恋する寄生虫(★★★☆☆)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

何から何までまともではなくて、 しかし、紛れもなくそれは恋だった。 「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。 しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――。
初買いの作家さん。「虫」に脳を寄生された男女の恋のお話。ひじりとの出逢いによって色付いていく賢吾の日常、二人の何気ない日々が永遠に続けばいいのにと思いました。この恋が「虫」による作為的なものだなんて残酷、賢吾もひじりもあんなに苦しんでやっと掴んだ幸福だったのに。寄生虫の蘊蓄については興味深い点もあったけどやっぱり気味が悪い…。
最後は二人だけの世界、といった雰囲気でした。確実に終息に向かっていく中で手に入れた束の間の幸福ですね。ほろ苦いビターエンド、賢吾のこれからが心配。