ナルニア国物語 第2章

監督:アンドリュー・アダムソン
出演:ウィリアム・モーズリー/アナ・ポップルウェル/スキャンダー・ケインズ/ジョージー・ヘンリー 他
ナルニア国物語〜第2章 カスピアン王子の角笛






まず最初に私は「これほど愛を注いだ物語は他にない」と断言できるほど、心の底から原作を愛しているので、映画としての見方はできていませんがご了承下さい。



小学生の頃、私はこの7巻の物語を何度読んだかわかりません。学校の図書館で借りるだけでは満足せず、親にねだって文庫を買ってもらい、常に枕元に置いては繰り返し繰り返し読んでいました。何人もの主人公とナルニア中を旅したし、夜の闇が恐いなと思う時はアスランの事を思って、そうすると強い力に守られているようで何も恐いものは無いと感じました。
そのナルニアが映画化されると聞いた時は本当に嬉しくて、でもその時すでに「本のままの世界」は一切期待しておらず、新しいエンターテイメントとしての作品として捉えていました。本の中のナルニアは自分の頭の中だけにしか存在しないというのはわかっていたので、第一章の「ライオンと魔女」も今回の「カスピアン王子の角笛」も、期待はずれという印象は全く持ちませんでした。
けれどただのファンタジー映画として観たわけでもなく、私が軸にしていたものは「懐かしさ」「立体である事の感動」「目に見えなかったものを見せてくれたという感謝」などです。「ケア・アラベル城」や「正露とり」という言葉の響きは聞くたびにとても甘美な気持ちになるし、セントールや精霊など、挿絵でしか見る事ができなかった空想の生き物たちが目の前で立体になっている事はとても嬉しい。リーピチープなど、特別に愛おしく思っていたキャラクターもアスランの黄金のたてがみも、全て実際見る事ができる。その懐かしさを含む感動によって、ストーリーとは関係なくあらゆる所で泣けてしまいました。

ではこの映画は成功かというとそれは全く別の話で、原作の良い部分を半分も表せてなかったように思います。
この映画化で一番の不幸は、ディズニーが製作したところにあると思っていて、一章でアスランが殺されても、二章でクマを射ってもどれだけ酷い争いが起こっても、一滴の血も出ていない事にひどく驚きました。それによって生き物の命の尊さや争いの醜さが全く伝わらなくなっていて、それが伝わらないとこの話がナルニアである意味がないと思うからです。
もちろんバッカスや木の精霊も出てほしかったし、スーザンは恋愛話なんていらないからスレてしまった部分をもっと出してほしかったし、カスピアンにはピーターをもっと敬ってほしかったし、山のようなごちそうを囲んだお祭りも見たかった。でもその中でも、死んだクマの肉をさばいて自分たちの食料にするところだけは絶対必要だったと思う。
とはいえ、エドマンドはかなり格好良くなっていてますますイメージに近く、ルーシィもちょっとかわいくなっていて安心しました。どうやらこの四兄弟はあまり格好良かったり可愛い人がいないと言われているみたいだけど、私としては最初から全員がかなりイメージに近かったので満足しています。
「あさびらき丸東の海へ」と「銀のいす」にも大好きなキャラクターがたくさんいるので、これからの公開も楽しみにしています。