閃輝暗展(音楽編その4

ラヴェル組曲『鏡』より「道化師の朝の歌」

人により、閃輝暗点やその後の偏頭痛が睡眠中に始まることがあるそうです。この曲はそれではないかと思います。偏頭痛の痛みによって目覚める絶望を、ラヴェルは自嘲的に描いたのではないかと。

脈動のようなリズムと狂おしいスペインのメロディ。ピアニストを悩ます執拗な単音連打と重音のグリッサンドがこの曲からのメッセージです。


アンドレ・ラプランの演奏

あさまだき眠れる脳を震わす脈動。悪魔のいたぶりに眠りは破られる。目を開けてしまえばあの拷問が始まっていることを確実に知る。

残酷な処刑はすでに始まっており、否も応もなく彼は瞼を開く。目覚めても悪夢。眼球の奥で始まる大工事。悪魔の手がそこに発破をしかけ、ニヤつきながら彼を見る。弓手に導火線、馬手にはマッチ。

彼は頭の中に悪魔を宿す自身を呪い、絶望し、自嘲する。悪魔は自分の化身か?我が身は頭蓋という名の宮廷に飼われる道化師か?と。

朝を告げる喇叭は間延びし、歪み、陽炎のように揺れる。なんという哀れな道化師かと彼を見る彼がもうひとり在る。道化師と悪魔は光と陰か、寸分も違わぬタイミングで寄り添い踊っている。


この曲はラヴェル自身によるオーケストラアレンジが有名ですので、それも。
カラヤン指揮 パリ管弦楽団



出だしが切れていてとても残念なのですが、とても偏頭痛的な素晴らしい演奏をもうひとつ。
リーズ・ドゥ・ラ・サール




ピカソ:枕の上の少女
ショッキングな黄金色の枕と、その縁取りの房のギザギザが閃輝暗点に苛まれていることの象徴に見える。少女の顔は青ざめて、2つの瞳の焦点は定まらず。顔の半分を覆う蒼い三日月や、もっと昏い青の円も閃輝暗点のモチーフであろうかと。