蓮實重彦『ゴダール革命』(ちくま学芸文庫)を読む。蓮實がゴダールについて書いた論文を集めている。『勝手にしやがれ』から遺作『イメージの本』まで、ゴダールの作品を網羅した評論集だ。 蓮實重彦の批評は表層批評というらしい。作品の内容にはほとんど触れることなく、『気違いピエロ』の「フェルディナンが無意識に希求する海は南になければならず、海辺の光景は空と水の青さを裸の色彩そのものに還元しうるものでなければならず、またその水が、彼の存在を最終的には拒絶するものでもなければならない。そうした意味からすると、トリュフォーが提供したシナリオの段階では北の海に面した霧と曇天の港ル・アーブルに起点を持つはずになっ…