雨が降り出す前に庭仕事

 朝から曇りの天気で時間が進むにつれて雲が厚く墨色をおびてきた。
 昨夜はたっぷりと睡眠がとれ、たぶん8時間くらい眠ったと思う。
 お昼前にいつも行く近所の店で野菜と魚介類を買った。この店は食料品の卸業を営み、土曜日だけ小売りをしている。平日は人出が足りなく店を開けていない。バナナが1本10円という安さである。もちろん、天候不順で値段が上がった野菜はそれなりに高くなるが週一くらいで行く駅前のスーパーマーケットよりは格段に安い。ただし、日本産の野菜にこだわると買えないものもある。
 午後は空模様が一段とあやしくなったが、なぜか身体を動かしたくなった。散歩に行こうかと思ったが雨が心配でそれなら庭仕事のほうがいいと思い、庭に出た。
 庭の通路沿いに植えてある枝が伸び放題の柘植ををまず刈り込んだ。次に姫リンゴとグミの木の伸びた枝を切った。さて次はどうしようかと見渡すと梅の枝が徒長しているのでこれを切ろうと脚立を運んできた。ところが梅の木を伐るには桃の木の枝が邪魔となった。桃の木をよく見ると枯れた枝がいくつかあり、こちらを優先させた。ノコギリで枯れた枝を切り、枯れてはいないが姫リンゴの木におおいかぶさっている桃の木の枝も切った。
 桃の木はこの春、実の重みと雨の重み、さらに強い風によりわたしの二の腕より太い枝が裂けてしまい、その下の枝にかぶさるように伸びている。太い枝に上からつぶされたようなかたちで細めの枝が枯れてしまった。その枯れた枝も切った。裂けた枝はどうするか。切りたいが枝の先から少しづつ切り、枝全体にかかる重みを軽減しないと他の健康な枝を傷つけることになる。裂けた枝をそのままにしても台風や雪などで自然と折れるに違いないからその前に切りたい。
 桃の枝を切るのがけっこう大変で梅の木まで伐ることができなかった。切った桃の木は鋏と鋸で短くし、ひもで束ねたり、ゴミ袋に入れた。雨に濡れると鋸で切りにくくなるから急いで切った枝の始末をした。枝の始末を終えると、庭の通路の草が気になり、スコップで掘り伐るようにしてとった。固い土にしっかりと根を張っているので引っ張ると葉っぱだけしか取れないので。
 通路の草取りを気になるところだけ終えると、ぽつりと雨。いいタイミング。ちょうど3時半だ。1時間半あまりの庭仕事である。
 昨年はこの時期、亡くなったばかりの老犬ももこを思い出し、泣きながら庭仕事をやったのを思い出した。今日は泣かなかった。時間がたったのである。時間が過ぎ、悲しみは薄れたように思えるが庭のあちこちにももこの思い出が影のようにはりついている。ああそうか、ここでももこを抱き抱え、おしっこをさせたんだ。庭から家の前の道路につながるスロープを元気に駆けおりていたももこがいつからか歩けなくなり抱くようになり・・・・・・思い出は尽きない。
 元気な時は散歩から帰りスロープを上がるとリードを外してやった。ももこはすたすたとわたしの前を玄関まで歩き、わたしが後ろにいないと「早く家の中に入れて」というようにこちらを見た。わたしは郵便受けの新聞をとったり、ときには水やりをすることがあり、ちょっと待ててねとももこに声をかけるのであった。

 命継ぐおはぐろとんぼ命継げぬ犬二匹をらぬ庭をとびたり

 返り咲くマゼンタ色の朝顔にわが犬のおもわ重ねて見る

 庭隅に耳飾りとなり下垂す秋海棠のうすき赤色

 黙したまま毛虫に喰われる桜の葉透かし見る空広くなりたり


花数が少なくなりそろそろ朝顔は終わりかなと思っていたら、
今朝はたくさん咲いて目を楽しませてくれた
ももこがいた昨年の夏に咲いた朝顔の種を蒔いて育てたので
ももこの顔を重なる