行きたい階数のボタンを押す。扉が閉まってほんの少しだけ重力が強くなる。10秒ぐらい経つと扉が開いて、扉が閉まる前の景色とは違う景色が目の前にあらわれる。 幼いころのぼくは、それをまるでそれを幼稚園で詠み聞かせられた絵本や紙芝居のように不思議な出来事だとおもっていた。その不思議さは、少しだけ緩慢な扉の開閉動作だったり、押すと階数が光るボタンだったり、知らないひとが一緒に乗っている空間だったり、背面部に取り付けられている威圧感のある大きい鏡だったり、ほかの空間とは異なるいろんな要素によっていっそう強く印象付けられていた。 よく母方の祖母に連れられて行った大型ショッピングセンターの婦人服のコーナーは…