侵食, 侵蝕、浸食、浸蝕???

いま内輪で議論中。erosionに対する漢字訳は、侵食, 侵蝕、浸食、浸蝕???
人によって違う。意見が分かれる。
私も以前は気にせず、ワープロでの変換で最初に出て来る、侵食を無意識に使っていた。
しかし、いつだったかあるとき、浸食を使った。サンズイかニンベンか?

Yahooの辞典(大辞泉)では、

しん‐しょく【侵食/侵蝕】
[名](スル)他の領域をしだいにおかし、損なうこと。「他国の市場を―する」
しん‐しょく【浸食/浸蝕】
[名](スル)流水・雨水・海水・風・氷河などが地表の岩石や土壌を削り取ること。また、その作用。「波が岩を―する」◆ 「侵食」とも書く。
とある。

山口飛鳥君が調べた。
地形学事典(文部省編纂)では、侵食であり、
地学事典(平凡社篇)では、浸食だという。

前者は地形学、後者は地質学。用語不統一だ。どうりで混乱するはず。

そこで「そもそも論」を。
そこで、そもそも漢字とはなんぞやとの意味を考える。漢字とは、へん、つくり、かんむり、などの部首の集合体であり、そこに物語がある。だから読めずとも意味が伝わる。
ピラミッドの中に描かれている絵文字と同じであり、Macが最初に使い、Windowsがパクったアイコンの2200年も前の元祖なのだ。西洋世界は、アルファベット世界となり、表音文字しかない。しかし、東洋には表意文字としての漢字が生き続けた。たった15年(紀元前221-206年)しか存在しなかった始皇帝の秦、そしてそれを引き継いだ漢帝国の偉大な歴史的功績であることは皆知っている。

しかし、漢字は滅ぶ運命にあるのか、それともコンピュータという偉大な文明の機器を得て、復活の未来があるのか?
アイコンの爆発的普及、若者たちの絵文字メイル、そして100万部を突破した「読めない漢字」(今朝のニュースでやっていた)、公益法人「漢字鑑定協会」のおおもうけ、はその意義が大きく復活していることを示している。情報爆発の中で瞬時にして意味を伝えるからである。圧倒的情報伝達力があるのだ。耳ではなく、目なのである。

だとすると、自然現象の中で進行するerosionに対する訳語としてどれが適切か?おのずと見えて来る。浸食もしくは浸蝕である。人が関与する事柄は人という絵がどこかに張り付く。
まさにinvasionの訳語としての「侵すこと」は侵食(侵略)である、となる。文部省の地形学事典がおかしいのだ。やりすぎなのだ。それが混乱の源だ。

食と蝕。食は食べること。蝕は虫が食べる事?だとすると前者は広義であり、後者は虫が食べるようにゆっくりと食べること?などと物語を想像できる。
日食(日蝕)、月食(月蝕)はまさに月や太陽(日)が食べられてゆくことであり、大昔から一般化されている漢字だ。
自然科学において拡散と移流という移動を表すことばがある。拡散的現象には「蝕」移流的速さには「食」と想像できる。自然科学ではその速さの違いには8ケタ程度もの違いと明確だからだ。
だとすると、日食、月食がより妥当という気がして来る。
漢字世界とは、そこまでの微妙なことまで表現して来たのである。