怠惰な日々

 *blogではありません。日記です。

NO-MAと小山登美夫ギャラリーと

朝から近江八幡へ。いつも通り、駅から歩いてNO-MAへ向かう。面白そうな道を適当に歩くので、覚えのある風景も初めての風景もある。どの風景も楽しい。水道メーターがいくつも並んだ建物、トタンで補修した古い家、政治を監視しているというバラック、立ち枯れたように生きている木。珍しく方向感覚をなくして迷ったが、楽しいからそれでいい。
NO-MAは今日から「Art Brut in Japan and Korea 日/韓 行き交うところ」展。韓国のアール・ブリュットはどういうものなのか、事前に見た作品画像ではさほど期待していないながらも、行ってみると想像以上に良いのがこの種の展覧会。
全くその通り。
1階の展示ではまず中島涼介の作品が目を惹く。漢字を偏と旁から成るキャラクターとして延々と書き続ける作品で、これ言ってみれば「ぼくのかんがえたかいじゅう」です。日韓展でこれというのが面白い。「ビル」という建物を抽象的に敷き詰めたような作品もあって、そちらも良かった。木村茜の作品は「お線香花火」だがそれほど線香花火らしくはないが、先っぽのじいじい鳴る玉の中にある火をイメージしているのだろうか。韓国勢の作品は総じてカラフル。日本が白黒・陰影という印象なのとは大きく違う。色合いもチマチョゴリ風というのか、とりあわせが独特だ。クァク・ソンミンの水彩作品はアール・ブリュットの文脈からは少し外れるかもしれないが、人物のデフォルメや色合い、構図の面白さが素晴らしかった。
2階は立体ものが多く、西本政敏のフィギュアが実になんというか。名前がついているので実在の人物を元にしているのかと思うが、木製のデッサン人形に目や髪などをつけただけなのでおそらく似てはいないのだろう。ただ、そこに込められた精神が名前につながっているのだろうと思う。
蔵には戸次公明の作品。
初日だからか、新聞社の取材が2件あって応対していた学芸員さんの話を横で少し聞くことができた。最初は地方紙のようだったが、「障害のある人」という枠をもってインタビューしているのが明白で、作品の美しさには無頓着なようなのが残念だった。ミクストメディアという言葉すら知らないんだもんなあ。福祉や地域社会といった分野の記者を長年やってきたのかもしれないが、そういう人が記事を書くとそういうものにしかならない。どんな記事になったのかは知らないが、NO-MAにとってありがたい記事ではないのではないだろうか。
もう1件は読売。こちらは若いせいもあるが颯爽としている。聞く内容も「どんな紙を使っているか」「日韓の違いは」などポイントを押さえている。横で聞いても「橋脇健一はそろばん教室だった自宅の決まった場所で描いている。対象は窓枠、時計」とか有益な情報を得られるのは、質問が良いから答える側もすらすらと出てくるのだろう。木村茜に関しては、学芸員さんが「マジックを大きく動かすその動きを楽しんでいる」「マジックが紙からはみ出す音も楽しんでいる」と話していて、そうした制作態度も含めて作品だなと思った。アクション・ペインティングはでき上がった作品だけでなく、全身を使って描くそのフィジカルな感覚も含めてのものだという考え方に通じるものがあるのではないだろうか。少し残念に思ったのは、学芸員さんは日韓で違うのは風景くらいという認識のようで、そうかなあ、と。僕は違うと思ったし、せっかく日韓でやるならその違いを意識した展覧会を望みたい。日本の作家を韓国がセレクトするとどうなるか、とか、そういう切り口も面白いと思うんだが。
図録は2階に韓国で行われた展覧会のものがあったので期待していたのだがNO-MAでは販売はないらしい。残念。今回の図録もぜひ欲しかったのだがこれから制作だそう。今回招待券で入ったので、入場料分ということでポストカードを2枚買った。あと、アール・ブリュット・ジャポネの本もあって、フランスで買ったのはフランス語版だからテキスト部分に興味はあるものの、作品が重複してしまうのでどうかなあと思って保留。満足な展覧会だった。
いつも通り、NO-MAの北東にある公園へ。うまく説明できないのだが、妙な雰囲気があって好きです。何の変哲もない、むしろ殺風景なところなんだけど、あの動物たちの配置がいいのかなあ。
歩いて駅へ。帰りは目標がはっきりしすぎていつも似たような道を通ってる気がする。
駅南のSCにあるカプリチョーザで魚介のペスカトーレ。970円は高いなと思ったが、量が多いのと味が悪くないのと、食後にエスプレッソが付いたので納得。高いけど。
近江八幡の駅でスーツケースを持った女の人がいるなあ、と思ったら夕方野間邸で講演するリ・ジュウンさんだったようで、学芸員さんらが迎えに来ていた。面白そうなんだけどね。野間邸も立派で、一度入ってみたいし。学芸員さんの話が興味深かったので、今日のスケジュールはちょっと残念だったかも。
新快速で京都へ。朝から傘のいらない程度の小雨だったのが本格的に降りだし、歩くのを楽しめる環境ではなくなったのが残念。
小山登美夫ギャラリーで王雅慧展。木の葉の一部を切り取り再開発ビル群を透かしてみる写真が新鮮で、静かなメッセージ性と美しさが印象的。切り取った木の葉を並べた作品も含めて良かった。いいなあ、と思ったら全部売れてました。個展2日目なのに。ゴミなどを使ったほうの作品は手つかずでこっちは完売って、やはり誰しも思うことは同じということだろう。今後評価は高まると思う。タカ・イシイギャラリーでは法貴信也展で、二本画のほかドット画など。雨の中を歩いてきた気分の問題かもしれないが、本展では軽やかさがやや欠けていて重さがあったように思う。1Fのセラミックではイケヤン2011展。
歩いて河原町へ。懸案の三条ブックオフだが、幸い澁澤龍彦初期小説集を450円でゲット。割引券を使えてよかった。さらにCDではfennesz「Live at the Revolver Club」Loren Connors & David Grubbs「Arborvitae」Kim Hiorthoy「Melke」Merzbow「Amlux」各500円。まあ大漁でした。おかげで疲れも出たので、予定していたArtRockはパスすることに。次行きます。JETSETでこれまた懸案のSuperfriends「3」1000円。1500円買ったらカレンダーがもらえるらしかったので、もう少しじっくり見ておけばよかった。
Take-Jでキャプテン・ソウルのセカンド480円。アレはもう無くなってました。当然ですね。残念。
阪急で帰宅。充実した一日だった。