っていた芋はたったのひとつ。しかし、芋の粉だけは数多く残っていたので、それに砂糖と塩と水を混ぜて焼いて作ったものを食べて、やっとひと時の幸せを得るエピソード「調理」。「甘いって幸せだよね」というユーリの一言が身に沁みる名エピソードとなっています。同じく、月夜の下で偶然見つけた酒(ビール)を飲んで踊り明かすエピソード「月光」も印象深いです。

 一部には宗教哲学領域に踏み込む話もあり、かつての宗教施設であろう巨大神殿に偶然立ち寄ったふたりが、あの世を再現したという光景を見て何かを思うエピソード「寺院」にはそれを強く感じました。この話には関連すると思われる話がのちにあり、そのエピソード「記憶」では、無数に墓と思われる施設が立ち並ぶ場所で、「もう誰も訪れないし覚えている人も誰もいないよ」というチトに対して、かたわらに立つ神の石像にユーリが触れ「そのためにこいつがいるじゃん」と返すセリフに感動してしまいました。ふたりは神の存在自体は何も信じてはいないようで、わたし自身もそれほど強く意識してはいませんが、しかし「そのために神がいる」というのは納得せずにはいられませんでした。

 かつての生産施設でたった1匹だけ生き残った魚を巡って、ふたりと自動機械(ロボット)が対話する「水槽」「生命」もあまりに深い。「かつては人も機械も魚も都市も生きていて循環していたんだ」「それもいつか終わりが来る」「生命って終わりがあるってことなんじゃないか」というチトの語りに、作者ならではの哲学を強く感じました。どうも原作者のつくみずさんは、「静かな終わり」というものに憧憬を描いているようで、「終わりが来ることはすべてにとって優しいことである」という思想にもひどく共感してしまいました。

2017-12-14 「少女終末旅行」(1)

kenkyukan2017-12-14

 今季のアニメは本当に好きなものが多くて、これまでも「このはな綺譚」や「魔法使いの嫁」を紹介してきましたが、最後にひとつ「少女終末旅行」は絶対に取り上げたいと思います。これもまた最初からひどく期待していましたが、気が付けば他をも超えてこれが一番の好きになっていました。

 「少女終末旅行」は、原作はコミック@バンチの運営するウェブサイトくらげバンチ」連載のマンガで、作者はつくみず。コミック@バンチからは、「BTOOOM!」や「GANGSTA.」「うどんの国の金色毛鞠」などのアニメ化作品が出ていますが、まさかこれがアニメ化されるとは思いませんでした。とりわけコア読者向けの人を選ぶ内容だと思っていたのですが、今はこういう作品も受け入れられる素地があるのかもしれません。

 内容は、いわゆる文明が崩壊した後の世界を旅するふたりの少女の道中を描くSF作品でしょうか。いわゆる「ポスト・アポカリプス」と呼ばれるジャンルのひとつだと思われますが、しかしこの作品の特徴的なのは、本来なら厳しく寂しい旅になるだろう終わった世界での旅が、ふたりの少女によるコメディによって毎回のようにコミカルに描かれること。基本真面目なチトと自由奔放な性格のユーリ、このふたりの掛け合いが面白く、笑ってしまうこともしばしば。崩壊後の世界でたったふたりしかいない孤独な旅なのに、ゆるいコメディとしても楽しめるその絶妙なバランス感覚が大きな魅力となっています。

 さらには、やはりそうした「終末世界」の細部を描くビジュアル、世界観の魅力が非常に大きいです。廃棄され壊れかけた巨大な鉄骨や鉄パイプが交錯し、あるいは廃墟となった巨大なビルや住居が整然と林立した光景。そんな都市が幾重にも上下に層をなしている。各層の基盤となる土台層(基盤殻層)の内部は、インフラを通し維持管理する巨大なシステムとなっていて、人間がいなくなった今でも自動機械によって維持されている(そのため建物は半壊した廃墟の街なのに水や電気は一部でいまだ稼動している)。作者のこうした世界のイメージは、あの弐瓶勉作品の影響を強く受けているようで、そうした作品が好きな人ならさらに惹かれるものがあると思います。

 また、原作の作画は比較的シンプルなものでしたが、アニメでは一気に細部まで徹底して描かれたビジュアルとなり、世界の魅力を一気に高めています。1話の最初のエピソードで、鉄骨と鉄パイプが林立する基盤層の暗闇を抜けたふたりが、ようやく外に出て思いもかけぬほど美しい星空を眺めるシーンは、冒頭からあまりに鮮烈な印象を残しました。原作は、比較的1話が短い構成となっていますが、アニメではそのシーンやセリフをひとつひとつ丹念に拾い上げ、さらにはその合間にさらに美しいシーンを入れて物語を補完するなど、さらに見応えのある作品になっていると思います。

2017-12-08 萌え絵はどこから来てどこへ行くのか(2)。

kenkyukan2017-12-08

 前回の日記で「少女マンガ」「少年マンガ」「ゲームやファンタジー」と、いわゆる「萌え絵」に影響を与えたり起源となったと思われるジャンルを3つ取り上げました。しかし、萌え絵ということになると、やはり最後に「ギャルゲーエロゲー美少女ゲーム)」を取り上げないわけにはいかないと思います。

 ただ、こうした美少女ゲームに関しては、他のジャンルよりも後発のジャンルで、最後にこうした萌え絵を確立する役割を果たしたと考えています。ギャルゲーエロゲーと呼ばれるゲーム自体は、おそらくはかなり前から(80年代から)存在していたと思いますが、一気に大きなブームとなるのはおよそ90年代後半から2000年代前半あたりで、このあたりでオタクジャンルに与えた影響が非常に大きい。

 具体的には、この当時特に人気だったタイトルで、主にPCで出た作品だけでも、「To Heart」が1997年、「Kanon」が1998年、「AIR」が2000年、「月姫」も2000年末、今に至るシリーズとなった「Fate」が2004年に出ています。実際にはこれ以外にも数多くの制作会社から有名タイトルが多数出ており、あるいはコンシューマの方でもギャルゲー呼ばれるジャンルでやはり相当な数が出ていて、今思えば非常な活況を呈していました。

 なぜこの時期に美少女ゲームがこれだけ盛り上がったのか(あるいはその後下火になったのか)、その理由は難しいところですが、しかしいずれにしてもこれらのタイトルの圧倒的な人気・知名度が、他のコンテンツ、引いては萌え絵にまで多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。とりわけ、初期に出た「To Heart」や「Kanon」の影響は、のちのこのジャンルを決定付けるものがあったと思いますし、ここでキャラクターを含めたビジュアルのイメージが確立、マンガやライトノベルなど他ジャンルまで影響を及ぼし、ここで現在に至る「萌え絵」のベースがおおむね完成したのではないかと思います。

 これは、こうしたゲームの表現形態、すなわち立ち絵とイベントスチル(1枚絵のイラスト)でキャラクターを見せるスタイルも大きく、これまでのゲームよりもはるかに大きくキャラクターの見た目の印象が伝わるようになりました。これによって、こうしたキャラクターのイラストが、より大きな形で見られる機会が劇的に増えた。さらにはこうしたビジュアルとウインドウに表示されたテキストで物語を見せる手法の効果も大きく、これも他のジャンル、とりわけライトノベルや、ひいてやマンガやアニメの見せ方にも大きな影響を及ぼしたことは間違いないと考えています。

 つまり、この時期までに少女マンガ少年マンガ・RPGファンタジーなど多方面を起源にして形となりつつあったオタク向け作品のビジュアル(萌え絵)が、最後にこの時期に美少女ゲームが登場したことで、完全にひとつの形として確立した。萌え絵の成立までにはそうした流れがあったのではないかと考えています。

2017-12-06 萌え絵はどこから来てどこへ行くのか(1)。

kenkyukan2017-12-06

 先日、「萌え絵の絵柄は基本的に少女漫画の影響を受けて発展してきた」というツイートを見かけて、それ以来あれこれ考えていました。この発言には賛同する意見が比較的多く見られ、わたし自身も一部では確かにこれに賛同できるものの、しかし必ずしも影響を受けたものはこれだけではないと思ってしまいました。むしろ、少女マンガ以外にも、こうした絵に影響を与えたジャンルやその起源となったジャンルは複数見られ、それらが時間が下るにつれて渾然一体となり、今の「萌え絵」と呼ばれるかわいい女の子の絵柄が確立したのではないかと思うのです。

 まず、確かに少女マンガからの影響は大いにありました。昔から少女マンガと言えば、男女の恋愛要素やかっこいい男性キャラクターが出る一方で、かわいい女の子の魅力で人気を得ることはとても多かったのです。特に、少女マンガでも女の子たちのコメディやギャグを中心にした作品、あるいは女の子の主人公たちがヒーロー(ヒロイン)的な活躍をする作品はは、のちの萌え系作品に直接つながるものがありますし、その上で絵柄的にも広く親しみやすいものとなると、男性を含めて幅広い人気を集めるものは数多くありました。

 加えて、こうした作品がアニメ化された時の影響は特に絶大で、90年代の大ヒット作であるセーラームーンやあるいは「カードキャプターさくら」に代表されるCLAMP作品は、のちの萌え系作品の先駆的な存在となったことは間違いないと思います。

 しかし、萌え絵の絵柄の発展が、こうした少女マンガからの影響が中心だったかというと、必ずしもそうとは言い切れないと思います。むしろ、少女マンガと同等かそれ以上に、少年マンガにものちの萌え作品につながる作品は多かったと思うのです。

 少年マンガと一口に言っても、その絵柄の方向性は千差万別ではあるのですが、しかしその中には比較的絵のくせが少なく、かわいいタイプの絵柄は確実に存在しています。特に、女の子のかわいさをひとつの売りとするラブコメ系の少年マンガ、あるいは学園ものや日常もののコメディなどは、そもそも少女マンガ以上にのちの萌え絵に近いものは多かったと思います。あるいは、少年マンガでは王道と言えるバトルやスポーツ系のマンガでも、かわいい女の子のキャラクターが人気を得ることは珍しくない。

 この傾向は、出版社や雑誌によってはさらに顕著になり、例えば昔から学園系コメディをひとつのメインジャンルとしていた少年サンデーやその系列雑誌には、そうしたマンガに近いものはより多かったと見ています。これらの少年系マンガを無視してのちの萌え作品を語ることは出来ないでしょう。

 そしてもうひとつ、萌え絵萌え作品に大きな影響を与えた作品ジャンルとして、ゲームやファンタジー作品からの影響も見逃せないものがあると思います。とりわけ、RPGシミュレーションRPG、特に一時期コンシューマで非常に高い人気を博した和製RPGJRPG)方面からの影響がとても大きい。

 そもそも、こうしたRPGやファンタジーは、その原点は海外から入ってきたゲームや小説だったのですが、その後日本で作られる国産のゲームや小説は、元の作品とは異なる独自の方向性へと進んだ感があります。ゲーム的にはストーリーと戦闘システム重視、そしてビジュアル的には親しみやすいキャラクターや世界観重視の方向性です。

 例えば、ゲームではドラゴンクエストあたりがそのきっかけになっていますが、もともとのファンタジーでは怖いイメージだったモンスターのスライムが、鳥山明デザインで独特のフォルムのかわいいモンスターへと大きくアレンジされたことがその象徴です。つまり、キャラクターだけでなく、世界全体のビジュアルにおいて、そうしたポップで明るくかわいいデザイン、それが国産のRPGやファンタジーでひとつの主流となり、それがのちのコアユーザー(オタク)向け作品、ひいては萌え系作品とそのビジュアル(萌え絵)にまでつながっていったのではないかと思うのです。

 これは、もとの海外のファンタジーでは中心であった、リアル志向の重厚なイメージのファンタジーとは一線を画するもので、これが今の日本独自のコンテンツ(オタク向け作品)へと分岐する大きなきっかけになったと推測しています。こうしたRPGやファンタジージャンルの作品を特に強く押し出した出版社が、ひとつはエニックススクエニ)でありひとつはKADOKAWAであり、これらの出版社が今のコアユーザー(オタク)向け作品で人気を博しているのも偶然ではないでしょう。

2017-11-29 「妹さえいればいい。」とボードゲーム、ゲームマーケットの話。

kenkyukan2017-11-29

 先日より放送中のライトノベル原作アニメ妹さえいればいい。」、ライトノベルの作家や編集者たちの日々の活動を描いた話で、実際に即した執筆活動の描写も興味深い一作になっていますが、同時に作中で主人公たちが一同に会して団欒する日常のシーンも盛んに描かれ、時折実在するボードゲームで遊ぶシーンも描かれるのが特徴的な一作となっています。こうしたアナログのボードゲーム、本場と言えるドイツではファミリーゲームとして広く文化として遊ばれていますが、最近は日本でもようやく浸透しつつあり、大人の娯楽として楽しむ人が増え、こうしてテレビアニメでも取り上げられるようになったのは1ゲームファンとしてうれしい限りです。

 さらには、アニメのスタッフが実際にオリジナルのボードゲームを作ろうという企画まであり、そのゲーム「ラノベ作家の人生」の制作の進捗を公式サイトで報告し、さらには今週末に開かれるゲームマーケット出展する予定となっています。ゲームマーケットは企業の出展も多いですが、テレビアニメの公式による出展はかなり珍しいと思いますし、実際にこのゲームをやってみたいと思いました。

 「ゲームマーケット」は、こうしたアナログのボードゲームやカードゲームの同人即売会のようなイベントで、実際に他の同人イベントとほとんどスタイルは同じようで、サークルごとにスペースが設けられ自作の(企業なら商業の)ゲームを頒布する形となっています。ただ、ひとつ特徴的なのは、すべてのサークルのスペースにゲームを遊ぶための試遊台(テーブル)が設けられ、他の参加者たちと実際にゲームで遊べるようになっていること。

 そして、そのゲームが遊べるというメリットのおかげで、このゲームマーケット、他のイベントと比べても圧倒的に楽しいです。個人的にはコミケコミティアすら超えるものがあると思っています。やはり、頒布物の売買のみならず、実際に試遊台でゲームが遊べるというのは、他にはない魅力です。

 普通の同人誌即売会なら、かろうじてサークル参加者と一言二言会話をする機会はあっても、見ず知らずの他の一般参加者と会話・交流する機会というのは、ほとんどないんじゃないかと思います。しかし、ゲームマーケットなら、ボードゲームを一緒に遊ぶというごく自然かつ敷居の低い形で、他の来場者と楽しく交流することが出来ます。これほど楽しいことは中々ない。

 来場する人たちの層が幅広く、若い人からおじさんおばさんまで老若男女幅広い来場者とゲームを楽しめるのも魅力です。自分の参加した経験だと、来場者の男女比がほぼ同じ、他の即売会では少ないことが多い中高齢のおじさんの姿まで目立つのが印象的でした。

 これは、イベントで扱うボードゲームが、気軽に遊べてとっつきやすいゲームや、純粋に知的要素を全面に押し出したゲーム、あるいは歴史や地理、政治や文化、科学などをモチーフにしたゲームが多いことも理由かと思います。オタク的な二次元キャラクター的なモチーフのゲームもありますが、それ以上にこうしたゲームの方がアナログゲームでは盛んで、これも幅広い層に親しまれる一因になっていると思いました。他の同人イベントにはあまり行かない方も、是非とも一度来場してみてはどうでしょうか!

2017-11-28 なぜ「がっこうぐらし!」なのか。

kenkyukan2017-11-28

 先日発売のきららフォワードで、しばらく休載が続いていた「がっこうぐらし!」の連載再開が告知されると共に、実写映画化の告知が行われました。少し前からフライングでこの情報が飛び交っていて、まさかとは思っていましたが、すぐに公式の告知がされてしまい、これには驚くしかありませんでした。

 マンガやアニメの実写化については、厳しい反応や評価が送られることが常となっていますが、わたしもこの作品だけは少々懐疑的で、すぐに実写化がダメとは思いませんが、しかし「どう制作しても原作マンガやアニメとは違うものになってしまうのでは」という懸念が出てしまいます。すなわち、実写になることで、ごくオーソドックスなホラー、ゾンビ映画になってしまうのではないかという不安です。

 「がっこうぐらし!」の連載が始まったのは2012年。のち2015年アニメ化され、きらら原作のアニメとしてはかなり珍しい内容で、大いに話題となったのはいまだ記憶に新しいところです。すなわちきらら系作品では定番の日常ものではなく、崩壊後の世界が舞台のいわゆるゾンビアポカリプスもののホラーだったことで、大いに物議を醸しました(笑)。

 しかし、そうしたタイプのホラー作品ではありますが、いわゆるサバイバルアクションの要素だけでなく、主人公が学校で日々を過ごす女の子たちという設定もあって、厳しい日々の中でも楽しさを求める日常の姿や、かつて過ごした平穏な日々の回想を懐かしむ、叙情的な側面も大きい作品だと思います。原作者の海法紀光さんも、「ゾンビ物の作品としてすぐ思いうかべるような、バトルアクションものとは異なる路線」「過ぎ去っていく日々を精一杯生きる登場人物たちの学校生活を描く」などの方針が意図されていると語っています。

 これは、ひとつにはマンガやアニメだからこそ出来たこともあると思いますし、これが仮に実写であったとすると、やはりどうしてもスタンダードなホラー、ゾンビ映画的な要素が全面出てしまうのではないかという不安がどうしても拭えない。もちろん、実写映画でもそうした側面を大切に維持する方針でやってほしいと思いますが、果たしてそれが実現されるかどうか。

 また、先に放送されたアニメの出来がよく、原作で描かれなかったシーンをよく補完する練られた構成になっていたことも、実写へのハードルを高くしています。加えて、これまでのマンガ実写化作品を見渡しても、漠然とした傾向ではありますが、「原作マンガ→実写化」よりも「原作マンガ→アニメ化→実写化」の方が、うまく行かなかったケースが多いように感じられるのです。

 これは、先にアニメ化されることで知名度が上がって熱心なファンが増えることで、実写化への目がさらに厳しくなることが理由だと思いますが、この「がっこうぐらし!」の場合、アニメの内容もよく練られてすでに評価されたことで、実写に求められるハードルはさらに高くなっています。アニメのラストが非常に続きが気になる終わり方になっていたことで、実写よりもまずは2期(続編)を求める声が大きいのも逆風でしょう。

 ただ、このようにいろいろと懐疑的な見方をどうしても書いてしまいますが、一方でどんな作品が出てくるのか、怖いもの見たさもあって楽しみにしているところも大いにあります(笑)。いずれにしても、これから先情報が出てくるたびに非常な話題となることは間違いない。公開までそれを見て一喜一憂することになりそうです。

2017-11-23 やはり中山幸さんは藤原ここあ先生直系の後継者である!

kenkyukan2017-11-23

 前回の日記に引き続いてもう一度「ブレンド・S」関連で、原作者の中山幸さんについて語ってみたいと思います。以前から言ってはいたのですが、彼女こそあの藤原ここあさんに最も近い直接の後継者ではないかと思うのです。

 「ブレンド・S」は、アニメ化で同じレストランを舞台にした作品「WORKING!!」を連想させるといった話もよく聞くのですが、実際の作風は、それ以上にさらに藤原ここあさんの作品、特に「妖狐×僕SS(いぬぼく)」あたりに近い方向性があるのではないかと思っています。絵柄やキャラクターの構成、関係性において共通したものを感じます。

 特に、きらら系雑誌連載の4コマとしては、最近では珍しく男性キャラクターが登場し、かつ男女ラブコメ的な要素がかなりのウエイトを占めているところが特徴的です。以前はきらら4コマでもこういう作品は珍しくなかったのですが、最近ではかなりの少数派になっていました。この「ブレンド・S」は、この中山幸さんの作風が強く出た例外的な作品になっているとも言えます。

 また、中山幸さんのもうひとつの作品で、こちらはコミックアライブの連載「くだみみの猫」は、さらに直接的に藤原ここあ先生に通じるものを感じます。主人公の女の子と彼女を守る式神の青年との関係は、いぬぼくの主人公たちの関係にひどく通じるものがあります。こちらの方がより少女マンガ的な作風でもあり、やはりここあ先生と共通した雰囲気が強い。

 ここまで作風が共通しているのは、やはり個人の好みや求める作品性に通じるものがあったのでしょうし、かつて藤原ここあ先生が最も強く体現していたガンガン的な作風、その想像力に共感したところも大きかったのではないかと見ています。

 藤原ここあ先生が逝去されて久しい今、その最大の後継者とも言える作者の作品が、こうしてアニメ化されて一気に知名度が上がり、大きな人気を博しているのはただただうれしい。たまたまですが、いぬぼくのテレビ再放送ともかぶったのも何かの幸運だったのかもしれない。出来れば、これを機会に「くだみみの猫」の方にもスポットが当たってくれるとさらにうれしいですね。

2017-11-22 今こそ「ハイパーレストラン」を語ろうか。

kenkyukan2017-11-22

 今季のアニメではきらら4コマから「ブレンド・S」も好調で、同じレストランやカフェを舞台したヒット作品「WORKING!!」を引き合いに出されることも多いみたいですが、ここはさらに昔のエニックスのマンガから、90年代の怪作にして名作「ハイパーレストラン」(霧香&聖娜)を紹介してみたいと思います。

 「ハイパーレストラン」は、97年にエニックスのギャグ王で開始された連載で、のちに同誌の休刊に伴って99年にガンガンWINGへと移籍され、そちらで完結を迎えています。コミックスは全6巻。作者は、当初は「霧香&聖娜」として実の姉妹によるコンビのマンガ家だったようですが、のちに聖娜さんの方は活動をやめられたようで、3巻以降は単独の活動で「たかなし霧香」となっています。同作者の連載として、同時期のガンガンで連載された「ワルサースルー」もあり、掲載誌の関係でこちらの方がよく知られているかもしれません。

 肝心の内容ですが、レストランが舞台のマンガとはいえ、残念ながら「WORKING!!」のようにお仕事をそのまま扱う普通のマンガではなく、シュール過激な変態ギャグとなっていました。自称・レストランを救うという勇者だと名乗る奇行男・林田ベランメルジェと、彼に連れ回されるかわいそうなウエイトレス・増井メルルーサが、愉快な仲間たちと共に「レストランを救う旅」に出るというストーリー。連載後半では旅をやめ、自ら究極のレストラン(これが「ハイパーレストラン」)を作って経営するという話にもなります。

 さらには「レストランキラーズ」というなぜかレストランを壊滅させようとする悪の組織と戦うという展開にもなり、「ブリード呉樹」なるゴキブリを操る変態男や、「ヤナモン★イレルディー」なる毒物混入が必殺技のやばすぎる敵が登場。主人公の林田自身もモモンガに変身して空を飛び、同じくゴキブリに変身して空を飛ぶブリード呉樹と空中で乱舞してバトルする展開など、まさにこのマンガを象徴する変態バトルを存分に見せてくれました。

 しかし、これだけのギャグ作品ながら、一方で意外にもレストランの仕事や経営のあり方をシリアスに見せるパートもあり、そこでは考えさせられることも多々ありました。今でもよく覚えているのは、林田が「ハイパーレストラン」を開店した直後に、汚いみすぼらしい客が最初の客として入ってくる話です。

 見るからにひどい姿の客を見て、店員たちはみな嫌がって追い返そうとしますが、林田だけは優しく手を差し伸べ、ひとりのお客様として変わらぬおもてなしを見せたのです。どんな客でも優しく座席に案内して注文を取る。その姿に感化された他の店員たちも、すぐに心を入れ替えて心からおもてなしをするようになる。これを受けた客の方も「こんなみすぼらしい自分にこれほど優しくしてくれるとは」と涙を流して喜ぶ。このシーンには本気で感動してしまいました。

 また、この「ハイパーレストラン」連載当時は、今ほどレストランの仕事を扱ったマンガは多くなく、比較的珍しい存在だったのも貴重でした。今でこそWORKING!!とかブレンド・Sとかごちうさとかレストランやカフェを舞台にした人気マンガは枚挙に暇がありませんが、当時はレストランの仕事や業務の方にスポットを当てたマンガはまだ少なかったのです。その点において、この「ハイパーレストラン」は、今のレストランマンガの先駆的存在でもあったと思います。一般向けのマンガ情報誌でも評価されるなど、コア読者向けのエニックスのマンガの中でも幅広い読者に楽しまれる作品でもありましたし、今改めて見直されてもいい作品だと思いました。

kaorintype2kaorintype2 2017/11/22 07:49 霧香&聖娜さんは4コマ漫画劇場や同人のころから好きだったので、ハイパーレストランも好きでした。
ところで、おそらくお二人は実の姉妹ではないと思います。
当時の同人誌の後付や通販連絡先やペーパーからの判断ですので、ソースを示すのは難しいのですが。

2017-11-16 なぜ「魔法陣グルグル」でフランス思想家の名前が使われているのか。

kenkyukan2017-11-16

 先日より再アニメ化で新シリーズのアニメが続いている魔法陣グルグル。旧作のアニメよりかなりのハイペースであるものの、原作の面白さはほとんど失われておらず、毎回面白くて心の底から笑って楽しんでいます。しかし、原作の中盤からそろそろ後半へと差し掛かってくるあたりで、ひとつ興味深いことに気付くことになりました。

 それは、このあたりで登場するキャラクターの一部に、現代フランス哲学者思想家の名前が使われていること。具体的には、ガタリデリダラカンバルトといった人々の名前で、僧侶や魔法使いのようないわゆる賢者的なキャラクターのネーミングに使われていることが多い。グルグルには、ダジャレや語呂合わせ、あるいは服飾や音楽関係からのネーミングも多く、むしろそちらが大半なのですが、その中にこうしたフランス現代思想の名前が混ざっているのは面白いと思いました。これは、以前自分が原作を追い掛けていた時は気付かなかったことで、今回の再アニメ化で初めて気付きました。以前気付かなかった理由は、自分のそうした分野への知識がまだ乏しかったことに加えて、グルグル自体がRPGパロディを基本にしたギャグ・ファンタジーマンガで、あまりそうしたイメージと結びつかなかったことが大きかったと思います。

 ガタリ(フェリックス・ガタリ)は、フランス哲学者精神科医。後述のラカンに学んだポスト構造主義の先駆者の1人で、「分子革命」などの自著に加えて、同じフランス哲学者ドゥルーズとの共著も多い。グルグルにはプラトー教という宗教が登場しますが、これはこのふたりの共著のひとつ「千のプラトー」から取られたものだと思われます。哲学関連で、古代ギリシャ哲学者プラトンが元ネタという説もありますが、ここまで現代フランス思想関連の名前が集中しているところを見ると、こちらが元ネタである可能性が高いと思います。

 デリダジャック・デリダ)は、この中でも特に有名な思想家かもしれません。ポスト構造主義の代表的な哲学者で、いわゆる「脱構築デコンストラクション)」の概念を提唱したことであまりに有名。グルグルでも、中盤のクライマックスのアラハビカ編において、勇者に啓示を与えて導くというとりわけ重要な役どころを担うキャラクターになっています。

 ラカンジャック・ラカン)も有名な人物フランスのいわゆる構造主義思想家で、パリ・フロイト派のリーダー。鏡像段階の仮説や現実界象徴界想像界という概念で知られる。グルグルではかつて冒険者だった老人として登場し、「ラカンの日記」というダンジョンの攻略日誌を残しているところが面白いです。自分は結局そのダンジョン(きりなしの塔)を攻略できなかったが、その日記のおかげで勇者たちがついに攻略に成功した。「若き日の私はついに彼らと一緒に攻略したのだ」という一文が泣ける屈指の名エピソードになっています。

 バルトロラン・バルト)も、フランス哲学者で批評家。「物語の構造分析」を手掛けた批評家として知られ、特に「作者の死」という、「物語において作者は神ではなく、作品を読み解くのは読者である」という概念を提唱したことで、現代のコンテンツを享受するわたしたちにとっても無視できない存在だったりします。

 こうしたフランス現代思想家の名前が、なぜ「魔法陣グルグル」で採用されているのか。きっかけとしては、作者の衛藤さんが、こうした分野への興味や知識を持っていたり、あるいは実際に大学などで学んだ経験があるのではといったことは容易に推測出来ます。しかし、それをあえてこのマンガ(RPG的な世界を舞台にしたギャグファンタジー)に取り入れた理由を考えると中々興味深いところです。

 個人的な推測としては、この「魔法陣グルグル」、RPGパロディにした尖ったギャグ要素が非常に強かった初期の頃から、連載中盤に差し掛かるとやや雰囲気が柔らかくなり、豊かな世界観をより強く押し出してファンタジー的な雰囲気が強くなってきたこともあるのかなと思ってます。とりわけ、アラハビカ編においては、ヒロインのククリの心の中を描く精神的なストーリーも全面に出てくるあたりで、そうした精神的な物語をも作中で描きたかった衛藤さんの思惑と、こうした分野への興味が一致したのかもしれない。グルグルの創作においてもしかしたらそうした発想が起こったのかなと、そんなことを考えると面白いと思いました。

2017-11-15 待望の水野英多最新作は「裏世界ピクニック」!

kenkyukan2017-11-15

 先日、あの「スパイラル」の水野英多さんのガンガンでの新作として、「裏世界ピクニック」(宮澤伊織)のコミカライズが告知され、これには大いに驚きつつも喜んでしまいました。水野さん自身の最近のツイートで「裏で何かしら活動している」と書かれていて期待していたのですが、まさかこれがその次回作だったとは。

 「裏世界ピクニック」は、ハヤカワ文庫JAから出ている宮澤伊織さんの小説。宮澤さんは、これまではMF文庫J一迅社文庫から小説を出していましたが、今回ハヤカワ文庫から出たこの作品が、発売まもなくしていきなり話題となり、一気に注目されました。原作の単行本はまだ2巻までしか出ていませんが、このタイミングでコミカライズが決まるのも納得です。

 肝心の内容ですが、現代日本を舞台に都市伝説を題材にした異世界探索もののSFホラーでしょうか。ハヤカワということでSF作品というジャンルではあると思いますが、同時にファンタジー色、ホラー色も強い作品です。「裏世界」というタイトルどおり、日常のすぐ裏側に怪異が潜む非日常があり、その非日常の怪異が表側の日常へと侵食してくる恐怖、それが実に巧みに描かれています。関連作品として、旧ソ連ストルガツキー兄弟の「ストーカー」の名前を出す動きも一部で見られ、そうした作品に興味のある人ならより楽しめると思います。

 また、この作品が注目を集めた大きな一因として、最近になって盛り上がりを見せている都市伝説の話、とりわけインターネットで広がる噂話「ネットロア」を取り上げていることが大きいです。1巻の範囲内でも「くねくね」「八尺様」「きさらぎ駅」など、今では広く知られるようになった有名な都市伝説が登場。こうした都市伝説が、ビジュアル要素の強いコミカライズでどんな風に再現されるか、そこにも注目が集まります。

 さらにもうひとつ、主人公が女子大生の女の子ふたりであり、このふたりの百合的な関係がクローズアップされたことも、人気を集めた大きな一因となりました。立場や目的の異なるふたりが共同して異世界探索に当たるその関係性の面白さが見られ、これはあの「秘封倶楽部」との共通性も指摘され、一部クラスタの間で異様に注目される形にもなっていました(笑)。実際に作者の意識にもこの作品があるようで、今回のコミカライズでさらにそうした方面での注目も集めそうです。

 水野さんと言えば、かつては城平京原作の「スパイラル〜推理の絆〜」の作画担当として大きな人気を集め、スピンオフの「スパイラル・アライヴ」やあるいは外伝小説の挿絵やそちらのコミカライズの仕事も一手に手掛けています。最近も同じ城平京さんと組んで「天賀井さんは案外ふつう」という新作連載の作画を担当していました。また、「うみねこのなく頃に」のEP(エピソード)7のコミカライズの仕事も担当したことがあります。今回のSFホラー小説のコミカライズも、こうした過去作品の経歴からの抜擢ではないかと思いますが、しかしまだ始まって間もないシリーズのコミカライズはやはり驚きです。いよいよ落ち込みの激しい最近のガンガンで、久々に大きな注目作が出てきた点でも期待したいと思います。

2017-11-08 ドレッドノット

kenkyukan2017-11-08

 講談社の「good!アフタヌーン」の連載「ドレッドノット」(緋鍵龍彦)を紹介したいと思います。ウェブで無料公開されていた1話を読んで一気に引き込まれたのですが、先日待っていたコミックス1巻がついに発売されました。

 物語の冒頭は、就職活動に励む女子大生が、ひとりの男に声をかけられるところから始まります。「いいバイトがある」と誘われてタクシーに乗せられたあと、眠ってしまった彼女が目を覚ましてみると、そこは無数の恐ろしい絵が飾られた異様な部屋。部屋から出ても暗い通路に出るばかりで、そこでは恐ろしい化け物や壁に押しつぶされた肉の塊などさらなる恐怖が待ち構えていました。

 このまま閉鎖空間を舞台にしたホラーかサバイバルものが始まるかと思いきや、ようやく辿り着いた扉を開けてみると、そこはただの事務室。中では数人の男女が話し込んでいるばかり。そう、あれはすべてただの仕掛けだったのです。

 そんな形で始まる本作は、実は”屋内型特殊遊興企画業” すなわち「お化け屋敷」の制作者たちの仕事を描く物語でした。企画を練りこむプランナーの若者を中心に、大道具を組み立てる空間設計の担当者、電機関係を取り仕切るエンジニア、そして屋敷を彩る恐怖のビジュアルを一手に手掛けるアートデザイナー。彼らが役割を分担してひとつのセットを完成させる楽しさがよく出ていて、近年のお化け屋敷の盛り上がりも手伝って非常に興味深いテーマになっていると思います。

 わたし自身も、かつて高校時代の文化祭で、妙に張り切ってかなり本格的なお化け屋敷の制作に取り組んだことがあり、この題材にはひどく親しみを持てました。そのクラスは、普段はいい加減でふざけたクラスでしたが(笑)、その時は夏休みの間から数人の生徒たちと毎日制作を進め、最後の追い込みではほぼ全員で一気に教室のセットを完成させるという張り切りようでした。このマンガでも、そうした学祭でのお化け屋敷の制作の楽しさが語られる一幕があり、自分も大いに昔を懐かしみつつ共感してしまいました。

 また、「お化け屋敷といっても出来る前はただの場所。しかし始まれば最高に非現実な異空間に早変わりする」というセリフにも大いに共感できました。わたしのクラスで作ったお化け屋敷も、実際に仕上がってみるとほんとにそんな感じで、仕切りで区切られて迷路となった教室の中で、「おいおいここほんとに教室かー?」と叫んだクラスメイトの言葉が今でも印象に残っています。

 あと作者の緋鍵龍彦さんは、かつてはメディアファクトリーでよく活動していて、コミックアライブの連載「断裁分離のクライムエッジ」は、大きな人気を得てアニメ化されました。その後、コミックキューンで「放課後の先生」という、高校生の女の子と彼女たちに勉強を教える大学生の交流を描く4コママンガの連載も行っていました。この連載、個人的にはかなり気に入っていたのですが、残念ながら比較的短い期間で終了してしまいました。この「ドレッドノット」は、その「放課後の先生」の終了後すぐに始まっていて、今度は講談社の方での活動ということで少し意外に感じましたが、しかし予想以上に面白かった。今までになかった現実的なお仕事ものとしても期待したいと思います。

2017-11-07 「浜松が聖地のアニメって多いんだよ〜!」(うまる)

kenkyukan2017-11-07

 先日、あの「干物妹!うまるちゃんR」のアニメ浜松が舞台となり、また浜松が聖地のアニメが増えてしまったのかと感慨を新たにしました。かつてはアニメが放送されない地域とされていた静岡県ですが、ここ最近はどういうわけかアニメの舞台になることが目立つようになっています。とりわけ、県東部では沼津であの「ラブライブ!サンシャイン!!」、伊東で「あまんちゅ!」など人気作品の舞台として注目される機会が増えていますが、逆に西部の浜松市が舞台の作品が増えているのも面白いところです。

 浜松が舞台の作品の原点としては、まず何と言っても「苺ましまろ」ははずせません。女の子たちのシュールな日常を描いた作品で、少しニュアンスは異なるものの、現在の日常ものの原点とも言える作品のひとつであり、あるいは原作の時点で浜松市が明確に舞台となっていたことで、聖地巡礼の動きが起こった最初期の作品のひとつでもあります。アニメが放送された2005年は、あの「らき☆すた」の2007年より早い。

 そして、その「苺ましまろ」と同じ電撃雑誌連載マンガの最新作で、浜松が舞台として話題となったのが「ガヴリールドロップアウト」。アニメのOPでいきなり浜名湖上空からの遠景が映ったことで、一気に話題となりました。作中に実在の舞台が登場するシーンはそれほど多くないですが、それでも浜松駅北口近辺や市立図書館、そして海の観光地である弁天島(作中では「舞天島」)の光景が描かれているのはポイントが高い。浜松市も作品の反響を受けて舞台地のマップ制作やポスターの掲出などを行っています。

 もうひとつ、2016年になってウェブ配信&劇場版という形でアニメが制作された「planetarian」も、浜松市が舞台としてひどく詳細に描かれています。2004年発売の原作ゲームの時点で浜松が舞台モデルでしたが、アニメではその描写がさらにスケールアップ。崩壊後の廃墟となった街という設定ですが、それでも市内の中心部の多くの箇所が極めて忠実に描かれ、中でもかつて浜松最大のデパートだった松菱百貨店(作中では「花菱」)のビルは、作中最大の舞台であるプラネタリウムのある場所として大きくクローズアップされました。舞台の登場頻度という点では、こちらの方がまさに浜松という街を実感できると思います。

 しかし、その松菱の建物は、かつて原作ゲームの発売の頃はまだ存在していましたが、経営破綻からの再開発計画も頓挫し、2015年には解体され、2016年アニメ配信された時にはすでになくなっていました。街は常に変化し、かつての聖地が消えてしまうことはよくありますが、その典型的な例となってしまったことは寂しい限りですね。

 これ以外の作品でも、NHKで放送された「クラシカロイド」でも舞台になっており、あるいは「咲-Saki-阿知賀編」でも東京への遠征中に立ち寄ったサービスエリアという形で登場したり、あるいは前述の「干物妹!うまるちゃんR」でも、お兄ちゃんの出張先にうまるもついてくるという形で、ちょっとした観光アニメのような話としてかなり大きい扱いの1話になっていました。意外なほど舞台に選ばれることの増えた浜松ですが、比較的人口の多い栄えた地方都市であり、あるいは東京圏名古屋圏関西圏とも距離的に近いというポイントも、選ばれるひとつの理由かもしれませんね。

2017-11-02 20年前の「浪漫倶楽部」でハロウィンイベントを描いた天野さんは神。

kenkyukan2017-11-02

 今年も先日のハロウィンの話題でひとしきり盛り上がったようです。しかし、6年前のアニメAチャンネル」で「なんか最近急に流行りだした気がする」というセリフがあるように、おそらくは日本ではここ7〜8年で急速に流行ってきた印象があり、とりわけ街で仮想が見られるほどに盛り上がってきたのは、ほんのここ3〜4年ほどではないかと思います。ハロウィンという行事自体は前から知っていた人は多かったと思いますが、ここまで急速に浸透したのは面白い現象で、自分としては楽しいイベントがひとつ増えて歓迎だと思ってます。

 しかし、このハロウィンに関連してひとつ思い出す昔のマンガがあります。「ARIA」天野こずえさんの連載デビュー作で、ガンガンで約20年前に連載された「浪漫倶楽部」です。

 「浪漫倶楽部」は、少年ガンガンで1995〜1997年に連載された天野さんの最初の連載。中学で「浪漫倶楽部」という不思議な現象を追い求める部活の活動を描く作品で、日常のささやかなファンタジー要素と切ないストーリーが魅力でした。しかし、それと同時に「終わらない放課後」というテーマで、学校の放課後の楽しい日常を描くというコンセプトもあり、そのためか文化祭のような学校の行事が積極的に描かれていたのも特徴でした。中には七夕祭りのような他の学園ものではあまり描かれないようなイベントもあり、その中のひとつにハロウィンまであったのです。

 当時はハロウィンでイベントが開かれることはあまりなく、まして学校行事で行うところはほとんどなかったと思います(今でも多くないでしょう)。七夕祭りも学校行事としては相当マイナーだと思いますが、まだ地域の行事と連動するような形で笹に短冊を飾るくらいのことをやっても不自然ではない。しかし、ハロウィンとなると当時はまだ海外のイベント。マンガの中ですらこうしたイベントが、まして学園もので描かれることは珍しいなと思っていました。

 しかし、あれから20年。いつの間にかハロウィンはここまで一般的に広まったイベントとなり、今このエピソードを見てももう違和感はなくなりました。ある意味今の流行を早々と先取りするような形となっていて、20年前の「浪漫倶楽部」でハロウィンを描いた天野さんは軽く神ではないかと思います(笑)。まさに早すぎる名作。今こそこういう視点からも見直しても面白いと思いました。

2017-11-01 「罪と快」(染谷ユウ)

kenkyukan2017-11-01

 ヤングガンガンの最近の新連載から「罪と快」(染谷ユウ)をおすすめしたいと思います。今年(2017年)の8号から始まった連載で、先日コミックス1巻が発売されました。

 内容ですが、厳しすぎる両親からのストレスに耐えかねて盗撮行為を重ねるようになった少年が、同じ高校の女子生徒に盗撮がバレて脅迫され、「緊縛師」である彼女の元で縛られるプレイを強要されるというもの。一言で言えば、男子高校生が女子高生に縛られる話です。

 はっきり言えば非常にマニアックな内容ではあるのですが、そのストーリーは確かに見せるものがありました。成績に対して厳しすぎる両親から自分を認められないつらさ、そこから盗撮という代償行為に逃げるという心理緊縛という異常な行為に対する恐怖、しかし次第にその快感にのめりこんでしまう抗えない性(さが)。そうしたことが迫力の筆致でよく描かれていると思います。

 とにかく絵がうまいのも魅力ですね。端的に女の子のかわいさもよく描けていると思うんですが、同時に迫力の筆致で随所で影が差すような暗い心情もよく描かれている。作者の染谷さんは、これまで名前を知らなかったので、ほんとにヤングガンガンからのデビュー連載なのかなと思いますが、最初からかなりレベルの高いビジュアルで完成されていると思いました。

 さらに、最新の展開では、ついに盗撮が両親にバレたことをきっかけに、両親に自分のつらい心情をぶちまけ、一転して譲歩した理解ある父親のもとで和解、ストレスから解放されて真っ当な高校生活に向かうかと思われました。しかし、あの責められる快感を忘れることが出来なかったのか、今度は女子高生から貞操帯を渡され、それを装着することでまともに自慰も出来ないという苦痛に責められ、ついには女生徒から射精管理をされるという斬新な展開に発展(笑)。

 ストレスによる逃避行動の結果ではなく、自分から快感を求めての行動へと発展してきて、これはいよいよ面白くなってきましたよ。今のところコミックス1巻の発行部数は少ないようで、あまり出回っていないのが残念なところですが、これは注目の新作として是非ともお勧めておきたいと思います。

2017-10-27 けものはいてものけものもいる!「のけもの少女同盟」!

kenkyukan2017-10-27

 今月のきららコミックス新刊では、現在絶賛アニメ放送中の「ブレンド・S」の4巻や、休刊したミラクで惜しくも完結巻となった「しましまライオン」2巻など注目の新刊がありますが、今回はきららMAX期待の新作「のけもの少女同盟」(榛名まお)をおすすめしたいと思います。

 「のけもの少女同盟」は、タイトルどおり(?)学校のクラスで友達が作れず孤独になってしまった女の子たちが、友達を作って社会復帰を目指すために同盟を組むというストーリー。ひょんな偶然から保健室で全員が顔を合わせることになった彼女たちは、それぞれのひと癖もふた癖もある妙な個性に戸惑いつつも、なんとか歩調を合わせて活動を開始することになります。

 一見して明るく協調的だけど極端に身体が弱く血を吐いたりすぐぶっ倒れてしまう霞、ハーフのオタク少女でテンパるとなぜかカタコトの外国語になってしまうニカ、一見して活動的に見えて人と会話しようとするとなぜかキレてしまう「ツンギレ」のすずめ、極端な人見知りで人前に出るとまともに喋れなくなる詠子と、それぞれぶっ飛びすぎた個性の持ち主。それぞれそんな生徒たちをまとめる養護教諭ももも、教諭なのに生徒の制服を着ていたりする。そんなキャラクターたちが集まって、変な性格の「のけもの」同士が楽しい活動のひと時を過ごす。そんなドタバタなコメディがまず何よりも楽しい作品となっています。

 そして、何よりもキャラクターの見た目もとてもかわいい。今のきららMAXの粒揃いの連載の中でも、キャラクターの魅力でも大いに期待できる作品ではないかと思います。コミックスの表紙を見てかわいいと思ったら手に取って絶対に間違いはない(笑)。

 作者の榛名まおさんは、古くは90年代から活動を始めていて、竹書房まんがくらぶで2001年より掲載された「ぱわまゆ」が4コマ誌での初連載となるようです。その後芳文社きららMAXに移り、こちらで「ぐーぱん!」「こずみっしょん!」といった連載を行っています。同時にホビージャパンのGAME JAPANでも一時期連載を持つなど、きららで現在連載中の作者の中でも、特に活動履歴の長い作家になると思います。しかし、これまでの連載は、いずれも比較的短期の連載に終わっていました。ゆえに、この「のけもの少女同盟」には、今度こそさらなるヒットを期待したい。

 思えば、女子高生になった動物たちの学校生活を描く「しましまライオン」のコミックスと同時に、この「のけもの少女同盟」のコミックスが発売されるのも、なにかの因果かもしれません。けものはいてものけものもいる! それがまんがタイムきらら

2017-10-26 けものはいてものけものもいる!「のけもの少女同盟」!

kenkyukan2017-10-26

 今月のきららコミックス新刊では、現在絶賛アニメ放送中の「ブレンド・S」の4巻や、休刊したミラクで惜しくも完結巻となった「しましまライオン」2巻など注目の新刊がありますが、今回はきららMAX期待の新作「のけもの少女同盟」(榛名まお)をおすすめしたいと思います。

 「のけもの少女同盟」は、タイトルどおり(?)学校のクラスで友達が作れず孤独になってしまった女の子たちが、友達を作って社会復帰を目指すために同盟を組むというストーリー。ひょんな偶然から保健室で全員が顔を合わせることになった彼女たちは、それぞれのひと癖もふた癖もある妙な個性に戸惑いつつも、なんとか歩調を合わせて活動を開始することになります。

 一見して明るく協調的だけど極端に身体が弱く血を吐いたりすぐぶっ倒れてしまう霞、ハーフのオタク少女でテンパるとなぜかカタコトの外国語になってしまうニカ、一見して活動的に見えて人と会話しようとするとなぜかキレてしまう「ツンギレ」のすずめ、極端な人見知りで人前に出るとまともに喋れなくなる詠子と、それぞれぶっ飛びすぎた個性の持ち主。それぞれそんな生徒たちをまとめる養護教諭ももも、教諭なのに生徒の制服を着ていたりする。そんなキャラクターたちが集まって、変な性格の「のけもの」同士が楽しい活動のひと時を過ごす。そんなドタバタなコメディがまず何よりも楽しい作品となっています。

 そして、何よりもキャラクターの見た目もとてもかわいい。今のきららMAXの粒揃いの連載の中でも、キャラクターの魅力でも大いに期待できる作品ではないかと思います。コミックスの表紙を見てかわいいと思ったら手に取って絶対に間違いはない(笑)。

 作者の榛名まおさんは、古くは90年代から活動を始めていて、竹書房まんがくらぶで2001年より掲載された「ぱわまゆ」が4コマ誌での初連載となるようです。その後芳文社きららMAXに移り、こちらで「ぐーぱん!」「こずみっしょん!」といった連載を行っています。同時にホビージャパンのGAME JAPANでも一時期連載を持つなど、きららで現在連載中の作者の中でも、特に活動履歴の長い作家になると思います。しかし、これまでの連載は、いずれも比較的短期の連載に終わっていました。ゆえに、この「のけもの少女同盟」には、今度こそさらなるヒットを期待したい。

 思えば、女子高生になった動物たちの学校生活を描く「しましまライオン」のコミックス同時に、この「のけもの少女同盟」のコミックスが発売されるのも、なにかの因果かもしれません。けものはいてものけものもいる! それがまんがタイムきらら

2017-10-23 ガンガンの90年代前半から後半への変遷とは?

 先日、宇野常寛氏が主催して刊行されているミニコミ誌「PLANETS」のvol.1(初号)に掲載された、ガンガン系作品の系譜を辿る記事についてツイートしたところ、どういうわけかまとまった反応がありました。しかし、2005年頃という10年以上前の雑誌の記事で、さらには当時は(今でも)まだマイナーだったガンガン系のコミックについて知っている人がそこまで多いとは思えず、政治や思想絡みでの反応が多かった感は否めないところでした。

 月刊少年ガンガンの創刊は1991年。当初から「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」を代表とするドラクエやゲーム、ファンタジー関連のマンガが人気を集めました。しかし、同時にかなり激しいタイプの少年マンガが多く、さらには編集者に何かつながりがあったのか、劇画調の青年誌で活動する作家の作品まで目立つほどで、極めて濃いタイプの少年・青年マンガが多かったと記憶しています。

 最初の4〜5年ほどはこの路線が続きましたが、しかし90年代半ばから誌面の雰囲気に次第に変化が出てきます。わたし自身が、「中性的」と表現する、これまでより優しい(かわいい)絵柄とキャラクター、雰囲気を持つ作品が、変わって人気を集めるようになるのです。ストーリー面では少女マンガ的とも取れる作品、中性的なファンタジー作品やコメディ作品が、90年代後半の雑誌の中心となったのです。「まもって守護月天!」「刻の大地」「浪漫倶楽部」「CHOKO・ビースト!」「PON!とキマイラ」あたりがその代表でしょうか。これは、ガンガン以外のエニックスの姉妹誌全体にも及び、この時に生まれた独特の雰囲気の作品群を称して、のちに「ガンガン系」と呼ばれるようになったのです。

 この変化によって、新しい作風を好む読者が多数出てくる一方で、初期の頃からガンガンを読んでいた読者の間で好みの違いが生まれることにもなりました。変化した後もこれまでどおり愛読する読者と、変化に抵抗を覚えて距離を置こうとする読者に分かれ、一部では軋轢を生むことにもなったのです。そして、これがのちに勃発する「エニックスお家騒動」の遠因にもなり、やがて2000年代になって出版社が分かれる形でガンガン系作品が拡散することになったのです。

 こうした90年代〜2000年代前半を通じたガンガン系作品の変遷、それを「PLANETS」の記事は非常によく捉えていました。年表で主な作品のタイトルを年代別に掲載しつつ、関連したり影響を与えた作品を繋げてそれを巧みに図示していました。90年代前半の少年マンガ中心の誌面から、90年代後半に少女マンガ的作風(ガンガン系)へと変化した流れと、読者の好みの違いまできっちりと把握していたのです。

 ここまでガンガン系を深く理解した評論は、それまでは(あるいはそれ以降も)ほとんど見られなかったもので、その意義は大きかったと思います。同時期に刊行されたマンガ評論「テヅカ・イズ・デッド」(伊藤剛)でも、同じような話が見られたので、この時期にようやくガンガン系にわずかながら評論の目が向いたのかもしれません。その点で非常にいい仕事だったと今でもこの記事を評価しています。

2017-10-19 きららミラク休刊に際して。

kenkyukan2017-10-19

 先日、あの「まんがタイムきららミラク」の休刊が正式に告知されました。1カ月か2カ月ほど前から、急に連載終了が増えたことで「休刊するのではないか」と界隈で一気に話題が持ち上がり、さらには今月初めにフライング的に休刊の情報が入ってきたことで、ある程度予想はしていましたが、それでもこれはかなりのショックでした。これまで順調に発展してきたきらら4コマ誌のひとつが、アニメ化作品もいくつも出してきた雑誌がなくなるのは大きい。

 「まんがタイムきららミラク」の創刊は2011年。「まんがタイムきらら」系列の4コマ誌としては、「きらら」「きららキャラット」「きららMAX」4番目の雑誌になります(4コマ雑誌以外も含めればフォワードやカリノもあります)。しかし、他の3誌が2002〜2004年までの最初期に創刊されているのに対して、このミラクは2011年とずっと遅く、他とは創刊の経緯で一線を画するところがありました。

 雑誌のコンセプトとして、当初から「もっと自由に4コマを」のキャッチフレーズを打ち出し、4コママンガとしてより斬新な表現を求めたのが特徴的でした。具体的には、従来の4コマではあまり見られなかった大胆なビジュアル・演出や、ストーリーや世界観重視の方向性が挙げられます。ここからアニメ化された作品を見ても、毎回キスをするという百合表現で大きな話題になった「桜Trick」(タチ)、食や料理にスポットを当てた「幸腹グラフィティ」(川井マコト)、能力持ちの国王一家の生活を描く「城下町のダンデライオン」(春日歩)、和風の世界での占い師を目指す少女の姿を描く「うらら迷路帖」(はりかも)と、世界観や設定に特色のある濃い作品が多いと思います。

 個人的には、お菓子と女の子をテーマにした「スイートマジックシンドローム」(CUTEG)、19世紀アイルランドで妖精と人間の少女の交流を描いた「アンネッタの散歩道」(清瀬赤目)あたりも好きでした。また、「うらら迷路帖」のはりかもさんの前作で創刊号からの連載「夜森の国のソラニ」も絶対にはずせないところです。4コマの枠を縦にぶち抜いて描かれる高さと奥行きのある森のビジュアルは、最初に目にした時には新鮮な衝撃を受けました。ミラクの目指す自由な4コマ表現を代表する存在だったと思います。

 しかし、こうした特徴的な作品を多数生み出したものの、ほかのきらら姉妹誌と比べると、人気や知名度でやはり一歩引いたところはあったと思います。また、こうした姉妹誌の連載からも、ファンタジーな世界観が特徴的な大人気作品「ご注文はうさぎですか?」や、ゲーム会社の仕事を描いた「NEW GAME!」など、ビジュアルや設定面で特徴の強い作品が人気を得るようになり、相対的にミラクならではのコンセプトが目立たなくなったところもあったかもしれません。しかし、今回の休刊で「しましまライオン」(はなこ)や「ビビッド・モンスターズ・クロニクル」(キキ)など、望まぬ形での早期終了を余儀なくされた作品もあったようで、やはり残念な決定でした。ただ、「うらら迷路帖」や「城下町のダンデライオン」など、半分以上の連載が他誌へと移籍継続されるのは幸いで、これからの経緯を見守ることになりそうです。

2017-10-18 大人にとっての「日常系漫画」とは?

kenkyukan2017-10-18

 少し前の話になりますが、地元紙の中国新聞の増刊誌で、「癒しの日常系漫画」という特集があり、思わず興味を持って手に取って読んでしまいました。しかし、実際に読んでみると、紹介されているタイトルが自分の予想とは違っていて、その意外性に驚くことになりました。

 記事で取り上げられていたタイトルは、「ワカコ酒」「異世界居酒屋のぶ」「サチのお寺ごはん」「はらペコとスパイス」「山と食欲と私」など。あれ? これはもしかして日常系というよりは食マンガだな?

 新聞の購読層は、やはり大人の社会人が中心ということで、社会人のライフスタイルに合った食マンガを取りあげることになったのでしょうか。先日アニメが放送された「異世界食堂」が、30代以上の年代に特に支持されていたというデータもあります。もしかすると、「大人にとっての楽しい日常=おいしい食事」という図式が成立するのかもしれません。

 「ワカコ酒」(新久千絵)は、26歳の女性会社員・ワカコの一人酒を描いた作品。おいしい料理とお酒の組み合わせにめぐり合えた瞬間の幸福感がよく描かれた快作で、この中ではとりわけよく知られた作品となっています。実在するお店が登場するのも大きなポイントでしょう。

 『異世界居酒屋「のぶ」』(蝉川夏哉ヴァージニア二等兵)は、ファンタジー世界で現代の居酒屋が大流行するという話。ライトノベル原作のコミカライズで、先にアニメ化した「異世界食堂」と重なり比較されることも多い作品ですが、こちらも面白さは十分。アニメ化も控えていて期待も大きいです。

 「サチのお寺ごはん」(かねもりあゆみ)は、不摂生を続けていた女子・サチがお寺の精進料理に触れて食生活の改善にチャレンジする話。「はらペコとスパイス」(五郎丸えみ)は、社会人のOLが食文化の研究家と出会って世界の料理の魅力を知る話。いずれも社会人の女子が主役で、やはり大人向けのグルメマンガという気がします。

 きらら系作品からは、アニメ化を控える「ゆるキャン△」(あfろ)が入っています。数あるきららの日常系作品の中で、この「ゆるキャン△」が選ばれているのも、やはり大人の趣味のひとつであるキャンプ(とそこでの食事)にスポットが当たっているからだと思えます。まあ「ゆるキャン△」も半分はキャンプでのおいしい食事を楽しむ食マンガみたいなものだし(?)、そういうチョイスなのかなと。「山と食欲と私」(信濃川日出男)も、同じようなコンセプトを感じます。

 食マンガ以外の作品からは、あの「よつばと!」(あずまきよひこ)や、ベテラン作家が愛犬を描いた一作「コタおいで」(村上たかし)、男子高校生の笑えるトークを描いた「セトウツミ」(此元和津也)などが取り上げられています。こうした作品が、社会人にとっての癒やしなのかなと考えるとなかなか面白いと思いました。

2017-10-12 「魔法使いの嫁」ついにテレビアニメスタート。

kenkyukan2017-10-12

 この10月からの秋アニメは、これまで以上に豊作でさまざまな作品が話題に上っていますが、自分としてはその中でひとつ「魔法使いの嫁」(ヤマザキコレ)は、絶対にはずせないものとして改めて紹介しておきたいと思います。自分の好みの中心のひとつとなっている創作ファンタジーの傑作として、あるいはマッグガーデンに残る数少ない期待作としても、このテレビアニメを待ち望んでいたところは大きいです。

 「魔法使いの嫁」は、2014年コミックブレイドで始まった連載で、同年に同雑誌の休刊に伴い、今ではコミックガーデンへと移籍して連載が続いています。もともとは作者の同人での作品であったらしく、オリジナルの創作同人の色が濃い作品で、その点で最初期から注目して見ていました。

 ストーリーは、とある事情から不幸に生きてきた日本人の少女・チセ(羽鳥智世)が、人外で異形の姿をした魔法使いエリアスにオークションで買われ、彼の住むイングランドの家で弟子として魔法の習得に励みつつ新たな日常を送るというもの。当初は精神的に追い詰められていた彼女ですが、静かな環境で魔法の知識の習得に励み、エリアスと共に周囲で起こる案件に向き合うことで自らを見直すようになる。チセの成長を描く物語でもありますが、自分としては成長というよりむしろ救済、魔法の知識と技術の習得を通じて自分で自分を助ける物語だと思っています。

 そして、待望のテレビアニメですが、1話を見たところ非常によく出来ていて、まさに期待通りでした。もともと、先駆けて出ていたOVAの出来も非常によかったので、期待するところは大きかったのですが、まさにそのままでした。物語の舞台は現代イギリスですが、その片田舎の美しい自然、とりわけ魔法と妖精が日常のすぐ近くに存在する姿を丹念に描いているところが素晴らしい。無数の光に溢れる夜の妖精の森の光景には引き込まれるの一言でした。

 冒頭からじっくりと物語を描いていく姿勢もいいですね。視聴者をつかむために1話から早いテンポで進んでいくアニメも多い中、これはチセとエリアスの出会いのエピソードを、そのひとつひとつのシーンを細部までよく描いていると思いました。

 原作コミックを刊行しているマッグガーデンは、かつてエニックスお家騒動エニックスから離脱した編集者が創業した会社で、かつてのガンガン系の中性的な作風を最も強く受け継いだ出版社であるはずでした。しかし、初期の頃から意外なほど芳しい成果を出すことが出来ず、「ARIA」や「スケッチブック」などごくわずかの成功作を除いて、多くの作品が不振のうちに終わってしまいました。今では、かつて刊行された雑誌はほとんど休刊してウェブ掲載に移っている状態です。

 そんな中で、この「魔法使いの嫁」は、かつて目指した中性的な作風を色濃く残す作品として、最後にわずかに残った数少ない傑作だと思っています。アニメも全24話とすでに告知されており、2クールほどじっくりと味わえることになりそうです。

2017-10-11 きらら4コマの「2巻の壁」について改めて考える。

kenkyukan2017-10-11

 このところ、まんがタイムきらら系列の4コママンガで、そのコミックスの多くが2巻で完結を迎えてしまう、通称「2巻の壁」について改めて考えることになりました。ここ数カ月ほど、新刊コミックスの発売を追い掛けていて、その2巻完結率の高さを目の当たりにし、さらには自分の好きだった連載が中途で終了を迎えるに当たって、えらく寂しい思いをすることになりました。

 具体的に、ここ7月から10月までに発売されたきらら4コマのコミックスを振り返ってみると、まず7月に2巻が出た3作品のうち2作品が完結、8月には2作品でうち1巻は完結しています。問題は次の9月で、この月は2巻が実に5作品も出ていますが、そのすべてが2巻で完結しています! そして10月。この月は2巻が3作品ほど出る予定ですが、その3つともやはり完結です。

 ついでに来月11月の予定まで目を向けますと、こちらでも2巻が1作品ほど予定されていて、(もう察しが付くと思いますが)これもまた2巻で完結となっています。

 トータルで見て、この7月から11月までに2巻が出るきらら4コマのコミックス14冊のうち、実に11冊が2巻で完結を迎えていることになります。逆に2巻を突破して続巻が出るのはたった3冊しかない。3/14。2巻突破率わずか21%となりました。

 もともと、4コママンガはコミックス(単行本)が出にくいジャンルであり、一昔前はコミックスが1冊も出ないのがむしろ普通でした。それが、時代が下るにつれて次第にコミックスが出るようになり、とりわけ若い読者も多いきらら系の4コマでは、ほかの雑誌よりもコミックスが出る確率がぐっと上がりました。それでも、初期の頃は1巻で完結が一番多かったのですが、最近では少しずつ伸びて2巻まで行く作品が増え、今がその段階に達しているとも考えられます。そう考えれば確かにこれは進歩なのですが、しかしそれでも本当にこれが2巻で終わるのか?と残念に思う良作が多いのも事実だと思うのです。

 個人的には、9月に2巻が出た永山ゆうのんさんの「みゅ〜こん!」の終了は、その中でもかなりのショックでした。一方でぶっ飛んだコメディも盛り込みつつも、コーラス部のまじめな活動ぶりがよく描けた部活動ものの良作だったと思います。きらら作品で長く同人活動を続けていた時から追い掛けていた作者の初連載だけに、これが早い時期に終わってしまうのは本当に残念でならない。

 この10月に発売される「しましまライオン」(はなこ)、来月11月に発売予定の「すくりぞ!」(らぐほのえりか)も、正直終わるのが信じられないような作品です。どちらも連載初期からかなりの評判だったはずなのですが・・・。他にも最近の新作で期待している作品はいくつもありますし、それらが2巻の壁を越えられるように祈るばかりです。

2017-10-05 いぬぼくはアニメ11話こそが最大の傑作だった。

kenkyukan2017-10-05

 先日、あの藤原ここあさんの作品「妖狐×僕SS」のアニメTOKYO MXで再放送されるという告知があり、MXを見られない自分としてはとてもうらやましいと思ってしまいました。2012年の本放送から実に6年近い時が経ち、原作も終了して久しい今となっての再放送は、かつてのファンにとっては思わぬうれしい出来事でしょう。ただ、ひとつだけ気になることとして、今回の再放送はいくつかの話を選んで放送される「セレクト再放送」であり、その中に第11話「陽炎」が入っていなかった点がありました。

 実は、わたしが以前このアニメをリアルタイムで視聴していた時、この11話がものすごく気に入ってしまい、当時利用し始めたばかりのニコニコ動画配信で、実に7回か8回も繰り返して見たことがあるのです。この話は、原作でも序盤のクライマックスにあたる箇所で、ここだけは今回の再放送でもどうしても入れてほしかったところです。

 「妖狐×僕SS」は、妖館というマンションに集う妖怪の先祖返りたちの日常と非日常を描いた作品ですが、中でも中心となるのが主役と言える凜々蝶(りりちよ)と双熾(そうし)ふたりの物語だと思います。そしてこのアニメ11話は、その双熾の子供時代からの境遇を、ほぼ全編双熾本人の独白の回想によって語る構成になっています。

 幼少期から実家の旧来の風習によって軟禁されていた双熾ですが、巧みに周囲に取り入ることでついにはある権力者の保護を受けることに成功し、 軟禁から解放されその家で自立までの資金を稼ぐことになる。そこで文通の代筆の仕事を通じて知り合ったのが凜々蝶で、彼女の純朴な内面を知ってひどく影響され、自分のこれまでのさもしい生き方を見返すようになる。そして、凜々蝶に仕えるため妖館のSSシークレットサービス)となり、彼女に大してどこまでも真摯に仕えるようになる。原作でもここは泣ける話なのですが、アニメでは双熾の独白が、ひとりの声優の熱演によって全編を通して語られることで、さらに心に響く1話になっていました。

 わたしは、この当時は今ほど声優には詳しくなかったのですが、この「妖狐×僕SS」の熱演によって中村悠一さんを知りました。原作ではまだコミックス2巻と序盤のエピソードなのですが、それでもこれは凜々蝶と双熾の関係を最も深く語る重要なエピソードであることは間違いない。今回のセレクト再放送でも、これは絶対にはずしてほしくなかったと思います。

2017-10-04 「Memories Off」新作発表とKIDの思い出。

kenkyukan2017-10-04

 先日、MAGES.志倉千代丸会長のツイートで、あのKIDの恋愛アドベンチャーの名作『Memories Offメモリーズオフ)』の新作の発表があり、かつてのファンを中心に思った以上に多数の反応が見られ、いまだに根強いファンがいることを確認しました。さらには、その志倉さんの手で、かつてKID倒産したあとで事業を受け継いだときの逸話が語られ、その時の熱い展開に思わず感動してしまいました。

 KIDは、古くは80年代後半に設立されたゲームメーカーで、当初はアクションゲームシューティングゲームを中心に手がけ、また90年代の半ばからはPCの美少女ゲームの移植もよく行っていました。それが、99年になって、初めて自社オリジナルのアドベンチャーゲームである「Memories Off」を手がけ、これが非常に大きな人気を得たことで、以後多数のオリジナルのアドベンチャーゲームを出すことになります。

 このときに出たゲームの中では、前述の「Memories Off」シリーズと、「Ever17」に代表される近未来SF「infinity」シリーズが特に有名ですが、それ以外にも多数のタイトルを出していて、一時期は非常に盛り上がりました。それぞれのゲームのファンに加え、KIDアドベンチャーゲームの熱心なファン層もいて、コンシューマのアドベンチャーゲームの全盛期の一端を築き上げたことは間違いありません。

 しかし、2004年か2005年あたりを境に急に不振となり、肝心のオリジナルの新作がいまひとつで、代わってまたPCの他社のゲームの移植を盛んに行うようになりますが、こちらも評判は芳しくありませんでした。そして、2006年になってついに倒産してしまうのです。

 倒産後はもうKIDのゲームを見ることもないと思っていましたが、しかしKIDのゲームで多数の楽曲を手がけた志倉さんが、自社の5pb.KIDのスタッフのほとんどを引き受けるという思い切った決断を行い、ここでかつてのスタッフによるゲームがまたリリースされることになりました。かつてKIDによって楽曲の仕事を何度も依頼された志倉さんが、ここで恩返しのようにKIDのスタッフを救った形になったわけで、今回のツイートでその詳しい経緯を知って、また新たに感動してしまったのです。

 そして現在。また新たに新作こそ出るものの、かつてのKID時代のゲームの思い出は遠くなってしまいましたが、そんな時に唐突な「Memories Off」の新作の話。かつてKIDのゲームにはまったプレイヤーにとっては、単に新作が出る以上にうれしいものがあったと思います。MAGES.は、これまでも「シュタインズ・ゲート」を初めとする名作を多数出してきましたが、これからの展開もまた楽しみですね。

2017-09-28 「百合姫S」とはどんな雑誌だったのか。

kenkyukan2017-09-28

 ひとつ前の日記で書いた「此花亭奇譚」が連載されていた「百合姫S(コミック百合姫S)」。短期間で休刊となったこの雑誌のことを知っている人は多くないと思います。わたしは、休刊まで3年ほどの間、そのほとんどを追い掛けていたので少しそれを振り返って語ってみたいと思います。

 「百合姫S」は、一迅社より2007年に創刊された雑誌で、先行する「百合姫」の姉妹誌となっていました。「百合姫」は、百合作品を集めたコンセプトの雑誌として、当時からすでにかなり知られていました。では遅れて創刊されたこの「百合姫S」は、この本誌とも言える「百合姫」とはどんな違いを打ち出したのか?

 具体的には、「男性向けの百合作品」を集めるというコンセプトで作られていました。男性向けとはどんなものか? 端的に言えば萌え系の絵柄・作風の百合作品と言っていいかと思います。「男性向けの少女マンガ」とニュアンスとしては近いかもしれません。あの「ゆるゆり」も元々はここの連載として始まり、「此花亭奇譚」(のちの「このはな綺譚」)も当初からの看板人気作品でした。こうした作品のイメージでこの雑誌を理解してもらえればいいと思います。

 これ以外に印象的だった作品としては、まず「むげんのみなもに」(高崎ゆうき)を挙げてみたい。現在ではコミックキューンでほのぼの(?)した悪魔×メイドコメディを描いていますが、こちらはまったく印象の異なる厳しい関係性に裏打ちされたシリアス百合作品。しんどいけど面白いなと思って読んでいた記憶があります。しっとりした作画もいびつな雰囲気をよく表現していたと思います。

 「マイナスりてらしー」(宮下未紀)も個人的に好きな作品でした。彼女の描く話は暗いものも多いのですが、これは基本明るいお嬢様×従者コメディだったような気がします。コミックス1巻で終わっていますが、もうちょっとこの路線で長い話を読んでみたかったです。

 これ以外にも、今でも百合作品で知られた南方純さんや吉冨昭仁さん、玄鉄絢さん、藤枝雅源久也両氏もここで執筆しており、連載陣の充実度は決して悪くなかったと思います。芳文社4コマの方で知られた石見翔子さんや、スクエニでの活動が多い椿あすさんの姿も見られました。

 しかし、どうも売り上げは芳しくなかったのか、3年という比較的短い期間で、2010年に本誌百合姫に統合されるような形で休刊。「ゆるゆり」などごく一部の作品は百合姫に移籍することになりましたが、大半はそのまま再開されずに終わってしまいました。「此花亭奇譚」もその中のひとつで、はるかのちに他社のコミックバーズで連載再開されることになったのは、本当に幸運だったと思います。雑誌が成功しなかった理由はよく分かりませんが、あの頃はまだ男性向けというか萌え系の百合作品に注目する読者が、従来の少女マンガ百合作品と比較して、それほど多くなかったのかもしれません。

 しかし、ここ最近は、従来は百合作品が載らなかった雑誌においても、こうした作品が載ることが増えています。電撃大王の「やがて君になる」「新米姉妹のふたりごはん」、スクエニでもJOKERで「ハッピーシュガーライフ」、バーズのウェブ版のデンシバーズでも「ふたりべや」と、いずれの作品も好評を得て連載中です。今ならば、百合姫Sのようなコンセプトの雑誌でも前よりやって行けるかもしれない。その点では早すぎた創刊だったかもしれないと思っています。

2017-09-27 ついに「このはな綺譚」アニメ放送開始!

kenkyukan2017-09-27

 夏のアニメもそろそろ終了を迎え、秋アニメをしばし待つ時期に差し掛かりましたが、ここでまずは以前よりずっと原作を推してきた「このはな綺譚」(天乃咲哉)をおすすめしたいと思います。秋アニメでも早い時期に始まるこの作品にまずは注目してほしい。

 「このはな綺譚」は、幻冬舎月刊バーズの連載で、神や妖怪が存在する和風ファンタジーの世界で、旅館の仲居をして日々を過ごす狐の娘たちの物語となっています。旅館で仲居というと、アニメではあの「花咲くいろは」を思い出す人もいるかもしれませんが、ここはまったく違う話であるということを強調しておきたいと思います。

 「花咲くいろは」は、現実のお仕事を描くコンセプトでリアルな描写も多いのに対して、こちらはあくまでファンタジー。確かに仲居の仕事は簡単なものではなく、主人公が新人ということもあって時に厳しい描写も見られますが、しかし基本的に目線はとても優しい。まだ仕事に慣れない主人公に対して、教育係を勤める先輩を始めとした同僚たちが、みな彼女を気遣って優しく配慮してくれる。お客さんたちも基本みないい人で、やはり従業員たちと仲良く接してくれます。

 さらに、旅館を取り巻く美しい自然の描写が、その優しい雰囲気をさらに盛り上げてくれます。夢と現の境に立つという「此花亭」は、周囲では美しい桜が咲き誇り、瀟洒な旅館の建物と涼やかな内装と共にすばらしい光景を見せてくれます。特に天乃さんのカラーイラストは毎回絶品で、彩り豊かなこの作品の世界観を象徴していると思います。

 作者の天乃さんは、かつてエニックス(現スクエニ)のステンシルでデビューした作家で、のちにKADOKAWA一迅社など他社へと活動の場を移していきました。この「このはな綺譚」は、かつては一迅社百合姫Sで2009年から始まった連載で、その時のタイトルは「此花亭奇譚」。この時から人気は高かったのですが、しかし掲載誌の休刊によって1年ほどの連載で中断となり、以後長い間移籍先が見つからない状態となっていました。

 それが、2014年になって、ついに幻冬舎コミックバーズ(現月刊バーズ)にて連載再開が決定。作者の天乃さんの話によると、複数の出版社から連載を受け入れる話はあったものの、どうしても条件が合わず実現しなかったのを、最後にバーズが条件を認めてくれたとのこと。そんな話もあって、「此花亭奇譚」の頃から追いかけていた自分にはとてもうれしい連載再開でした。

 あれから3年。2017年3月に発売されたコミックス5巻において、待望のアニメ化の告知も行われ、この10月よりついに放送開始。これまでの原作の経緯からしても、あるいはエニックス時代から天乃さんを追いかけてきた経緯からも、本当に楽しみで仕方がない! 最新コミックス6巻も先日発売されたばかりで、是非ともこの機会に注目してほしいと思います。

2017-09-22 「メガロマニア」と檜山大輔。

kenkyukan2017-09-22

 コミックスの整理で10年ほど前の単行本を多数目にする機会を得たのですが、その中でこれはと目を引いたものがいくつかありました。そのうちのひとつが、檜山大輔さんの「メガロマニア」。これが最初の連載で、今はなきガンガンパワードの連載のひとつになります。その当時は季刊から隔月刊へと移行し、さらに新規連載に力を入れていた頃だったと思います。

 肝心の内容ですが、現代風のファンタジー世界を舞台に、人間と人間に似た種族「亜人」たちが暮らす町での日常を描くアクションファンタジーでしょうか。亜人たちは、この世界で人間たちから露骨に差別され、虐げられて生活していました。主人公はそんな中で人間と亜人のハーフとして警官の職務に当たり、ふたつの種族の確執に悩まされ苦しみながらも、それを乗り越えようと必死に奮闘していきます。

 最近も、こうした「亜人」的な存在と人間との関係を描く物語にいくつか心当たりがあるのですが、これもかつての先駆的な存在のひとつかもしれません。檜山さんの作画はポップでコミカルな雰囲気も感じられ、見た目はそこまで暗いイメージばかりでもないのですが、しかし描かれるストーリーは一様にシビア。最後には争いが高じてついに破滅的な展開まで迎えることになります。

 しかし、そうしてストーリーが大いに盛り上がったまさにその時期に、このマンガは「第一部完」として連載中断、実質的な打ち切りとなってしまうのです。その理由は、掲載誌だったパワードの休刊にほかなりません。連載最終盤の2009年、スクエニ雑誌の大再編が行われ、このガンガンパワードと同時にガンガンWINGも休刊、新しく創刊されるガンガンONLINEガンガンJOKERへと再編されることになったのです。

 この再編によって、多くの連載が終了することとなり、この「メガロマニア」もそのひとつとなりました。また、これは檜山さんが新雑誌のJOKERで新しく始める連載企画も関係していたようで、そちらで「ひまわり」という新連載を始めることになりました。これは、当時人気だった同人ノベルゲームのコミカラ イズで、決して悪い内容ではなかったとは思いますが、しかしその終了後も第一部完となった「メガロマニア」の再開はなし。こちらはまさに完全な打ち切りとなってしまったのです。

 スクエニにおいて、雑誌の休刊によって活躍の場を失い、消えてしまう作家は本当に多いです。この檜山さんの場合、連載こそ打ち切りになったものの、新雑誌で新しい連載を行う機会を与えられたわけで、その点はまだ全然よかったと思います。しかし、それでもこの良作だった「メガロマニア」が中途半端な形で終わったのはやはり惜しい。檜山さんは、この後にも何度か連載を行っていますが、いずれも短期間で終わるなど成功しきれなかったことを見ても、やはり惜しすぎる初連載だったと思うのです。

2017-09-20

kenkyukan2017-09-20

「刻の大地」連載再開決定に寄せて。

 先日、かつてのガンガンの人気連載「刻の大地」の連載再開の話が、作者の夜麻みゆきさんから告知され、その資金を集めるためのクラウドファンディング企画が立ち上がるという大きなニュースがありました。これは非常に大きな反響を呼び、8月31日に募集期間が終了したクラウドファンディングも、目標額の800万円の2倍の1600万円以上が集まるという結果となり、改めてかつての人気の高さと、今でも支持する根強いファンの多さを再確認することになりました。最近再アニメ化された魔法陣グルグル最遊記もそうですが、やはり昔のガンガン、エニックスの作品の潜在的な人気は本当に高いです。

 わたし自身も、今回の連載再開の話はとてもうれしかったのですが、同時に本当に意外でもありました。かつて作者自身の口から「もう描くことは出来ない」といった発言を聞いた記憶もあり、また連載終盤における中断の経緯からしても、再開の可能性は極めて低いと感じていたのです。

 この「刻の大地」、これまで散々取り上げてきた「エニックスお家騒動」による連載中断ではありません。いや、確かにその影響もあったと思います。お家騒動に至る路線変更において、ガンガンでトップクラスの人気を誇っていた「刻の大地」は、ガンガンの誌面に合わないという理由だけでGファンタジーへと移籍させられることになりました。Gファンタジー移籍後の内容は、明らかに精細を欠いていたところもありましたし、こうした措置が作者になんらかの動揺を与えた可能性は否定できません。

 しかし、中断した本当の理由は、おそらくは作者自身の精神的な理由にあったと思うのです。具体的には、連載中盤以降明らかに休載が多くなり、作画も乱れ、実際にはGファンタジー移籍前から精細を欠き始めたところがありました。そして、連載終盤は明らかに内容的にも調子を崩し、継続が難しい様子も感じられ、そのまま中断してしまったのです。その後の夜麻さんも、「刻の大地」以外の作品の執筆を行うことはありましたが、この作品だけはどうしても描けない様子が感じられ、もう商業で再開の話が出ることもなくなっていたのです。

 これは、他にも当時のエニックスの作家の何人かにも見られた現象で、例えば「まもって守護月天!」の桜野みねねさんも、連載の途中で突然調子を崩し、そのまま連載中断したという経緯があります。こちらも、最近になってついに正式に再開したあたりで共通しています。また、お家騒動マッグガーデンに移籍した作家が何人も、早い時期に連載を中断して姿を見せなくなったのも、やはり共通したものを感じます。誰もが自分の作品に対する思い入れが強すぎて、何かのきっかけで調子を崩すと継続が難しい。そんな雰囲気も感じられました。

 そんな中で、この「刻の大地」が、連載中断から15年が経過した今になって連載再開の決定が下されたのは、本当に勇気のいる決断だったと思います。クラウドファンディングが成功した後、この10月にもウェブ上で連載が再開されるようで、再開後1話を楽しみに待ちたいと思います。

2017-09-14 月刊ステンシルについて(2)。

kenkyukan2017-09-14

 前回では、雑誌の看板だった「BUS GAMER」と「AQUA」を紹介しましたが、他にもこのステンシルには目立たないながら確かな良作がいくつもありました。

 まず、どうしても取り上げておきたいのが、「南国動物楽園綺談」(斎藤カズサ)です。Gファンタジーで先にSFアクション「東京鬼攻兵団TOGS」を連載していた斎藤カズサさんの連載で、こちらは一転して九州の田舎を舞台にした動物コメディ。動物たちとの和気あいあいとしたコメディと薀蓄が楽しめる作品で、当時あの「動物のお医者さん」をよく引き合いに出されて評価されることがありました。「動物のお医者さん」は紛れもない傑作ですが、こちらも動物コメディとして非常に面白いものがあったと思います。

 しかし、その斎藤さんも、エニックスお家騒動に巻き込まれてエニックスを離脱、移籍先のコミックブレイドで新作の連載を始めますが、連載開始直後に休載となり、その後まったく消息が分からなくなってしまいました。結果として、この「南国動物楽園綺譚」が、エニックスで何作も良作を手掛けてきた作家の、実質的に最後の作品となっています。

 連載ではなく読み切り連作の形での掲載でしたが、こがわみさきさんの一連の作品も取り上げるべきでしょう。これ以前に他社で掲載された作品のコミックス「でんせつの乙女」がすでに一部の読者の間で話題になっていたのですが、このステンシルでさらに本格的に多数の読み切りを残すことになり、一気に知られる存在となりました。いずれの作品も、中性的なさらっとした心地のよい作画と楽しくもちょっと切ない数々のストーリーで、やはり多くの読者の支持を集め、このステンシルだけで3冊の読み切り短編集を残しています。休刊後はガンガンパワードへと移籍し、そちらでの連載「陽だまりのピニュ」でその独特の作風は完成した感がありました。

 これ以外にも、現代伝奇ファンタジー「現神姫」(天乃咲耶)、近未来SFバトルアクション「KAMUI」(七海慎吾)、 麻薬捜査官の活躍を描く現代アクション「switch」(naked ape)、夢の世界を舞台にした大正ファンタジー浪漫夢喰見聞」(真柴真)、爆笑動物ギャグ「パパムパ」(もち)など、これはと思える作品は意外なほど多くありました。また、これらの作品の多くは、ガンガン的なとりわけGファンタジーの作品に比較的近い雰囲気で、やはりエニックスの雑誌だったなと思わせるところがあります。事実、これらの作品は、雑誌休刊後にその多くがGファンタジーへと移籍することになりました(「KAMUI」のみガンガンWINGへの移籍、「パパムパ」のもちさんはGファンタジーで新連載掲載)。

 また、これらの作品の作者のうち、天乃咲耶さんはのちに他社に移りそちらで活躍を続け、naked ape一迅社へと移って主にそちらで活動、七海慎吾さんと真柴真さん、もちさんはそのままエニックススクエニ)に残って今でも活動中と、いずれも息の長い活動を続ける作家となっています。こうした実力のある作家を多数発掘し後世に残したことが、ステンシル最大の功績ではないかと思っています。

 しかし、この雑誌自体は、やはり最後までマイナーで目立たない存在のまま、ひっそりと休刊を迎えました。最後まで伸び切れなかった理由としては、やはり基本が少女マンガ誌ということで、ガンガン系の読者の好みからは最も外れた雑誌であったこと、そして数少ない看板作品だった「BUS GAMER」と「AQUA」の連載が、お家騒動で失われてしまったことが大きかったと思います。ゆえに、最後まで雑誌やその掲載作品があまり知られないままで終わってしまった。天野こずえさんの「AQUA」も、移籍後に「ARIA」としてリニューアルした後で急に知られるようになり、一気に人気を集めたことからも、このステンシルが非常にマイナーだったことが分かります。しかし、そうした名作を生み出す母体となったこの雑誌の功績は、意外なほど大きなものがあったと思うのです。

2017-09-13 月刊ステンシルについて(1)。

kenkyukan2017-09-13

 先日、かつてのエニックスの雑誌・ステンシルの連載マンガについてちょっと記したのですが、この雑誌を買っていた、あるいはその詳しい内容を知る人はあまり多くないと思います。エニックススクエニ)の雑誌の中でも、とりわけマイナーで、実際に購読している読者も少なかったと思います。しかし、この雑誌の連載マンガと、ここを出身とする作家の存在は、決して侮れないものがありました。ここでは、少し本格的にこの雑誌について語ってみたいと思います。

 月刊ステンシルは、エニックスより1999年に創刊された雑誌で、エニックスの雑誌では少年ガンガンGファンタジー・ギャグ王・ガンガンWINGに次ぐ5番目の雑誌になります。しかし、これまでの雑誌と違い、「少女マンガ誌」として創刊されたことが大きな特徴でした。「あのエニックス少女マンガ雑誌を」ということで当時のガンガン系読者の間では大きな話題になりました。また、当時ギャグ王が突然休刊したばかりの時期とも重なっていて、そのことでもいろいろと物議を招きました。

 実際に出てきた雑誌は、オーソドックスな少女マンガと呼べる作品もあったものの、やはりエニックス・ガンガン的な作風の連載も見られる雑誌で、特に女性読者の多かったGファンタジーに比較的近いカラーの雑誌になっていたと思います。しかし、やはり少女マンガであるという壁は大きかったようで、当時のガンガン系読者の間でも、他の雑誌より一段とマイナーな雑誌に留まってしまった感はありました。あの頃読まれていた雑誌は、まずやはりガンガンが抜きん出て多く、次いでGファンタジーガンガンWINGがかなり間を空けて続き、ステンシルはそれよりもさらに読者は少なかったと思います。

 しかし、それでもこの雑誌には、注目を集める人気連載がいくつもありました。中でも、最初から雑誌の看板として置かれていたのが、当時Gファンタジーの「最遊記」が人気絶頂だった峰倉かずやの新作「BUS GAMER」でしょうか。こちらは一転して現代日本を舞台にして、企業間の「ゲーム」による争いに参入した若者たちを描く物語で、「最遊記」とはまた違った面白さがあり、やはり大きな注目を集めました。しかし、このマンガ、当初から季刊と隔月連載でペースが遅かった上に、あのエニックスお家騒動による作者のエニックス離脱で中断、コミックス1巻が出ただけで終わってしまったのです。

 のちに移籍先の一迅社で、2006年より「月刊ComicREX」誌上で再び連載開始されるも、こちらも作者の峰倉さんの深刻な病状悪化により早期に連載中断 、やはりコミックス1巻が出たのみでいまだ再開されていないという不運の作品となっています。

 もうひとつ、この雑誌の最大の看板だったのが、あの天野こずえさんの「AQUA」です。雑誌創刊当初より、恋愛少女マンガ読み切りや雑誌の表紙を何度も手掛け、最初から雑誌のイメージをつかさどる作家となっていましたが、その天野さんが2001年より満を持して連載を開始したこの作品。テラフォーミングされて青い水の惑星となった火星を舞台に、主人公の灯里たちウンディーネゴンドラの漕ぎ手)の成長を描く物語で、その美しい作画と世界観、ストーリーで開始当初より大きな反響がありました。

 しかし、これも連載開始1年も経たないうちにお家騒動により中断、移籍先のマッグガーデンの「コミックブレイド」で「ARIA」とタイトルを変えて連載再開されることになり、そちらでも大人気を博することになります。何度もアニメ化されるなどマッグガーデンでも最大の成功作となるなど、その後の経緯についてはもはや説明するまでもないでしょう。この作品こそが、ステンシルという雑誌が生んだ最大の功績だと思います。基本的には「AQUA」と「ARIA」はまったく同じ作品で、完全に続きの話となっていますが、個人的には最初のタイトル「AQUA」の方が、より作品のイメージをストレートに表していてよかったと思います。それが唯一の心残りですね。

2017-09-07 「POCKET HEART」の思い出。

kenkyukan2017-09-07

 先日、妖精さんと一緒に暮らす話を取り上げたばかりですが、それをきっかけに、かつてエニックスステンシルでほんの一時期短期連載されていた作品を思い出しました。「POCKET HEART」(吉崎あまね)です。

 こちらはファンタジー世界を舞台にした日常ファンタジーで、とある空き家に住んでいたブラウニーの兄妹・リデルとネジと、その家に引っ越してきたオルゴール職人を目指す青年・エルムの出会いと交流を描く物語となっています。この連載の少し前に、まさに「リデルとネジ」という読み切りが掲載されており、そちらを設定を少しアレンジして連載化した形となっています。

 リデルとネジの兄妹は、オルゴール職人として名高いアボットおじいさんの家に住み着き、優しいおじいさんの元で幸せに暮らしていました。しかし、やがておじいさんは亡くなってしまい、双子は誰もいない家に取り残されてしまい、そしておじいさんとの思い出を失いたくなかったふたりは、アボットさんの家にやってくる人たちを次々と追い出していました。しかし、最後にやってきた青年エルムの優しい心に触れ、頑なだった心がほどけていき、やがてはエルムを完全に受け入れ、共に暮らすことになるのです。

 ここまでが1話のストーリーですが、これも元は読み切りとして書かれていたようで、これだけできれいに完結しています。続く第2話・第3話では、人間のエルムにもストーリーの焦点が移り、そちらのエピソードもまた感動させるもので、いずれも非常によく出来ていました。また、作者の吉崎あまねさんの絵も素晴らしいものがあった。まさにエニックスならではの中性的な作風を体現したかのような、くせの少ないかわいらしい絵柄で、少女マンガ誌であるステンシルの中でも、最もエニックスらしいマンガのひとつだったと思います。しかし、そんな確かな良作でしたが、わずかにこの3話だけで連載終了してしまうのです。

 「POCKET HEART」が連載されたのは、ステンシルで2001年8月号〜10月号。当時のエニックスは、あのエニックスお家騒動真っ最中の混乱期で、多くの雑誌で一気に連載が終了、混乱は極致に達していた時代でした。しかし、そんな中でもステンシルでの終了作品はさほど多くなく、幸いにも混乱の影響は少ない状態に留まっていました。そんな比較的静かな環境の中で、この「POCKET HEART」の連載が行われたのは、数少ない幸運な出来事ではなかったかと思います。

 しかし、作者の吉崎さんの商業連載が、これだけで終わってしまったのは本当に惜しまれます。約1年後にお家騒動で離脱した側のコミックブレイドで、2本の読み切りと読者コーナーのイラストを手掛けたことがあったようですが、それも一瞬のことで、それ以後は商業誌の活動は完全に途絶えてしまいました。もしお家騒動が起きなかったら、エニックスでまた活動の機会があったのか? 今となってはそれは知るよしもありません。

 ただ、吉崎さんもこの連載には特に思い入れがあったようで、のちに同人誌で少しずつその続きとなるエピソードを執筆していました。2004年頃から本が出始めたようで、2010年には総集編が出ています。しかし、その後2011年頃になってその活動も途絶えたようで、今となっては懐かしく思い出されるばかりです。