Photoshop Express β版は年内に公開

 しばしばまだ出ないのかと採り上げてきたSaaS版のPhotoshopであるが、やっと年内にベータ版を公開することをAdobe幹部が明らかにしたようだ。もう発表から半年以上も経過していている。

「Photoshop Express」ベータ版は年内に--アドビ幹部が明らかに(CNET Japan)

 これだけ、ネットの世界にしては長い期間、話題を引っ張っている背景には何があるのだろうか。ブログやSNSのようなテキスト処理系のWebサービスに比べて、Web画面上で微妙な画像処理を行わせるための技術的な問題があるのか。あるいはオンラインOfficeなど、他のWebサービスの動向を見ながら公表のタイミングを見計らっているのだろうか。

 2日前にも書いたが、PhotoshopのWeb化は今後のアプリーケーションソフトウェアのあり方に大きな影響を与える可能性が高い。SaaS化が現在の流行になりつつあるとはいえ、やはりミッションクリティカルな業務に使うソフトウェアが、使い物になるWebサービスになるかどうかが問題である。Officeがまさにその争点になりつつあるところだが、それに次いで大きいのは、Adobeの最も得意としてきたグラフィックソフトウェアの世界である。


 常識的に考えれば、画像加工などは別にネットにも繋がずに、ひとりで部屋に篭ってデザインしていればよさそうなものだ。プロ向けや業務系でのデザインはそうであろう。しかし、それより桁違いに多い日曜プログラマならぬ日曜デザイナーの存在もあなどれないだろう。
 これまでは素人が、ちょっとグラフィックデザインをやってみたければ、かなりの決心?をしてPhotoshopのパッケージを買ったものだった。しかし案の定、あまり使いこなせないうちにバージョンアップされ、「アップグレードにまたお金を出しませんか?」という通知を受け取る破目になった。自分もいつしかバージョンアップしなくなり、廉価版のPhotoshop Elements に移ってしまった経緯がある。
 それと他の場所でPCで作業する必要があるとき、まともにPhotoshopが導入されているケースは少ない。そういう場でもちょっとした画像加工をしたいときがある。そんなとき使うのは「貧者のPhotoshop」と言われるGimpである。Linuxの世界では有名なソフトだが、バージョンが上がってWindows版でもなかなか使えるようになっている。一般の人には十分過ぎるフリーソフトである。


 SaaS版のPhotoshopが公開されれば、まさにこれまでGimpに頼ってきたようなPhotoshopの代用のような役割が同じPhotoshopのグループ内で行えるメリットがある。Officeの場合と違って、Photoshopはデスクトップ版は専門家向き、SaaS版は大勢の一般ユーザ、ネットユーザであるということである。競合してデスクトップ版は売れなくなるとは、あまり考えにくい。また、SaaS版の方はネットならではの面白い使い方ができるかもしれない。たとえばネットでの写真や画像のアルバムサービスと組み合わせて、編集加工したお互いの作品を共有し、展覧したり交換し合うようなことは容易にできそうだ。


 デスクトップかSaaSかと、何やら二者択一のようなことをMicrosoftの立場では言っているが、そうではなくて利用目的や利用者の層によって、棲み分けられるようになるだろう。しかし、Adobeの動向によっては、他の分野を含めたアプリケーションの全体的な流れは大きくSaaSに傾いていくだろう。