編集者、翻訳家、評論家。1951年福岡県北九州市生まれ。慶應義塾大学独文科中退。 「季刊NW-SF」の編集長としてJ・G・バラード等の紹介に努める。また、SF翻訳者、SFにおけるフェミニズムの論客としても活躍。 「NW-SF」時代に、創刊者の山野浩一から将棋を教わったところ、たちどころに上達。74年にはアマチュア女流名人戦に優勝。70年代は、女流アマ強豪としても有名であった。
収録作の大部分が既読。主に中期の作品を収録しているらしい。タイトルの通り「つくりもの」を題材にした作品が多い……わけでもなさそう。どちらかというと「追憶売ります」の存在感からタイトルがつけられたんじゃないかな。大森望編『ディック短編傑作選』シリーズで書いた作品の感想は省略して初読の作品のみ記述。 「想起装置」(Recall Mechanism)翻訳:友枝康子 いい意味でも悪い意味でもディックらしくない作品。設定の整合性がとれていて意味のあるオチもついているけど、その反面ディックの持ち味はそれほど感じられない。別のペンネームで書かれていたらディックと気づかないんじゃないかな。予知夢と精神分析医を…
『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』This Is How You Lose the Time War(山田 和子訳/早川書房)で主人公たちが話題にする本『トラベル・ライト』、読みたいと思っても日本語訳が出ていない。ものすごい名作でものすごく有名みたいなのに。 やむなく英語版を読みました。作者のネオミ・ミッチソンはスコットランドの作家で、日本ではトールキンの文通仲間として知られているようです。 Travel Lightはどこか北欧(?)の国の王様の娘が継母に疎まれて殺されそうになるところから始まります。お姫様を哀れに思った召使がお城から連れ出して育ててくれる。召使は実は熊女で、主人公のハラ…
https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2496339.html 県立第二高等女学校で学んだ山田和子さん(95)を訪ねた。見せてくれたのは1948年の写真。沖縄戦から間もない時期の同期会で、戦場に動員された白梅学徒隊の亡き学友を悼んだ ▼忘れられない人がいるという。塩浜道子さん。山田さんが家族と北部に疎開する前に爪と髪を縫い付けた形見の品をもらったのが最後になった。学友や遺族の悲しみは癒えない▼亡き学友のことを語り継ぐことが生かされた者の務めだと誓い、活動を続けてきた白梅同窓会は高齢化を理由に活動を終える。体験継承に尽くした前同窓会長の故中山きくさんは1…
ニュルンベルク裁判1945-46(上) ジョウ・J・ハイデッカー、ヨハネス・レープ 著/芝健介 監修/森篤史 訳 本書は、1958年にドイツで初版が刊行されて以来、多くの版を重ね、「裁判開廷70周年」に合わせて2015年に新版が刊行された、定番の書だ。著者のハイデッカーは実際に裁判を傍聴し、報道に従事したジャーナリストで、裁判資料・関連文献の研究、関係者への取材を積み重ね、臨場感あふれる筆致で本書を執筆した。本書の特徴は、裁判で明らかになったナチ犯罪の事実を示し、その犯罪が時系列で概説され、犯罪と裁判の双方の全体像を把握することで、裁判自体の意義が理解できること、と言えるだろう。法廷の質疑応答…
金曜日。山の日。私は海派。雨の予報だったが晴れ。とりあえず洗濯物を干し、筋トレ。あっという間に乾いているのを取り込んでから外出。朝。フランスパンにハムとチーズ。バナナ。ヨーグルト。コーヒー。昼。稲荷寿司。枝豆。胡瓜とわかめとカニカマの酢の物。焼き鳥。ビール。夜。素麺。茄子、ピーマン、厚揚げの含め煮。豚肉と山芋炒め。冷やしトマト。焼酎。食後に水まんじゅう。初回放送を撮り逃した「帰ってくれタローマン」を無事録画。「タローマンなんだこれは入門」も発売されたし、いよいよブームに終わらない大復活なんですね!つぎはシン・タローマンか。* 旱魃世界 (創元SF文庫) 作者:J・G・バラード 東京創元社 Am…
未読PKDがまだ家にあった!ことに気付いて読みはじめ、2023/6/12-25 おもに広電で読了。 時は乱れて作者:フィリップ K ディック早川書房Amazon まず「読みやすさ」に驚いた。おそらく初めて読む山田和子さんの訳のおかげなのか? そして「一見平穏な日常にしみ出すかすかな違和感」みたいな導入の描写が鮮やかで、純粋に小説として面白い!と感動した(経典として我慢して読むというのではなく)。 この「周りの世界は実は全部作り物で、みんなが俺を騙してるのではないか?」ていうのはわりと思春期に普遍的な妄想でもあり、有名どころでは伊集院光さんなんかも言ってたと思うが、それがどうも妄想でなく実際おか…
// 徹頭徹尾、作中の「私」にとって大切な何かが切実さを滲ませる筆致で綴られており、読者の私は主人公とそれを共有できないので、目まぐるしく移り変わる情景に置き去りにされたままページをめくる。 そう、ずっと置き去り。 何かがその人物にとって大切なことだけは伝わるが、どんな風に大切で、また、いかにしてそうなったのかは語られず、示唆もされない。 アンナ・カヴァンの《氷》(山田和子訳)を読んでいた。 白い魔にほぼ閉ざされた世界の物語といえば、カヴァンと同じ英国出身の作家・セローの「極北」が私には身近だけれど、趣は全然違う。 いや、そもそも……と《氷》の内容を回想した。 原題も"Ice"なので言葉から受…
サイト「翻訳作品集成」のウィルヘルムの項には一言、「『杜松の時』の衝撃感は忘れられない」。筆者にとっても、これからの人生で幾度となく反芻してゆくだろう唯一無二の作品だった。その文明批評眼のありようにおいて、絶頂期のバラードや伊藤計劃『ハーモニー』を読んだ時と等しいショックを受けたといっても言い過ぎではない。小説の舞台は、本作執筆当時(1979)から数十年後とおぼしき程度の近未来。地球のごく局所的な地域でのみ始まった旱魃は、少しずつこの青い星全体に拡がろうとしている。それに呼応してアメリカでは慢性的な不景気と食糧制限、人口過密と難民問題が進行していくが、無気力と諦念が人々を支配し、反政府のデモに…