映画『トキワ荘の青春』

 昨晩(30日・土)BSジャパン市川準監督の映画『トキワ荘の青春』が放送されました。
 トキワ荘に暮らす若き漫画家たちの青春群像を、本木雅弘さん演じる寺田ヒロオ先生の視点で描いた映画です。市川監督は、アパートの映画を撮りたい、という思いをもっていて、そこからトキワ荘を再発見したのだそうです。
 トキワ荘の映画ですから、当然藤子先生も登場します。安孫子先生を鈴木卓爾さんが、藤本先生を阿部サダヲさんが演じています。
 藤本先生の母役で桃井かおりさんが友情出演しているのもポイントです。「女性セブン」1979年12月6日号の記事で、藤子先生の好きな女優が書かれています。安孫子先生は桃井かおりさん、藤本先生は大竹しのぶさんのファン、とのこと。安孫子先生は桃井さんに母親役をやってもらえた藤本先生のことをうらやましいと思われたのかな、とふと頭をよぎりました(笑)
 安孫子先生は、リメイク版『トキワ荘青春日記』(光文社、1996年発行)の「“あとがき”のまた“あとがき”」でその件についてこんなことを書いておいででした。「余談ですが、藤本くんのお母さん役を、ぼくが大ファンの桃井かおりさんがやっていて、劇中で“モトオさん”とぼくの名前を呼ぶシーンがあるのです!! やった!?」。
 どうやら、安孫子先生は藤本先生をうらやましがるというより、そのおかげで自分の名前を呼んでもらえてラッキー!うれしい!とお感じになったようです(^^)


 映画『トキワ荘の青春』は全体的に淡々としつつも情緒ただよう静謐な雰囲気と、つくり込まれた美術・セットがとても味わい深いです。各先生方を演じた俳優陣も渋くてイイですね。アパートと演者の両方からほんのりと体温が伝わってきます。
 当時トキワ荘を実際に訪問した方によれば、安孫子先生の著作を読むともっと賑やかそうに思えるが実際のトキワ荘はこの映画のように深閑とした感じだったとか。もちろん私は現実のトキワ荘を体験的には知りませんが、この映画の空気感に触れて「本当にこんな雰囲気だったんだろうなあ」とリアリティを感じました。
 エンディングで霧島昇の『胸の振子』がかかります。安孫子先生は、このエンディングを見ると涙が出る、とおっしゃっていました。『胸の振子』は安孫子先生のカラオケの十八番です。


 
 ・『トキワ荘の青春』のパンフレット。