面白かった。以前の本欄で、他人のフンドシで飯を食う評論家は嫌いだ、と書いた。それは今でも変わらない。しかし、評論家の存在を全否定しているわけではない。例えば、ある人物や物事に関し、自分の知識が(ほとんど)無かったり、片寄っていたりしたときに、経験豊富な評論家の書いた書物が、知識の補強や見方の修正に役に立つこともある。僕にとって本書はそんな意味を持っていた。 もちろん、田中については通り一遍の知識は持ってはいるつもりだった。でもそれは多くの人と同様、ロッキード事件や金脈など不可解なカネにまつわる話が中心だ。しかし本書を読むと、もちろん、退路で躓いたことも書いてはあるのだが、それ以上に、田中の行動…