<デュラス『愛人』> よく知られているように、マルグリット・デュラス『愛人』(『ラマン』)は次の文章から始まる。 《ある日、もう若くはないわたしなのに、とあるコンコースで、ひとりの男が寄ってきた。自己紹介をしてから、男はこう言った。「以前から存じあげてます。若いころはおきれいだったと、みなさん言いますが、お若かったときよりいまのほうが、ずっとお美しいと思ってます、それを申しあげたかったのでした、若いころのお顔よりいまの顔の方がほうが私は好きです、嵐のとおりすぎたそのお顔のほうが」》 一行空いて、「映像(イマージュ)」の話になる。 《わたしはよくあの映像(イマージュ)のことを考える、いまでもわた…