北山猛邦『少年検閲官』

少年検閲官 (ミステリ・フロンティア)
少年検閲官

大戦争と大洪水の後、世界的な検閲によって書物が失われてしまった世界。特に「ミステリ」は、人知を超えた犯罪の方法が記された危険な書物として真っ先に抹消されてしまった。海軍将校だった父から「ミステリ」の事を聞かされて育った英国人少年クリスは、まだ「ミステリ」が残っているかもしれないという期待を抱いて、単身日本に渡航した。クリスは、深い森に囲まれて孤立した村の中で首を切られた死体が次々に発見されるという事件に遭遇する。その犯人は森に住んでおり、村人からは畏敬をこめられて「探偵」と呼ばれていた。知識のない村人はこれを自然災害と同じように処理していたが、クリスから見れば明らかに「ミステリ」と関連した連続殺人事件に違いなかった。果たして「探偵」とは何者か、その目的は・・・?

これはかなり楽しめました。久々の4つ星オススメ。
異世界ならではのロジックが炸裂する端正な本格ミステリとして評価します。
北山猛邦の現時点での最高傑作でしょう。
ところで「検閲官」といえば山田正紀『ミステリ・オペラ』の黙忌一郎を思い浮かべましたが、ファンタジー要素はこっちのほうが大きいかも。物語における素材の突き詰め方などにおいては、まだまだ山田正紀には及ばない。ただ、独特の北山ワールドがこの作品で出てきているように思われるので、これからさらに注目の作家であることは間違いありません。
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