愛の戦士キューピーハニーの日記Neo

生涯現役、生涯前向き、生涯楽しむ心、生涯自分磨き

第6回 児島半島港めぐり100kmマラソン


サポートランナーのさっちゃんと


なんとかギリギリ、スレスレでゴールテープを切ることが出来ました。


今年も準備万端とはいえないこの大会。
でも、「絶対に完走する」と決めていました。
リベンジ、なんて思い上がった気持ちなんかではなくて、ただ、やり残したことを片隅に置き去りにしたままにすることが、出来なかった。
挑戦者として、きちんと落とし前をつけ、今の自分に決着をつけるために臨んだ。
でなければ、次に進めないから。

今年は大雨の影響で金甲山が通行止めとなったため、児島半島一周が取りやめとなり、代わりに往路と復路とも王子ヶ岳通過の往復コースに変更、さらにはやはり大雨の影響で直前に貝殻山も通行規制が発生したため、貝殻山山頂(折り返し地点)まで正規ルートではなく回り道のルートで到達に変更となった。
とにかく大会のポリシーとして、負荷を減らすわけにはいかないんですね(笑)。


夜明け前の5時5分スタート。
スタート地点の鷲羽山を下り、玉野市へ向かう10kmの市街地をキロ7分で進む。
今日は天気がよく、暑くなりそうだ。
でも、去年みたいに台風で途中大会中止になるよりはいい。
今年はちゃんとゴールするんだから。
王子ヶ岳の登りに入る。
歩きと走りを交互に入れる。
通常のマラソン大会でこんなコースを走らされることはない。
登りは歩くほうが以後のダメージが少ない。
まだまだ元気な前半なので、一発目の難関をクリア。
今年も一緒に出場した戦友、カチョーとは、今回は別々に走ることを約束。
私と違い、コンスタントにきちんと練習を重ねているカチョー。盆明けに一緒に練習した際、明らかに私と比べて足があまっていた。
カチョーはこの大会を完走し、萩往還140kmに臨む目標がある。つまりカチョーにとって、この大会は今年のメインレースなのだ。足を引っ張りたくない。
王子ヶ岳を終えて、何人かのランナーと会話を交わしながら、玉原に向かって走っていると、なんか見覚えのあるローディーが。
オタリート・スコット君だ。なんとわざわざ応援にかけつけてくれたのだ。これはサプライズだった。
「どしたん?今日はこっち方面で萌キャライベントでもあるん?」
「いえ、僕も来月ウルトラに出るので、どんなもんか見学に来たんです。」
と、ポケットからビスコ2個を取り出して、「どうぞ。」と、おぼつかない手でくれる。
「アンタ暇じゃな〜。人の見学なんかいらん、これは自分がぶっつけで体験するもんじゃ!」
ちょっと照れて憎まれ口をきいてしまったけど嬉しかった。
25kmの給水地点で一緒に走っていたウルトラ初参加(といってもマラソン歴10年のベテランランナー)の男性に、
「後半は食べれなくなりますからね。今しっかり食べといたほうがいいですよ。」
「今日は暑いですからね、しっかり氷やスポンジで冷やしたほうがいいですよ。」
などと先輩ズラをして言う。
エイドスタッフから「現在女性で2番手だよ。」
と言われ、
「ならぜひとも越さないとね。」
と言って進む。
ところが、肉食獣、鼻息が荒すぎました。
玉原親水公園の曲がりを見逃し、直進し、コースアウト。行方不明となりました。
何か違う景色に、唖然となり引き返す。
でもその時急にもよおしてきたので、たどりついた玉原親水公園の公衆トイレに行く。
ああ・・至福の・・・。
約20分のロスだったがコースアウトは天のお告げだった。それから先のトイレポイントしばらくなかったし。
ものは考え様。
ここから完全一人旅です。
気を取り直して玉野市街へ。あのクソ暑い平地区間に入る。しかし盆明けの試走の時と比べたらかわゆいもんじゃ。トライアスリートに暑さはおまかせよっ。
なんと、トップの選手は私がまだまだ貝殻山登り口から程遠い時点で折り返してきました。しかもすがすがしい笑顔です。
進んでいたら、見覚えのある顔が・・。
なんと親友もっさんが応援に駆けつけてくれた。これまたサプライズ。
凍ったスポドリパックの差し入れ。今日は暑いから嬉しい。背中のポケットに入れる。
大事な自分の時間を割いて、こんなところまで応援にきてくれたことに感動。(今日自分もスイムの大会にエントリーしていたのにそれを完全に忘れていたもっさんであった・笑)。ありがとう、がんばるよ!
ペースを守り、私もメインイベントの貝殻山に入っていく矢先、またもや目印を見逃しコースアウト。うっかりぽっかり2回目。
主催者のFさんに連絡を取って確認後引き返す。約15分のロス。
貝殻山山頂から折り返した選手と次々とハイタッチ。往復コースとなった今年限定。
笑顔の人、苦しそうな人、この先一筋縄じゃいかないよと注意喚起してくれる人など様々。
急勾配の貝殻山の登りは迷わず、歩きのみ。
開会式でこの大会連覇中のO選手が、(速くゴールする)大会攻略法として
①荷物をなるべく軽くすること。
②登りは歩くこと。
③たくさん食べること。
と言っていた。
ハニーはそれにプラスして
④コースアウトしないこと。
を付け加えます。
おめぇ〜だけってか・・・。
初体験の山頂までのコースも悶絶しました。
この中間地点ではさすがに皆休憩を長めに取らなければ動けない様子でテントで休んでいる人も。
私もトイレに行って、しっかりクーリングして、補給をしてから出発するが、まだ動けないランナー達。
貝殻山の下りはショーボー隊員Mr.Tとともに。Mr.Tは去年90km地点で同じく完走を断念した戦友です。(といっても彼は何度も完走しているベテランですが。)
「ハニーさんはほんと根性あるよね。去年は90km地点で意識失ってたし。ランシューの上まで足からの血がにじんでたし。普通じゃないと思ったよ。」
「アンタようそんなに人のこと憶えとるな。」
コース途中にT一族が応援に来ていたので、奥さんに不倫と誤解されないよう注意を払う。
T父上と母上よりお茶や氷のサービスを受ける。
面倒見のいい、いい人たちです。さすがMr.Tの身内。(やや滞在が長くなりましたが・・。)
57km地点エイドで私がスタッフと話してる隙にMr.Tは先に出発していました。
このぬけがけヤロ〜。
いえ、この大会に連続出場の彼は、この時点で完走が危ういことにすでに気づいていたのです。
一人旅で移動中のところ、私の後ろに車が止まり、
中から元気なかわゆいギャルが。
「最終ランナーとなられましたので、一緒に走ります!」
なんと、私の後ろにいたランナーすべてリタイアしたようだ。
今回は選手参加人数も50人以上に達し、去年と比べスタッフの人数も増え、コース目印も増えていた。(なのにコースアウトするオバカな私)。
サポートランナーも今年初めての試みらしい。
でも、このサービス、考えようによっては親切でもあり、正直、屈辱でもある。
「いいよ、暑いし、車の中に乗ってて。自分なりに走るから。」
見た目キュートな彼女。あと42km以上もこんなかわいい娘を一緒に走らせる?
(ところが彼女、見かけによらず桁違いのタフガールであることが後で分かる。)
「いえ、一緒に走らせてください。そうすることで、私も元気をいただけるんです。」
彼女の天真爛漫な笑顔が、私の心をほぐした。
「どうぞご自分のペースで走ってくださいね。」
私の後ろにぴったりついて、走りを合わせてくれる彼女は、27歳のトレイルランナーだ。
トレイルのトレーニングの合間に、最近サポートランナーを始めたらしい。
職業はPSW(精神保健福祉士)。
普段は障がい児のラン指導のボランティアをしているそう。
これがさっちゃんとの出逢いだ。


ここで話はそれるが・・。
誤解あってはならぬが、スポーツを本格的にしている人というのは、ややそれを鼻にかけたところがある。
自分はこれだけ苦しいことを自分に課して、やり遂げられる強靭な精神の持ち主だと。
だが実際には、闘争心が強く、自己中心的な傾向になりがちだ。
人間というものは、生きていく中、欲と自己満足を満たす繰り返しだ。
スポーツ界においては、ドーピング問題、あれは欲の極致だ。
勝つためならなんでもする。勝つための脅迫観念が己を支配する。
魂を売り、最終的に自らを滅ぼすこととなるのに。
はっきり言って、それがまかり通った競技なんかみたくもないし、スポーツってなんなんだと言いたくなる。
いや本当に話がそれてしまった。
言いたいことは、趣味に凝る人間というのは周囲に苦労をかける存在であるということだ。
時間と、お金、労力を、自分のためだけに、注ぐ。
だだの自己満足のために。
私も家族に何度も土下座したもんだ(笑)。
そうして今、この大会に出場出来ている。
そこのところを自覚するべきだ。


さっちゃんは、若いが本当にホスピタリティー溢れる性格で、道中常に私の補給について心配してくれたり、後から来た車から守ってくれたり、すばらしい人だ。
こんな炎天下を一緒に走らせるのが忍びない。汗を浮かべ、顔も赤みを帯びている。
嫁入り前の娘に私の日焼け止めを塗るよう勧めた。
「いいんです、大丈夫です。」というが、
付き合わせる私としては責任がある。
「あとでシミになってはいけないから。」
さっちゃんは同じ医療関係なので、仕事の話で通じ合うところがあった。
「人の役に立つ、人から必要とされる自分であること。」
生きていく中で一番尊いことであることを話し合った。
自己チューの私が言うのもなんなんですが(笑)。


次のエイドで、救急車が停車している。一人の男性が熱中症で倒れたのだ。
痙攣を起こしたらしい。
「ハニーさんはこの後も頑張ってくださいね。」
「もちろん、頑張りますよ、あなたの分まで。お大事に。しっかり治療してもらって。」
意識がある分、大丈夫だろう。


やや日が弱まり始めた頃、80kmの関門まで急がなくてはならないことを自覚していた。
ペースを上げる。
さっちゃんと海沿いを軽快に走る。
70kmエイド、スタッフもペースが上がっていることに驚く。
「前にもうすぐ追いつきそうだよ。」
ところが・・・。
また急にもよおしてきた。
周囲にトイレポイントなし。
田井親水公園までもちそうにない・・。
「あの工事現場の簡易トイレ貸してもらえないだろうか。」
スタッフが直談判してくれる。
「使用させてくれるって。」
まったく、生理中はお腹がゆるくて困るのよね。
かといって、大会のためにクスリで周期をずらそうと思わない。
あくまで自然に臨みたい。
ってか、もう何年かしたら閉経するだろ。
ところで実はなんと、なんじゃ?これは大蛇かっ!というくらい出た。
下痢とはいかないが、十分消化しないまま出てる感じ。
簡易トイレで流すのが困難。さらに掃除して・・。
いつまでもトイレから出てこない私をスタッフは心配してくれたと思いますが、実はそうゆう訳でした(笑)。


この出来事で時間を非常にロスしました。
再び走り出すが、右足小指の水泡が出来てるであろうことはずっと自覚していたが、痛みがピークに。
ランしたらいつもこの場所に出来るのよね。
外側加重(特に右)が原因なんだけど、クセって治すの難しいですよね。性格と一緒で。
これは潰したほうがいいと判断。
地べたに座って、靴下を脱ぐ。
「めっちゃ痛そうです〜。」とさっちゃん。
ゼッケンを止めている安全ピンの先で水泡部を刺す。
噴水のように浸出液が噴出する。
絆創膏で止めて出発。
逆にジンジンして痛いが、走っていればそのうち慣れるはず。


80kmの関門まで、ますます厳しくなった。
痛くてもペースを上げなければならない。
最低キロ7分だ。
エイドは最低限に。
おにぎりを手に持ってかぶりつきながら走る。
すでに欲しくはないけど。
ウルトラマラソンでは1時間に500kcalを摂取するのが理想らしい。
だが、内臓までダメージがくるこのウルトラマラソンではそこが難しいところだ。
ウルトラらしからぬガチランだが、絶対に関門はパスしてみせる!
「すごい!ナイスランです、ハニーさん!」
さっちゃんが言ってくれる。
これ以上ないぐらいに息は上がり、脇腹が攣った。
必ず、たどり着いてやる!
関門手前までスタッフが走り寄って来て励ましてくれる。
残念ながら、ダッシュに関わらず、制限時間より1分オーバーしてしまった。
でも見逃してくれるってさ。
卑怯者?
とんでもない。
世の中、綺麗ごとだけで渡っていけるかよ!
進めって言ってくれてんだから、私は進む。
その代わり、この先どんなことがあろうとも、必ずゴールしてみせるから。だから遠慮なんかしない。
ここには、最終ランナーの私のためにスタッフが集結。
「まるで芸能人じゃな。24時間テレビか(笑)。」
ありがとう!


しかしナイスランのダメージで、足の痛みは極限に。
さっちゃんがロキソニンを勧めてくれる。
靴下を脱ぐと水泡が悪化し、爪もグラグラしている。
練習で鎮痛剤は使用したことはないが、この際甘えよう。
1錠内服する。
さっちゃんがむれた靴下を脱がせてくれ、絆創膏を固定し直して、靴下を履かせてくれる。
いつも看護する側だが、今は看護されている。ありがたいことだ。


「さっちゃん、仮に会場が引き上げても、私は一人、ゴールを目指すよ。」
「私も朝まで付き合います、ハニーさん。」
「はは・・そこまでは付き合わせないよ。」


街灯一つない王子ヶ岳に入っていく2人の、ボディーガード役を買って出てくれたスタッフライダー。
エンストしかねない徐行運転で、後からライトアップしてくれる。
「ガス欠になりませんか?バイク痛みません?」
「大丈夫、大丈夫。もう痛んどるバイクだから。」
後続する車も数台。
どうでしょう?このVIPぶりはっ!


王子ヶ岳の登りは歩きでも痛いが、早足で進む。
肉体は耐えるのだ、精神が負けるから、結果負けるのだと信じて。
山頂にたどり着いた。
去年リタイアした場所だ。
過去の自分を超える。
もちろんそれは、完走という形で。


下りは無理をすると膝に来ることは分かりきっている。
慎重に、かつ、早足で下る。
腕振りで集中力を持続させる。


児島の市街地に向かう。
ここから再びガチランの準備だ。
「さっちゃん、もう1錠ロキソニンもらえる?」


ハンパな自分で終わる訳にはいかない。
完走という形でそれを示す。
自分のレベル以上のことをして、初めて本当の達成感を味わえる。
物事に味気なさを感じるのなら、それは自分を出し切っていない証拠だ。


何もかもが、麻痺してきた。
足の痛みも。思考も。
ただ考えるのは、ゴールにたどり着くことのみ。


至るところに、ゴール地点から駆けつけた、スタッフの応援。
「さすが、やっぱやりましたねハニーさん。」
ショーボー隊員Mr.T。
「アンタ、ぬけがけして先に行ったなぁ〜(プンプン)。」


あと3km。キロ7分半で行かなければ間に合わない。
油断できない。なにしろ鷲羽山の登りがある。


頼む、間に合って。ただひたすら願って鷲羽山を登る。
ゴールまでどんだけ?次のカーブ曲がったとこだっけ?いやまだまだ。
カウントダウン。
ギリギリまで自分を信じたい。
私には出来る。
やっとこさのゴール、しかし制限時間の23時を3分超えていた。
だめだった・・・。
いや実のところ、5分遅れのスタートだったので、制限時間内ゴールと認定。
ああ、首がつながりましたぁ〜。


カチョーは、制限時間1時間前にゴール。お見事。萩往還140kmへの布石となりましたね。
でも、主催者のFさんに、
「今年完走出来て、もう選手はこりごりなんで、来年からはボランティアとしてお役に立たせてください。」と言っている。するとFさんから
「いや、完走を何回か重ねたのちでいいです。」と言われているカチョー(笑)。



下津井名物たこめし。
これ去年食べられなかったから、食べたかったのよね〜。
でも実際には1口しか食べられず。
さっちゃんに食べてもらいました。


さっちゃんは、私以前の最終ランナーのサポート分を足して、85kmは走っているはず。
地べたに座って立ち上がれない私に比べて、会場の片付けを手伝い、常に気配りを忘れない姿。
翌日も仕事だというのに。
タフガール、体も精神も。
若い彼女から学びました。
元気をもらったのは、私のほうです。
ほんとうにありがとう。


今回もいろいろな方々のサポートを受けて、完走することが出来ました。
パフォーマンスレベルが低いくせに、難しい大会の完走を目指すことは、
「バカ」にしか見えないと思います。
けどこうして、自分のぶざまな姿を徹底的にさらけ出し、
自分がいかにちっぽけな人間かを思い知る機会を持つことに、
意義を感じます。
そしてそれに劣等感や敗北感を感じるのではなく、
だからこそ、努力して成長してやる!と思いたいのです。
この経験を、明日の自分の原動力として、つなげたいのです。


ところで、翌日の今日の私を見て娘が、
「ママ、なに?その歩き方!」
どうせロボットとか言うんでしょ。
「・・・ゾンビみたい。」
ゾ、ゾンビ?
そうきたか〜。
上手いこと言うね〜。
思わず「スリラー」のダンスをするハニーであった。