塔ノ澤温泉・福住楼

大広間から

箱根の塔ノ澤温泉にある旅館の福住楼で、年に数回開催している、とある研究会に参加してきた。研究会のあるたびに訪れているが、何時来ても心が落ち着いてくる旅館である。
古くは福沢諭吉夏目漱石川端康成里見紝文人墨客が好んで利用した歴史ある名旅館である。
同旅館のホームページにも一部の客室が紹介されているが、どれとして同じ部屋はなく、それぞれが個性を持つ。それぞれの部屋には、この旅館を愛した著名人たちの書や絵画が、さりげなく飾られている。それを観るだけでも価値があるように思える。
これだけの歴史と伝統を持ちながら、敷居の高さを感じさせず親しみがわく旅館であるのは、館主や女将さんたちスタッフの方々のお人柄によるものだ。ここ数年海外からの旅行者も増えつつあるという。
最近では、小田急ロマンスカーのコマーシャルに2度にわたり登場し話題にもなった。このCMは良くできている。とくに2004年夏編のテレビ版は、日本の旅館ではじめて作られたとされている宴会用の舞台がある大広間での撮影で、本当に子供の頃の夏の郷愁をさそう演出とカメラワークである。ポスター用の写真も鑑賞価値がある。
正月は、函嶺洞門(かんれいどうもん)前のこの旅館玄関は箱根駅伝の応援で賑やかになる。
私は、今回は幸田露伴が良く利用した部屋に泊めさせていただいた。窓辺から早川が眺められる。夏の箱根を流れる早川の流れは一服の清涼剤だ。
近づいてきた秋の夜長に幸田露伴の「努力論」でも読みたくなった。最近、努力するということが少なくなってしまったことを反省して。
(挿入写真)夏の間、宿泊客に開放される大広間から庭の眺め(筆者撮影)
(塔ノ澤・福住楼HP)http://www.fukuzumi-ro.com/index.htm
小田急ロマンスカーHP)http://www.d-cue.com/romancecar/index.html CMギャラリーの2004年「家族の夏」編では宴会場が、2003年「秋・丸湯」編では浴場が舞台になっている。