ドストエフスキーの『未成年』を読み始めた。とてもいい。この小説は昔に上巻の半分くらいまで読んだことがある。訳者米川正夫による解題も、とてもいい。ぼくは米川正夫の文章が好き。とても美しい文章を書く人だと思う。ちょっと紹介する。旧字は勝手に改めた。 こうして、生涯ドストエーフスキイを苦しめ通した「両極端の融和」、神と悪魔の大問題は、未解決のままで残されているが、しかしヴェルシーロフは病気の平癒後、静かな光とつつましい悦びに包まれた、一種の安らかな心境に入った事を作者は語っている。それは彼の身内に蓄積され、内訌していた最後の肉の力が、遂に一団の猛火となって燃え上り、結局、虚無の冷灰に帰して了ったから…