こんにちは、検索迷子です。
詩はいつだって、読み手が出会いたいと思っていた言葉を、
出会ったときの感覚だけで切り取って、
自由に読める良さがある。
その詩が書かれた背景など知らなくとも、
著者のことを知らなくとも、
言葉だけが浮き上がって心にしみこんでいくなら、
著者の意図する方向とは違った解釈をしたところで、
それはそれでいいのだと読み手の一人として思う。
著者の方が亡くなっている場合、
遺された文献以外に、その解釈を知る由もないこともある。
詩は読み手の手に渡ったとき、
読み手のものになるのだとずっと思っていた。
でも、
震災後に編まれた詩集というのは、
書かれた時期を知ったうえで、
書いた人の意図を知ったうえで手にとり、
読み始めるから、それまではもしかしたら、
素通りしたかもしれない言葉にも立ち止まってしまう。
震災後に編まれた詩集、
『続・一編の詩があなたを強く抱きしめる時がある』
水内喜久雄(みずうちきくお)さん編著、PHP研究所刊より、
石津ちひろ(いしづちひろ)さん著、
「ありふれたあさ」を紹介したい。
- 作者: 水内喜久雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/07/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
ありふれたあさ
石津ちひろ
あさおきて
おおきなのびをする
まどをあけて
とりたちのさえずりをきく
おゆをわかして
かおりのいい紅茶をいれる
なんでもない
ありふれたあさ
なんにもない
ありふれたあさ
いつもある
ありふれたあさ
いつまでもある
とおもいこんでいた
ありふれたあさ
この詩を読んで、以前紹介した、
あさになったのでまどをあけますよ
を思い出した。
『あさになったのでまどをあけますよ』、
荒井良二(あらいりょうじ)さん作、偕成社刊。
- 作者: 荒井良二
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2011/12/02
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
朝がくることはあまりにも当たり前だと思いすぎて、
朝を迎えることのかけがえのなさを、
石津さんの詩も、荒井さんの絵も伝えてくれている。
ごく普通のありふれた朝を迎えられることが、
何よりも幸せな一日の始まりなのだということを思い出し、
朝を迎えることをもっと丁寧にとらえなおしたいと思う。
石津ちひろさんは、
『リサとガスパール』シリーズの訳者でもいらっしゃる。
- 作者: アングットマン,Anne Gutman,Georg Hallensleben,石津ちひろ,ゲオルグハレンスレーベン
- 出版社/メーカー: ブロンズ新社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: ハードカバー
- 購入: 1人 クリック: 36回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
- 作者: アングットマン,ゲオルグハレンスレーベン,Anne Gutman,Georg Hallensleben,石津ちひろ
- 出版社/メーカー: ブロンズ新社
- 発売日: 2013/06/12
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
やさしい言葉、やさしい空気感で、
言葉をつむいでいるところが、ほっとさせられる。
水内さんの著書を紹介した記事
水内さんの編む詩集が好きで、
過去に数回エントリーを書いています。
本書の前編『一編の詩があなたを強く抱きしめる時がある』
から2編、紹介したものもあります。
- 作者: 水内喜久雄
- 出版社/メーカー: PHPエディターズグループ
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
先日は、岸田衿子(きしだえりこ)さんの詩、
「迷(ま)い子の道」を紹介しました。
岸田衿子著、水内喜久雄選、理論社刊『岸田衿子詩集 たいせつな一日』より。
- 作者: 岸田衿子,水内喜久雄,古矢一穂
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 単行本
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
今年の年初に2つ紹介しています。
工藤直子さんの「夕焼け
また、水内さんの編んだほかの著書も紹介しています。
石垣りんの詩を編んだ「宇宙の片隅で」を紹介しました。
良ければ、そちらもあわせてお読みください。
では、また。