三浦展の造語。地方社会において固有の地域性が消滅し、大型ショッピングセンター、コンビニ、ファミレス、ファストフード店、レンタルビデオ店、カラオケボックス、パチンコ店などが建ち並ぶ風景が全国一律となったことをさす。 参考文献
ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)
バカをあやつれ!
検証・地方がヘンだ!―地方がファスト風土化し、液状化している! (洋泉社MOOK―シリーズStartLine)
時間の中での出来事というと、ひとつに因果関係がある。しかし私は因果関係というのがどうも胡散臭くて仕方ない。ニーチェもどこかで「なぜ、原因と結果に分けて考えたがるのか。原因-結果はひとまとまりの出来事である」という意味のことを書いていた。 人間は大きな連鎖の中から、自分の理屈で把握できるものを都合よく抜き出して、因果関係という方便を作っているだけなのではないか。 小説のストーリーは因果関係によって作られる。ある犯罪や事故が起きたときも、因果関係が問題にされる。しかし、同じ境遇に育った人間の中で、実際にその犯罪を起こすのはその人ひとりだけだ。現実の行動とそれ以前の過去や状況との間にはその人だけが飛…
本稿は,外山恒一氏主催・第34回「教養強化合宿」(通称・外山合宿)に参加しての感想・知見を明文化することを目的としている(第1章・第2章).また,これに合わせて,筆者自身が今後の発展学習の参考とするために,講義中に紹介された文献の一部を掲げる(第3章).さらに,「ギャラリー」と題した章に合宿中の写真を時系列でいくつか掲げる(第4章). なお,念のため筆者の立場を表明すると以下の通りになる. ノンポリ・ノンセクト.強いていうなら社会民主主義・ローザ主義. 新左翼運動は歴史学の対象として見ている.学生運動やセクトには一切関わっておらず,今後関わるつもりもない. 参加時点での所属は早稲田大学教育学部…
去年読んでめちゃくちゃ良かった『スモールワールド』の著者による6編の短編集。ツミデミック作者:一穂 ミチ光文社Amazon帯に「犯罪小説集(「犯罪」に傍点)」とあるように、いわゆる犯罪小説ではないけどタイトル通り「罪」にまつわる作品が集められています。 そしてもう一つ、全作品が何かしらタイトル通りコロナウイルスのパンデミックに関連していて、各話は完全に独立しているもののコンセプチュアルな作品集となっています。こういう、連作ではないコンセプト短編集好きなんですよね。 収録順にも分かりやすく意図があり、そのおかげで1冊通して読んだ時の満足感があり、最終話の余韻がこれまでの全話にもかかってくるような…
こちら、1月の末に発売された(id:p_shirokuma)先生の新刊『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』読ませて頂きました。これはその本を読んで自分の感じたことを書いたエントリになります。なので、本の内容からは一部(かなり)離れた内容になっていると思います。「推し」で心はみたされる?~21世紀の心理的充足のトレンド作者:熊代亨大和書房Amazonこちらの本を読む前に、自分の中の推しの概念について整理した記事がこちらにあります。推し、オタ、萌え、にたいしての自分なりの捉え方や概念の境界について、こちらの本を読んで影響される前に出力しておきたかったので、このような記事を…
こんにちは。このブログでは、私が読んだ本の感想やおすすめを紹介しています。今回は、社会デザイン研究者の三浦展さんの著書『再考 ファスト風土化する日本~変貌する地方と郊外の未来』について書きたいと思います。この本は、2004年に出版された『ファスト風土化する日本 郊外化とその病理』の続編として、19年後の現在の日本の地方と郊外の姿を分析し、脱・ファスト風土化の可能性や方策を提案しています。ファスト風土とは、三浦さんが造語した言葉で、日本各地のロードサイドに大型商業施設が建設され、その土地固有の歴史・自然・風土が顧みられなくなる現象を指します。まるでファストフードのように、生活や文化が均質化されて…
こんにちは、このブログでは、私が読んだ本の感想やおすすめを紹介しています。今回は、消費社会研究家の三浦展さんの『ファスト風土化する日本―郊外化とその病理』という本について書きたいと思います。この本は、日本の地方が急速に都市化・郊外化・消費社会化していく過程で、どのような問題が起きているのか、そしてその影響が人々の生活や心に及ぼすものは何なのかを分析した一冊です。 ファスト風土とは何か 著者は、現代日本の病理を「ファスト風土」という概念で説明しています。ファスト風土とは、ロードサイドに立ち並ぶファストフード店やショッピングセンターなど、全国一律で均質化された風景や生活空間のことです。本書では、地…
正月ということもあって街に人手はあったが、歩道を歩く人より車のほうが多いのは相変わらずだ。なにしろ道を歩いているだけで、知らずに目立っている。信号を渡るときは車に乗る人が、高みの見物よろしく通行人を眺めている視線を感じた。 (山内マリコ『あのこは貴族』) (…)のおむつはうまく機能したらしかった。朝起きたらおむつのなかにしっかりうんこがおさまっていたと母がいった。父が職場から持ち帰ってきた天むすなどを食す。母は13時に予約を入れていた美容院にむかった。 『一心同体だった』(山内マリコ)を最後まで読み進めた。ファスト風土からはじまった作家のテーマがシスターフッドやフェミニズムにいたるその流れの説…
社会学部にてメディアやポピュラーカルチャー研究などの専攻を考えている学生へのお薦め新書。 稲増一憲『マスメディアとは何か:「影響力」の正体』中公新書、2022年 稲田豊史『映画を早送りで観る人たち:ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』光文社新書、2022年 瀬地山角『炎上CMでよみとくジェンダー論』光文社新書、2020年 金成玟『K-POP:新感覚のメディア』岩波新書、2018年 高野光平『発掘!歴史に埋もれたテレビCM:見たことのない昭和30年代』光文社新書、2019年 貞包英之『消費社会を問いなおす』ちくま新書、2023年 天野彬『SNS変遷史:「いいね!」でつながる社会のゆ…
「上の世代のオタク差別意識が異常に感じる」という匿名記事が以前、話題になった。 上の世代と言っても私も今年30歳になったばかりなんだけど、はてなとかツイッター見てると40~60代と思しき人のオタク差別意識見るとビックリする。 オタクを人間扱いしてなかったり、どういう罵倒をしてもいいと思ってたり、最近はオタクが統一協会と関わりがあると言い出したり・・・・・正気になって、オタクってただの趣味だよ?世の中のオタクはただ同じ趣味なだけの他人だよ? https://anond.hatelabo.jp/20211003125552 ぼくは「差別される側」であるわけだが、この気持ちはよくわかる。 かつて、「…
blog.tinect.jp 黄金頭さんがbooks&appsで図書館利用について文章を書いてらっしゃった。エッセイと呼んで似合いの文章だと思う。はてなブログのエッセイストとして、はじめのほうに名前の挙がるブロガーではないだろうか。 図書館の利用については私にも来歴があり、思い入れがある。 触発されてそれを書いてみたくなった。書いてしまえ、と思う。 図書館で本を借りることを忘れていた 私は小さい頃から図書館に連れていってもらっていたので図書館で本を借りることには抵抗がない。当時の実家には蔵書と呼べるものはなく、狭い廊下の本棚には父の職業上の専門書と『史記』が、それと母が親族からもらい受けた、古…
「週刊SPA!」黄金伝説 1988~1995 おたくの時代を作った男作者:ツルシ カズヒコ朝日新聞出版Amazonこんな本を読みました。この本は、『週刊SPA!』の創刊時からの編集者であり、三代目編集長となったツルシカズヒコ氏の、1988年~1995年のSPA編集部の様子を描いた回顧録です。そして、その内容は大きく分けて 『月刊OUT』の編集者からSPAの編集者となり、「おたく」と「ニューアカデミズム」の二枚看板で雑誌のカラーを決めていった88~92年 3代目編集長となり、部数が増えていく中で起こるトラブル(主に広告と小林よしのり絡み)への対応に忙殺され、やがて編集長を解任される93年~95年…
親ガチャという言葉がある。親ガチャに外れたなどと表現されるように、親の居住地域や所得階層で子供の学力や将来の選択肢、あるいは人生そのものが決まってしまっているという感覚に裏打ちされた概念である。この概念は肌感覚ではとてもよくわかる。地方に旅行に行くと、車窓からはドライブスルーのファーストフードと中古自動車販売店、GEOしか見えてこない。かつて三浦展がファスト風土と形容したそれは、いまでも地方都市ー郊外のリアルを如実に反映しているといってよい。「旅行で」と記したように、僕は首都圏近郊に住んでいる。東京駅まで電車で1時間半程度だろうか。高校の頃はとても遠いと感じていたが、年齢を重ねた今では大した距…
今日も10時半に自然と目が覚めた。ひとつ訂正しておかなければならない、きのうづけの記事にパソコン用の冷却器が届いたと書き記してしまったが、あれは間違いだ、届いたのは今朝の話だ。起床後、階下に移動してほどなく届いたのだった。 新四年生の(…)くんから微信。高校時代の友人らと一年はやい卒業旅行として昨日東京に到着した彼であるが、ごみの分別のルールがわからないという。地区によって微妙にルールは異なるよと受けたのち、ホテルに滞在しているのだったらとりあえずペットボトルと瓶と缶だけ別にわけておけばだいじょうぶ、あとは清掃スタッフがやってくれるよと続けると、民宿に泊まっているとの返事。だったらどういう契約…
「ファスト風土」という言葉が世間を賑わせてから約10年。 10年の間にファスト風土に対する意見や批判、また時代の変化もあり、「再考 ファスト風土化する日本」という本が出版された。 個人的には、ファスト風土は見えない貧困の象徴だと考えている。大手チェーンは安くて高品質なサービスを提供してくれるが、もはや多くの日本人は大手チェーンの安いサービスなしで生きれないほど貧しくなっている。だが表面上は高品質なサービスを享受しているから、貧困には見えないのだ。 (付け加えると、安くて質のいいサービスはサービス残業含む長時間勤務で成り立ってきた。働き方改革でそれらが規制された結果、日本企業のレベルは著しく低下…
もうすぐ葬式のある坪内祐三さんもそうだし、生悦住さんを含め、昔のよくわからない人たちのよくわからない趣味嗜好が忘れられつつあるように、最近特に思う。わかりやすい趣味の人ばかりで、そういう人の意見がありがたがられる。あんまり好ましい風潮ではないが、仕方ない。本当に寂しいけれど。 (中原昌也『二〇二〇年フェイスブック生存記録』) こんな夢を見た。若い男女カップルとそのツレらしいちょっとヤンキーっぽい男と石畳の道ですれちがう。夜である。ヤンキーがすれちがいざまにこちらの肩を指先でつねっていく。痛みよりも驚きから足をとめてふりかえると、ヤンキーはにやにやした笑みを浮かべながら、カップルとともに向こうへ…