吹奏楽コンクール福岡支部予選(高校の部)

 第52回福岡吹奏楽コンクール・高校の部2日目を(途中まで)見てきましたよ。城東や精華など全国大会常連校がひしめき合うブロックですから、例年レベルが高いわけですが、今回はいまひとつ低調ですかねえ。以下、ピックアップして感想。
 九州の横綱福岡工業大学附属城東高校ですが、今年から指揮者が変わり、元沼中の武田先生がタクトを取ることに。まだ1年目なので仕方がないのかもしれませんが、まだサウンドがまとまりきらず、武田先生の音楽製作途中、といった印象。この人の場合就任してから全国レベルの演奏ができるまでに3年ほどかかるのが通例ですから、むしろ今後が楽しみといえましょう。特にマーチのリズムが前のめりなのと、自由曲の聴かせどころが曖昧な上にメロディーラインが浮き上がってこず、ともかくアナリーゼ不足が目立ったのが気になりました。それでも個々の奏者の音色は抜群で、この大会では抜きん出た演奏だったと思います。それにしても屋比久先生退任わずか数ヶ月で、完全に屋比久サウンドを壊して跡形もなくなっていたのが印象的でした。
 ここ数年代表争いに絡むほどの勢いを見せているのが武蔵台高校です。ミスが殆ど目立たない誠実な演奏が好感度大ですが、まだサウンド作りが上手くいっていない様子。自由曲などは、ハーモニーを合わせやすい曲だと思うのですが、ここぞというときのサウンドの輝きがない。多彩な場面転換も上手く表現し切れておらず、指揮者も奏者も消化不良、といった感じでした。
 福岡随一の進学校として有名な修猷館高校は、もとからそこそこな演奏をしていたのですが、今年から元城南高校の西嶋先生が指揮を振ることになり、明らかなレベルアップが見られました。マーチは大変思い切りのいい演奏で、推進力のある魅力的な演奏でした。細部を詰めれば化けると思います。自由曲は西嶋先生こだわりの「サロメ」で、比較的Tpが弱く木管のほうが上手なこのバンドとしては適切な選曲だったと思います。流麗な演奏でしたが、サロメの妖艶さを表現するまでには至りませんでした。滑らかで艶やかなサウンドが欲しいところです。
 筑紫中央高校は、高校生らしいさわやかな演奏でした。特に自由曲の「春の猟犬」、もちろん技術的にもサウンド的にもちょっときつい感じがしましたが、先生と生徒との手作り感が伝わってきて、大好きな曲だけにうれしくなりました。同様に先生と生徒の頑張りがとてもよく伝わったのが筑紫女学園高校。課題曲はまとめるのが難しい曲ですが、テンポ感の良いマーチで見事だと思いました。また、自由曲は美しいサウンドが広がり、場面転換も適切で楽しめました。それぞれ金賞まであと一歩の好演だったと思います。
 九州大会常連の大牟田高校は、課題曲はサウンドが抜けきらない印象ですが、流石にそつのない演奏でした。一方自由曲は超難曲で私も大好きな「宇宙の音楽」。高校生には演奏不可能だろうと思っていたのですが、あにはからんや大牟田高校は見事に譜面をさらっていました。それだけでブラボーに値します。冒頭のホルンデュオ、スタンドプレイお見事でした。「孤独な惑星」から、「小惑星群」をすっとばして「ハルモニア」へ。このカットは正解だったと思います。ただこの曲で最大の聴かせどころである「ハルモニア」のテンポが速く、じっくり聴き入る暇もないまま「アンノン」に突入したのは残念。正直言って木管サウンドが今一歩だったので感銘度は薄かったのですが、超絶技巧を終始要求されるトロンボーンを含め、金管の技術とサウンドには目を瞠るものがありました。
 一方、全国常連の精華女子高校は、課題曲が出色の出来でした。冒頭を聴いただけで他団体との格の違いを見せ付けた感じがします。豊富な練習量と的確なアナリーゼ、そして合奏技術の高さによって、マーチの魅力を存分に聴衆に伝えたと思います。そして自由曲は大牟田と同じ「宇宙の音楽」。大変期待して聴いたのですが、これは残念な出来だったといわざるを得ません。特にこの曲の最も重要なパートであるトロンボーンが不安定で、テンポについていけず、アンサンブルはばらばら、高い音が出ない、音を割る、などなどが重なって、他のパート(特に木管)が頑張っているにもかかわらず全体の雰囲気をぶち壊していました。カットも(いつものことながら)強引で、「孤独な惑星」を中心にしているのは大牟田と同じながらも、「小惑星群」も中途半端に入れて(一番盛り上がるところはカット)、「ハルモニア」を信じられないような急ぎ足でこなし、終曲へ。結局何が言いたいのか良く分からない、時間に追われて音楽を楽しむことができない演奏になってしまいました。思い切って「小惑星群」をカットして「ハルモニア」をじっくりと聴かせたほうが、メリハリも付くし、音楽的にも感銘度の高い演奏になると思うのですが。「アンノン」は未整理でラストのトロンボーンも例によってミスしまくりで全く聴こえず(落ちた、と思いました)、無理やり終わらせた感じがあって印象悪いです。「宇宙の音楽」の凄さはこんなものではない。YBSのCDを100回聴きなおして欲しいです。しかし実力のある高校なので、県大会までには仕上げてくるでしょう。
 2日間通したプログラム、結果は以下の通り。

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