jeudi

皆様こんにちは。
先週、私の妻が大学時代にお世話になった福田先生*1が、妻への取材も兼ね、わざわざ私たちの住むMegeveまで訪ねてきてくださいました。
(詳しくは妻のブログをどうぞ → http://d.hatena.ne.jp/sachimegeve/20120914
そしてその際、お土産として先生の著書『「飲食」というレッスン―フランスと日本の食卓から』を頂戴いたしました。

日本とフランスの食文化について「料理は変えられても、食べ方はそう変えられない」、「食卓での配分と共有を考える どうやって人と食べるか」、「鱧の皮ではブイヤベースは作れない 土地のイメージと結びつく飲食」など、興味深いテーマでの切り口で描かれた本書。
こちらは日本語の本が貴重品なので、ゆっくりゆっくり楽しみながら読もうと思っていたのですが、その面白さに、あっという間に読み終わってしましました(T_T)。
中でも私が心奪われたのは「フランス人の食べ方、日本人の食べ方」の項、「まずはアペリティフを」をいうお話。
アペリティフとは食前酒のことで、食事の前にアルコールを少し入れて食欲を高めるという生理的な役割があり、こちらのレストランで食事をするとたいてい始めに「アペリティフはいかがいたしますか?」とサービスの方に聞かれます。
私もアペリティフの習慣、アペリティフの時間が大好きなのですが、その役割がただの「食欲を刺激する」ことだけではないと、先生はおっしゃっております。

  • しかし、アペリティフの役割はそれだけではない。ちょっとおおげさにいえば、アペリティフには社会的で文化的な役割がある。まず、レストランでは、アペリティフがないと〈間〉がもたない。日本ではフランス料理というと、「フルコース」とよばれるあらかじめ決められたコース料理が主体であるが、フランスでは、自身でメニューを組み立てるアラカルトが普通である。したがって、腹具合や懐具合はどうか、ソースや素材がバッティングしていないかなど、メニュー選びはとても重要であり、時間もかかる。だからこそアペリティフが必要となる。アペリティフはメニュー選びを飲食の序曲として演出する必須アイテムなのだ。・・・メニュー選びは多くのフランス人にとって食事の楽しみの重要な一部なのだ。

う〜ん、とても腑に落ちます。
レストランでよく見かける風景。
とても真剣にメニューを隅から隅まで、それこそ穴が開いてしまうのではないかと思ってしまうくらい強いまなざしをメニューにそそぐムッシューやマダム。
そして、料理と飲み物が決まり、安堵と達成感の入り混じった表情で「パタッ」とメニューを閉じる(その「パタッ」っと感が何ともカッコよいのです)。
いやはや、フランス人は食事をとても楽しむ人たちだなとは思っていましたが、まさかメニュー選びまで楽しんでいるとは。
そして、そのメニュー選びのお供が、文化的役割をも背負っているアペリティフ!!!
日本人的感覚で、すぐにオーダーを伺いに行ってしまう私。
「ご注文はお決まりですか?」
「いいえ、まだです( ̄エ ̄)」
このやり取りが実は、お客様の楽しみの邪魔をしていたのですね〜。
福田先生、大切なことを教えて下さりありがとうございます。
よりスマートに、オーダーを聞きに行くことのできる人間になるべく、そしてメニューがなかなか決まらない人を見ても、「ああ、この人はずいぶん長く楽しんでらっしゃるな〜、素晴らしいっ」と思えるよう、頑張ります/(・−・)。
皆様も「メニュー選びから食を楽しむ」毎日を〜。
ではまた。

*1:福田育弘-早稲田大学教育・総合科学学術院教育学部複合文化学科教授。1955年名古屋生まれ。早稲田大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士後期課程中退。1985年から88年まで、フランス政府給費留学生としてパリ第3大学博士課程に留学。1991年流通経済大学専任講師、1993年同助教授を経て、1995年早稲田大学教育学部専任講師、1996年同助教授、2002年より同教授。その間、2000‐2001年に南仏のエックス・アン・プロヴァンス大学で在外研究。専門は、複合文化学(とくにポストコロニアルの文化と文学、飲食表象論)、フランス文学。