別に成長なんてしなくても「面白い」
・痛みを伴う成長なんてなくてもいい
前回と言ってること違うじゃねえかとお思いでしょうが、別に重要なファクターと言っても必須と言うわけではないということは言っておきたいと思いまして。
前回の話で言えば、成長と言うのは自己を否定する苦痛を伴わなければなしえない……と断言はできないものの、そういうケースが多いと推測しました。
つまり物語においても成長が描かれる場合、苦痛が伴うケースは少なくありません。ラノベでは『十二国記』とか、『文学少女』『アンゲルゼ』なんかは相当辛いシーンが多いです。全部傑作ではありますが……
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ただでさえ世の中生きてくだけでも辛いのに、さらに辛い思いして成長なんてしなくてもいいじゃん?という方向性は自然なものに思えます。
・成長することはただの好み
加えて言えば、「成長することの意味」を支えてきた価値観が割と本格的に崩壊して来ていると思います。まあ私の世代などは、生まれた瞬間から夢も希望もない世の中でしたから。例え成長それ自体が快楽だとしても、成長することを肯定する価値観が崩壊してしまえば、成長と言うのはひとつの選択肢でしかなくなったと、そういう話でしょう。私自身、成長を志して当然!みたいな論調を聞くと、こいつ頭が悪いのか、それとも詐欺師か、ぐらいにしか思えませんもん。
いや、成長することは大好きですよ?けどそれは趣味みたいなものです。
要するに成長することは「正しい」ことではないわけで。正しいことなんてなにもありませんが……
・日常モノの台頭
ゆえに後は嗜好の問題で、ただでさえ希望のない現在であれば、『あずまんが大王』を皮切りとして(?)、『らきすた』『けいおん!』のような日常を嗜好した作品が流行るのも頷ける話ではないでしょうか。
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これらの作品の特徴として、徹底的に苦痛を取り除いた作品であることが挙げられると思います。似た傾向をもつものにハーレム系の作品がありますが、これは本論とは若干異なるので省略しますが、「ヒロインを選ぶ圧力」が苦痛になることから、日常系の作品はハーレム系と異なりもはや恋愛すら要素として除外されています。
これにはハーレムモノの男性視点への不信感とか、その他にも理由がありそうです。それはまたいずれ。
確かに日常を描いた作品は、昔から一定数あったかもしれません。しかし最近の流行り方は顕著に思えます。そのなかで『魔法少女まどかマギカ』なんて作品が流行るんだから分からないものです……が、これはわき道。
『あずまんが大王』辺りはギャグが秀逸でありながら、いつまでも浸っていたいゆるい空気を持ち、かつラストシーンはそれこそ感動の名シーンといった風格です。あ、これ『けいおん!』も割と同じことが言えそうです。こちらはギャグが秀逸と言うよりは、バンドを絡めた仲間意識のほうに重点が置かれているでしょうか。
まあ日常系に偏っちゃうのもなんか勿体無い気がするんで、バランスの問題だと思うんですけどね。
このブログでの話が成長がいかに面白いかに偏っていた気がしたので、日常系に触れたい気分のときもあるし、別に作品としては私も大歓迎!という話でした。