文部大臣多しといえど、学校視察に向かう都度、便所の隅まで目を光らせて敢えて憚らなんだのは、およそ中橋徳五郎ぐらいのものであったろう。 話は尾籠に属するようで若干引け目を感じるが、これは至って真面目なことだ。 少なくとも中橋大臣本人は、猟奇趣味にも変態性欲を満たす為にもあらずして、己が職務を全うするのに不可欠なりと判断し、この上なく真剣に、信念を持ってやっていた。 (フリーゲーム『操』より) なんでも彼に言わせれば、便所の壁こそ学生が、もっとも赤裸に、明け透けに、言論戦を展開できる場所なのだとか。なるほど確かにSNSも、電子掲示板すらも未発生な彼の時代。心の澱を吐き出す場所は現代よりもずっと限定…