RPGでのアイテム探しの楽しみ
人はなぜアイテムを探すのだろう。
ここで言うアイテム探しとは、プレイヤー独自の意志によって、ゲームクリアと直接は関係ないところで、収集を行う行為のことを指す。だから、シナリオの都合などで、義務になっている探索行為は、今日のテーマからは外れる。
しかし、大半のゲームでは、「ゲームクリア」が至上目標になっていて、アイテム探しが追加で働くゲームはそれほど多くない。
どのようなアイテムがあるとき、アイテム探しをしたくなるのだろう。
以下のいずれかの条件が一致するアイテムは、アイテム探しの対象となりづらいように思う。
- 金さえ積めば手に入る
- シナリオの途中に配置されており、ほぼ確実に入手できる
- 高確率でランダム入手できる(数を集めることで効果を発揮するアイテムは除く)
ウィザードリィのアイテム探し
アイテム探しというと個人的にはクラシック・ウィザードリィを思いつくのだが、実はそれほど多種のレアアイテムが隠れているゲームではなかったりする。
- 通常のクリアまでにはまず手に入らない
- 飛び抜けて強力なアイテムがある
プレイヤーは、この二つの条件に絡むアイテムが存在することを、ゲームをやめるより先に攻略本や噂で知ってしまうため、それを目にするまでゲームを続けてしまう。しかもアイテム探しは、乱数との普遍の戦いでもある(レベル10でも100でも出現率は変わらない)ので、ワードナ退治よりも熱がこもったり、時間をかけてじっくり挑戦しようとする。結果として、ウィザードリィがアイテム収集ゲーム、というイメージを(私などは)持ってしまったのだろう。
それと、店で手に入るアイテムがほとんどなく、迷路で探すことを前提としていることからも、アイテム探しゲームという印象を強くしている。
ドラゴンクエストのアイテム探し
ドラクエではアイテム探しの楽しみが少ない。レアアイテムの存在したシナリオもあるが、あまりにも数が少なく出現率が低いので、アイテム探しのためにゲームを遊ぶようなことは、個人的にはしなかった。
しかし、唯一例外的にアイテム探しに奔走したくなるアイテムがある。それは「ちいさなメダル」だ。これは、「ブルーチップ」(株じゃなくてクーポン券の方ね)と同じような収集の喜びを感じる。
それと、ドラクエ2や3などで、たまにモンスターが落とす薬草などは、地味に嬉しかった記憶がある。ウィザードリィでポーションが出ても嬉しくないが、ドラクエの場合はそのアイテムの効果以上に「とっておきたくなるおトク感」がある。
まぁ、薬草はしょせん薬草なのでいずれ捨ててしまうわけなのだが、この微妙な差は、感覚として覚えておくと、何かの作品制作のおりに役に立つかもしれない。
ファイナルファンタジーのアイテム探し
冒頭に挙げた条件に合致しないアイテムはあまりない。だから、ウィザードリィほど、アイテム探しに熱を入れたことはない。だけどFFのアイテム機能には、注目したいものがたくさんある。
アイテムを無駄にたくさん出しても、問題が起きづらい
マテリアだの魔法発動アイテムだの、世界観に密着したファンタジックなアイテムがわんさか出てくるのがFFの特徴だ。役に立つアイテムはそれほど多くなかったが、それでも「入手しすぎても気にならない」場合が多かった。なぜかというと、アイテムをたくさんストックしておける(余っても捨てる必要がない)からだ。
逆に言えば、「世界観を印象づけるためのアイテム」を、無駄でもいいからたくさん盛り込めるシステム、ということなのかも。
アイテムの交換機能がある
たくさんのアイテムをストックしておける機能を利用して、十個集めるとワンランク上のアイテムと交換できるとか、ワンランク下のアイテム十個に分解できる、といった交換機能が盛り込まれていることがある。これは他にあまりない仕組みなので、アイデアとしてストックしておきたい。
定番アイテムが多数ある
FFはその歴史的な知名度を活かして、いきなり『フェニックスの尾』や『南極の風』といった名前を出しても、プレイヤーにそのアイテムの使い方やイメージが伝わってしまうところは強みだと思う。他のシリーズものでは、この手の定番アイテムがずっと少ない。
使わないアイテムが多い
使いもせず、最後まで一度も使用しないアイテムが多い。
大量買いできる店のインターフェース
インターフェース面でも少し変わっていて、店では大量買いを行うことができるようになっている。ポーションなんて百個も持っておく必要はないはずなのに、どうしても「買い溜めしすぎ」が発生してしまう。
使いどころの難しい、セミレアな消耗アイテム
エリクサーやラストエリクサーなどは、店で調達できないことが多いため、意地でも使わずにゲームを終えようとするプレイヤーがいる。ゲームクリア後も遊ぶことを配慮しての節約なんだろうけど、結局、最後まで一つも使わずに、ゲームを完全に終えてしまうプレイヤーは多いのではなかろうか(…私だ)。
逆に言えば、使いどころが難しく、使用機会を逸するアイテムが多いということだ。
ゲームが下手な人に対する救済アイテムという見方もできる……が、それでは、私よりもゲームが下手な人は、どのようなときにラストエリクサーを使うのだろう。
強力なアイテムであるからには、やはりバランス調整用のアイテムとして「使ってもらうために出した」と見るべきだと思う。が、その方針が成功しているようには見えない。
DIABLOのアイテム探し
アイテム性能をランダムで決定するシステム、かつオンラインゲームなので、単純に他ゲームとの比較はできないが、これほどアイテム収集に勢いのあったゲームは他にない。
ディアブロのアイテム名は一般的な英単語を組み合わせたものだし、アイテムは全然ストックできない。収集動機も方法もウィズ的だ。ということで、ウィズに近く、FFからは遠い。
一度に一人しか操作できないため、たくさんのアイテムを集める必要はなさそうに見える。が、ディアブロでは複数のキャラクタを管理するなんてことがザラに起きたので、レアアイテムはできるだけたくさん手に入れたかった。
ルナティックドーンのアイテム探し
Windows版のルナティックドーンには探索物件が多いのだが、アイテム収集に特別躍起になれるゲームではない。そこそこ楽しいレベル。なぜだろう。
- アイテム入手までの過程で、見返りの乏しい戦闘が無数に必要である
- アイテムが沸いたら狙って取りに行くことができる(偶然の遭遇によって入手するのではない。配置されている場所も決まっている)
- この件、ルナティックドーン2はちょっと事情が違う。2はアイテム探しがちょっとだけ熱かった
- 飛び抜けて強力なアイテムがない
- 装備者が少ない(通常は主人公のみ)
ルナティックドーンは、装備アイテムのバランスをキレイにとりすぎている。店で購入できるアイテムをゴミだらけにしないために、性能的に、レアアイテムとの差が小さくなっている。レアアイテム間の差異もあまりない。
さらに決定的なのが、レアな装備アイテムを身につけるのが、主人公だけという点だ。仲間の装備アイテムは、コンピュータのロジックが選ぶことになっていて、仮に強力なアイテムを仲間に渡しても、いつ売り払われてしまうか分からないため、仲間のためにアイテム探しをするメリットが薄い(ルナティックドーン3以降は知らないが)。つまり、たくさんの装備アイテムを探す価値が少ない。ウィザードリィでは六人ぶん、ディアブロでは三人ぶん程度はアイテムの需要が生まれたが、ルナティックドーンでは一人ぶんのレアアイテムがあれば十分なのだ。
まとめ
それぞれの善し悪しは別にして、いずれのゲームも制作の参考になりそうだ。
- アイテム探しが機能した例として、参考になりそうなものは、ウィザードリィとディアブロである
- アイテム探しを盛り込みきれていない例として、参考になりそうなものは、ドラゴンクエストとルナティックドーンである
- アイテムの需要と供給のバランスを考えるときに、参考になりそうなものは、ファイナルファンタジーである
- ドラゴンクエストの「ちいさなメダル」はアイテム収集対象になる
- ブルーチップと同じような喜びがある
…ところで、ブルーチップって昔の切手形式ではなくなってるんですねぇ、いつの間にか……。カード形式になると、面倒くさくなくていいけど……、収集の実感が沸かなくなるなぁ。ゲームの世界ではチップとかカードとか宝石とか、そういうのがいいですね。